シャーレの五条先生   作:未来跳躍

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今回はいろんな人たちの心情や状況の変化を書けて楽しかったです。
最近、そろそろ対策委員会編のクライマックスも近づいてきました。
それでは、どうぞ。


唯一意味のある場所

『アビドス対策委員会のみんなへ

 

まずは、こうやって手紙でお別れの挨拶をすることになったこと、許してほしい。おじさんにはこういう、古いやり方が性に合っててさ。

みんなには、ずっと話してなかったことがあって。実は私、ずっと昔からスカウトを受けてたんだ。カイザーPMCの傭兵として働く、その代わりにアビドスが背負っている借金の大半を肩代わりする……そういう話でね。

……うへ、中々良い条件だと思わない?おじさんこう見えて、結構能力を買われててさ~。

借金のことは、私がどうにかする。すぐに全部を解決はできないけど、まずはこれでそれなりに負担は減ると思う。ブラックマーケットでは急に生意気なことを言っちゃったけど、あの言葉を私が守れなくてごめんね。

これで対策委員会も、少しは楽になるはず。アビドス高校からも、キヴォトスからも離れることになったけど、私のことは気にしないで。勝手なことをしてごめんね。

でもこれは全部、私が責任を取るべきこと。私は、アビドスの最後の生徒会メンバーだから。

だから、ここでお別れ。じゃあね』

 

『先生へ

 

先生は気づいていたかもしれないけど、実は私、大人が嫌いだった。あんまり信じていなかった。シロコちゃんが先生を連れてきたあの時だって、「なんかダメな大人が来たな」って思ったくらいだし?

でも先生は、どんどんみんなと打ち解けていって、信頼しあえる中になっていた。だから、後は先生に任せるね。みんなが信じられる先生なら、きっと大丈夫だと思うから。

先生みたいな大人に出会えて、私は……いや、そういう照れ臭い言葉はいいよね。

シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん

お願い、私たちの学校を守ってほしい。砂だらけのこんな場所だけど……私に残された、唯一意味のある場所だから。

それから、私がもしこの先どこかで万が一、敵として相対することになったら……その時は、私のヘイローを「壊して」。

よろしくね』

 

みんなへの手紙を書き残したホシノは、PMC兵に車に乗せられて、アビドス砂漠の研究施設へと連れて行かれた。

そこで、黒服から差し出された契約書にサインを要求される。

これにサインをすれば、ホシノは一生鎖に繋がれた家畜同然の存在となるだろう。しかし、アビドス高校を守るために自分で決めたことだ。悔いはない。

これで、あの人も笑ってくれるはず、そう信じてホシノは。契約書にサインをするのだった。

 

 

 

ホシノの手紙を読み終えたアヤネの顔は涙と鼻水でくしゃくしゃになっていた。ノノミも手で顔を覆って泣き崩れていた。シロコは何も言わないが、悲しみで唇を噛み締めていた。そして、セリカが机を叩いて声を荒げる。

 

「何なの!?あれだけ偉そうに話しておきながら!!切羽詰まったら何でもしちゃうって、自分で分かってたくせにっ!!こんなの、受け入れられるわけないじゃない!!」

 

そう叫ぶセリカの机に、滴り落ちる涙で濡れていった。

 

「……」

 

五条は何も言わず、ただ黙っていた。しかし、今の彼の心中は、決して穏やかなものではない。

そんな中、シロコはすぐに身を翻し、扉を開いて外に出ようとする。

それを五条が呼び止めた。

 

「シロコ、どこに行くつもり?」

 

「助けに行く。対策委員会に迷惑がかかるし、私一人で……」

 

そう言って教室を飛び出そうとするシロコの腕を、ノノミが掴んで止める。

 

「落ち着いてください、シロコちゃん!」

 

「でも、ホシノ先輩が――!」

 

止めようとするノノミを振り払おうと、シロコが叫んだその時、対策委員会の警報が鳴り響いた。

 

「何なの!?」

 

警報が鳴るということは、アビドスで事件が起きたということ。アヤネが急いで端末のカメラを操作し、現場を調べる。

 

「……そ、そんな!?」

 

アヤネの目に映ったのは、信じられない光景だった。

映し出された市街地は、一方的に蹂躙されていた。市民たちは突然の襲撃に成す術もなく、逃げ惑うことしかできなかった。

街を襲撃していたのは、カイザーPMCの兵士たちだった。

 

「……この自治区には、もう退去命令が下った」

 

「この地区を制圧するまで、撃ち続けろ!」

 

一方的な蹂躙を見て、兵士たちに囲まれた理事は、鼻歌交じりでご機嫌に笑う。

 

「ふふふっ。ふふふふふふふふ……。ついに条件はクリアした。

 最後の生徒会メンバーがアビドスを退学……これで実質的に、アビドス高等学校は消えた!」

 

この日をどれほど待ち焦がれただろうか、長かった……本当に長い時間がかかった。しかし、もう何も憂うことはない。これで、彼の歩む道に邪魔者はいなくなった。

 

「さあ、我らカイザーコーポレーションが、アビドス高校を占拠するのだ!!」

 

すでに勝利に酔いしえる理事は、まるで勝利の凱歌を歌うかのように、アビドスの街を破壊しつくすのだった。

 

「数百近い、カイザーPMC兵たちが進行中。市街地に無差別攻撃をかけています!」

 

「よりによって、何でこのタイミングで……」

 

ホシノがいなくなったことにまだ、落ち着きを取り戻していない矢先に、カイザーPMCからの侵攻で対策委員会は混乱していた。

 

「とにかく、応戦しないと……」

 

「でも、ホシノ先輩が!」

 

ホシノを助けなければならないのに、カイザーPMCの攻撃にシロコたちはどうすればいいか分からなくなって、チームとしての統制が失われていた。

そんな彼女たちに、五条が口を開いた。

 

「みんな、落ち着きなよ。今は市民の安全が最優先なんじゃない。少なくとも、ホシノならそう言うよ」

 

「「「「っ!!」」」」

 

その言葉に、シロコたちは冷静さを取り戻すのだった。そして、互いの顔を見合って、頷いて侵攻を止めるために、市街地に向かうのだった。

 

「さてと……」

 

みんなが部屋を飛び出した後、一人部屋に残った五条は携帯を取り出した。

 

「……酷い」

 

街に到着したセリカが、無残にも破壊された街を見て呟いた。

すぐに倒れている市民たちの救助を開始する。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ああ、どうにか……」

 

「いきなり襲ってきたんだ……何なんだよいったい!?」

 

「私たちにもまだ状況が……」

 

 

困惑する市民たちが対策委員会に尋ねるが、何もわからないことを伝えるしかなかった。とりあえず、市民たちを安全な場所への避難を進めていたが、PMC兵が対策委員会を発見する。

 

「アビドス対策委員会を発見!こっちだ!」

 

通信機で応援を呼ばれたことで、増援が来てしまうと市民たちを危険にさらしてしまう。それを防ぐために、シロコとセリカが真っ先に飛び出して、応戦する。

 

「ここは危ないので、急いで避難してください!」

 

ノノミの声に、市民たちは急いで避難所へ逃げるのだった。

シロコが先陣を切って、PMC兵たちに攻撃を仕掛ける。まずは、先制で一人を打倒し、その勢いのまま、得意の足技で二人目の側頭部に回し蹴りを極める。しかし、蹴りの後隙を狙って、背後にいたPMC兵がシロコ目掛けて銃を振り下ろす。何とか反応し、とっさに自分の銃で受け止めるが、力の差に徐々に押し込まれていく。

 

「シロコ先輩、後ろ!」

 

アヤネの声に、シロコが振り向くと、もう一人の兵ががら空きになったシロコの背後から攻撃を仕掛けようと振りかかった。しかし、その塀の頭部を横からセリカが狙撃する。

 

「何やってんの、シロコ先輩!」

 

敵の力が緩んだ一瞬に、シロコは抜け出して敵の眼前に銃を向けて発砲する。

 

「私が右をやるから、そっちはお願い!」

 

「わかった」

 

シロコとセリカは二手に分かれて、次々とやってくるPMC兵を相手にしていく。

シロコとセリカの動きについていけないPMC兵は数で押し切ろうと、瓦礫に隠れて応戦する。その中の奥で隠れていた一人の兵士が、シロコたちに見えないようにこっそりと手榴弾のピンを抜いた。それを五条の目は見逃さない。

 

「ノノミ!」

 

「はい!」

 

五条が隠れた兵士の場所を指さすと、ノノミのガトリングが火を噴いた。バレないと思っていた兵士はガトリングの攻撃で、持っていた手榴弾を手からこぼす。そのまま、敵陣で爆発したことで兵士たちは倒れていった。

敵の攻撃の波が引いたところで、シロコは荒くなった息を整える。

 

「大丈夫ですか!?」

 

駆けつけるノノミとアヤネに、シロコは頷いて答える。

 

「うん、何とか大丈夫。でも……」

 

前の方に目を遣ると、再びPMC兵たちの大群がまっすぐ向かってくるのが見えた。

 

「切がありませんね」

 

「それでも……私たちが守らないと!」

 

シロコたちは今のうちにマガジンを交換し、再装填する。

すると、目の前のPMC兵たちの中から理事が、シロコたちの前に現れた。

 

「ふむ。学校まで出向こうかと思っていたのだが、お出迎えとは感心だな、アビドス高校の諸君」

 

まるで王様にでもなったかのような理事の傲慢さに、対策委員会が理事に食って掛かる。

 

「これは何の真似ですか?企業が町を攻撃するなんて……いくらあなたたちが土地の所有者だとしても、そんな権利は無いはずです!」

 

「それに、学校はまだ私たちアビドスのものです!このような侵攻は明確な不法行為!連邦生徒会に通報しますよ!」

 

「スカウトなんて、最初から嘘だったってこと!?」

 

「この悪党め……ホシノ先輩を返して!」

 

それに対して、理事は肩で笑って吐き捨てる。

 

「……くくく。揃いも揃って何を言ってるのやら。

 連邦生徒会に通報だと?面白いことを言うじゃないか。今すぐにでもやってみたらどうだ?

 君たちはこの状況について、今まで何度も連邦生徒会に伝えてきただろう。その結果、借金の問題が解決したのか?」

 

その言葉に、対策委員会のみんなは反論の言葉が出なかった。事実、連邦捜査部「シャーレ」が出来て五条が来るまで、アビドスの言葉は連邦生徒会には届かなかった。

そのことは、カイザーPMCもとっくに知っていた。

 

「そろそろ分かっただろう?お前たちがどう足掻いたところで、何一つ変わりはしない。

 そして、アビドス生徒会の最後のメンバー、小鳥遊ホシノは退学した。今やアビドスの生徒会は存在しないも同然。君たちはもう、何者でもない」

 

「……!!」

 

理事の言葉に、アヤネがその意味を理解してしまう。

一方で、セリカはまだ理事に喰らいつこうと反論する。

 

「な、何を言ってるの!?

 生徒会が無くても、アビドスには対策委員会がある!!私たちがまだいるのに、そんな言い分が通用するはずないでしょ!!」

 

「対策委員会は……」

 

「アヤネちゃん……?」

 

アヤネの様子がおかしいことに気づいたセリカは、振り返ってアヤネに伺う。

アヤネは弱々しく理事の言葉の意味を語る。

 

「対策委員会は、公式に許可を受けている委員会じゃない……」

 

「えっ……?」

 

アヤネの言葉にセリカは言葉を失う。

 

「対策委員会が出来た時には、もうアビドスには生徒会が無かったから……」

 

「そうだ。所詮非公認の委員会、正式な書類の承認も下りていない。つまり、君たちの存在を示すものは何も無い。

 だが喜べ。アビドス高等学校が無くなれば、君たちはもうあの借金地獄からは解放さるのだからな」

 

高らかに笑う理事の言葉に何も言い返せず、怒りで拳を握りしめる対策委員会の様子を、ホシノは砂漠の研究施設のモニターから見ていた。

 

「な、なんで……なにをしてる!?

 どうして、どうしてアビドスを、街を攻撃するんだ!!」

 

すぐ隣に立つ黒服に噛みつくように声を上げる。自分がカイザーPMCの傭兵になることで、借金の大半は肩代わりして、アビドスには手を出さない約束だったはず。それなのに、カイザーPMCが町を攻撃するのは、約束と違う。そう考えて、黒服を問い詰めるが、それに対して黒服は、淡々とした様子で何事もないかのように答えた。

 

「どうしてと言われましても……。何もおかしいことなどありませんよ、ホシノさん。

 あの借金の大半はきちんと返済させていただきますとも。」それが、私たちの間に交わされた約束ですから。

 それはそうとして……あなたが退学してしまい、残念ながらアビドス高等学校にはこれ以上、公的な生徒会メンバーが残っていないようですね。それでは学校は成り立たないでしょう」

 

「……!!」

 

黒服の言葉の意味を、ホシノは理解する。約束では「アビドス高等学校」には手を出さないというものだが、ホシノがいなくなったことで、今のアビドス高等学校はただの名のない学校と同じ。つまり、PMCが攻撃しても、何の問題もないということになる。それを理解したホシノに、黒服は嗤いながら真意を語る。

 

「私たちが何故、あんなくだらない企業の、詐欺紛いの行為を支援していたのだと思いますか?

 自治区の土地を奪ったところで、ブラックマーケットのような無法地帯が一つ増えるだけです。そんな場所は、このキヴォトスにいくらでもあります。

 しかし……もし、企業を主体とした新たな学園が誕生したら……?

 アビドスに現れるその新しい存在は、果たしてこのキヴォトスにどんな影響をもたらすのでしょうか?

 ……しかし、これは余興に過ぎません。

 ホシノさん、私たちの目的は最初からあなたでした」

 

「……っ!?」

 

言葉が出ない、何を言ってるのか理解できない。カイザーコーポレーションと黒服は、ホシノの戦力を見込んでスカウトしたのだと思っていた。なら、なぜ目の前のこの男はカイザーコーポレーションとは無関係のように話しているんだ。この男もカイザーコーポレーションの者だと思っていたその考え自体が、間違っているということにようやく気が付いた。

黒服はホシノの考えを見透かしたかのように、彼の計画の全容を話すのだった。

 

「あなたに契約書にサインをしてもらうこと、あなたに関する全ての権利を頂くこと。

 その目的のために利害関係が一致したので、カイザーコーポレーションに協力していた。ただそれだけのことです。

 何か勘違いされていたようですね……誤解を招いたのなら謝罪しましょう。しかし私は最初から、カイザーの所属ではありません。『私共の企業』がカイザーコーポレーションだとは、一度も言っていないはずです。

 あなたのようなキヴォトス最高の神秘を、傭兵などという勿体ない形で消耗させるなんてことは致しません。

 あなたを実験体として研究し、分析し、理解する。この興味深い実験こそが、私たちが観測を渇望していたもの。つまりは、そういうことです」

 

ホシノの体から力が抜けていく。あの書類にサインした時点で、アビドスそのものを殺すのも同義であることを理解した。

黒服に連れられて、地下深くの収容部屋に入れられたホシノは、自分の愚かさに小さな声で吐き捨てた。

 

「……そっか。

 私は……また、大人に騙されたんだ」

 

部屋の中心部に進み、両腕を後ろに拘束される。

 

「……。

 ……ごめん、みんな。私のせいで、全部……。

 シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん……。

 ……ユメ先輩。

 ごめん……。

 ……先生」

 

誰にも届かない懺悔が、ただ虚しく消えていった。ホシノの頬を伝う涙と共に。

 

 

 

「そんな、そんなことになったら、今までの私たちの努力はどうなるんですか……!?」

 

理事に訴えるかのように声を上げるノノミに、理事は鼻で笑う。

 

「ほう、まさか本気だったのか?本気で何百年もかけて、借金を返済するつもりだったと?

 これは驚きだ。てっきり、最後に諦めるとき『でも頑張ったから』と自分を慰める言い訳にするために、ほどほどに頑張っているのだと思っていたのだが……」

 

「……っ!?」

 

嘲笑する理事を、セリカが射殺すかのような眼で睨みつける。

 

「いったい君たちは、どうしてあんなに努力していたんだ?何のために?」

 

「あんた、それ以上言ったら……」

 

「撃つ」

 

シロコとセリカが銃を構え、引き金に指をかける。

しかし、後ろでノノミがか細い声で口を開く。

 

「で、ですが……」

 

「……今ここで戦って、何かが変わるんでしょうか?」

 

ノノミに続いてアヤネもその場で座り込んで、小さな声で呟いた。

 

「アヤネちゃん!?」

 

セリカが何を言ってるのという前に、アヤネがそのまま続ける。

 

「今も、すごい数の兵力がこちらに向かって来ています……。

 たとえ、戦って勝てたとしても……その後はどうすれば……。

 学校が無くなったら、もう戦う意味がありません。学校をどうにか取り戻せたとしても、私たちにはまだ、大きな借金が残ったまま……」

 

目の前の辛く大きな現実という重圧が、彼女たちの心を少しずつ折っていく。

アヤネの言葉に、ノノミやシロコ、セリカも何も言えなくなってしまう。

 

「取引された土地だって戻ってきません。何より、ホシノ先輩もいない。生徒会もない、こんな状態で……私たちみたいな非公認の委員会なんかに、これ以上、いったい何が……。

 どうして、どうして私たちだけ、こんな……ホシノ先輩……私たち、どうすれば……」

 

アヤネの言うことに、みんなの心が挫けて構えた銃を下ろそうとしたその瞬間、大きな爆発音が聞こえてきたのだった。

そして、それと聞いた五条はニッと不敵に笑う。

 

「なんだ!?」

 

理事が後ろにいる兵士に怒鳴るように尋ねた。

 

「き、北の方で大きな爆発を確認!」

 

「合流予定のブラボー小隊が巻き込まれて――!!」

 

「何!?」

 

突然の事態に混乱する間もなく、また別の方向から大きな爆発音が響く。

兵士が急いで理事に報告する。

 

「東の方でも確認!合流予定だったマイク小隊も、大量のC4の爆発で……!!」

 

「何が起きている!?アビドスの連中は、ここにいるので全員のはず……!!」

 

突然の爆発がなぜ起きているのかわからず、混乱するPMCたち。それはもちろん、対策委員会も同じだった。

 

「全く……大人しく聞いていれば、何を泣き言ばかり言ってるのかしら……」

 

「……え!?」

 

「この声……!」

 

対策委員会のみんなの耳に聞こえてくる、聞き覚えのある声に全員が反応する。

 

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く……それが、あなたたち覆面水着団のモットーじゃなかったの?」

 

赤いコートを靡かせて陸八魔アルを筆頭に、便利屋68が対策委員会の前に現れた。

 

「……あ、あなたは!?」

 

なぜ便利屋68が現れたことに戸惑うアヤネに、アルは前に出て語る。

 

「何をすればいいのか分からない、どうすればいいのかも分からない。やる事なす事、全部失敗に終わる……。

 ここを潜り抜けたところで、この先にも逆境と苦難しかない……」

 

アルが語っているところへ、上空からヘリの音が聞こえてくる。それはPMCの増援のヘリであった。小隊が2つやられたのは想定外だったが、このヘリの増援があれば問題ない。勝利の女神は自分に微笑んでいる、まだ終わりではないと理事が思っていた。その時――。

 

「だからなんなのよっっっ!!!!」

 

叫びとともに、放たれたアルの弾丸はヘリの尾翼部分を正確に撃ち抜く。尾翼が壊れて空中での制御を失ったヘリは、そのままPMCのど真ん中に墜落した。墜落したヘリが爆音とともに大爆発を起こす。理事や多くのPMC兵たちは爆発に吹き飛ばされるのだった。

 

「仲間が危機に瀕しているんでしょう!?それなのに、くだらないことばかり考えて、このまま全部奪われて、それで納得できるわけ!?

 あなたたちは、そんな情けない集団だったの!?」

 

「……っ!!」

 

アルの言葉に、シロコは衝撃を受ける。俯いてた顔を上げて、下ろそうとした銃を握る力を入れ直す。

 

「まあまあ、アルちゃんその辺で勘弁してあげなよ。メガネっ娘ちゃん繊細なんだから、こういう時もあるって」

 

ムツキはアヤネの前でしゃがんで、アヤネの眼鏡を取って自分に掛けると、ハンカチでアヤネの目元の涙を拭う。

 

「ど、どうしてあなたたちが……!?」

 

混乱するアヤネに眼鏡を戻して、ムツキは立ち上がる。そして、PMC兵たちの方へと振り返る。

 

「あはっ。それにしても、私の可愛いメガネっ娘ちゃんを泣かした罪は重いよ?

 だからもうこれは……ぶっ殺すしかないよねっ!!!」

 

狂気的な笑みで銃を構えるムツキに、ハルカも同じく銃を構える。

 

「ふふっ、ふふふふふ……準備はできています、アル様。仕込んだ爆弾もまだまだたくさんあります……」

 

「はあ。何でこんなことになったんだろう……」

 

「あの……どうしてあなたたちが、ここに?」

 

ため息をつくカヨコに、ノノミが何故ここに来たのか尋ねる。

 

「もちろん依頼だよ。そこの先生に急遽頼まれたから、ね」

 

そう答えるカヨコは親指で五条を指す。その答えに対策委員会のみんなが五条へと視線を向ける。

 

「ありゃ、バレちゃった♡」

 

五条は可愛らしく舌を出してブリっこポーズをする。

話はシロコたちが出て行った後まで遡る。

 

『さてと……あ、もしもし?アル、今暇ー?』

 

『せ、先生!?暇かと言われれば、暇……じゃないわ!もう依頼で忙しい毎日よ!』

 

『そっかー、せっかくアルたちに依頼を持ってきたのになー。報酬に、柴関ラーメンの超豪華トッピング特盛も付けれたのに、忙しいなら……』

 

『その依頼、受けるわ!!』

 

「……ということがあってね。

 社長が先生の依頼を受けて、急いでここに来たってわけ……」

 

そう説明するカヨコは頭を抱える。それに、アヤネは「あはは……」と苦笑で返すのだった。

 

「まあでも、先生が依頼してくれて助かったよー。お金無くて、本当にヤバかったからねー、アルちゃん」

 

「う、うるさいわね!それよりも先生、報酬は分かってるわね?」

 

アルが五条に大人っぽく問いかける。それに五条は笑って親指を立てて返す。

 

「もちろん!成功報酬とは別に、柴関ラーメンの超豪華トッピング特盛奢っちゃおうじゃないか!

 いいよね、セリカ?」

 

そのまま五条はセリカの方に顔を向けて尋ねる。それに、セリカも笑って親指を立てる。

 

「ええ、そうね!任せてちょうだい!」

 

和気藹々と対策委員会と便利屋68たちが五条と談笑していると、瓦礫の中から理事が起き上がる。

 

「便利屋ぁっ!!貴様ら、飼い犬の分際でよくも……っ!」

 

理事が声を荒げるのを一瞥して、アルは啖呵を切って吐き捨てた。

 

「うるさいわね、そんなの知ったこっちゃないわよ!あなたなんかより先生の方が、一緒に仕事がしやすかった!それだけの話!」

 

「あはっ。雇い主を裏切ることくらい、悪党としては当然でしょ!そんなことも予想できなかったの?」

 

ムツキに小悪魔的な笑みで煽られた理事は、歯を食いしばり悔しそうに唸る。

それを見て、ホシノは少し微笑む。

 

「そうだね、確かに悪党としては正解」

 

「お陰様で目が覚めました。私たちに迷ってる時間はありません」

 

「そうよ!非公認だか何だか知らないけど、そんなことは今、なんの関係もない」

 

再び立ち上がる対策委員会のみんなは、目の前の敵に向き直る。

 

「ホシノ先輩を助ける。今大事なのはそれだけ」

 

首に巻いたマフラーに触れて、シロコは強い覚悟の炎を宿した瞳で、真っ直ぐ前を見据える。

そのために立ちはだかる障害は、全て乗り越える。

無論、シロコだけではない。ノノミも、セリカも、アヤネも同じ眼をしていた。

そんな彼女たちを、理事は忌々しそうな目で睨みつける。

 

「くっ、この期に及んで無意味な抵抗を……!」

 

すると、五条がシロコたちの前に歩き出て、豪快に笑って指さすのだった。

 

「は~い、みんな~!これが余裕の無くなった大人の無様な姿ですよ~!みんなは、あんなダッサい大人にはならないようにね~!」

 

指をさしてゲラゲラと笑って煽る五条に、理事の怒りのボルテージは頂点に達した。

 

「貴様ぁっっっ!!!!一端の若造が調子に乗りおって!!よくも……!!」

 

「よくも?それはこっちのセリフだ、間抜け。

 僕の大事な生徒に手を出したんだ……お前、『覚悟』出来てるよな?」

 

先ほどまでの笑いは消え、静かに冷たく言い放つ五条に、理事は無意識に一歩後ろへと下がっていた。

 

「くっ、貴様如きが抜かすな!一体誰の――!?」

 

五条の圧に一瞬尻込む理事が、激しい怒りを口にしていようとした時、五条の横から対策委員会と便利屋68の面々が前に歩き出た。

シロコたちが五条の前に立ち、理事を拒むかのように立ちはだかる彼女たちを見て、理事は突然、不敵に笑い始めた。

 

「ふはははは!!いいだろう……こうなったら、こちらも最大戦力を用意させてもらおう!

 来いっ!!」

 

そう叫ぶと、上空から巨大なシルエットが理事の背後に落下してきた。落下の衝撃による風と砂埃に、シロコたちが動けない間に、理事はそれに乗り込む。

 

「見るがいい!我々の技術の粋を集めた超強化外骨格!最高純度の素材で組成したアクチュエーターを搭載した最新兵器『ゴリアテ』だ!!」

 

「わおっ、おっきい!」

 

「あんな大きいの……どどど、どうしましょう……」

 

「これは流石にちょっとキツイんじゃない?」

 

新兵器を見たムツキは楽しそうに笑って、ハルカとカヨコは少し怖気づいてしまう。しかし、アルは静かに答える。

 

「確かに厳しいわね。ただし、私たち四人だけだったら……の話だけど」

 

ゴリアテが真っ直ぐシロコたち目掛けて突撃してくる。

アルが横にいるシロコに向かって、目を合わせて話しかける。

 

「合わせなさい。できるでしょう」

 

「……うん」

 

アルの目を見て、シロコも頷く。ゴリアテを退治するミラクルチームの反撃が始まる。

最初に動いたのは、ムツキだった。

 

「それじゃあ、よいっしょっと!」

 

ムツキがゴリアテの前に放り投げたカバンをシロコが撃ち抜く。鞄は爆発してゴリアテを包むが、それに気にも留めず突き進んでくる。

 

「硬い!?」

 

「そんな攻撃など、効かんわぁ!!」

 

ゴリアテの振り上げた右腕が、シロコたち目掛けて振り下ろされる。地面を砕く一撃を全員が後ろに飛び退いて躱す。

 

「なんて、出鱈目なパワー……」

 

ゴリアテの両腕の巨大機関銃を辺り一面に撃ち続ける理事に、全員が瓦礫などの影に隠れる。一撃でも当たれば、戦闘不能になってしまう火力を容赦なく撃ちまくる巨大兵器に、全員がどう動こうか考えていた。

すると、何かを思いついたシロコは、アルに問いかける。

 

「爆弾、後どれくらい残ってる?」

 

そう聞きだすシロコの目を見て、アルは笑って返す。

 

「その顔は、何か勝算でもあるみたいね」

 

「大丈夫、任せて」

 

そして、シロコから告げられた作戦に、その場にいた全員が黙って頷いた。

正直、賭けに近い物ではあるが、そんなことは関係ない。背中を預けた友が、閃いた僅かな可能性でも、それを全力で信じる。それがアルの信じるアウトローなのだから。

アルが、ゴリアテ目掛けて一撃を入れる。無論、アルの銃では、ゴリアテにダメージを与えられない。それを見て、理事は大きく笑う。

 

「ぶはははは!無駄な足掻きだ!」

 

機関銃がアル目掛けて撃ち出される。アルはそれを躱していき、それを合図にセリカとハルカ、ノノミとムツキのチームが左右に別れて行動する。

セリカとハルカの前をPMC兵が止めるために現れた。

 

「回り込むつもりだろうが、そうはさせるか!」

 

そう言い放ち、攻撃を始めるPMC兵たち。セリカは反撃のために止まるかどうか一種の迷いがでたが、そんなセリカの横をハルカは足を止めず、前に走り続けた。

 

「アル様の邪魔をするなんて、許さない許さない許さない許さない」

 

敵の攻撃を紙一重で躱して、容赦なく相手の顔目掛けて撃ち放つハルカの横から隠れていた兵士が飛び出す。

遣られると思ってしまったその瞬間、後ろからセリカの弾丸が飛び出した兵士のこめかみに命中し倒れる。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「いいから前見て、前!」

 

「は、はい!」

 

セリカとハルカはこのまま真っ直ぐに目的の場所まで突っ走っていく。

一方で、お店に入って回り込む予定のノノミとムツキは建物内で足止めを貰っていた。

向かう出口付近を兵士たちが、囲んでいるために動けなくなっていた。

 

「どうしましょう、お店を壊してしまうわけには……」

 

下手に出て銃撃戦になれば、お店は滅茶苦茶になってしまう。しかし、だからといって、ここで足を止めるわけにもいかない。ノノミが考えていると、横でムツキが「くふふ」と笑う。

 

「じゃーん!」

 

そう言って、ムツキが取り出したのは手のひらサイズの爆弾だった。

 

「爆弾、ですか?」

 

「うん!でも、大丈夫っ!」

 

ムツキが投げた爆弾は兵士たちのど真ん中で爆発した。しかし、この爆弾は爆炎を起こす爆弾ではない。爆発すると、中から強力なとりもちが飛び出し、近くにいた兵士たちを捕まえたのだった。とりもちに身動きを取れなくなった兵士たちを見て、ノノミは素直に感心するのだった。

 

「すごーい!面白いですね☆」

 

「でしょー、後は任せて」

 

「ありがとうございます!」

 

「頑張ってねー!」

 

目的地まで走るノノミを、ムツキは笑顔で送る。

一方で、アルとカヨコの攪乱に、理事は苛ついていた。

 

「ええい、ちょこまかと鬱陶しい!

 これで、終わりにしてや――!!」

 

そろそろ地面をはい回るネズミを追い回すのも飽きてきたので、終わらせるために全火力を向けた瞬間、背後からの攻撃を受けて足が止まる。振り向くと、ノノミとセリカが立っていた。

 

「そこにいたかぁ!」

 

そのまま二人に向かって走り出すゴリアテを見て、ノノミとセリカは互いに見合って頷きあう。

 

「セリカちゃん!」

 

「うん!」

 

ゴリアテが二人に向かったのを見て、シロコが動き出そうと立ち上がる。チャンスは一度、ここで失敗すれば、みんなの頑張りが無駄になる。不安と緊張で息が乱れる。息を整えようと深呼吸をするシロコの肩に、五条が手を乗せて優しく語り掛ける。

 

「大丈夫さ、シロコは僕の自慢の教え子だからね。

 さ、行ってきな」

 

「先生……うん、行ってくる」

 

五条に背中を押されて、シロコは駆け出す。先ほどまでの不安と緊張はとっくに消えていた。

 

「行きなさい」

 

「気を付けて」

 

「サポートします」

 

アル、カヨコ、アヤネたちにも見送られ、シロコはゴリアテ目掛けて駆け抜ける。

アヤネのドローンが落としたコンテナ爆弾に、理事は後ろへと振り返る。

そこには――。

 

「あなたの相手は……私」

 

真っ直ぐ理事の方へと走ってくるシロコがいた。

 

「貴様ぁぁっ!」

 

シロコが参戦したことを反対側でムツキとハルカも確認する。

 

「始まったみたいです……」

 

「それじゃあ、こっちもやろっか。ハルカちゃん!」

 

「はい、やっちゃいます!」

 

ムツキとハルカは理事の元へと向かおうとするPMC兵たちの前に立ちはだかる。ハルカがスイッチを取り出して押すと、兵たちの足元に埋められていた爆弾が爆発を起こす。

それをアルとカヨコは見ていた。

 

「ムツキとハルカは上手くやっているみたいね」

 

そう笑うアルの後ろを狙って、ビルの影から一人の兵がこっそりと狙う。銃を向けた次の瞬間、すぐさま振り返ったカヨコの早撃ちが、兵の眉間を捉えた。

 

「させないよ」

 

理事に元へ向かうために、続々と兵が沸き上がるのを見て、アルはつまらなさそうにため息を吐く。

 

「どうしても行きたいのだろうけど……そういう興ざめなこと、やめてもらえるかしら」

 

右手でスナイパーライフルを構え、アルとカヨコは兵たちの相手をする。

対策委員会が思い切り戦えるように。

シロコとセリカとノノミは、三人でゴリアテの相手をする。シロコとセリカが縦横無尽に動き回りながら、敵を攪乱させて、ノノミが空いた隙目掛けて攻撃する。そして、敵が動いたら、また全員で動き回り、狙いを定めさせないようにするヒットアンドアウェイ戦法で戦っていた。

シロコとセリカに気を取られると、ノノミに撃たれる。かといって、ノノミに狙いを定めると、今度はシロコかセリカに撃たれる。どちらかを選ばされる2択に、理事の精神は苛立ちで擦り減っていく。

さらに、アヤネのドローンが素早く銃のマガジンをシロコたちに送って、攻撃が途切れないようにサポートしていた。

 

「鼠がぁ!ちょこまかと動き回りおって!穴に潜っていればいいものを!!」

 

最初は攻撃していた理事も、対策委員会の戦法にどんどん守りに入っていく。

 

「ええい、鬱陶しい奴らだ!!」

 

ゴリアテの肩のミサイルポッドが開き、小型ミサイルを自分の周囲に放つ。ノノミとセリカはミサイルを何とか避けるが、動きは止まってしまった。しかし、シロコは前に進むことでミサイルを躱して、ゴリアテの股下をスライディングで滑り通り抜ける。ゴリアテが振り向くために、攻撃が一瞬だけ止めたその隙に、跳び上がり一気に腕を伝って、理事の眼前で銃を突きつける。

 

「最新兵器って、この程度?」

 

シロコが五条のような煽りを入れたことに、理事は怒り心頭で喚き散らす。

 

「ふざけるなぁっ!!全て見切ったとでも思っていたのか!?貴様ら如きの体躯では、この一万二千八百馬力を超える機体は止められまい!!」

 

シロコを振り落とし、落ちたシロコを潰すために、高く飛び跳ねて両腕を思い切り地面に叩きつける。寸前で躱したシロコの口元が、少し緩むのを理事は気づいた。そして、振り下ろしたゴリアテの両手の地面が突然光り出す。

 

「これは……まさか!?

 ぐわあああぁぁぁっっ!!!」

 

光の中から見えたのは、大量の爆弾だった。しかし、それに気づいた時にはもう手遅れだった。

大爆発が起こり、ゴリアテは爆炎に飲まれていった。

 

「作戦成功!」

 

「やったね」

 

PMC兵たちの足止めを行っている便利屋68たちも爆炎を見て、作戦の成功に歓喜の笑みがこぼれる。

しかし、五条の顔はまだ笑っていなかった。五条はシロコに向かって声を上げる。

 

「まだだよ、シロコ」

 

「!!」

 

五条の声に反応したシロコ目掛けて巨大な電磁砲が発射される。シロコは五条のおかげで紙一重で躱すことに成功する。

 

「今のは少し危なかった……だが!

 この砲撃を見ても、逃げない度胸だけは褒めてやる!」

 

「褒められても、嬉しくない」

 

「あとは頭脳さえあればよかったのだがな……せめて、あのホシノとやらのように。

 いい加減諦めたらどうだ!!」

 

ゴリアテの腕が次々とシロコ目掛けて振り下ろされ続ける。後ろへ跳び下がって何とか避けるシロコだったが、瓦礫の破片に足を取られて倒れてしまう。それを見た理事は笑って、電磁砲の発射準備を開始する。

 

「これで終わりだ!」

 

ゴリアテの電磁砲が発射される直前に、五条の声が聞こえた。

 

「シロコ、これを」

 

五条の手から投げ渡されたそれを、シロコは受け取る。それはホシノの盾だった。電磁砲が発射されたと同時に、シロコはすぐに盾を展開して電磁砲を受け止める。全身に力を込めて電磁砲を耐えるシロコは、いつも自分たちの前で敵の攻撃を受け止めてきたホシノに感心する。

 

「ホシノ先輩……前衛って、大変だね」

 

すると、シロコの耳に「うへ~、そうでしょ~」と聞こえたような気がして、シロコはフッと微笑んだ。すべての力を使って、電磁砲を反らしたシロコは発射して熱を帯びている電磁砲の砲身の穴目掛けて、ライフルを撃ち尽くす。ライフル弾は全て砲身の穴に入っていき、中の弾頭に命中する。

 

「ま、まさか……馬鹿なぁあああ!!!」

 

ゴリアテは大爆発を起こして、理事の無様な断末魔の叫びが木霊する。

戦いを終えたシロコにノノミとセリカが駆け寄ってきた。

 

「シロコちゃん!」

 

「シロコ先輩、無事!?」

 

「うん、問題ない」

 

ノノミとセリカに笑って返すと、後ろからアヤネも駆け寄ってくる。

 

「良かったです、上手くいって」

 

「アヤネもありがとう。ノノミとセリカも」

 

みんなで笑いあう対策委員会を見ていたアルとカヨコも作戦の成功に安堵して、胸をなでおろすのだった。

 

「計画通り……って言っても危なっかしいね」

 

「まあ、あれくらいやると思っていたわ。あの子たちならね」

 

すると、奥からムツキが手を振って駆け寄ってくるのが見えるので、アルは笑って手を振り返すのだった。

一方で、大破したゴリアテの残骸から理事は掘り出されていた。

 

「理事、ご無事ですか!?」

 

「すぐに治療を!!」

 

「ぐぅ……」

 

そんな理事に、五条が近寄る。

 

「どうすんの、まだやる?」

 

「くっ……」

 

忌々しそうな目で五条を睨みつける理事だったが、今のままで戦っても勝ち目はないことくらいは分かっている。

 

「……一時退却だ。兵力の再整備に入れ」

 

「は、はい!!退却命令だ!繰り返す、理事から退却命令が出たぞ!!」

 

「覚えておけ……この代償は高くつくぞ」

 

両脇の兵に肩を貸されて逃げていく理事は、対策委員会に向けてボソッと恨み言を呟いて去って行った。

 

「敵兵力、退却していきます」

 

「ふう。疲れました……」

 

アヤネがそう告げると、ノノミは肩の荷が降りたかのように安堵した。

 

「終わったんですね?」

 

「いやー、覚えておけなんて、実際に聞いたのは初めてだよー!」

 

理事の負け犬の遠吠えをムツキが面白そうに笑う。

戦いを終えた対策委員会と便利屋68を労うために、五条が声をかける。

 

「みんな、お疲れ。本当によく頑張ったね」

 

「うん。先生のおかげでもある」

 

シロコが嬉しそうに答える。

 

「便利屋のみんなも助かったよ」

 

「と、当然じゃない。一流のアウトローを目指す私たちにとって、これくらいのミッションはなんてことないわ!」

 

アルが少し照れ臭そうにしていると、ムツキがニヤニヤしながら近づいてきた。

 

「アルちゃん、張り切ってたもんねー。あの演説すごかったよー!」

 

「う、うるさいわね!」

 

みんなが楽しそうに笑っているのを見た五条は、嬉しそうに笑う。

 

「さてと……それじゃあ、次は……」

 

五条の言葉に、対策委員会全員がシロコの持つ盾に目を向ける。

 

「ホシノ先輩を助け――」

 

「みんなでラーメン食べに行くよ!」

 

「……え?」

 

突然の言葉に対策委員会の面々が止まる。

 

「どうして?一刻も早くホシノ先輩を探さなきゃ……!!」

 

シロコが五条に詰め寄るが、それに対して五条が笑って返す。

 

「ホシノの居場所はまだわかんないし、あいつらが次にいつ来るかわかんないからね。

 それなのに、闇雲に探し回って体力を無駄にするのは、得策じゃない。分かるでしょ?」

 

「で、でも……」

 

「焦る気持ちは分かるよ。でも、今は休息だ。休む時に休んで、いざという時に備えないと、ね!」

 

「うん、分かった」

 

五条はシロコの頭を優しく撫でる。それにシロコは笑って首を縦に振るのだった。

 

「よーし!みんな今日は頑張ってくれたから、僕がおごってあげようじゃないか!」

 

「わーお!先生、ありがとうねー!」

 

こうして、五条は対策委員会と便利屋68を連れて柴関ラーメンへと向かうのだった。

彼女たちは五条の奢りで、美味しいラーメンに舌鼓を打って英気を養った。

連れ去られたホシノを助けるために。




switch2の情報がヤバすぎた……。
エアライド新作が出るまでに、買えるかなー。
みなさんは気になったソフトはありますか?
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