今日は司波達也さんと接触をする日。
僕が未来を見えるのはあくまで自分のこと。テロのことも九校戦でのことも、横浜でのことも分かるのは未来の僕がそれを体験したからだ。
だから司波兄妹が四葉家の関係者であることなども知っているけど、二人の行動の全てを知っているわけではない。例えば今この時、二人がどこに居て何をしているのかは分からない。
でも、僕がすべきことはストーリ通りに。
一週間後にテロが起こる。
そしてそれを司波兄妹が解決することになるので僕は操り人形として決められた行動をするまでだ。
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僕は真由美姉さんと一緒に登校せずに済むように一足先に出ようとしていた。だけど、そんなことも真由美姉さんにはお見通しだったようで拘束されて一緒に登校することになった。
この出来事すらも…未来で決められていたこと。僕が真由美姉さんに捕まったことも、逃げ切れないことも。
「もし、伊織くんが生徒会長のお姉さんにして欲しいことがあったら言ってね」
「それは職権乱用って言うんじゃないですか?}
「大丈夫、大丈夫」
全然大丈夫じゃないとは思うが。
生徒会長が身内のために生徒会長としての権限を使おうとしているなんて許されるわけがない。
「伊織くんは昼食どうする予定なの?」
「食堂で食べますね」
お弁当も作ってこなかったし、食堂で食べるしかない。そしてそこで僕は司波兄弟を中心に揉め事に近いことが行われる。それを僕は少し離れた席で目撃することになっているんだ。
だから真由美姉さんの言葉には驚きしかなかった。
「じゃあ、お姉ちゃんも一緒に食堂で食べようかしら」
僕の知っている未来では一人で食事をしていた。だから真由美姉さんと一緒に昼を取っていないはずだ。それにまず、こんな風に真由美姉さんから誘われる未来はなかったはずだ。
「いえ、真由美姉さんはいつも通り生徒会で取られた方がいいと思いますよ。姉さんぐらい有名な人が食堂に姿を現したら色々と騒ぎになりそうだし」
真由美姉さんが自分の人気度をどれくらいだと思っているのかは分からないけど、学内での人気は僕が思っていたよりもすごい。そしてその弟として入学した僕への期待も予想以上に高いことも昨日で分かった。
だってホームルームの終わった後に先生から「期待しているぞ」と声を掛けられたぐらいだ。それに同じクラスの子たちからもかなり見られていた。まるで実験動物になったような気分。
「別に大丈夫でしょ。それにお姉ちゃんが弟と一緒に食事をすることは普通のことよ」
「それはそうですけど、学内でそんなことをする必要もないですよ。家に帰ればいつも一緒に食事を取っているわけだし」
「そういうわけじゃないの。お姉ちゃんはいつでも弟くんと一緒にいたいの」
「そ、そんなことを言われても……」
「もしかして…お姉ちゃんのこと嫌いなの?」
僕はこれに弱い。妹たちも同じだけど、僕がこういうことに弱いことを分かった上でやっているんじゃないかと思ってしまう。
「……嫌いじゃないですよ」
「じゃあ、決まりね」
姉さんのこういう所は本当に敵わないと改めて感じた。
僕が知っている未来と少し変わってしまったが、これぐらいでは大きな変わらないだろう。
さすがに姉さんと一緒に登校すると目立つので学校が近くなったら離れた。正直、食堂で一緒に食事をするんだったらどうせ目立ってしまうと思うけど。
教室に着いて改めて思ったけど、僕はやっぱり注目を浴びているみたいだ。教室に入った途端に全員の視線が僕に注がれている。さすがに『七草家』に属する人間であるというだけで注目を集めるものなんだ。
僕は他に目もくれず、自分の席に付いて大人しくすることにした。
それからお昼まではあっという間で僕は集中力半分くらいで乗り切った。でも、クラスメートは初めての授業ということもあって、気合がかなり入っているように見えた。そんなに肩肘張っても…と思ってしまうけど皆の方が普通か。
真由美姉さんに会うのは少し嫌だけど、食堂にはいかなくちゃいけないし仕方ないかな。
僕が席を立つと同時に教室に残っていた生徒の視線が僕に注がれる。七草家っていうか、十師族はかなり恐れられているのか。それに僕も自ら話に行こうともしないし、かなり不気味な存在なんだろう。
別に容姿は普通に黒髪のロングで顔は普通だし、怖がられる要素というのはないと思う。
そしてここで僕に話し掛ける勇気がある者が現れる。その人物は…森崎駿くん。
「あ、あのちょっといいか?」
「…ぼく?」
「ああ、しっかりとした挨拶をしておきたくて」
これも全てストーリー通りだ。真由美姉さんと昼食を食べることになる以外は全て予定通りに進んでいる。
「僕は森崎駿だ。森崎家の一人として挨拶をしておきたくてな」
「それではこちらも、僕は七草伊織という者。これからよろしくお願いする」
「こちらこそ」
そんな風に挨拶を済ませてから僕は食堂へと行った。
食堂に行き、僕はランチを注文して黙々と食事を進めている最中に聞き馴染みもある声が聞こえて来た。視線を向けなくても分かるけど、一応向けることにした。
「真由美姉さん」
「も~~伊織くん、何度も連絡したのになんで出ないの!?」
「いえ、姉さんには同級生の方とお食事をした方がいいかなと思って」
「私は伊織くんと食事をするの!」
「あ、はい」
真由美姉さんは僕の前の席に腰を下ろした。そして結果的に一緒に食事を取る事になってしまい、生徒の注目を集めることになってしまった。
「本当に真由美姉さんは人気ですね」
「そう?」
「そうですよ。逆にこれで人気じゃない方がおかしいですよ。去年の九校戦でも大活躍でしたし」
「そうね。伊織くんがしっかりと会場まで見に来てくれればもっと頑張れたと思うんだけどな~」
「そのことは何度も謝っているじゃないですか」
去年の九校戦は友達との約束で旅行に行っていたので、見に行っていない。こればっかりは真由美姉さんに「見に来て」と言われるよりも前に旅行に誘われたのでそっちを優先してしまった。
「私は見に来て欲しかったのに…」
「でも、香澄と泉美は見に行ったんですし」
「そこに伊織くんの姿はなかったなぁ…」
姉さんはどうしても見に来て欲しかったのだろう。
「今回は絶対に応援に行きますから」
すると真由美姉さんはなぜか不思議そうな顔をした。
「今回は伊織くんも第一高校の生徒なんだから出場するかもしれないわよ」
「それはないですよ。自分の実力を見る限り、選ばれる才能はないですからね」
昨日は中条さんに自信を持ってと言われたけど、過信はできない。自分の実力を冷静に分析して現状位置を把握する。それが魔法師にとっては重要だと僕は考えている。自分の身の丈に合わないようなことをすれば必ず身を亡ぼす結果に繋がる。
「そうかしら。私は伊織くんだったら行けると思うんだけどな~」
「それはさすがに身内贔屓と言われてしまいますよ。今年は森崎家の長男や十三束家や五十嵐家もいます。今年は男子のレベルもそこまで低くないですし、特に女子のレベルは高いです。僕みたいな足手まといを抱え込んでもし優勝を逃すようなことがあれば謝罪してもしきれませんよ」
それにストーリーで僕は九校戦に出場しないことになっている。いや、しないという言葉は間違っているかな。出来ないという方が正しい。
「伊織くんの自分のことを低く見ちゃう癖はいつになったら直るのかな」
「冷静に分析できていると言ってください」
そんなことを真由美姉さんを話しているとどうやら始まったようだった。司波妹のことを巡った、兄とその友人たちと一科生の言い合い。
最初は真由美姉さんも少し気に留める程度だったけど、さすがにこのまま放置しておくのは愚策と判断したのか動き出した。
これは僕のストーリーの中にはないもの。元々、真由美姉さんと食事をすること自体が想定されてないことなわけだし。
真由美姉さんのような人間で、生徒会長という役職も背負っている人が揉め事を放置しておくなんてない。
「ここは食事をする場だからあんまり大声を出したりするのはダメよ」
「すいません」
「深雪さんみたいな可愛い子と食事したいのは分かるけど、本人の意思も尊重してあげてね」
「…はい」
さすがに真由美姉さんに言われたこともあって両陣営、頭が冷えたようだった。どっちが良いか悪いかとか議論をするつもりはないが、この場で争えば両陣営に取っても悪いことだ。それにストーリーでも争ってはいない。
そうすると真由美姉さんというイレギュラーを抱えたものの、結果的に変わらず進んでいると考えるべきかもしれない。そんなことを考えながら姉さんと食事をするのだった。
その後、姉さんは普通に席に戻って会話を始めた。
誰を一番登場させて欲しいですか?
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七草真由美
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七草香澄
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七草泉美
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渡辺摩利
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中条あずさ
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服部刑部少丞範蔵
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十文字克人
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司波達也
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司波深雪
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千葉エリカ
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北山雫