七草家の三男は全てを知っている   作:主義

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七草家の三男は全てを知っている

僕は七草伊織。

 

僕の魔法師としての実力は普通ぐらい。長男の智一兄さんや長女の真由美姉さんなんかと比べたらその差は顕著に出ると思う。七草という名前を背負っているにも関わらず、僕は普通の魔法師とほとんど変わらない。

 

 

 

妹たちと比べても自分は劣っていると思う。

 

それなのに兄さんたちも姉さんも妹たちも僕のことを「すごいぞ!」とか「やっぱり天才!」とか言ってくる。

そんな言葉を生まれてからずっと言われ続けると変な勘違いをしてしまいそうになるけど、僕は自分に「自分はただの凡人だ」とずっと言い聞かせ続けてきた。そうではないと天狗になってしまいそうだったから。この環境は自分をダメにしてしまうんじゃないかと何度思ったことか。

 

 

 

 

でも、そんな僕にも普通の魔法師と違うことがある。

 

 

 

 

 

これを魔法と言ってしまってもいいのかは分からないけど、僕には全てが分かる。

 

 

急にこんなことを言ったら困惑するかもしれないけど、僕には全ての未来が見えている。

 

 

 

 

これから僕は数年後国立魔法大学付属第一高校に入学することになり、テロ事件に巻き込まれ、九校戦ではそこそこの活躍をする。そして何よりも司波兄妹が僕たちの世代ではいつも中心にいる。

 

 

司波の兄さんの方は軍人やシルバーとしてなど様々な顔を持っていることや、四葉家の人間であることなど様々な情報が僕の頭に流れ込んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

まるで誰かが書いたストーリーが頭の中に入って来るみたいなんだよね。最初の頃はこの現象が何なのか分からなかったが、この世界で十年生きて分かったことは頭の中に流れ込んでくるイメージ通りに進んで行くということ。

 

だから、今の僕の頭の中にあることも全てそれ通りに進んでいくだろう。でも、毎日の全てが分かるというわけでもない。例えば明日の行動はある程度、朝から夜まで決まっているのに明後日は全く決まってなかったりする。

 

 

 

 

 

今まで一度もそのイメージを壊すような真似をしたことがない。

 

それをして運命が変わることがあるのかも分からないが、僕は別に運命を変えたいとは思わない。

 

ここまで聞いて分かっている人もいるかもしれないけど、僕には自分の死ぬ日、時間、原因など全てが分かっている。今までのことを考えれば自分はその日に死ぬのはほぼ確定しているんだろう。

 

 

 

僕はそれを回避しようとは思わない。死ぬことは怖いけど、自分の運命がそうと決まっているんであれば仕方ないと諦めるしかない。そう考えている時点で僕はやっぱり普通の人間ではないんだと思う。

 

 

普通であれば自分が死ぬ日、理由も分かればそれを回避するために行動するはず。だけど、僕に関してはそうする気持ちが全く湧いてこない。

 

 

 

 

 

それが僕こと七草伊織。

 

 

 

――――――

 

 

 

僕が小鳥の囀りやカーテンから漏れ出ている太陽の光で目を覚ました。そしていつものことだと言っても、これは言わなくてはならない。

 

 

「あの真由美姉さん」

 

 

「なぁに~?」

 

 

「なんで僕の布団の中に真由美姉さんがいるのか説明してもらえませんか?」

 

 

「一緒に寝たかったから」

 

実の姉弟という関係性で一緒の布団で寝るというのは…ダメだと思う。お互いが小学生とかであれば別に問題ないかもしれない。でも、真由美姉さんは高校生で僕も来年には高校に上がる予定になっている。

 

そんな年頃の僕たちが同じベッドで寝るというのは少しマズい気がする。

 

 

「それは理由になっていませんよ。そろそろ僕の布団に忍び込んでくる癖をどうにかできないですか?」

 

 

「むりかな。私は伊織くんとずっと一緒がいいからさ」

 

 

「そういうのは恋人の男性に言うようなセリフですよ」

 

 

「私にとっては伊織くんが恋人になってくれたらいうことないんだけど」

 

 

「さすがに実の姉弟でそれは無理ですよ。僕と姉さんは正真正銘、血が繋がってますから」

 

 

「え~~じゃあ…伊織くんは結婚しないでくれない?」

 

 

「とんでもないことを言っている自覚はありますか?」

 

 

「でも、伊織くんが結婚しないで欲しい。あと恋人とかも作らないで欲しいかも」

 

真由美姉さんは少しおかしい。なんでそこまで僕という人間に固執するのか本当に分からないというのが正直なところ。真由美姉さんから見る僕はただの凡庸な弟という認識のはず。それなのに真由美姉さんは僕をとても大切に扱ってくれているのが分からない。

 

 

「心配しなくても大丈夫だと思いますよ。僕なんかに恋人ができるとは自分で思ってませんし」

 

僕がそう言うと真由美姉さんは珍しく身振り手振りをしながら反論してくる。

 

 

「伊織くんはカッコいいよ!もっと自信をもっていいの。それはお姉ちゃんが保証してあげるから!」

 

 

「そうですかね」

 

 

「そうだよ。でも、恋人は作らないで欲しいけど…」

 

 

 

そんな話をしていると僕の部屋の扉が勢いよく開く音がした。

 

 

 

「あ、やっぱりお姉ちゃん、ここにいた!」

 

「も~お姉さま、ばっかりずるいです」

 

 

 

入って来たのは香澄と泉美。僕の妹たちで双子なのに性格は全然違くて、双子って言っても全然違うんだと感じた。でも、二人に共通していることが一つだけあって……

 

 

「ボクだって兄さんと一緒に寝たかった!!」

 

「私も許されるのであれば兄様と一緒に…」

 

 

 

僕のことを気に入ってくれているようなのだ。二人に対して特別なことをした覚えは本当にないんだけど、二人は僕のことを慕ってくれているようでいつも側に居たがる。

 

小学校・中学校と僕と二人は一歳しか違わないので一緒に通うことも多かった。そして学内でも休み時間さえあれば上級生の僕の教室にまで来たりしていた。

 

 

 

 

二人に「僕と話すよりもクラスの子たちとお話した方が楽しいと思うよ」と言ったことがあったけど、その時に彼女たちは「ボクは兄さんと話せるだけでいい。他の人よりも兄さんと話す方が楽しいし、ずっと一緒にいたい!」とか「私も兄様と一緒の方が楽しいです!なので兄様の側に居させてください」とか言ってきた。

 

 

なんでこんなに僕と一緒に居たがるのか不思議でしかない。

 

 

 

 

 

その後、なぜか真由美姉さんと香澄、泉美で誰が僕と一緒に寝るのかで揉めていたけど、誰とも寝る気はない。




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