シャーレの五条先生   作:未来跳躍

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今回は五条のセリフが多くて、楽しかった。
五条の喜怒哀楽が書けて色々と充実した内容になりました。


若人の青春

カイザーPMCとの戦闘を終えて、生徒たちにラーメンをご馳走したその日の夜。

五条はアビドス高校の応接室で、シッテムの箱を開き、アロナの元へと向かう。

 

「や、アロナ」

 

「あっ!先生」

 

シッテムの箱の中の教室で、五条を見ると近寄ってくるアロナは、彼に向かって首をかしげて尋ねるのだった。

 

「本日はどのような御用でしょうか?」

 

「ホシノの携帯の位置って分かる?」

 

「ホシノさんのですか?少々お待ちください」

 

アロナが検索を開始するが、すぐに残念そうに顔を見上げる。

 

「駄目ですね。ホシノさんの携帯の位置は、連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスしても検索できません……」

 

「そっか……」

 

「お力になれなくてすいません」

 

「いいよ、気にしないで」

 

申し訳なさそうにうなだれるアロナの頭を優しく撫でてていると、応接室のドアをノックする音が聞こえる。

 

「それじゃあ、僕は行くね」

 

「はい、分かりました」

 

アロナと別れて、椅子から立ち上がってドアを開ける。部屋の外には誰もいなかった。しかし、目の前に一枚のハガキが置かれていた。ハガキには宛名もなく、ただ地図が書かれていた。アビドスから少し離れたビル街の地図、そこに記された一点の印がまるでここに来いと言わんばかりのようだった。

 

「乗ってやるよ」

 

そう呟いてハガキを握り潰し、五条は目隠しを下ろして、サングラスを掛けるとアビドス高校を出ていく。

目的地のあるビル街は他の自治区に比べると、だいぶ寂れてはいるが、それでもまだビルの明かりが点いていた。ビル街を歩いて地図に記されたビルの前に到着する。そこはこの周辺の中ではかなり大きなビルだが、窓からの明かりはなく不気味さを感じられる。五条は迷いなくビルの中に入っていく。電灯が切れかかって少し暗いエントランスを抜けて、エレベーターホールに到着すると一台のエレベーターが勝手に開いた。それに入ると、またしても勝手に最上階のボタンが点灯して動き始めた。エレベーターが最上階に到着して外には扉が一つあるだけだった。扉を開けて中に入る。中は真っ暗だったが、五条は気にせず歩き始める。部屋の中央まで歩いたところで、声が聞こえた。

 

「お待ちしておりました、五条先生」

 

窓のブラインドが上がり、月明かりが部屋に差し込んでくる。その先に目を向けると、大きな執務机と椅子に座る黒服が笑っていた。

 

「あなたとは一度こうして、顔を合わせてお話がしてみたかったのですよ。連邦生徒会長が呼び出した不可解な存在であり、あのオーパーツ『シッテムの箱』の主であり、連邦捜査部『シャーレ』の先生」

 

クックックと不気味な笑いを浮かべる黒服は、そのまま話を続ける。

 

「ご安心ください。私たちは、あなたと敵対するつもりはありません。むしろ、協力したい。

 私たちの計画において、一番の障害になりうるのはあなただと考えているのです。

 私たちにとってアビドスなんて小さな学校は、全くもって大した問題ではありません。ですが先生、あなたの存在は決して些事とは言えない。敵対することは避けたいのですよ」

 

「お前、モテないだろ。自分のことばっか喋りやがって」

 

五条が不快な顔でそう文句を言うと、黒服はわざとらしく手を上げて小粋に謝罪する。

 

「……おっと、そう言えば自己紹介がまだでしたね。

 私のことは、『黒服』とでも。この名前が気に入っておりましてね。

 私たちはあなたと同じ、キヴォトスの外部の者……ですが、あなたとはまた違った領域の存在です。

 適切な名前がありましたので、今はそれを拝借して使っております。私たちのことは『ゲマトリア』、とお呼びください。

 あなたたちの用いる言葉で説明するなら、私が属する組織といったところでしょうか」

 

「ゲマトリア……ダッセー名前だな」

 

「ククククッ。そう仰るのも無理はないものです。私たちも勝手に使ってるだけですので」

 

五条の煽りを気にも留めず、黒服は不気味に笑って返す。

正直、この手の相手はかなり面倒だと内心で舌打ちをする。誰が相手でも自分のペースを崩さない、所謂究極の自分勝手(マイペース)。こういう輩は呪術師としてでも、そうでなくても厄介な奴が多い。

 

私たち(ゲマトリア)は、観察を行い、探求を行い、研究を行う。

 その視点で見るなら、あなたと同じ、『不可解な存在』だと考えていただいて結構です」

 

五条は黙ったまま、説明する黒服を睨みつけて立っていると、黒服は軽い咳払いをして五条にある提案を持ちかける。

 

「ところで……一応お聞きしますが、私たちと協力する気はありませんか?」

 

「ない。100%(百パー)ない」

 

黒服の提案を、五条は即断で切り捨てる。それに、黒服は少し不服そうに五条にその理由を尋ねる。

 

「ほう。真理と秘儀を手に入れられるこの提案を断ってまで、あなたはこのキヴォトスで何を追求するおつもりなのですか?」

 

「テメーの理屈なんざどうでもいい。僕はただ、ホシノを返しに来た。それだけだ」

 

「……クックック。

 今のあなたに一体何の権利があって、そんな要求をされているのでしょう?ホシノさんはもうアビドスの生徒ではありません。それなのに――」

 

「ちげーよ」

 

「おや?生徒からの届け出を確認されていないのですか?」

 

吐き捨てた五条の言葉に黒服は首をかしげる。

 

「そんなの知ってんに決まってんだろ」

 

「でしたら、先生……あなたにできることはもう何も無い」

 

「バカかお前。あの退学届けには、『先生』である僕のサインがまだなんだよ」

 

「……」

 

その言葉に黒服は黙る。頭が回る彼だからこそ、五条の言葉の意味をすぐに理解してしまう。そんな黒服に五条は強く言い放つ。

 

「だから、ホシノはまだ対策委員会の所属だし、アビドス生徒会の副会長だし、今も僕の可愛い生徒なんだよ」

 

「……なるほど。あなたが『先生』である以上、担当生徒の去就にはあなたのサインが必要……ふむ、なかなかに厄介な概念ですね」

 

口調に変化はないが、どこか感心するように五条を見る黒服に、五条は冷たい口調で吐き捨てる。

 

「テメーらみたいな、子供を平気で踏みにじるクソに感心されても嬉しくねえよ」

 

「ええ、確かにあなたの仰る通りです。他人の不幸よりも、私たちは自分たちの利益を優先しました。

 それは否定しません。私たちの行動は、善か悪かと問われればきっと悪でしょう。

 しかし、ルールの範疇です」

 

その言葉に、五条は眉を顰める。明らかに先ほどよりも五条の周りの空気が冷たくなっていく。しかし、黒服はそれに動じることはなく、そのまま話を続けた。

 

「そこは誤解しないでいただきましょうか。

 アビドスに降りかかった災難は、私たちのせいではありません。アビドスを襲ったあの砂嵐は、大変珍しいこととはいえ、一定の確率で起こりうる自然現象です。誰か明確な悪役がいるわけではない、天変地異とはそういうものでしょう」

 

笑って弁論する黒服に、五条は心の中で唾を吐き捨てる。目の前のこの男を殺すことは容易いだろう。しかし、それは何の解決にもならないし、仮に殺しにいったとしてもこの男は、おそらく死んでもホシノの居場所は吐き出さない。そうなれば、ホシノの行方は掴めなくなってしまう。それを分かっているから、こうして五条の前で笑って話しを続けている。

 

「……結果、人々は喉の渇きに苦しむでしょう。そうなれば当然、水を売る者だって現れる。それもまた、自然の成り行きなのです」

 

「よく言うよ。テメーらのその水は、破滅への片道切符のくせに」

 

「クックック。さして珍しくもない、世の中のありふれた話でしょう。持つ者が持たざる者を搾取する。弱い者に自分の未来を決める権利なぞありはしない。

 先生、ホシノさんさえ諦めていただければ、アビドス高校については守って差し上げましょう。カイザーPMCのことについても、私たちの方で解決いたします。

 取り戻せますよ、生徒たちが安心して学校に通える生活を。それはホシノさんも望んでいるはずです」

 

椅子から立ち上がって手を差し伸べる黒服に、五条はそれを切り捨てるように言い放つ。

 

「仮にそうだったとしても、そんなの、あの子たちは望まねえよ」

 

「どうあっても、私たちと敵対するおつもりですか?

 ではどうします?私を殺しますか?2017年12月24日(あの時)のように?」

 

「――ッ!!お前っ!!」

 

黒服の言葉に、五条の顔色が変わる。そして、それまでとは違う激しい怒りが声にでた。黒服は、そんな五条を見て嗤う。

 

「……クックック。

 いやいや、気分を害したなら謝りましょう。誠に勝手ながら、あなたのことは調べさせていただきました。

 あなたがその気になれば、私を殺すことなぞ、赤子の手をひねるより楽なことでしょう。

 しかし、なぜしないのです?

 そんなにホシノさんが、あの子たちのことが大事だというのですか?別に放っておいても良いではありませんか。元々、あなたの与り知るところではないのですから」

 

心を静めて息を整えた五条は、黒服に向かって真っすぐに一言で告げる。

 

「断る」

 

「なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?

 理解できません、なぜ?なぜ断るのですか?」

 

「理解できねーんなら、一生考えてろ。ボケ!」

 

「どうして?先生、それは一体なぜなのですか?」

 

五条の言葉にも意に介さず、詰め寄ろうとする黒服に、五条は深いため息をついて答える。

 

「あの子たちの苦しみに対して、責任を取る大人がだれもいなかった……それだけだ」

 

「だから、あなたが責任を取るとでも?あなたはあの子たちの保護者でも、家族でありません。

 あなたは偶然アビドスに呼ばれ、偶然あの子たちに会った他人です」

 

「確かに……家族でも何でもない赤の他人だよ。でもな、それがどうした!子供が一人で助けを求めているなら、手を差し伸べてその手を取ってやる。辛いことは一緒に考えて、楽しいことは一緒に笑う。そうして、生徒たちを正しく導く。

 そんな簡単なことだってわかんねえのか!!!」

 

声を荒げる五条の答えを聞いた黒服は、再び椅子に座り直して、落胆した声で五条に返す。

 

「違います、大間違いです。

 大人とは、望む通りに社会を改造し、法則を決めて、規則を決め、常識と非常識を決め、併存と非凡を決める者です。

 権力によって権力のない者を、知識によって知識のない者を、力によって力のない者を支配する、それが大人です。

 理解できません。……あなたは、このキヴォトスの支配者にもなり得ました。

 この学園都市における権力と権限。そしてこの学園都市に存在する神秘。その全てが、一時的とはいえあなたの手の上にありました。しかし、あなたはそれを手放した。

 一体その選択に、何の意味があるのですか?真理と秘儀、権力、富、力……その全てを捨てるなんて無意味な選択を、どうして!」

 

黒服は理解したかった。五条が初めてキヴォトスに来て、「シッテムの箱」の力でサンクトゥムタワーの制御権を取り戻したあの時、五条はまさしくキヴォトスの王になっていたはずだった。しかし、五条はその権利をすぐに放棄し、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に譲渡したこと。真理と秘儀を探求する最高の提案を拒否したこと、小鳥遊ホシノという最高の研究素材を取り戻すために、アビドスの生徒たちの責任を負うために、そこまでのことをすることが理解できなかった。

理解したい、五条悟という男を。それが今の黒服の知的好奇心だった。

そんな黒服を見て、五条は諦観したように言い返す。

 

「お前には、一生理解できねえよ」

 

そう言われた黒服は顔を下げて、静かに口を開く。

 

「……良いでしょう。交渉は決裂です、先生。私はあなたのことを気に入っていたのですが……仕方ありませんね。

 ホシノさんは、アビドス砂漠のカイザーPMC基地内の実験施設にいます。『ミメシス』で観測した神秘の裏側、つまり恐怖。それを生きている生徒に適応することができるか――彼女を実験体にして確かめたかったのですがね」

 

「……確かめたかった?」

 

「交渉に応じていただけない以上、私に打つ手はない。私も命は惜しいのでね。今回はあなたとこうして顔を合わせることができただけ良かったと言いましょうか」

 

「よく言うよ。ここにいないくせに」

 

五条がそうぼやくと、黒服はククッと笑う。

 

「おや、気づいていましたか。

 ああ、ホシノさんはどうぞお好きに。連れて帰って頂いても構いません。まあ、あなたたちが基地に入ることを、あの理事が許すかならばの話ですが、ね」

 

その言葉に、五条は軽く鼻で笑った後に、自信満々に言い返す。

 

「大丈夫に決まってんだろ。あの子たちは、僕の自慢の生徒だからね」

 

「そうですか。微力ながら、幸運を祈ります」

 

五条は、踵を返して部屋を後にする。扉を開けたところで、黒服に最後の言葉を投げかける。

 

「そうだ、最後に一つ。

 僕がホシノを助けるのは、あの子たちを助けたいからだけじゃない。一番大事な理由があんだよ」

 

その言葉に、黒服は興味あるのか笑って問いかける。

 

「ほう……それは一体?」

 

「若人から青春を取り上げるなんて、許されていないんだよ。何人たりともね」

 

そう答えると、五条は部屋を出ていった。

その答えを聞いた黒服は、しばらく黙っていたが、彼の笑い声が暗闇に響く。

 

「……クク、クックック!

 面白い!面白いですよ、五条先生!ああっ、本当にあなたとの交渉が決裂したのが、心の底から悔やまれますね!でも、まあ……また次の機会にでも……。

 ゲマトリアは、あなたのことをずっと見ていますよ」

 

パチンと指を鳴らして、黒服の姿は消える。最後には、何もない静寂な暗闇だけが残るのだった。

 

 

 

翌日の朝、五条が対策委員会の部室に入ると、シロコたち四人はすでに揃っていた。

 

「おはよう、先生」

 

「先生、お待ちしておりました!」

 

「先生!」

 

「先生……」

 

五条に声をかけるシロコたち全員の目には、何時でも行けると言わんばかりのやる気に満ち溢れていた。

そんな様子を見て、五条は嬉しそうに笑みがこぼれる。

 

「みんな、準備万端だねー!」

 

「先生こそ、何か掴んだって顔に書いてある」

 

「ははっ!シロコも言うようになったね。

 それじゃあ、改めて……ホシノを助けに行こうか!!」

 

「……ん、行こう」

 

五条の掛け声に、シロコは力強く頷いた。

 

「ホシノを助けて、ここに連れ戻す!」

 

「はい。そうですね」

 

続いて、アヤネが頷く。

 

「その後は、ホシノにお説教だね!」

 

「うんうん!自分で行ったことを守れなかったんですから、お仕置きです!きちんと叱ってあげないと!」

 

ノノミが笑って、子供を叱る仕草を取る。

 

「『おかえり』といって、『ただいま』と言わせようか!!」

 

「うん……えっ!?

 何それ、恥ずかしい!青春っぽい!!背筋がぞわっとする!私はやんないからね!」

 

「そうか……セリカがやんないなら、僕がするよ」

 

顔を赤くしてプイと顔を背けて声を上げるセリカに、五条が申し訳なさそうに手を上げる。

 

「いや、先生。私がする」

 

次にシロコが手を上げる。

 

「いやいや、私がしますよー!」

 

その次にノノミが手を上げる。

 

「わ、私も。ちょっと恥ずかしいけど……」

 

さらに、アヤネが恥ずかしそうに少しだけ手を上げる。

全員の視線がセリカに集まる。セリカは謎の圧に耐えきれず、ゆっくりと手を上げた。

 

「じゃ、じゃあ……私が……」

 

「「「どうぞどうぞ!」」」

 

「……って、ふざけてんじゃないわよー!!」

 

往年の定番ボケに突っ込んで、五条とシロコ、ノノミに怒って追いかけまわすセリカを、アヤネは苦笑交じりに眺めていた。

五条がいるから、こんな状況でもこうして笑えるのかなと考えていると、五条がアヤネの方にやってきて彼女の背中に隠れる。

 

「うえーん、アヤネー!セリカが怖いよー!」

 

「アヤネちゃん、そこどいて!そこのバカを今日こそ叱ってやるんだから!」

 

「まあまあ、セリカちゃん。落ち着いて。

 それはそうとして、救出のための準備を……ね?」

 

アヤネに言われて、セリカは渋々引き下がる。ホシノ救出のために、五条は昨晩の黒服の情報を伝える。

 

「ホシノは、アビドス砂漠のカイザーPMC基地の実験施設に捕らえられている。

 アヤネ、画像を」

 

五条は、昨晩の情報からアロナに調べさせた独自の情報をアヤネの端末に送信する。

アヤネは、受け取った情報を分かりやすく見えるように、端末をシロコたちの方へと向ける。

 

「はい。先生から頂いた情報から、カイザーPMC基地の実験施設は基地の地下深くにあることが分かりました。つまり、ホシノ先輩を救出するためのポイントは3つ。

 1つ目は、どうやって基地に入ること。2つ目は、中には多数の兵士や兵器がいること。そして、3つ目は、ホシノ先輩が囚われている実験施設は、強固なセキュリティで守られていること。これら全てを突破しないと、ホシノ先輩の救出はできません。しかし……」

 

アヤネがその先の言葉を詰まらせる。それを察したシロコが代わりに口に出す。

 

「今の私たちだけじゃあ勝てない」

 

その言葉に間違いはない。シロコたちが強くなったとはいえ、たった四人で巨大なカイザーPMC基地に乗り込んだとしても、勝ち目はない。それは、シロコたち自身が一番分かっていた。

なら、取るべき手段は一つ。

 

「だから、協力者を探す」

 

シロコのその言葉に、全員が考える。真っ先に浮かんだのは――。

 

「便利屋は?」

 

「確かに私たちのことを助けてくれましたが……もう一度お願いしても良いのでしょうか?」

 

「大丈夫だって!またどこに行ったんだか知らないけど、一緒に戦った仲だから何とかなるでしょう!」

 

セリカの言葉に、便利屋68が候補に入る。しかし、それだけだとまだ足りない。どうしようかみんなで考えるが、これ以上の協力者が思い浮かばない。

悩む対策委員会を見て、五条が口を開く。

 

「しょうがない。僕に任せてよ」

 

「先生?」

 

「僕にいい考えがある」

 

ニッと笑う五条を見て、シロコたちはその考えを聞く。

 

「そうだね、それなら」

 

「なるほど……その手がありましたね!」

 

「確かに……もしそれが可能なら、十分な助けになります」

 

「先生、やるじゃん!」

 

シロコたちは五条の考えを聞いて、それに賛同する。もし五条の言う通りに、彼女たちが助けてくれるならば、ホシノ救出の成功確率は格段に跳ね上がる。

 

「それじゃあ、みんな!作戦開始ということで!」

 

「「「「はい!」」」」

 

こうして、対策委員会はアビドスを発つのだった。

彼女たちが向かった先は――。

 

「お久しぶりです、みなさん」

 

「お元気そうですね、ヒフミさん」

 

トリニティ総合学園だった。そこで事前に連絡を貰っていたヒフミが、シロコたちを迎えに正門前まで来たのだった。

 

「はい。これもみなさんのおかげです。

 すいません。本当は私の方からお伺いしたかったのですが……って、あれ?

 そう言えば、ホシノさんはどこに?」

 

ホシノを探すヒフミに、シロコたちの顔が少し曇る。

 

「実はね、私たちが今日ここに来た理由がそれなの」

 

セリカが、ヒフミにこれまでの経緯について説明する。

 

「そんな……。あれからそんなことがあったのですね……」

 

「はい……ホシノ先輩が抱えてるものに気づき、止められれば良かったのですが……。

 私たちにはどうにもできず……。

 お願いです。ホシノ先輩を助けるために、トリニティに協力していただけませんか」

 

アヤネの嘆願に、ヒフミは少し考えた後、ゆっくりと答える。

 

「……ティーパーティーに相談してみます。少しお待ちください!」

 

 

 

ティーパーティー。トリニティ総合学園の生徒会であり、主要メンバーは三人。その三人が全員生徒会長という他とは違う組織なのであった。

その中の一人、桐藤ナギサは、ティーパーティーの専用テラスで優雅なティータイムを嗜んでいた。そこに、行政官の一人が、彼女元へと歩み寄る。

 

「ナギサ様に面談との御用のようですが?」

 

「面談?誰ですか?」

 

「1年の阿慈谷ヒフミです」

 

「分かりました。通して下さい」

 

ナギサはにこやかに答えると、行政官は頭を下げて下がっていった。すると、少ししてヒフミがテラスへ入ってきた。

 

「失礼します。ナギサ様」

 

「あら、ヒフミさん。どうしたのですか?」

 

「……実は、ナギサ様にお話がありまして」

 

ニコッと笑うナギサに、ヒフミは少し呼吸をした後、意を決してナギサにアビドス高校のことについての話をした。

話を終えると、ナギサは少し考える。

 

「ふむ、どうしましょうね」

 

「い、如何でしょうか。ナギサ様」

 

「どちらを頂こうかしら?

 生クリームたっぷりのショートケーキもさっぱりとしたお茶との相性は抜群。ですが、このモンブランもまた捨てがたい……」

 

なぜか目の前のケーキについて悩むナギサに、ヒフミは自分の思いを口にする。

 

「あの、ナギサ様!私、アビドスの皆さんに助けていただいたんです。ですから――!」

 

「ふふ。そのカイザーPMCという企業が、我が校の生徒たちに良くない影響を与えるのは確かですね」

 

「で、では、ご協力を――!」

 

ヒフミが喜んでいるところに、ナギサが「ただし」と口を挟んで止める。

 

「例の条約も目前に迫っていますし、今は下手に動くわけにはいきません」

 

「……」

 

「少し、お時間を頂けますか?」

 

結局、ナギサから答えは保留ということになった。ヒフミは落ち込んだまま、テラスを後にする。残ったナギサに、テラスの奥から声をかける。

 

「ひどいねーナギちゃんは!そのカイザーなんたらって悪い奴なんでしょ?そんなの、ぶっ潰せばいいじゃん!」

 

その声にナギサは頭を抱えて返す。

 

「物事には、何事にも正しい手順というものがあるのです。あなたみたいに、力で解決するだけが全てではないのですよ」

 

「あーひどーい!ナギちゃんのいけずー!」

 

「それに、あの『シャーレの先生』が関わっているなら、尚更です」

 

「シャーレの先生……?何それ?」

 

アハハと笑う声に、ナギサは呆れてため息をつく。

 

「あなたはまず、報告書を読んで下さい……。あなたもティーパーティーの一人なのですからね。

 ミカさん」

 

ヒフミからティーパーティーの協力要請が保留という結果になったと聞いた対策委員会のみんなは、ヒフミに見送られ、トリニティを後にする。

セリカがトボトボと歩きながら、口を開く。

 

「やっぱ難しいんなじゃない?協力してもらうのって」

 

「諦めるのは良くない」

 

「そうだけどさー」

 

「それにもう一つの方には先生が行ってるし、大丈夫」

 

シロコが親指を立てて自信があり気に言うが、セリカは不安で胸がいっぱいだった。

 

「それが一番の不安なんだけど……」

 

はあと、深いため息をついてセリカは空を見上げる。

 

 

 

 

ゲヘナ学園風紀委員会の執務室。空崎ヒナはそこで、報告書の確認を行っていた。自由が校風のゲヘナ学園では、自由を履き違えた生徒たちの問題が絶えない。それに加えて、先日のアビドスでの件が万魔殿に漏れたらしく、万魔殿から詳しい説明をという名目での呼び出しもあって困っていた。万魔殿には、アコを向かわせて、なるべく穏便な対応を期待したいところだが、あそこのタヌキたちは普段は碌に働かないくせに、こういう時に限ってまともに動く厄介極まりない連中なので、アコは今頃苦労しているだろう。現在はチナツは食堂で美食研究会が騒ぎを起こしているので、その対応に行っており、イオリは外で見張りをしている。他の部員たちも、それぞれの事件やらトラブルやらであっちこっちに動いていて、今はヒナ一人しかいない。報告書を読んでいると、次々と騒ぎを起こす生徒たちに辟易する。

 

「ヤッホー!」

 

「!!」

 

急に扉が開いて、五条が部屋に入ってきた。突然のことにヒナはびっくりして硬直する。五条はそんなことお構いなしに、応接室のソファーにドカッと座って、手に持った袋からお団子を取り出して食べるのだった。

 

「いやー、ここに来る途中で団子屋さんを見つけてね。ああいう路地裏の小さなお店って、何で惹かれるんだろうね」

 

「……あ、あの……」

 

まるで自宅のようにくつろぐ五条に、ヒナは状況がうまく呑み込めずにいた。

 

「あ!ヒナも食べる?お団子」

 

「あ、じゃあ一つ」

 

五条がヒナの元へと寄って、一本の団子を差し出す。ヒナはそれを受け取って、一緒に団子を食べた。

 

「美味しい……って、違う!」

 

「おっと!」

 

団子を食べている途中でようやく冷静になったヒナは、今の状況に突っ込むのだった。

 

「先生、どうしてここにいるの!?」

 

「どうしてって言われても、僕が先生だからかな」

 

「それよりも、どうやってここに入ったの?表にはイオリたちがいたと思うのだけれど、まさか……」

 

イオリが表で見張っていた彼女をどうやって抜けてきたのか疑問に思う。最悪の想像が一瞬ヒナの脳裏を過るが、それに五条は楽観的に笑って答える。

 

「ああ、いたね。でも、見つかると色々と面倒だから、彼女たちをスルーして直接中に入ったんだ」

 

とんでもないことをやってのけているのに、ははっ!と笑いながら答える五条に、ヒナは絶句した。もうどうやって中に入ったのかとか聞くのも面倒になったので、ヒナは五条に直接問いただすことにした。

 

「そうね、質問を変えるわ。あなたがここに来たということは、私に、いえ、私たちに用があってきたんじゃないのかしら?」

 

「流石だね。話が早くて助かるよ。単刀直入に言うと、君たちにちょっと手伝ってほしいことがあるんだ。ホシノのことでね」

 

ホシノの名を聞いて、ヒナの目つきが変わる。

 

「小鳥遊ホシノが?どういう事?詳しく聞かせてもらえるかしら」

 

五条はヒナに事の経緯を説明する。ホシノがアビドス高校の借金の肩代わりのために、カイザーPMCに囚われてしまったこと。それを助けるために、対策委員会のみんなで向かおうとするが、今のままでは力不足なこと。そして、そのためにゲヘナ風紀委員会の助けが必要であること。それらを聞いて、ヒナは椅子に座ったまま、静かに考え込む。

 

「なるほど……事情は分かったわ。でも、その前に一つ聞かせて」

 

「ん?別に良いよ」

 

「わざわざ私たちの力を借りなくても、あなたがいれば、小鳥遊ホシノを助けることなんて容易でしょう。

 でも、あなたはそれをしない。その理由を教えてもらえるかしら?くだらない答えなら……」

 

ヒナは静かに、そして鋭い眼差しで五条を睨みつける。その眼差しの意味をすぐに五条は、理解する。

すこし黙った後、五条は静かに口を開いた。

 

「……確かに。僕一人でカイザーPMCを壊滅させることだけなら、簡単なことだよ。でもね、それでは意味がないんだ」

 

「意味?」

 

ヒナが首をかしげて尋ねる。それを見て、五条は頷いて答える。

 

「僕の信念とでもいうのかな。僕は、生徒たちを強く、聡く導きたいんだ。そのために、生徒の問題は、生徒自身が向き合わなければいけない。そう思うんだよね」

 

「……」

 

「転んだ子供に手を貸して立たせることは簡単だけど、一人で立たせる方法を教えるのが先生の仕事。とはいえ、簡単じゃないんだよね。だからこそ、君たちの力が必要なんだ。対策委員会のみんなのためにも、そして、君たちのためにもね」

 

そう語る五条の言葉には、いつもの軽薄さはなく、彼が抱く確かな信念をヒナは感じ取った。それを聞いて、ヒナは静かに立ち上がる。

 

「分かったわ。先生の要望通り、力を貸すわ。ただし、行くのは私とアコ、イオリ、チナツの四人だけよ。他の部員たちはゲヘナのために戦力は分けられない。それで、いいかしら?」

 

ヒナは五条に手を差し伸べる。五条はニコッと笑って、差し伸べられた手を握って答える。

 

「十分すぎるね。

 これ、僕のモモトークの連絡先。ヒナが困ったことがあったら、いつでも呼んでもいいよ」

 

「ふふ、そうね。それじゃあ、先生には私たちのこと手伝ってもらうわ」

 

互いに連絡先を交換した二人。その時、アコがヒナの執務室に入ってくる。

 

「委員長、万魔殿との説明会無事に終わりました……」

 

アコがヒナの部屋にいる五条に目が行く。少し呆然としたが、すぐに声を上げて叫び出した。

 

「な、な、何をしているんですかー!!」

 

「おっと!それじゃ、僕は行くね。ヒナ、バイバーイ!」

 

五条は窓を開けて、ヒナに手を振ってそのまま窓から外へ出ていった。

 

「い、委員長を呼び捨て……!あ、コラ!待ちなさい!!

 委員長!ご無事ですか!?なんか変なことされていませんか!?」

 

五条に逃げられたアコは、ヒナの元へ急いで駆け寄って、彼女の肩を掴んで激しく前後に揺らす。

 

「大丈夫。落ち着きなさい、アコ」

 

アコを引き離して、ヒナは揺らされて乱れた髪を整える。そこに、騒ぎを聞きつけたイオリがやってきた。

 

「どうしたの!?委員長、アコちゃん!?」

 

やってきたイオリを、アコはギロっと睨みつけて彼女の元へと詰め寄る。

 

「イオリ、いいところに来ましたね。あなたともあろう者が、委員長の元に侵入を許すなんて……覚悟はできていますか?」

 

「えっ!?えっ!?どういう事!?全く分かんないんだけど!」

 

「待ちなさーい!!」

 

部屋に入った瞬間、なぜか鬼の形相で迫るアコに、イオリは本能で危険を感じてこの場から逃げ出す。二人がドタバタと部屋から出ていくのを見て、ヒナは額に当ててため息をついた。一から事情を説明し、この状況を収めるのに面倒だと思うのだった。

 

 

 

アビドス市街地。ここで柴大将はあるものの準備を行っていた。

 

「ここを、こうして……うん、よし!完成だ。こんなもんかな」

 

柴大将が完成したものを、少し離れてチェックする。それは一台の屋台だった。

そこに、ムツキが声をかけてやってきた。

 

「わおっ、立派な屋台だね!いい感じじゃん!」

 

その言葉に、柴大将は嬉しそうに鼻を擦る。

 

「元々、柴関ラーメンは屋台から始めこともあってな。なんだか若返ったみたいだよ」

 

「わ、私が……私のせいでお店が……し、死にましょうか?死んでもいいですか?死にますっ!!」

 

その場で土下座をして地面に頭をこすりつけるハルカに、ムツキが笑って肩に手を置く。

 

「まあまあ、ハルカちゃんもそのくらいでいいよ。それにしても昨日も言ってたけど、またお店を開くことにしてくれて助かったよ~」

 

「ああ。ちょっと前にどっかの誰かさんが、お店の前にお金を置いて行ってくれたこともあってね」

 

その言葉を聞いて、アルは明後日の方向に向いて冷や汗を流す。そんな彼女を見て、柴大将は小さく笑って、続ける。

 

「引退して、ゆっくりしようと思ってたんだが……営業してほしいと言われちゃあ仕方ないってことで、店を開いたんだ」

 

「へ、へへへー、そそそうなんだー!そんな優しい人たちがいるなんて、嬉しいわねー!」

 

動揺しまくってるアルを見て、ムツキは笑いが噴き出すのを必死にこらえて、カヨコはバレバレの演技に頭を押さえてため息をついた。

 

「さて、新生柴関ラーメンの初のお客様だ。俺も気合入れようかね!」

 

柴大将は屋台でテキパキとラーメンを作り始める。そして――。

 

「はいよ!柴関ラーメンお待ち!」

 

アルたち四人の前に、4杯の柴関ラーメンが置かれる。そこには大量のトッピング山のように盛られていた。

 

「これ、また量を間違ってる気が……?」

 

「あはっ、まあ良いじゃん良いじゃ~ん」

 

「そうね、それじゃあ」

 

「「「「いただきまーす!」」」」

 

四人は柴関ラーメンを食べ始める。

そして――。

 

「あー美味しかった。さて、じゃあそろそろ行く?」

 

「社長……本当に行くの?

 この戦い、私たちには何のメリットもない。報酬も無しに、PMCと戦うなんて……」

 

「……」

 

カヨコの言葉に、アルは黙って何も答えない。そんなアルを見て、ムツキがカヨコにすり寄る。

 

「カヨコちゃん、よく見なよ。『報酬なんて、このラーメンが味わえただけで十分よ』って言いそうなアルちゃんの顔を!」

 

「そ、そうなのですか!アル様、流石です!私も見習います!」

 

「……ふふ!」

 

ムツキの言葉に、ハルカは目を輝かせてアルを見る。そんな部下たちに、アルは優雅に笑って、コートを靡かせて立ち上がる。

 

「さあ、私と一緒に地獄の底までついてくる覚悟はできたかしら?」

 

そう言って、その場を立ち去るアルだったが――。

 

(言っちゃったーーーー!!!!

 どうしよう……なんか流れでカッコいい台詞を言ったら、後に引けなくなったんだけど!?

 というか、やっぱりあの時ちゃんと先生に断っておけば……)

 

アルは少し前のことを思い返す。それは今朝の出来事。

 

「やあ!アル」

 

アルの前に五条がやってきた。

 

「あら、先生。昨日は御馳走になったわね」

 

「いいってことさ。それよりも、アルたちにまた追加で依頼したいんだよね」

 

その言葉にアルは、それが何のことかすぐに気づく

 

「それって……アビドスのことかしら?」

 

「察しがいいね、それでなんだけど――」

 

「先生」

 

「ん?どうしたの?」

 

突然、アルが五条の言葉を遮ったことに、五条は首をかしげる。

 

「悪いけど、その依頼は受け取れないわ」

 

「……そうか」

 

五条は静かに納得する。確かに、彼女たちが便利屋と言えども、今回の件はかなり危険が伴う。アルの判断に間違いはないのだろう。

 

「悪かったね、それじゃ……」

 

「先生、何か勘違いをしているようだけど……私たち便利屋は今も受けている依頼を遂行中なのよ。

 アビドスを助けるという、あなたから受けた依頼をね」

 

アルがビシッと五条に指をさして高らかに答える。ビシッとポーズを決めたアルだったが、心の中では――。

 

(ヤバーーい!!本当は昨日の報酬を貰おうとしただけなのに、なんかとんでもない方向に進もうとしてない!?というか、何で私は、あんな恥ずかしいこと言ってんのよ!うわああああ!恥ずかしいーー!!)

 

と、心の中で頭を抱えて叫び悶えていた。

そんなアルを見て、五条は思い切り笑い出した。

 

「あっはっはっは!」

 

「ちょ、ちょっと!何がおかしいのよ!」

 

腹を抱えて笑う五条に、アルは顔を赤くして拳を振り上げて怒る。

 

「いや、ごめんごめん。アルが思った以上にカッコ良かったからビックリしたんだよ」

 

「そ、そう……」

 

五条に褒められて少し照れ臭そうにもじもじするアルに、五条は微笑んで肩に手を置く。

 

「それじゃあ……アル、任せたよ」

 

「ええ、任せてちょうだい」

 

五条の言葉にアルは、不敵に笑って応える。

こうして、便利屋68は、ホシノ救出作戦の手助けをすることになった。

そして、現在に至る。

 

(どうしよう……。これはもう今更「やっぱ無しで」とか家無し雰囲気だし……!?

 今から逃げるって手は……うぅ……で、でも……)

 

そう考えているアルの脳裏に、対策委員会の顔が過る。彼女たちに「ありがとう」とお礼を言われたことや、一緒に戦ったことなどが思い起こされる。

そして、今朝の五条の言葉。

 

『任せたよ』

 

あの言葉を聞いて、ここから逃げることは本当にアウトローなのか。自分を信頼してくれた人がいるなら、その信頼に全力で応えるのが真のアウトローなのではないか。

なら、自分のやる事は決まっている。ここでウジウジと悩んでいることではない。自分のやるべきことはただ一つ。

パチーンと綺麗な音が響いた。両手で自分の頬を思い切り叩いたことで、アルの中の雑念は消えていった。

 

「うわっ、どうしたの?」

 

ムツキが驚いてアルの顔を覗き込む。そんなムツキにアルは、胸を張って答えた。

 

「何でもないわ。ちょっと、自分に喝を入れただけよ」

 

「……そっか」

 

ムツキはニヤニヤしながら、嬉しそうに歩く。カヨコとハルカもフフッと笑って、アルの後ろを歩きだす。

色々と手間のかかる社長だけど、そんなアルが社長だからこそ、自分たちはこの便利屋68に集まったのだ。そう思って、ムツキたちはアルが歩く未来(さき)についていくのだった。

 

 

そして、時が来た。アビドス高校の正門前に、シロコたちは集まる。

 

「みんな、準備はいいかい?」

 

そう尋ねる五条に、シロコたちは力強く頷いた。

 

「ん、準備は完璧」

 

「はい。弾薬などの補給も十分用意しました!」

 

「こっちもバッチリよ!睡眠はしっかり取ったし、お腹もいっぱい!カイザーPMCだろうが、どっからでもかかってきなさい!」

 

「私も、アビドス砂漠の地図をすべて最新のものに直しておきました。先生の頂いた情報から、ホシノ先輩の囚われたカイザーPMC基地の最短かつ安全なルートで案内します」

 

シロコたちがそれぞれやる気を見せる。そんな彼女たちを見て、五条は不敵に笑って声を上げる。

 

「よーし!それじゃあ、ホシノ救出作戦の開始だ!!」

 

「「「「オー!!」」」」

 

こうして、シロコたち対策委員会はアビドス砂漠へと向かう。

捕らえられたホシノを助けるために。




次回、対策委員会編最終回!お楽しみ下さい
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