シャーレの五条先生   作:未来跳躍

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少し待たせてすいません。
対策委員会の休日のミニドラマを書くつもりがいつものようにまた長くなりました。

新イベント普通に面白かったし、シュポガキ2人とも無事にお迎えできました。


対策委員会の休日

春葉原。そこは、キヴォトスでも有名な電気街。対策委員会の五人は、アビドスを離れて春葉原に来ていた。

 

「来ましたねー、春葉原!みんなと来れて嬉しいです!」

 

ニコニコと満面の笑みで嬉しさが溢れ出ているノノミの横で、ホシノはのんびりと気だるい感じで歩きながら不満を口にしていた。

 

「うへ~、何も休日に出る必要ないんじゃない~」

 

「何言ってるのよ!この前の戦いで色々と装備やらが壊れたんだから、新しく買いに来たんでしょう」

 

「そうですよ、春葉原なら壊れた機械とかの部品とかも売っていますから」

 

不満を口にするホシノに、セリカとアヤネがホシノを宥めた。二人の言う通り、先日のカイザーPMCとの戦闘で彼女たちの銃やプロテクター、ドローンなどの武器と防具が摩耗や欠損してしまったので、それを直すために春葉原までやってきたのだった。春葉原は、電気街であると同時に、色々な装備品の部品なども売ってたりする穴場でもあるために、ついでに、備蓄などもそろえるのも目的の一つである。

ホシノは特に欲しいものは無いのだが、自分を助けるために命がけで戦ってくれた後輩たちのために、買い物に付いて来たのだった。春葉原で一番大型電子ショップの「春葉原マルチメディアセンター」に到着した五人は、中に入ってフロアマップを確認する。

 

「すごーい、ここだけで色々とあるのね」

 

「家電から、自転車、家具や本まで全部そろっていますね」

 

「それじゃあ、みんなはどうする?

 私はドローンと自転車の部品を見に行く」

 

シロコがそう言うと、他の四人も思い思いにフロアマップを見ながら自分の目的を話す。

 

「私は、プロテクターの新調かな。アヤネちゃんは?」

 

「私もシロコ先輩と一緒でドローンの部品ですね」

 

「おじさんは特に用がないから――」

 

「それじゃあ、ホシノ先輩は私と一緒にお洋服でも見に行きましょうか☆」

 

「ええっ!?

 ちょ、ノノミちゃーん引っ張らないでー!」

 

ノノミがホシノの手を掴んで洋服がある階へと引っ張って向かう。それを見たシロコたちも自分たちの買い物に向かうために、エスカレーターに乗って進むのだった。

シロコとアヤネとセリカは、最初に機械部品コーナーで壊れたドローンの部品を見ていく。

 

「そういえば、シロコ先輩のドローンはあの時の戦いで大破しましたけど、新しく買い換えないのですか?」

 

「そうね、新しいのを買った方が早いんじゃないの?」

 

アヤネとセリカの言葉に、シロコは首を静かに横に振る。

 

「いや、買い換えない。このドローンは、私の大事な思い出でもあるから」

 

そう口にするシロコの脳裏に思い出される光景。

それは、セリカとアヤネが入学する少し前に遡る。

 

『シロコちゃん、はいこれ』

 

ホシノからラッピングされた大きな箱を渡されたシロコは、突然の事に何も分からず首をかしげる。

 

『ホシノ先輩、これは?』

 

『開けてみて』

 

ホシノに言われて、シロコはラッピングを剝がして箱を開ける。そこに入っていたのは――。

 

『これは……』

 

箱の中には1台のドローンが入っていた。箱から出したドローンを持ち上げたシロコは、顔には出さないが、嬉しさが声に出ていた。

 

『ホシノ先輩、これ!』

 

『うへへー、シロコちゃんももうすぐ先輩になるからねー。

 これはそのお祝いってとこかな?』

 

“先輩”という言葉に、シロコは心を打たれる。もうすぐ新入生が入学する。そうすれば、シロコはその子たちの“先輩”になるということに、胸が高鳴るのを感じた。

 

『ありがとう、ホシノ先輩!

 私、立派な先輩になる!』

 

そう言うとホシノは嬉しそうに笑っていた。

 

『そうだね、シロコちゃんなら立派な先輩になれるね』

 

『あー!二人とも何楽しそうに話してるんですかー!私も混ぜてください』

 

教室に入ってきたノノミも入れて三人で楽しそうに話して、ドローンの練習会を始めたあの日の思い出。それを思い出したシロコは、再び頷いて口を開く。

 

「ん、私はこのドローンがいい……」

 

どこか嬉しそうに、楽しそうに話すシロコを見て、セリカとアヤネは顔を見合ってフフッと微笑むのだった。

 

「そうですね。ではシロコ先輩のドローンに合う部品を探しましょうか」

 

「うん、ありがとう」

 

そこからシロコのドローンをできるだけ元の形に直すために、シロコとアヤネとセリカの三人は部品を探していったのだった。

その結果、何とか部品をそろえてシロコのドローンは元の姿に戻ったのだった。

 

「ん、性能も大幅にアップした」

 

 

 

一方、ノノミとホシノは洋服売り場で服を選んでいた。

 

「ほら、こういうのはどうですか?」

 

「うへー……こういうのは、おじさんにはちょっとキツすぎない」

 

ノノミに次々と渡される服を見て、ホシノは少し恥ずかしそうに呟く。

 

「そんなことないですよ。どれもホシノ先輩にお似合いです!」

 

「うーん、そうかなー」

 

頬をかくホシノは、意を決してノノミに尋ねる。

 

「ノノミちゃん、さ……やっぱりこの前のこと、まだ怒ってる?」

 

「……」

 

「まあ、無理もないよね……。

 私の勝手でみんなに迷惑をかけたから……」

 

「違います。私は確かに怒っていますけど、私が怒っているのは、ホシノ先輩が今も一人で背負い込んでいることです」

 

「……え?」

 

ノノミの言葉に、ホシノは思わず声が漏れ出た。戸惑うホシノに抱き着いて、ノノミが静かに語り掛ける。

 

「ホシノ先輩、この前のことといい、自分が迷惑かけたと思って私たちにどこか遠慮しがちになっていましたでしょう」

 

「そ、それは……その……」

 

「別に全部話して欲しいとは言いませんけど、少しくらいは私たちに任せて、楽しむこともあっていいんじゃないですか」

 

真っ直ぐと見つめるノノミの顔に、ホシノは少し顔を下げる。

 

「ノノミちゃん……。

 うへー、やっぱりノノミちゃんには敵わないなー」

 

ノノミの言う通り、ホシノはあの時のことを自分の責任だと思って、一人で背負い込んでいた。後輩たちもケガをしたし、色々と壊れてしまったものもたくさんあった。今日の買い物も自分のせいで、こんなところに来ることになったんだという罪悪感も少しだけあった。

けれどもノノミは、そんなホシノの後ろめたさを誰よりも理解していた。だからこそ、こうしてホシノが少しでも楽しめるようにするために、こうして一緒に服を選んだりしてくれているのだろう。

少し照れ臭そうに笑うホシノを見て、ノノミは自慢げに笑う。

 

「分かりますよ、私はホシノ先輩の最初の後輩ですから☆」

 

ニコッと笑うノノミに、ホシノはノノミと最初に会ったあの冬の日を思い出す。

 

「そうだったね……。

 いやー、あの時はコソコソと隠れていた子が、今ではこんなに立派になっておじさんは嬉しいよー!」

 

ノノミの胸元に抱き着いて笑うホシノに、ノノミは少し恥ずかしそうに怒る。

 

「も、もう!ホシノ先輩はイジワルです」

 

「うへへー、ごめんよー。

 お詫びに、おじさんと一緒にショッピングを楽しもうよ」

 

「……はい!」

 

差し出されたホシノの手を取り、二人は色々な服を見て回った。自分のを選んだり、互いの服を選びあったりして試着したものの中から気に入った服を何点か購入していった。

ホシノの笑顔を見て、ノノミはまるで自分のことのように心の底から嬉しく思えた。そして、この笑顔を守ろうと、心の中で誓うのだった。

 

 

 

互いに買い物を終えて合流したホシノは手を振ってシロコに抱き着いた。

 

「おつかれー、そっちはどうだった?」

 

「はい!いいものが買えました!」

 

アヤネの答えにホシノが満足そうに笑う。そのままマルチメディアセンターを後にした対策委員会は、この後について歩きながら話し合っていた。

 

「これからどうする?」

 

「せっかくここまで来たんだから、もっと色々寄りたいですね」

 

「それもそうねー」

 

セリカを中心に、みんなで考えている中、シロコが急に足を止めた。

 

「シロコ先輩、どうかしたんですか?」

 

アヤネが尋ねると、シロコはとある方向を指さして静かに答える。

 

「先生」

 

「「「「え!?」」」」

 

四人が一斉にシロコが指さす方向に顔を向けると、その先の方に五条がいた。

 

「本当だ!オー――」

 

「はーい、セリカちゃんストーップです」

 

「――むぐっ!」

 

セリカが声を掛けようとしたその時、急にノノミが後ろからセリカの口を塞いだ。

 

「ゲホゲホッ……ノノミ先輩、何すんのよ!?」

 

咳込みながらノノミを睨みつけると、ノノミは、ニコニコと笑いながら、五条を指さしてみんなに向かって話す。

 

「フフッ、ごめんなさい。でも、ここで先生に声を掛ける前に、私ちょっと気になったんです?」

 

「気になったって、何をですか?」

 

「この春葉原で、先生が一人でいるってことは、おそらく先生はオフだと思うんです」

 

ノノミの言葉に、全員がもう一度五条の方に目を向ける。確かに、こんなところに一人で、しかも仕事に追われている様子も見られていないことに、全員が納得をする。

 

「そう言われれば」

 

「そうかもしれませんけど……」

 

「ていうか、先生とこの街の雰囲気が似合わなさすぎでしょ」

 

全員が頷くと、ノノミは指を立てて可愛らしくある提案をする。

 

「だとしたら、どうでしょうか?このまま先生の後を付いてみるのは」

 

「さんせーい!」

 

「私も」

 

その言葉に、ホシノとシロコが真っ先に手を挙げた。セリカとアヤネが、参加していいのか迷っていると、ホシノが二人に尋ねる。

 

「セリカちゃんとアヤネちゃんも気にならないの?先生のプライベート」

 

((めちゃくちゃ気になる!))

 

心の中で二人の言葉がシンクロする。セリカとアヤネも五条のことを知りたいと思うのは、先輩たちと一緒なのである。結局、好奇心に抗えず二人も五条の尾行に参加することにした。

全員の参加が確定したので、代表であるホシノが前に出て、作戦開始の宣言を始めた。

 

「というわけで、今ここにアビドス対策委員会による緊急任務『追跡!先生のプライベートを調査せよ』を開始します!」

 

「「「おー!!」」」

 

「いいのかなぁ……」

 

全員が作戦の準備に入る中、アヤネは少しだけ何か言いようのない不安を感じていた。しかし、みんなに付いていくうちに、そんな不安はすぐに消えてしまった。

そして、対策委員会の五条悟尾行作戦が開始される。

 

 

 

「ターゲットポイントAを通過しました」

 

ビルの屋上で上空に飛行するドローンからの映像を端末でチェックしたアヤネが通信機で状況を報告する。

 

「了解。

 ターゲット追跡中、このまま尾行を続けます」

 

ノノミが五条の後ろから人ごみに紛れて報告を入れる。

一方、別の場所では――。

 

「こちらもターゲット確認、尾行を開始する」

 

シロコもノノミとは別の場所から尾行をしていた。

今回の作戦において、ターゲットつまり五条に尾行がバレることは失敗を意味する。そこでアヤネが立てた作戦は、3つのグループに分かれて、それぞれ別視点から尾行するというものだった。

まずは、アヤネがビルの屋上からドローンを使用しての上空からの尾行、およびオペレーター。次に五条の後ろには、ノノミとホシノが彼の後を追うグループ。そして、シロコとセリカが五条の前を歩いて彼のいく先を見るグループ。前と後ろと上の三視点から五条を監視する形で、彼女たちは尾行をしていた。

 

「ターゲットは依然変わりなく歩いていますが、相手はあの先生です。油断のないようにお願いします」

 

「「「「了解」」」」

 

すると、五条の足が止まる。慌ててシロコグループとノノミグループはすぐに身を隠す。

 

「どうしたんでしょうか?」

 

「まさか気づかれた!?」

 

「いや、違う。あのお店に並んだ」

 

シロコが指さすと、そこは屋台のクレープ屋だった。

 

「クレープ?」

 

「あっ、先生注文してる」

 

店員から山盛りの生クリームの盛られた巨大クレープを受け取った五条は、美味しそうにそれを食べ始めた。

 

「「「「「……」」」」」

 

全員が、190㎝越えの大人がクレープを食べ歩く姿を見て、無言になる。その静寂の中、セリカが重い口を開いてある疑問を投げかける。

 

「……なんか、大の大人が真っ昼間から生クリーム鬼盛りのクレープを片手に、このHarubaを歩くって……やろうと思ってできる?」

 

「セリカちゃん、そういう事は言わないでおくのが優しさだよ……」

 

引き続き、五条の追跡を行う中、再び五条の足が止まる。五条はそのまま、ある店に入っていくのだった。

急いで、地上の四人が五条の入った店を確認する。

 

「ここは……」

 

「パーティーグッズ専門店?」

 

そこはパーティーとかに使う小道具などが置いてある専門店で、中を覗いてみると、五条が何かを購入している姿を確認できた。

 

「一体何を買っているのでしょうか?」

 

「さあ?おじさんには分からないや」

 

「先生って、パーティー好きなのかな?」

 

「どうなんでしょう?賑やかなのは好きそうですけど……」

 

全員が五条の行動について考えていると、五条が店を出そうなことをシロコが察知する。

 

「ターゲットが店を出る。一旦散開」

 

店から急いで離れて、物陰に隠れる。屋上にいるはずのアヤネも思わず身を隠してしまい、少し照れ臭そうに咳払いをした。

 

「ターゲット、動き出しました。みなさん追跡お願いします」

 

五条は再び歩き出したと思ったが、すぐに足を止めて次のお店に入っていった。

 

「そこはオーディオ部品などを取り扱う専門店のようですね」

 

アヤネがすぐに店を調べると、セリカが怪訝そうな顔で口を開く。

 

「先生って、オーディオオタクなの?」

 

「どうなんでしょう……この前部屋で音楽を聴いてた時は、スマホのMytubeで聞いてたのですけど……」

 

ノノミの言葉に、全員が考える。オーディオ好きなら、音楽をスマホのそれも動画サイトで聞くようなことをするのかということに疑問が頭に浮かんだ。

そうこう考えている内に、五条が店から出てまた歩き始めた。そして、また歩いてすぐに足を止めてみせに入っていく。今度の店は――。

 

「ここって、カプセルトイ専門店?」

 

「カプセルトイ?」

 

聞き慣れない単語にホシノが首をかしげると、通信機からアヤネの解説が聞こえた。

 

「要はガチャポンですね。最近はこういったガチャポンだけの店も増えてきていると聞いたことがあります」

 

「へー、おじさんは知らなかったよー」

 

「だからホシノ先輩は、私たちとそんなに歳違わないでしょ」

 

セリカがげんなりとツッコんでいると、五条があるガチャポンを回し始めた。

 

「ん、先生がガチャポンを回した」

 

「なんか自分の先生が500円のガチャポンを回してるところって、あんまし見たくないわね。

 なんのガチャを回したの?」

 

セリカの言葉に答えるかのように、シロコが双眼鏡を使ってガチャポンを確認する。

 

「『世界のイラっとする謝罪シリーズ』だね」

 

「え?何それ?」

 

「あっ、これですね!」

 

ノノミがスマホで調べたガチャポンのサイトを見せる。そこには「世界のイラっとする謝罪」という名前のフィギュアたちが載っていた。それは無性に腹立つ顔や仕草で謝罪しようとしているフィギュアだった。それを見たセリカの反応は――。

 

「なんで、こんなものがあるの?」

 

額に青筋を浮かべて、その名の通りイラっとしていた。

そして、カプセルを開けた五条を見ていたシロコはその様子を報告する。

 

「先生、何か微妙な顔をしている」

 

「何を当てたの?」

 

「あれは……『クソ生意気な煽り謝罪』だと思う」

 

「あはは!なにそれ、先生にピッタリじゃない!」

 

「だ、ダメだよ……セリカちゃん……」

 

腹を抱えて笑うセリカに、通信機越しにアヤネが笑いを堪えながら注意をする。

ノノミとホシノも笑いを堪えていると、シロコがいつもの冷静な口ぶりで四人に話しかける。

 

「ごめん、先生を見失った」

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

ホシノたち三人が慌てて店の中を見ると、店の中の五条の姿が見えなくなっていた。

 

「どういうこと!?入り口に私たちがいるのに!」

 

「私たちの尾行に気づいたのでしょうか?」

 

「分かりました。この店は裏に別の店と繋がっているので、そちらの方に向かったのだと思います」

 

「そうなの!?」

 

慌てて五条を追いかけるために、店の中に入って店の奥の通路を通り、奥の店へと入る。そこは人が賑わうゲームセンターだった。

 

「人、多っ!!」

 

「わー!楽しそうなゲームでいっぱいですね☆」

 

「でも、ここじゃあアヤネのドローンも入って来れないから困る」

 

「どうしましょうか……?」

 

あまりの人の多さに、五条の姿を見失ってどうしようか困っていると、ホシノが指をさしながら口を開いた。

 

「うへー、その心配はいらないんじゃないー」

 

ホシノが指をさした先には、クレーンゲームで遊んでいる五条がすぐに見つかった。

 

「いたわね」

 

「あれは……お菓子の詰め合わせのクレーンゲームですね」

 

「あれって取れそうに見えるけど、全然取れないのよね」

 

「あら?セリカちゃん、やけに詳しいですね」

 

ノノミの言葉にセリカがビクッと背筋を伸ばす。そのまま目線を反らしながら、しどろもどろに理由を話す。

 

「そ、それは……そう!動画を見たのよ!決して、自分でやったことがあるわけじゃないから!」

 

「セリカちゃん、それは言い訳になってないと思うよ」

 

「う、うるさいうるさーい!

 ……あれ?シロコ先輩とホシノ先輩は?」

 

セリカとノノミが辺りを見渡すと、レースゲームで遊んでいる二人を見つけた。セリカは二人の元へ走っていき、声を荒げて怒鳴りつける。

 

「何やってんのよ!!」

 

「いやー、このゲームが面白そうで…つい」

 

「ん、セリカもやってみる」

 

「今は遊んでる場合じゃないでしょう!!こんなことしてたら――」

 

「まあまあ、怒る前にセリカちゃんも一回だけやってみなよ」

 

ホシノにレースゲームのシートに座らされて、コインを入れてゲームが開始する。

 

「え、ちょっと!?」

 

いきなりゲームが開始して、慌ててハンドルを握るセリカ。最初はゲームを止めようと考えていたが、シロコとホシノが両サイドに立って逃がしてもらえないようだったので、一回だけならと思い、ゲームを開始した。

 

「まあ、すぐに終わるでしょ」

 

そう思って、ゲームを始めるセリカ。

しかし――。

 

「ああ、もう!あそこでアイテムなんて卑怯でしょう!!こうなったら、もう一回」

 

気づけば、ゲームにどっぷりとハマってしまってすでに15分以上も遊んでいた。画面に喰らいつくかのように前のめりで運転しているセリカの目は、今までで見たことのないほど血走って、ほかのみんなはその姿に引いていた。ノノミが恐る恐るセリカに向かって、ゆっくりと優しく声を掛ける。

 

「セリカちゃん、あのそろそろ……」

 

「ちょっと待って!!今いいところなの!あと少しで……ああ、もう!そこでサンダー引いてんじゃないわよ!」

 

「セリカちゃんって、ハンドル握ると性格変わるタイプだったんだねー」

 

レースが終わっても離れないセリカをホシノとシロコが無理やりゲームから離して、四人はゲームセンターを後にするのだった。

 

「ん、先生を見失った」

 

「まあ、あれだけゲームに夢中になっていれば、見失うだろうねー」

 

「うっ!」

 

シロコとホシノの言葉がセリカに突き刺さる。膝から崩れ落ちるセリカを、ノノミが優しく慰めていた。

 

「でも、どうしましょうか。先生を探さなければいけませんが……」

 

「この多くの人から先生を探すのは、ちょっと難しいかもね」

 

ノノミとホシノの言う通り、歩行者天国ともいわれる春葉原で一人の人間を探すのは、いくらなんでも無謀しかない。これ以上の追跡は困難でしかないので、諦める空気になっていたその時――。

 

「あ、いた」

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

シロコがあっさりと五条を見つけたのだった。また四人が声を上げて、シロコの見つめる先にはソフトクリーム屋さんでソフトクリームを注文する五条の姿が見えた。

五条は店員からソフトクリームを受け取ると、そのまま上から口に咥えて、上のアイスの部分を吸って味わっていた。その様子を見たセリカが呟いた。

 

「なんか先生のソフトクリームの食べ方変じゃない?」

 

「えーそう?」

 

「そうでしょう!なんか吸うのって品がないっていうか……ソフトクリームは舐めるものじゃない?」

 

「えー、舐める方が品ないんじゃない?ノノミちゃんは?」

 

「私はスプーンで食べますね!ホシノ先輩は?」

 

「おじさんも先生と一緒かなー。これが王道だよ」

 

「そんなことないって!シロコ先輩は?」

 

「普通にかじる」

 

セリカ、ホシノ、ノノミ、シロコの四人がソフトクリームの食べ方談議が勃発していたのを、通信機越しに聞いていたアヤネだったが、ついに堪忍袋の緒が切れる。

 

「いい加減してください!また先生を見失ってもいいんですか!?」

 

「「「「ごめんなさい……」」」」

 

それからシロコたちは、五条の後を追い続けた。

あちこちに寄っては、すぐに去って行く五条の動きに付いて行くので精一杯だった。

 

「結局、ソフトクリーム屋の次は電気屋、その次は本屋で漫画の立ち読み、その後はリサイクルショップのワゴンセールで安く売られていた中古ゲームソフトの物色、そして、今はたい焼き屋さん、と」

 

端末で五条のルートを確認したアヤネの報告に、セリカがため息をついた。

 

「もうフラフラしすぎでしょ。あっちこっち行く私たちの身にもなってほしいわ……」

 

「えー、おじさん楽しいよー」

 

「はい!みんなでこういうのも悪くないです!」

 

「ん、満足」

 

セリカに反論するホシノたちだが、ホシノはお魚の顔のヘルメット、ノノミは星形のサングラス、シロコに至っては願いの叶う7つの球を集める物語に出てくる片眼鏡型の機械を装着していた。

それを見たセリカが、げんなりした様子で尋ねる。

 

「えっと……一応聞くけど、先輩の着けてるそれは一体何?」

 

「さっきのリサイクルショップで買ったんだー」

 

「掘り出し物です☆」

 

「ん、戦闘力の上昇を感じる」

 

「無駄遣いをするなって、いつも言ってんでしょうが!!」

 

怒るセリカから、キャーと言いながら逃げる先輩たちを見て、アヤネは苦笑するしかなかった。

そんな中、五条はとあるビルに入っていく。

 

「五条先生がビルに入りました。

 みなさん追跡を!」

 

「「「「……」」」」

 

アヤネの言葉に、四人はさっきまでのはしゃぎ様はどこへ行ったのかと問うほど沈黙していた。

 

「あの、どうしたんですか?」

 

「あ、アヤネちゃん……その……」

 

問いかけるアヤネに、セリカが少し恥ずかしそうにもじもじとしていた。

 

「アヤネちゃん、おじさんたちの目の前のビルの看板を見てみたらすぐに分かるよ」

 

「えーっと……『天国のメイド喫茶-メイドインヘブン-』。

 ……っ!?」

 

ボンッと急に顔が真っ赤になっていく。頭の中で起きたことが理解できずに、アヤネはパニックを起こした。

 

「え、ええええええっとっとと!!」

 

「落ち着いて、アヤネちゃん!」

 

セリカに止められ、アヤネが落ち着きを取り戻し、セリカにどうするかを尋ねた。

 

「セリカちゃん、どうしようか?」

 

「ど、どうするって……ここで待つしかないでしょ。

 ……あれ、シロコ先輩?何してるの?」

 

何やらゴソゴソとしているシロコが目に入ったセリカは、シロコに尋ねる。シロコは、振り返って淡々と答える。

 

「ん、この店を壊す」

 

ガチャっと銃のリロードを済ませて、武装状態になったシロコに、セリカとアヤネは驚愕する。

 

「「はあぁーっ!!」」

 

「この店は、先生に良くない。だから、壊す」

 

表情はいつもと変りないが、その目の奥にゴウゴウと燃え滾る炎を宿していた。それを見たセリカは、ノノミに声を掛ける。

 

「ちょっと、ノノミ先輩!シロコ先輩を止めて!」

 

「シロコちゃん……私も参加しますね!」

 

ガトリングを構えてノノミも笑顔で答える。それにセリカとアヤネは、ギャグマンガのようにズッコケるのだった。

 

「そ、そうだ。ホシノ先輩!二人を止めてください!」

 

アヤネが縋るようにホシノに頼む。このままでは、二人が暴れて大騒ぎになってしまう。それを止められるのは、最上級生のホシノしかいない。

 

「うんうん、分かってるよー、アヤネちゃん」

 

「ホシノ先輩……!」

 

ホシノの言葉に、希望が見えたアヤネの表情が輝く。

 

「大丈夫、おじさんに任せなよー。ちゃんと……この店を壊すから」

 

いつもの笑顔から、いつもは見せないほどの強大な威圧感を放ちながらショットガンを構えるホシノに、アヤネの希望は一瞬のうちに消えてしまったのだった。

店を破壊しようとするどす黒いオーラ放つ三人を止めるのは一人しかいない。

 

「セリカちゃん、あの三人を止めてください!」

 

「うぇっ!私!?」

 

「もうセリカちゃんしかいません!」

 

「そんなこと言ったって……ああもう!分かったわよ!」

 

セリカが店の前に立った三人を止めるべく走り出したその時、店の扉が勢いよく開かれる。

 

「は~い!いらっしゃいませ、ご主人様!」

 

「「「「え?」」」」

 

突然天使とメイドをあわせた衣装の女性が、四人を出迎えた。

 

「さあ、どうぞどうぞ天国へ~!」

 

「あ、あの、私たちはいるとは……」

 

セリカが説明しようとするが、メイドの女性の力に敵わず、店の中に引きずり込まれていく。

 

「は~い!ご主人様四名、天国へご招待で~す!」

 

そのまま、シロコたちを入れた店の扉が静かに閉められる。その様子を一部始終見ていたアヤネは、何が起こったのか理解できず、ただ一人取り残されたのだった。

 

「……」

 

ピンクに装飾された派手な店の中で、セリカは何も言えず死んだ魚の目をして呆然と座っていた。

 

「セリカちゃん、おーい」

 

「まあっ!セリカちゃん、可愛いです!」

 

「セリカ、似合ってる」

 

店に入った瞬間に、頭に天使の輪と背中に天使の羽を着けられたセリカは、先輩たち三人の声に怒る元気もないほど、テンションが地の底まで墜落していた。瞳から光が消えて俯いたまま、セリカは静かに呟く。

 

「……帰りたい」

 

この三人と一緒に協力して、早々に店を壊すべきだったとセリカが後悔している中、肝心の五条はというと、メイド喫茶なのにメイドと一緒に楽しむ様子もなく、ただ一人黙ってメロンソーダを飲みながら、窓の外を眺めていた。

 

「先生、何してるんだろうねー」

 

「ずっとああして窓の外を見ていますけど……」

 

「窓の外にあるのは、ビルの壁だけ」

 

五条がメイド喫茶ではっちゃけていないためかどうかは分からないが、先ほどまでの怒りはどこかに消えた三人は五条を観察していた。

しかし、ビルの壁しか見ていない五条に、三人は頭を悩ませているのだった。そこで、正気に戻ったセリカが椅子から立ち上がる。

 

「ほら、もういいでしょう!

 先生がいやらしい目的でこの店に入ったわけじゃないって分かったんだから、もう帰るわよ!」

 

「お待たせしましたーご主人様♡こちらメニューでぇ~すっ!

 はじめましてのご主人様はこのエンジェルセットエモエモAがおすすめとなっておりま~す!」

 

グイグイと寄ってくるメイドに圧されて、全員がそれに同意するように首を縦に振った。

 

「じゃあ、それで」

 

「かしこまリンカーネイション☆」

 

両手でピースで可愛くポーズをとって、メイドは奥の厨房へと向かっていった。

 

(あのポーズどうなんでしょうか?

 いや、私なら……)

 

先ほどのポーズを見たノノミがメイドのポーズに謎の対抗心を燃やしていた。

すると、料理を持ったメイドがシロコたちのテーブルへとやってくる。

 

「はぁ~い!ご主人様ー、エンジェルセットエモエモAで~す!」

 

その言葉と共に置かれたのは何の変哲のなく何もかけられていないオムライスだった。

 

「あれ、これってオムライス?」

 

「オムライス~?下界ではそう呼ぶのかな~?」

 

「ホシノ先輩、違う」

 

「そうですよ、ホシノ先輩。ここは天国なんですから☆」

 

「あーそうだったー!ここは天国だったんだー!

 ね、セリカちゃん?」

 

「……」

 

この店のノリにすぐに順応する先輩組と対照的に、未だに沈んだ気持ちのまま黙り続けているセリカは、もう反論することすら億劫になっていた。

無論、そんなセリカの様子など気に留めずにメイドは、あるゲームを提案する。

 

「さて、美味しくなるまじないの前に、ご主人様たちにはあるゲームをやってもらいます。

 それは、『エモさを導く高貴な試練』です!

 ルールは簡単、みなさんが思うエモいものを日常や仕草、漫画、ゲームなどから教えていただき、私が合格を出せばクリアです!」

 

「ほほう、なるほどね」

 

「さあ、トップバッターは誰ですか!?」

 

メイドがそう尋ねると、まずはノノミが元気よく手を上げた。

 

「はーい!まずは私から!

 私は『いつもは子供っぽい人が急に大人の魅力を出す瞬間』です」

 

「うわー!それ分かります!いつもとは違うギャップにキュンとくるんですよねー!合格!」

 

「はーい、ありがとうございまーす」

 

喜ぶノノミの次に、シロコが手を上げる。

 

「私は『危ないところを抱きかかえられて助けられる』」

 

「キャー!それは現実でされると、ときめきポイントMAXです!合格!」

 

「ん、当然」

 

親指を立てるシロコに続いて、ホシノが手を上げて、頬をかきながら少し時恥ずかしそうに答える。

 

「んーそうだなー。おじさんは『少女と大人との禁断の恋』……かな?」

 

「っ!!くーっ!その禁断の恋は、エモい!エモいですっ!!文句なしの合格!!」

 

「うへ~、やった~!」

 

合格を貰えて嬉しそうに喜ぶホシノ。そして最後に残った一人に、全員の視線が集まる。

 

「……」

 

「さあ、残るはご主人様だけですよー!」

 

「セリカちゃん、頑張ってくださいね☆」

 

「セリカ、頑張れ」

 

「セリカちゃーん、おじさんは応援してるよー」

 

額に青筋を浮かべて沈黙を続けるセリカを応援する四人の声が、セリカの神経をより逆撫でする。

そして、諦めか決意か分からない深いため息をついた。

 

「はあ……『何の能力もない主人公が憧れのヒーローから力を託してもらって、最高のヒーローになる』的なあれ」

 

「お、おおおおー!!私、それ大好きな推しです!うーん、同好の士に出会えたおまけで、ポテトことエモ芋をサービスで追加してあげまーっす!」

 

「良かったねー、セリカちゃん!」

 

「いや、いらないんだけど……」

 

セリカの言葉を無視して、他のメイドが山盛りポテトを持ってくる。

 

「はーい、それではーエモ芋マシマシ入りまーす!ご主人様も一緒にお願いしますよー」

 

「いや、だから私は……」

 

「セリカちゃん、ここは空気を読むところだよ。これは委員会の部長命令ね」

 

「……」

 

絶望ってこのことを言うんだとセリカは理解した。ワクワクとした眼差しで待っている先輩たちを後で絶対にしばこうと心に決めて、セリカは、覚悟を決めた。

 

「それでは行きますよ~!

 エモエモ♡マシマシ♡キュン♡キュンッ♡」

 

「え、エモエモ……マシマシ……キュン、キュン……♡」

 

メイドさんと同じように可愛らしくポーズを決めた瞬間、カシャッというシャッター音とフラッシュがセリカに届いた。

 

「は~い!ありがとうございまーす!思い出のチェキも一緒に後で渡しますね☆」

 

「は、はぁっ!?そんなの聞いてないんだけど!?」

 

「うふふ、可愛らしいですねー。でも、こういう経験が大人になるんですよ♡」

 

こうしてセリカは、顔を真っ赤にして俯いたまま喋らなくなってしまった。

そうして、セリカの初めてのメイド喫茶は、彼女にとっての黒歴史となって心に深く刻まれたのだった。

 

 

 

店を出た四人の反応は、楽しそうに満足げなホシノたち先輩組と、陰鬱なオーラを纏った死にそうな顔のセリカの二極化されていた。

 

「疲れた……」

 

ボソッと零れるセリカの言葉は、今にも掻き消えそうなほど弱々しいものだった。

そんな中、ホシノが写真を取り出してセリカに尋ねる。

 

「セリカちゃん、さっきのセリカちゃんのチェキ貰ったけどどうする?」

 

「ホシノ先輩、それを渡して。神社の焚き上げに持ってって処分するから」

 

「そんな!セリカちゃん、もったいないですよ!」

 

「ん、もったいない」

 

シロコとノノミもブーイングがを出すもののセリカは一切怯むことなくホシノからチェキを奪おうとする。ホシノもせっかくのチェキを処分されたくないので、必死にセリカを躱し続けた。

そんなやり取りが10分続いて、セリカの息が上がった時、ノノミが周りを見渡して口を開く。

 

「そういえば、結局先生を見失っちゃいましたね」

 

「ああ、そうだった!」

 

「忘れてた」

 

本来の目的を思い出したシロコは、ノノミと一緒にキョロキョロと辺りを見る。

 

「もう先生なんかどうでもいいじゃない……」

 

疲れ果てて、既に五条の尾行などどうでもいい気分のセリカだったが、シロコたちは諦めずにまだ探していた。

 

「先生、どこに行ったんだろう?」

 

シロコがそう言った次の瞬間、彼女たちの背後からそっと声が聞こえた。

 

「僕がどうしたって?」

 

「「「「きゃあああ!!」」」」

 

急に後ろからの声に驚いて跳び上がり、振り返るとそこには五条が笑顔で立っていた。

 

「せ、先生っ、いつの間に……!?」

 

「うへ~、びっくりしたよ~」

 

「あら、アヤネちゃん!どうしてここに?」

 

驚いて乱れた息を整えながらよく見ると、五条の横にビルの屋上にいたはずのアヤネがいたのだった。

アヤネは驚くみんなを見て、少し恥ずかしそうに状況の説明を始めた。

 

「実はあの後、先生が店を出たのは確認したのですけど、その瞬間に私の後ろに移動してて」

 

「いやー、アヤネもみんなと同じくらい驚いてたね」

 

「うう……恥ずかしいです。

 しかも、先生は気づいていたみたいです。私たちが先生の追跡を行っていること……」

 

アヤネの言葉に、シロコたち全員が驚愕し、セリカが思わず声を漏らす。

 

「え、マジ?」

 

「うへー、おじさんたち結構気を付けてたんだけどなー」

 

少し悔しそうにするホシノに対して、見てわかるほどの渾身のドヤ顔で五条が一言言う。

 

「僕、目良いから!」

 

「いや、先生目隠してる」

 

「僕、最強だから!!」

 

「うん、分かった」

 

五条の説明になっていない説明で、シロコはなぜかすぐに納得する。

セリカとアヤネは納得しておらず首をかしげている中、ノノミはなぜ春葉原にいるのかという理由を直接問いかけた。

 

「それで、先生はどうしてここに?

 今日はお休みなのでしょうか?」

 

「いや、普通に仕事だよ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

あっけらかんと答える五条に、対策委員会の全員が声をそろえてキョトンとしていた。

 

「でも、クレープ食べたり」

 

「マンガ読んだり」

 

「ゲーセン行ったり」

 

「メイド喫茶に行ったりしてた」

 

今日の行動を振り返る生徒たちに、五条はいつものように笑って答える。

 

「僕くらいになると忙しすぎて仕事しながらじゃないと、街中ぶらり再発見もできないからねぇ。

 こう見えて、やることキッチリやってんだよ」

 

「やること?」

 

シロコが五条の言葉に、首をかしげる。それを見て、五条は嬉しそうに笑った。

 

「クエスト探し♪」

 

「クエスト?」

 

「言い方を変えると、対策委員会のみんなの実習向けのいい感じの荒くれもの探し、及び下見」

 

「「「「「え?」」」」」

 

再びキョトンとする五人に、五条はウキウキとした様子で語り始めた。

 

「そこのぉメイド喫茶の隣のビル、最近チンピラ集団が連合を組んだ上にアジトを構えてしまったらしくてねぇ。近隣住民からお困りの依頼がシャーレに届いたからそれを見に来たんだよねぇ」

 

「なるほど、それでメイド喫茶に入ってもビルを見てたんですね」

 

「んでー、予定はもうちょい後日だったんだけど、なーんかちょうど良く対策委員会全員がそろっていたからねー。

 こりゃいいや!今日挑戦させちゃおう!と、思って」

 

「はい?えっと、先生……それは一体……?」

 

五条の言葉に全員が固まる。アヤネが震える声で恐る恐る聞いてみると、それを見て五条は楽しそうに笑って返す。

 

「大丈夫。もうビルの中のアジトに君たちの名前で挑戦状と贈り物を届けておいたから、そろそろ……」

 

五条がビルを覗くと、ビルの中から大量のチンピラたちが一斉に姿を現した。チンピラたちは、対策委員会を確認すると、既に怒りのボルテージがMAXな状態で声を上げる。

 

「いたぞ!あいつらだ!てめえら、よくもふざけたマネしやがって!!」

 

「覚悟しろや!!」

 

「ぶっつぶすぞ!!」

 

チンピラの一人の手には「お前ら雑魚の分際でイキんじゃねーよ。これでもやるから首を洗って待ってろ アビドス対策委員会一同」と書かれた紙と先ほど五条が当てたガチャポンの景品が握られていた。

 

「せせせ先生!?」

 

アヤネが慌てて五条の方に向かって声を掛けるが、それに対してすごく楽しそうに笑って手を振る。

 

「ほらほら、お相手さんがお待ちかねだよ」

 

「……はあ、行くわよ」

 

真っ先に動いたのはセリカだった。それを見て、他のみんなは驚愕して固まっていた。

 

「「「「……」」」」

 

「……何よ?」

 

「あっいえ、セリカちゃんいつもこういう時……」

 

「怒って先生に文句を言うから……」

 

「びっくりした」

 

その言葉にセリカはピキッと額に青筋を浮かべるが、ため息をついて答える。

 

「別にゲームセンターでボロ負けしたり、メイド喫茶で変な挨拶させられるよりよっぽどマシだからよ。

 ほら、行くわよ!」

 

そう言って銃を構えて走り出すセリカに、シロコたちも銃を構える。

 

「そうだね」

 

「あの、メイド喫茶の挨拶って……?」

 

「あとで教えてあげるよー、アヤネちゃーん」

 

「はい!セリカちゃん、とっても可愛かったんですよ!」

 

「い、いいから!そんなの言わなくていいから!」

 

シロコたちが戦いに向かう中、五条は後ろで手を振りながら暢気に口を開く。

 

「じゃあ、みんな頑張ってね。僕はここでたい焼き食べてるから!」

 

「先生、まだ食べるんですか!?」

 

手にした袋からたい焼きを取り出して美味しそうに食べ始める五条に、アヤネは思わず驚いた。

みんなが走っていく中、ホシノのポケットから一枚の紙が落ちるのを五条は見ていた。それを拾い上げて、ホシノに声を掛ける。

 

「ホシノ~ポケットから何か落ちたよ……って行っちゃたよ」

 

声も聞こえないまま走っていたホシノに置いて行かれた五条は、拾い上げた紙を見てみる。

 

「写真?

 『セリカ様、また来てね♡』」

 

そこには、メイドと一緒に手でハートを作り、料理に向かって愛情を注入する恥ずかしさで顔を真っ赤にしているセリカとそれを楽しそうに見ているシロコたちが映っていた。

 

「……フッ、あっはははは!

 なんだかんだ青春してるじゃないか、若人」

 

楽しそうに、嬉しそうに笑う五条は、対策委員会のみんなが笑顔で青春を送れていることに、心から喜ぶのだった。

 

ちなみに、写真については全力でセリカを煽り散らかして怒られた。




ついに次回、時計じかけのパヴァーヌ編始動!

P.S.
先日のイベント開始日

自分「何とか80連でヒカリは引けたけど、残りの石は今後のために置いておこう」

次の日

自分「あっ!運営から10連分のチケット貰った。これで1回だけ引くか」

ノゾミ「列車操縦でも線路建設でも!なんでも任せてよ、パヒャヒャッ!」

自分「……え?」

正直、夢なのかと思いました……。
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