家入さんが当たらない。
新年の宿儺ガチャも180連回してSSRキャラが3体だけという激渋だったし、しばらくは石を温存して、1.5周年まで待った方が良いのかもしれない……。
ヒフミと共にアビドスに帰ってきた対策委員会たちは部室で書類の確認を行っていた。
そこで衝撃の事実を知ってしまう。
「何ですって!?あ、アヤネちゃん……もう一回言ってもらっていい?」
机を叩いて立ち上がるセリカにアヤネは書類に書かれている事実も口に出す。
「うん、手に入った書類を確認したんだけど、カイザーローンはヘルメット団に資金を回してるみたい……」
「嘘よ……だってそれって、あいつら、ヘルメット団は、私たちに銃を向けてきた連中は、私たちのお金で武器を調達してたってことでしょ!!」
「ふーん、書いてあるねー。788万円集金、その後すぐに、カタカタヘルメット団に500万円を任務補助金提供って」
五条が読んだ書類を手に持ってひらひらと振る。
「まあ、間違いないね。カタカタヘルメット団も便利屋68も裏で操っていたのはカイザーローン、いやカイザーコーポレーションって考える方が正しいかな」
「どういうことなのでしょうか!?理解できません!学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに……」
「そんなの簡単じゃん、ノノミ。お金じゃない、この学校を手に入れることが、あいつらの目的なんだよ」
そう答える五条にセリカが食いつくように尋ねる。
「なんでよ!?この学校を奪って何になるっていうのよ!!」
「さあ、僕もそこまではわかんなーい」
両手を上げてギブアップのジェスチャーをとる五条だったが、ここでこれまでの不可解なことの一部に納得がいく。
カタカタヘルメット団がこのアビドス高校を何度も襲撃しに来たり、セリカを誘拐までして、この学校を狙う理由はカイザーコーポレーションに雇われたからだろう。
便利屋が来たのは、おそらく失敗続きのヘルメット団に業を煮やしたからだろう。
だが、黒幕が分かっても、その動機までは分からない。砂漠に囲まれたアビドスを手に入れて何をするつもりかそれが分からない。
結局、あのまま分からないことが分かったというモヤモヤした気分のまま夕方近くになった。ヒフミはトリニティに帰るので、みんなで校門前で見送りをすることにした。
「みなさん、色々とありがとうございました」
「変なことに巻き込んでごめんなさい、ヒフミさん」
今日の出来事を思い返してヒフミは苦笑交じりに頬をかいた。
「今度遊びに行くから、その時はよろしくー」
「はいっ、もちろんです」
ヒフミは少し考えてから神妙な面持ちで口を開く。
「私、このことをティーパーティーに報告しようと思います」
「ヒフミさん?」
「カイザーコーポレーションは犯罪者と反社会勢力となにかしら関連があるその証拠になり得ます。
それに、みなさんのこともここまで知ったのに、放っておくわけには……」
「ありがとうございます!トリニティの生徒会が助けに入ってくれれば、こんなに心強いことはありません」
「借金のことは驚きましたが、このことを知ればティーパーティーもきっと――」
「ティーパーティーは知ってると思うけどね」
ヒフミの言葉を遮ってホシノが口を開いた。
「はい?」
首をかしげるヒフミに、ホシノは続ける。
「ティーパーティーだけじゃない、ゲヘナもミレニアムもとっくに知ってると思う」
「そ、そんな……知っているのに、みなさんのことを……」
「ヒフミちゃんは良い子だねー。でも、世の中、そんなに甘くないからさ。
ヒフミちゃんの気持ちはありがたいけど、それじゃあ、かえって私たちがパニくることになりそうなんだよねー」
「どういうこと?」と尋ねるシロコに、ホシノが答える。
「ほら、今のアビドス高校って廃校寸前じゃん?トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよ。
言ってる意味、わかるよね?」
「えっと……サポートするという名目で悪さをされても、それを阻止できないということでしょうか」
そう答えるヒフミにホシノは静かに頷く。
「ホシノ先輩、悲観的に考えすぎじゃないでしょうか」
「そうよ、本当に助けてくれるかもしれないじゃない」
「私もそう思います」
ノノミとセリカ、アヤネの3人がそう言ってみるが、ホシノは静かに首を横に振って答える。
「でも、万が一があるでしょ」
「あうう……難しいですね」
「ま、地道に考えるしかないんじゃない」
「先生は気楽すぎなのよ」
あははとお気楽に笑う五条にセリカがため息を吐く。
みんなが五条の方に向かっている中で、ホシノが一人静かに呟いた。
「万が一……そう、『万が一』てことをスルーしたから、アビドスは……」
その呟きを五条とシロコの2人だけが聞こえていた。
「えっと……本当に……一日で色んな出来事がありましたね」
そういうヒフミにシロコは親指を立てて答える。
「そうだね、すごく楽しかった」
「楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」
「大丈夫、僕も楽しかったから!」
「ああ、はいはい……」
セリカが五条を雑に流す。五条はわざとらしくしょんぼりして見せるが、五条の取り扱いに慣れてきたセリカはそれも華麗にスルーした。
そんな様子を見てみんなが笑う中、ホシノがヒフミに意地悪な顔をして話しかける。
「そういえば、ファウストちゃんにはお世話になったねー」
予想外の攻撃にヒフミは顔赤くして慌てる。
「そ、その呼び方はやめてください!」
「何言ってるんですか!ファウストさんは覆面水着団のリーダーとして頑張ってくれましたよ☆」
「そうだね、ファウストがいなかったらこの作戦は失敗してた」
ホシノの悪ノリにノノミとシロコも乗りかかる。
そして、こんな面白い状況にもちろん、この男も参加する。
「さすが、ファウストだ。彼女無しでは我々は無事に帰還できなかっただろうね。これは、記念にアビドス高校にファウストの銅像を作るべきなんじゃないだろうか」
「や、やめてくださ~い!」
「みなさん、ヒフミさんが困ってるからそれくらいにしてください」
アヤネに止められて4人ははーいと返事をした。
そして、改めてヒフミが別れの挨拶をする。
「と、とにかく……これからも大変だとは思いますが、頑張ってくださいね。応援してます。
それでは……みなさん、またお会いしましょう」
対策委員会の面々は、元気でねと声をかけながら手を振ってヒフミを見送った。
そして、ヒフミの姿が見えなくなると、アヤネが今日の締めの挨拶を行うのだった。
「それでは、今日はこの辺で。また明日、集まりましょうか」
「それじゃ、解散-」
そうして、今日も大変だった一日が過ぎていくのだった。
次の日の便利屋68のオフィスで、ムツキとカヨコが銃のメンテナンスをしていると、ガチャとドアが開いてアルが入ってくる。
「おはよう……」
「あっ、アルちゃんおはよー……って、うわ!どうしたの!?」
カヨコは事務所に入ってきたアルの方に振り向くと驚愕した。
アルの姿は身だしなみは整えているものの、目の下にはひどいクマができており、顔に生気が感じ取れないくらいげっそりとしていたのだった。
「昨日は寝れなかった?」
「ううん、ちゃんと寝たわ……」
そう答えるアルの声はいつもよりか細い声だった。
そんなアルを見て、カヨコも心配そうに尋ねる。
「社長、大丈夫?」
「えぇ……大丈夫……」
机に突っ伏したまま動かないアルに、ムツキはいつものように気楽に話しかける。
「大丈夫だよ、アルちゃん。計画だってしっかりたてたじゃん」
「あらかじめ爆弾を設置した場所に、アビドスの連中を誘い出して一網打尽にする。
今、ハルカが爆弾の設置に朝一番に出かけたよ」
「……」
「ねえ、聞いてる?」
うつらうつらとしているアルにカヨコは少し言葉を強めにして問いかける。
それに気づいたアルは、ビックリして背筋を伸ばす。
「き、聞いてるわよ!爆弾よね!」
「そう、今私たちができる最大限なんだから、しっかりしてもらわないと困るよ」
カヨコの言う通り、前回の襲撃で資金を使い果たし、昨日では銀行の融資も受けられなかった彼女たちが、アビドス高校占拠の依頼を遂行するためには、もうこの手しかない。
本当なら傭兵を雇って、そこからさらに追い打ちをかければ良かったのだが、ないものねだりをしてもしょうがない。
これが、便利屋68の社運を賭けた一世一代の大勝負なのだから、こんなところで社長がグロッキーになってもらっては困るというものだ。
しかし、そのプレッシャーにアルは前日から押しつぶされそうになっていた。口から大きなため息がこぼれ落ちる。
そんなアルを見て、ムツキが口を開いた。
「そんなに死にそうな顔をするくらいなら、例のクライアントから手付金をもらっておけばいいじゃん」
そういうムツキにアルは首を強く横に降って否定する。
「……手付金はもらわない。それがうちの鉄則よ」
「手付金をもらうと、クライアントの命令に従わざるを得なくなるから……って理由だっけ?」
「その通り。華麗に仕事を終えてから依頼料を受け取る。
この順番が崩れたら、私たちの追求するビジョンは達成できないの」
そう強く言葉にするアルに、ムツキは首をかしげる。
「ビジョン?そんなのあったっけ?」
「あるわよ!!法律と規律に縛られない、ハードボイルドなアウトロー!
それが便利屋68のビジョンでしょう!!」
机を叩いて立ち上がるアルだったが、寝不足な体に急な動きが堪えたのか、糸が切れた人形のように力なく座り込んでしまう。
それを見たカヨコがアルへ声をかける。
「強がってないで、ゲヘナに帰るのも手だよ、社長」
「はあ!?つ、強がってないわよ!ただ……ちょっと……」
「でも、今更帰っても風紀委員会の連中が黙っちゃいないんじゃない?」
ムツキの言う通り、便利屋68はゲヘナでは指名手配となって、風紀委員会に追われている身である。だからこそ、ゲヘナ学区を抜け出して、アビドス自治区に事務所を構えているのだ。
もし、今更のこのことゲヘナに帰ったりしたらと想像したアルは身を震わす。
「風紀委員会……か。確かに、風紀委員会は私たちにとって目の上のたんこぶのような厄介な存在だね」
「厄介どころか、キヴォトス最強って言われてるんでしょう?」
「うん。でもそれは、風紀委員長ヒナの存在があるから、一騎当千を文字通り体現してる怪物。風紀委員会の戦力の大半は彼女一人で担ってるからね。
でも、言い換えれば、ヒナ以外の風紀委員は大したことないってこと」
そう言い切るカヨコの目は自信があると言わんばかりに、鋭く光っていた。
その目を見たムツキが「言うねー」と笑って感心する。
「計画さえきちんと練れば、十分に勝機はある。なんなら逆に言えば、今のアビドスはそれぐらい侮れない相手ってことだね」
「へー、そうなんだー」
そう話しているカヨコとムツキに、アルは社長として毅然とした態度で口を開く。
「今更ゲヘナに帰るという選択肢はないわ。
法律と規律に縛られないハードボイルドなアウトロー」
「それが便利屋68のビジョンでしょ」
「ええ、その通りよ」
「ただ今、戻りました」
その時、爆弾の設置を得たハルカがオフィスに帰ってきた。
カヨコは帰ってきたハルカにお疲れと言って、ペットボトルのお茶を手渡した。
受け取ったお茶を一口飲んだ後、ハルカはやる気に満ちた表情でアルに近づいて口を開く。
「アル様、いつでも言ってください。私がこの手で、全部吹っ飛ばしてやりますから……」
「え、ええ。期待してるわ」
それを見たムツキはソファから立ち上がって、背伸びをして入口の方へ向かいながら口を開く。
「アルちゃん、ハルカちゃんも帰ってきたし、ご飯食べに行こうよ。
柴関ラーメンでも行こっか」
「また?」
「気にしない気にしない」
「まあ……美味しかったしね」
「じゃあ、決まりー。行こ行こ♪」
こうして、便利屋68は柴関ラーメンへと向かうのであった。
五条が教室に入ると、ホシノがノノミの膝枕で横になっていた。
ホシノは横になったまま、手を振って挨拶をする。
「おはよー、先生」
「先生、おはようございます。今日は珍しく早いですね」
「えー、そんなことないでしょ」
「いや、先生いつも遅刻してるよね」
「そうですね、いつも5分くらいの遅刻ばっかしますよね」
「でしょー、つまりこれは時間にルーズじゃないってことだから」
五条がそう言うと、ホシノはやれやれとため息をついて、ノノミは苦笑で返した。
それを無視して、五条はあたりを見渡す。
「ところで、他の子たちは?」
そう聞くと、ノノミは口元に指を当てて考えるように答える。
「んー、シロコちゃんはトレーニングでしょうし、セリカちゃんはたぶん勉強しに図書館でしょうか……」
「アヤネちゃんは学校の掃除と教室の整頓をしてくれたかなー。うへ~、みんな真面目だなー」
「そういうホシノは?」
「ん?私?うへ~、私は当然ここでダラダラしてただけだよー」
いつものようにのんびりとした感じで話すホシノに、ノノミが母親のような口調で勧誘する。
「でしたら、ホシノ先輩も何か始めてみてはどうでしょう?セリカちゃんのようにアルバイトとか、シロコちゃんみたいに筋トレとかいかがです?」
「無理無理ー、おじさんは年齢的に無理がきかない体になっちゃったもんでねー」
「歳は私とほぼ変わらないですよね?」
ノノミの膝の上で笑って答えるホシノに、ノノミは困った顔してしまう。
そして、ホシノは起き上がって背伸びをする。
「うへ~。それじゃ先生も来たことだし、みんなもそろそろじゃない?そんじゃ、私はこの辺でドロン」
忍者のようなポーズをとって扉を開けるホシノに、ノノミは尋ねた。
「ホシノ先輩、どちらに?」
「今日おじさんはオフなんでね。適当にさぼってるから、何かあったら連絡ちょーだい」
とそう言って、ホシノは出ていった。
それを見た五条が、ピコーンとあることを閃いてそれに続こうとする。
「それじゃ、僕も今日はオフってことで……」
「先生はダメですよー☆」
さぼろうとしたが、それをノノミに阻止された。
えーと言いたげな顔をするが、アヤネちゃんに怒られますよとノノミに言われて渋々席に着いた。
すると、ノノミが口を開いた。
「それにしてもホシノ先輩も、以前に比べてだいぶ変わりました」
「え、そうなの?」
「はい。今はいつも寝ぼけているような感じですが……初めて会った頃のホシノ先輩は、常に何かに追われているようでした」
「追われていた……何に?」
「何に追われていたかというと……んと、ありとあらゆることに、と言いましょうか。
聞いた話ですが、以前このアビドスにとある先輩がいたそうで……。
アビドス最後の生徒会長だったらしいんですがとても頼りない人で、その人がここを去ってからはすべてをホシノ先輩が引き受けることにあった、と……。
ホシノ先輩は当時1年生だったとか……詳しくは、私も知らないのですが」
「ふーん、あのホシノがねー」
五条は窓から空の方へと向きながら呟いた。
「そうなんですよ。以前だったら、他の学園と関わること自体嫌がっていたはずが……かなり丸くなりましたね。
うん、きっと先生のおかげですね☆」
「ははは、そんなことあるけどね!」
キラーンとカッコつける五条にノノミはクスリと笑う。
この先生はいつもは遅刻するし、何かとふざけたことや天然の煽りを入れたりして、困ったことも多い大人だが、彼が来たことでアビドスのみんなが前向きに変わっていっていることをノノミは実感していた。
そんな朝の一幕を挟んで、今日もアビドスは動き出すのだった。
「へい、柴関ラーメン4人前お待ち!」
柴大将がテーブルに名物の柴関ラーメンを運ぶ。
ムツキは真っ先に食べ始めて美味しいと笑顔をこぼす。ハルカは何度も頭を下げて柴大将にお礼を言う。
「い、いつもありがとうございます」
「いいってことよ!お嬢ちゃんたちはいつも来てくれるし、アビドスのみんなのお友達なんだからよ!」
その時、アルの中で記憶がフラッシュバックした。
なぜ、アビドスの襲撃作戦にプレッシャーを感じていたのか、いつもの依頼なら作戦前に緊張は感じることはあっても、それを苦になることはなかった。むしろこの緊張感が仕事へのやる気となっていたはずだったのに、なぜ、アビドスにはそれがなかったのか、それを理解したのだった。
「……ない……」
「社長?」
カヨコが尋ねると、アルは机を叩きつけて大声を上げて叫んだ。
「友達なんかじゃないわよーっ!!」
「ちょっと、お店に迷惑……」
全員が突然の大声にびっくりする中、カヨコがアルに向かって注意をするが、それをアルは遮るかのように再び机を叩いて声を出し続ける。
「わかった!問題はこのお店……このお店よ!」
いきなりの言葉に3人は目が点になる。
「どゆこと?」
「ここのラーメン好きじゃなかったっけ?」
そう首をかしげて尋ねるムツキとカヨコに、アルは声を張って返す。
「好きに決まってるでしょ!美味しいし、安いし、お腹いっぱい食べられるし、暖かいし、親切!」
「それの何が問題なの?」
「問題だらけでしょ!私たちは仕事しに来てるの!私が望むアウトローは、こんなホッコリ感に浸ってちゃダメなの!!」
ゼーゼーと息を荒げるアルに、カヨコとムツキはついていけなかった。
呆れて声が出なくなるカヨコに、それを無視してラーメンを食べ続けるムツキ。そんな中、ハルカはアルの言葉に頷いた。
「わかりました」
「さすがハルカ!わかってくれたのね!」
「はい。つまり、こんなお店は壊しちゃった方が良いってことですね」
予想外の答えにアルが止まる。恐る恐るアルははるかに問いかける。
「は、ハルカ……壊すって、どういうこと?」
「文字通りの意味です」
すると、ハルカが懐から取り出したのは、朝に仕掛けた爆弾の起爆スイッチだった。
3人が仰天の顔でそれを凝視する。本来なら、アビドスの連中を倒すための爆弾。カヨコの計画には、ここは爆弾の設置ポイントではなかったはずだった。
一緒についていくべきだった、ハルカの暴走癖を計算に入れ忘れていたとカヨコは後悔していた。
そんな中、起爆スイッチを手にしているハルカは恍惚の笑みを浮かべる。
「行きます」
アルとカヨコがハルカの暴走を止めるため起爆スイッチへ手を伸ばそうとした瞬間、ハルカはスイッチを押したのだった。
アビドス高校の教室に警報が鳴り響く。アヤネがすぐに手元の端末で状況を確認した。
「前方で爆発です。場所は……柴関ラーメン……!?」
ざわっとみんなが反応する。その中でもセリカは素早く銃を肩にかけて真っ先に教室を飛び出していった。
「セリカちゃん!!」
「私たちも行く」
「アヤネちゃんはホシノ先輩に連絡を」
「わ、わかりました!」
出ていったセリカの後を追う形でノノミも出ていき、シロコも窓から飛び降りていった。
アヤネもすぐにホシノに電話するが、ホシノは電話に出なかった。
「ホシノ先輩、どうして出ないんですか?」
「アヤネ、今は現場に向かうのが先なんじゃない?」
「先生……そうですね。私たちも行きましょう」
アヤネたちも現場に向かう。一方、シロコとノノミはすぐにセリカに追いついた。シロコから見てもセリカの表情は焦燥でいっぱいなのが見て取れた。
シロコはそんなセリカを見て一呼吸をした後、セリカに向けて口を開いた。
「セリカ、落ち着いて」
「シロコ先輩……」
「大将なら大丈夫」
「そうよね」
「そうです。先生とアヤネちゃんが柴関の方へ向かってるそうなので、私たちは爆弾犯を追いましょう!」
ノノミの言葉にシロコとセリカは頷いて市街地へと駆け抜けるのであった。
辺り一面に鳴り響くサイレンの音でアルは目を覚ました。
周囲の砂埃を手で払いながらせき込んで起き上がる。
「ゴホ、ゴホッ……う、うああ……」
状況が分からない所に、ムツキとカヨコの声が聞こえてくる。
「アルちゃーん!」
「社長、大丈夫?」
駆け寄ってきた2人に心配されるが、大丈夫と答えてアルは周囲を見渡す。
鳴り響くサイレンの音に群がる観衆、そして、木っ端みじんになった柴関ラーメンの店。
(な、何これ!?何が起きたの!?)
「アル様!」
突然の情報量に混乱するアルに、ハルカが遅れてやってきた。
「ハルカ、これって……」
「はい!アル様の言う通り、邪魔な店は壊しました!」
キラキラと輝く瞳で見つめるハルカに、アルは言葉が出せなかった。
こんなにも嬉しそうなハルカを怒って、彼女の気持ちを踏みにじることをアルにはできなかった。
どうしようと困惑しているアルに、ムツキは楽しそうな笑みで話しかける。
「それにしても、情にほだされるからって、あんなに優しくしてくれたラーメン屋を吹っ飛ばすなんて……やるじゃーん!?」
「え……え?」
「これぞまさしく、血も涙もない大悪党!
そんじょそこらのザコには到底できない鬼畜の所業!まさに、法律と規律に縛られないハードボイルドなアウトローってやつだね!!すごいよ、アルちゃん!見直したよ!」
「へ……あ……?」
ポカンとしていたアルだったが、ニシシと笑うムツキに体裁を保つため、あはは!と笑って答えた。
「とっ、当然でしょう!
冷酷無比!情け無用!金さえもらえれば何でもオッケー!それがうちのモットーよ!!」
「便利屋68!」
「っ!?」
自分たちを呼ぶ声の方へ振り向けば、アビドス高校のシロコ、ノノミ、セリカが怒りの顔で立っていた。
「あんたたち……!!よくも……!!」
「……」
「今回ばかりは、私も怒りました」
臨戦態勢の3人にムツキはいつものからかうかのような口調で反論する。
「怒る?だとしたら、どうするの?」
「はあ……どうせいつかは白黒つけないと相手だし。ここでケリをつけようか」
「アル様の邪魔をするものは容赦なく排除します!」
便利屋側も臨戦態勢に入る中でアルは考えていた。
事情を説明して誠心誠意に謝って許してもらうかと、しかし、ムツキたちに虚勢を張った手前、情けなく謝ることは便利屋68としての彼女のアウトローしてのプライドが許さない。
どうしようか考えている中でセリカの怒声が聞こえる。
「ちょっと、何とか言いなさいよ!」
「う、うるさいわね!!ええ、そうよ。柴関ラーメンを爆破したのは、私たち便利屋68よ!!」
「「「……!?」」」
「これでわかったでしょう、私たちがどんなに悪党かをね!!」
アルの言葉を聞いて、セリカは怒りで震える。
そんな中、通信機からアヤネの連絡が入る。
『大将の無事を確認、軽症です。近くのシェルターに案内したら、私たちもそちらに向かいます』
「セリカちゃん、よかったで――」
「許さない……!シロコ先輩……悪いけど、冷静になれない!」
セリカは先ほどのシロコとの会話を思い出すが、今の彼女には落ち着くことなんてできやしない。
柴大将はお金のない便利屋68たちに、ただ、美味しいラーメンを食べてもらいたかっただけなのに、彼女たちはその大将の心を踏みにじって大将の店を壊して、ケガまでさせた。
これを冷静にしろというのはできない相談だった。そして、その気持ちはシロコとノノミも同じであった。
全員が武器を構え始める。
「行くわよ!!」
そして、セリカの声と共に一歩踏み出して決戦が始まろうとしたその瞬間、突如空から降ってきた絨毯爆撃のような大量の砲撃が彼女たちを包んだ。
「ケホケホッ……今度はなんなのさー?」
黒煙から出てきたムツキにカヨコが静かに答える。
「奴らだ」
「奴ら?」
「でも、どうしてこのタイミングで……?」
「アル様!?しっかりしてください!?アル様!?」
考えるカヨコの後ろからハルカの泣き叫ぶ声が聞こえた。
今の爆発に巻き込まれたアルは打ちどころが悪かったのか、意識を失って倒れていた。
そして、アビドスも何が起きたのか分からなかった。
起き上がるシロコたちの元へ五条とアヤネが駆け寄って来る。
「みなさん、無事ですか!?」
「私たちは大丈夫です」
「突然、なんなのよ!?」
混乱するセリカたちを余所に、五条は遠くを見つめて静かに答える。
「遠方からの砲撃か。あれは――」
対策委員会と便利屋68たちがいるところから離れた遠方で多数の擲弾兵たちが砲撃を終えて、次弾の装填に移っていた。
「ターゲット着弾!突然の砲撃に混乱している模様!」
双眼鏡から現場を観測する生徒の伝令を聞いた2人の生徒が話していた。
「さて、どうしますか?イオリ。
どうやら予定外の方たちも混じっているようですが……」
「ああ、なんて言ったっけ……えっと……アビドス?」
「はい、アビドス高等学校対策委員会」
「どうするも何も、そんなの決まってるだろ、チナツ。
公務の執行を妨害する輩は……全員、敵だ」
彼女は自分の尻尾を鞭のように振るって激しい音を立てると、獲物を狙う獅子のような捕食者の瞳を輝かせて不敵に笑うのだった。
「――ゲヘナの風紀委員会だね」
「「「「――っ!?」」」」
五条がそう答えると、対策委員会の全員に緊張が走ったのだった。
次回はじゅじゅさんぽの予定です。
よろしくお願いします。