シャーレの五条先生   作:未来跳躍

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GQuuuuuux面白すぎる。毎週の楽しみです。
自分のお気に入りMSはバルバトスルプスとジークアクス、デルタカイです!
皆さんのお気に入りのモビルスーツは何ですか?
後おススメのガンダム作品は何ですか?教えてください。


資格審査

「私たちの学校、ミレニアムを!」

 

モモイの言葉に、アリスは楽しそうな顔で口にする。

 

「なるほど、つまりはダンジョン探索ですね」

 

目をキラキラ輝かせるアリスに、モモイはアハハと笑いながら答える。

 

「まあ、それに近いかな。

 まずアリスに教えなければいけないことがあって……。ミレニアム……ううん、キヴォトスの生徒は、みんなそれぞれ自分の武器を持ってるの」

 

そう言って、モモイはアリスに自分の銃を見せる。興味深そうに銃を見るアリスに、モモイは腕を組んで考える。

 

「だから、アリスにも武器を見繕ってもらわないとね。

 調達する方法は色々あるけど、このミレニアムで一番手っ取り早く、ちゃんとした武器が手に入る場所と言えば……やっぱりエンジニア部かな」

 

「エンジニア、部……?」

 

「機会を作ったり、修理したり専門家のことを、ミレニアムでは『マイスター』って呼んでるんだけど。

 エンジニア部はそのマイスターがたくさん集まってる、ハードウェアに特化した部活なの」

 

「機会全般に精通してるのはもちろん、武器の修理とか改造なんかも担当してる部活だから。多分、使ってない武器とかがいろいろ残ってるんじゃないかなって」

 

ミドリとモモイの説明を受けて、アリスの目が好奇心に輝く。そんなアリスの手を握って、モモイは笑って連れ出そうと引っ張る。

 

「というわけで、早速行ってみよっか!」

 

「はい!ダンジョン探索で伝説の剣を手に入れてみせます」

 

部室を飛び出した二人を見て、ミドリが五条の方に振り返る。

 

「それじゃ先生、私たちも行きましょうか」

 

「そうだね、ユズは……って聞くまでもないか」

 

五条がユズの方に振り返ると、ユズは既にロッカーの中に戻っていた。引っ張り出すこともできるが、五条の教師としての勘が今はまだ放っておいて良いとささやくので、五条はミドリと一緒にモモイとアリスの後を追うのだった。

ミレニアムの中を色々と見て回るゲーム開発部たち。ミレニアムは最先端を目指すキヴォトス三大学園の一角を担うだけあって、色々と目新しいものにアリスは興奮する。

最先端の技術でできたスイーツを堪能したり、使用者の嗜好からAIが自動で服を見繕ってくれるマシーンでオシャレしたり、最新の映像技術を用いた映画を見たりとミレニアムを心から満喫していた。

五条もアリスと一緒に、最先端の技術を子供の様にはしゃいで楽しんでいた。

 

「全く先生ったら、大人なのに子供の様にはしゃいじゃって」

 

フフッと大人っぽい笑いで五条とアリスを見るモモイだが、そんなモモイにミドリが一言言う。

 

「お姉ちゃんが言えることじゃないけどね」

 

「そういうミドリだって、他人のこと言えないじゃん」

 

モモイとミドリも、五条とアリスと一緒に遊びまくっていた。

こうしてミレニアムを満喫した一行は、目的のエンジニア部のいる部室に到着する。

 

「おはようございまーす!!」

 

モモイが元気よく大声で挨拶をすると、奥から一人の生徒が近づいてきた。

 

「おや、モモイじゃないか。

 珍しいね、ここに来るなんて」

 

「あっ、ウタハ先輩!」

 

「ウタハ先輩、おはようございます」

 

「ミドリ、おはよう」

 

ウタハはミドリにも挨拶をすると、横にいた五条とアリスに気が付いた。

 

「そちらは?」

 

「はい、アリスはアリスです!」

 

「僕は五条悟、シャーレの先生だよ」

 

五条の名前を聞いて、ウタハは感心して手を差し出す。

 

「ああ、あなたがあのシャーレの先生でしたか。

 申し遅れました、このエンジニア部部長の白石ウタハです。どうぞよろしくお願いいたします。」

 

深々と頭を下げるウタハに、五条は軽く笑いながら返す。

 

「ハハ、そんな畏まらなくてもいいよ。気軽に話してくれていいから」

 

「では、そのように。

 そういえば、今日は何の用で?」

 

「実はね、この子に新しい武器を用意してほしいんだ」

 

「この子に?」

 

ウタハは、アリスの方に顔を向ける。するとアリスは、ニコッと笑って返すのだった。

 

「……なるほど、大体把握できたよ。

 新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい……と」

 

「うん、そうだよ!」

 

「そういうことであれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね。

 ミレニアムにおける勝敗というのは、優れた技術者の有無に大きく左右されてしまうものだ」

 

ウタハは、部室の隅を指さす。その先には、大量の武器や機械が積まれていた。

 

「そっちの方に、私たちがこれまで作ってきた試作品が色々と置いてある。

 そこにあるものであれば、どれでも持って行ってくれて構わないよ」

 

「やった!ありがとう、先輩!」

 

モモイがお礼を述べると、アリスを連れて積まれた試作品を物色する。アリスが様々な武器を眺めていると、彼女横に一人の少女が話しかけてきた。

 

「やあ……1年生のヒビキだよ。良ければ私が、何か良いものを見繕ってあげる……。

 ……これはどう、アリス?」

 

そう言って、ヒビキは一丁の拳銃を取り出す。

 

「へえ、拳銃?」

 

「見た感じ、多分だけど……これまでにあまり戦闘経験はないはず……」

 

ヒビキの言葉に、アリスは首を横に振って否定する。

 

「その言葉は否定します。アリスはこれまでに人類を27回救い、魔王軍との46回に渡る戦闘を行い、三桁を超えるダンジョン探索を行ってきました。経験値はそれなりに豊富です」

 

「それはすごいね……」

 

「……」

 

アリスの言葉に、ヒビキは少し引きながら苦笑する。それを見てミドリは、不安げに黙っていた。アリスは、ゲームの話をしていたのだろうが、何も知らない人が聞けばただの痛い中二病の人にしか聞こえない。下手なことを言って、アリスが偽装入学したことがバレないか、ハラハラとしていた。

 

「とにかく、銃器を使用した経験は……あまり無さそう。

 そういう人にはやっぱり拳銃が良い……これはプラスチック製だから軽いし、反動も少ない……。そういう意味でも、色々と初心者に優しいはず……それに、何より……この銃にはミレニアム史上、今まで存在しなかった機能が搭載されてる」

 

自信満々に笑うヒビキに、モモイとミドリは興味深そうにヒビキに尋ねる。

 

「な、何それ?」

 

「なにか聞く前から凄そう……いったいどんな機能なの?」

 

「それはね……」

 

少し溜めてから、ヒビキはゆっくりと答える。

 

「『Bluetooth』機能、だよ」

 

「……えっ?」

 

予想外の答えに、モモイとミドリはポカンとした表情になり、アリスは可愛らしく首をかしげていたのを見たヒビキは、楽しそうに自身の発明した拳銃について説明を始めた。

 

「Bluetoothを通じて、音楽鑑賞やファイルの転送まで可能な拳銃……調べた限り、そんなものは今までに存在しなかった。

 ……もちろん、スモモ機能も搭載。乗り場のICパネルにタッチして、交通機関を利用することもできる。

 それにNFC機能もついてるから、コンビニペイだって使えちゃう……」

 

「す、すごいと言えば、すごい気もするけど……。コンビニで『これで決済を』って拳銃を突き出したら、店員さんがビックリしちゃうよ!」

 

モモイがツッコむと、ヒビキは不服そうに首をかしげた。

 

「えー、そうかな……?」

 

「そうだよ!こんなもの使ったら、即ヴァルキューレ案件だよ!ダメダメ、却下!」

 

すると、ミドリがアリスの姿をみえないことに気が付く。

 

「あれ、そういえばアリスちゃんはどこに……?アリスちゃん、アリスちゃーん?」

 

ミドリが声を掛けて探すと、ヒビキがすぐにアリスを見つける。

 

「……あ、あそこに」

 

ヒビキが指さした先に、アリスはあるものをじーっと見つめていた。それは、アリスの身の丈にもありそうな大きな機械だった。砲身が付いていたので、大砲のように見えるのだが、アリスは初めて見るものに興味津々に飲眼差しで眺めていた。

 

「ふっふっふっ……お客さん、お目が高いですね」

 

眺めているアリスの横から突如かけられた声に反応すると、眼鏡をかけた少女が嬉しそうに笑っていた。

 

「え、えっと……?」

 

「説明が必要なら、いつでもどこでも答えを提供!エンジニア部のマイスター、コトリです!」

 

「……?」

 

状況が良く分からず首をかしげるアリスに、コトリはググイッと近寄ってきた。

 

「あなたがアリスですね。ゲーム開発部、四人目のメンバー!」

 

「あ、コトリちゃん久しぶり。ところで、アリスちゃんが見てるこの大きいのは何?」

 

アリスの元へやってきたミドリがコトリに、アリスの見ていた大きな機械について尋ねる。

 

「まるで……『大砲』、みたいだけど」

 

ミドリの言葉に、コトリは眼鏡をくいっと直して説明を始める。

 

「良い質問ですね、ミドリ。これはエンジニア部の下半期の予算、そのうちの約70%近くをかけて作られた……エンジニア部の野心作、『宇宙戦艦搭載用レールガン』です!」

 

「宇宙戦艦、って……また何かとんでもないことを……」

 

「前にも、確かコールドスリープしようとして、『未来でまた会おう』って言いながら冬眠装置を作って大騒ぎした挙句、みんなして風邪引いてなかった?」

 

モモイとミドリが呆れていると、後ろからウタハが二人に声を掛ける。

 

「……どの『未来直行エクスプレス』なら、今でもよく使っているよ。

 ……まあ、冷蔵庫として、だがね。食べ物をもっと先の未来にまで送れるようになったから、失敗ではないさ」

 

「使い道の割に、名前が大袈裟!」

 

そこに遅れてきた五条が、先ほどのレールガンを指さして純粋に問いかける。

 

「この宇宙戦艦搭載用レールガンって、何の目的で作ったの?」

 

「おっと、先生。話を戻しますとエンジニア部は今、ヘリコプターや汎用作業ロボットに続いて、宇宙戦艦の開発を目標としているのです!このレールガンは、その最初の一歩です。大気圏外での戦闘を目的として開発された実弾兵器!これはミレニアム史上、明らかに類を見ない初の試みです!」

 

「おぉ!」

 

「かっこいい……聞いただけでワクワクしてくる!」

 

「さすがミレニアムのエンジニア部!今回は上手くいってるんだね!?」

 

五条とモモイ、ミドリの三人が感心していると、コトリは鼻高々に答える。

 

「ふっふっふっ、もちろんです!と言いたいところだったのですが、ちょっと今は中断してまして……」

 

「えええっ!?なんで!期待したのに!」

 

がっかりするモモイに、コトリは残念そうな顔で訳を口にする。

 

「いつものことながら技術者たちの足を引っ張るのは、いつの世も造像力や情熱の欠如ではなく、予算なんです。

 このレールガンこのを作るだけで下半期の予算の70%もかかったのに、宇宙戦艦そのものを作るには果たして、この何千倍の予算がかかることやら……」

 

「そんなの計画段階で分かることじゃん!どうしてこのレールガン、完成まで持って行っちゃったのさ!?」

 

モモイのツッコミに、ウタハは静かに口を開く。

 

「愚問だね、モモイ。

 ……ビーム砲は、ロマンだからだよ」

 

その言葉に、ヒビキとコトリは大きく頷いた。

そんな彼女たちを見て、モモイは大声で叫ぶのだった。

 

「バカだ!頭良いのにバカの集団がいる!」

 

「ぎゃははは!お腹いたい……!」

 

「……」

 

腹を抱えて爆笑する五条と呆れて声が出ないミドリたちを余所に、ヒビキたちは説明を続けていく。

 

「エンジニア部の情熱が注ぎ込まれた、この武器の正式名称は……」

 

「『光の剣:スーパーノヴァ』!」

 

「また無駄に大袈裟な名前を……」

 

ため息をつくミドリだったが、アリスがその名前を聞いて反応する。

 

「ひ、光の剣……!?」

 

「アリスどうしたの?って、めちゃくちゃ目が輝いてる!?」

 

キラキラと目を輝かせてアリスは、レールガンを見つめていた。

 

「アリスちゃんがこんなに興奮してるの、初めて見たかも」

 

「これ、欲しいです」

 

レールガンを指さしてアリスは、ヒビキに欲しいというのだった。アリスの言葉に、ヒビキは困惑のあまり目が点になった。

 

「……え?」

 

「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ」

 

アリスが言い直して再びお願いするも、ヒビキはどうしようか困っていた。そんなヒビキを助けるかのように、ウタハとコトリがアリスに申し訳なさそうに口を開いた。

 

「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど……」

 

「申し訳ないのですが、それはちょっと出来ないご相談です!」

 

「何で!?この部屋にあるものなら何でも持っていって良いって言ったじゃん!」

 

モモイが声を上げて文句を言うと、ヒビキは深刻そうな顔で答える。

 

「……それには理由があって」

 

「理由?

 もしかして、私のレベルが足りていないから……装着可能レベルを教えてください!」

 

「いや、悪いがそう言った問題ではなくてだね……もっと現実的な問題なんだ」

 

「お金かー……」

 

モモイが察したように天を仰ぐ。それに対して、ウタハが首を横に振る。

 

「……お金の問題でもないよ」

 

「現実にお金以上の問題なんて無いでしょ!」

 

「まあ、政策における予算という意味では、ある程度同意するけれど……。

 ……この武器は、個人の火器として使うには大きくて重すぎる」

 

「なんと、基本重量だけで140㎏以上です!さらに高額照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬間的な反動は200㎏を超えます!」

 

ウタハとコトリの説明に、アリスは残念そうに顔を俯かせる。そんなアリスの肩に手を置いて、ウタハはアリスに申し訳なさそうに声を掛ける。

 

「これをカッコいいと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。ありがとう。持っていけるならば、本当にあげたいところなのだけど……」

 

「……!」

 

その言葉にアリスは顔を上げる。そして、ウタハに詰め寄って彼女に問いかけた。

 

「……汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」

 

「ん?この子、また喋り方が……?」

 

首をかしげるウタハに、ミドリが慌てて説明に入る。

 

「た、多分ですが、『本当なのか』って聞いてるんだと思います」

 

「もちろん嘘は言っていないが……それはつまり、アレを持ち上げるつもり、ということかい?」

 

アリスは静かに頷いた。そして、アリスはれ-るがんの前に立ち、そっと手を掛ける。

 

「この武器を抜く者…………此の地の覇者になるであろう!」

 

「ふふふっ、なるほど。意気込みは素晴らしいですね!」

 

そう意気込むアリスに、コトリは興味深そうに笑って眼鏡を直した。アリスはグッと握り――。

 

「ふっ……!」

 

持ち上げようとする。ヒビキは心配そうにアリスに声を掛ける。

 

「無理は、しない方が良い……クレーンでも使わないと持ち上がらな――」

 

「んんんんっっ……!」

 

レールガンが動き出す。それを見て、ウタハたちエンジニア部全員が驚きの声を上げるのだった。

 

「……まさか」

 

「えぇぇっ!?」

 

グググググッと持ちあがっていくレールガン、みんなが驚愕する中、五条は嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。

 

「……も、持ち上がりました!」

 

アリスがレールガンを持ち上げながら輝くような笑みでエンジニア部に向けて笑った。

 

「嘘……信じられない……」

 

「えっと、ボタンは……これがBボタンでしょうか……?」

 

「待って……!」

 

アリスが引き金に指をかける。それを見たヒビキが慌てて声を掛けよう走り出すが――。

 

「……っ、光よ!!!」

 

その言葉と共に、強烈な光が天へと撃ち出された。とてつもない轟音を響かせながら、エンジニア部の部室の天井と屋根はきれいさっぱり消えてしまったのだった。

 

「あああああっ!わ、私たちの部室の天井がぁっ!?」

 

「……すごいです。

 アリス、この武器を装着します」

 

「ほ、本当に使えるなんて……で、ですがそれだけは、その……!予算とかもろもろの問題で、できれば他のでお願いしたく……!」

 

コトリがアリスにお願いしようと頭を下げていたが、それをウタハが止めた。

 

「……いや。

 構わないさ、持っていってくれ」

 

「ウタハ先輩……本当に良いんですか?」

 

ミドリが尋ねると、ウタハは頷いて答える。

 

「ああ。どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね。

 ヒビキ、後でアリスが持ち運びやすいように、肩紐と取っ手の部分を作ってあげてくれ」

 

「分かった。

 ……前向きに考えると、実践データを取れるようになったのはありがたいかも」

 

「うわ、何だかものすごい武器を貰っちゃったね!ありがとう!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

モモイとアリスは二人でハイタッチして喜んでいた。しかし、そんな二人に、ウタハは――。

 

「いや、お礼にはまだ早いさ」

 

と、返す。

 

「えっ?」

 

ポカンとするモモイだったが、ウタハはヒビキに向けてあることをお願いする。

 

「……ヒビキ、以前に処分命令を受けたドローンとロボット、全機出せるかい」

 

「うん、分かった」

 

ヒビキが部屋の奥に行くのを見て、ミドリがウタハに声を掛ける。

 

「えっと、ウタハ先輩?なんか展開がおかしいような……」

 

「このパターンてまさか、『そう簡単にこの武器は渡せない』という王道なパターンじゃないよね」

 

ニコニコとごまをする仕草でウタハに媚を売るモモイに、ウタハはニコッと笑って首を頷く。

 

「ああ、その通りだよ。

 その武器を手に入れたいのなら――」

 

「私たちを倒してからにしてください!」

 

ウタハが決めようとした時、彼女の前にコトリが出てきてゲーム開発部に挑戦を叩きつける。

 

「ええ、何で!?」

 

「武器一つのために、ここまで……」

 

文句を言うモモイとミドリに、ウタハは静かに答える。

 

「他の武器なら問題はないさ。でも、その武器なら話が変わる。

 見せてもらいたいんだ、この武器を渡すに足る“資格”があるのかどうかを、ね。

 先生はどう思う?」

 

ウタハは五条の方に顔を向けて、挑戦的な笑みを浮かべて問いかける。モモイが横で首を横に振って両腕で×のジェスチャーを取って、断らせようと企むのだが――。

 

「もちろん、異論はないよ。存分にかかってくると良いさ」

 

そう満面の笑顔で返すのだった。

 

「せんせーい!」

 

モモイが怒って声を上げた時、アリスが部屋の奥から来る敵の反応に気が付いた。

 

「前方に戦闘型ドローン及びロボットを検知、敵性反応を確認。

 来ます!」

 

その言葉と同時に、ドローンとロボットが一斉にゲーム開発部目掛けて襲い掛かってきた。

 

「ああっ、もう!

 行くよ、お姉ちゃん!」

 

「しょうがないなぁ!」

 

モモイとミドリの二人が、銃を構えて迎え撃とうとした時、飛行するドローンたちが上からライフルを連射する。

 

「うわっ、とと……!」

 

足元を連射されて、タップダンスを踊るかのように足をばたつかせて避けるモモイに、横からミドリがドローンを狙い撃った。

 

「サンキュー、ミドリ!」

 

「お姉ちゃん、しっかりして!」

 

すると、ミドリの後ろのドローンが撃ち落とされる。

 

「へへーん、ミドリもしっかりしてよね!」

 

「……」

 

自慢げに笑うモモイに、ミドリはふくれっ面になって黙り込む。

喧嘩をしていても、戦闘における二人のコンビネーションは一切の乱れはない。

それを見た五条は、面白そうに笑みを浮かべていた。先日の戦闘の一部始終も見ていたが、この二人は戦闘力だけを見れば、さほど高くはない。個人の力なら、前回のアビドス、いや、ヒフミにも劣る可能性もあるだろう。だが、双子の姉妹のコンビネーションが合わさった時の力は、なかなか目を見張るものがある。今はまだ粗削りで拙いところもたくさん見えるが、この長所を磨けば中々に育つのではないか。その期待が、五条の心を昂らせる。だが、五条が笑うのは、才羽姉妹だけではない。この戦いのメインとなるのは――。

 

「さて、どうする?アリス」

 

アリスを見て五条はほくそ笑むのだった。

アリスは、初めての戦闘に苦戦を強いられていた。上と下、同時に襲い掛かる攻撃に対応が遅れてしまう。それに、問題なのは、あの武器だ。巨大の武器で狙おうにも、上空のドローンはちょこまか動き回って狙いが定まらないし、その隙に地上のロボットの攻撃に被弾してしまう。モモイとミドリも、自分たちで手いっぱいで手を貸してもらえそうにない。

アリスは素早く計算する。上空のドローンと地上のロボット、二つを同時に撃破する方法を――。

だが、どう計算しても今のままでの勝率は0%という非情な結果しか出なかった。自分にこの武器を扱う資格はないだろうかと、落ち込みそうになったその時、横で戦いを見ていた五条の声が、アリスの耳に聞こえた。

 

「アリス、二つの敵を制圧する簡単な方法を伝授してあげる。

 それはね、一つにまとめればいいんだよ」

 

アリスは、その言葉の意味が理解できなかった。まとめるなんて、どうすればいいのか。ドローンは上空を忙しなく動き回って自分たちに攻撃をするし、地上のロボットは規則的な隊列でドローンと連携して攻撃してくる。その二つを一つになんて……周囲を見渡してもこの広い部屋には隠れらそうな場所はなく、奥にある狭い部屋しかない。

その瞬間、アリスの頭にある考えが脳裏に閃くのだった。

 

「アリス、閃きました!」

 

アリスの顔が、それまで暗い表情だったのが明るい笑顔に変わる。

そして、アリスはモモイとミドリに向けて大声で呼びあげた。

 

「モモイ、ミドリ、こっちです!」

 

「えっ!?」

 

「アリスちゃん!?」

 

アリスが手招きをして、二人を呼ぶ。二人は、銃で牽制してアリスの元へと駆け寄った。

 

「付いてきてください」

 

アリスが走り出すのを見て、二人は驚愕する。だが、アリスの顔を見て二人はアリスを信じてついてくることにした。

 

「どういうことだ?」

 

ウタハが怪訝そうに眉を吊り上げて呟く。自分たちが相手ならともかく、ドローンとロボット相手にこの部屋で走り回っても、振り切れることはできないし、何よりも彼女たちが向かうのはドローンとロボットが入っていた格納庫しかない。あの部屋は、広くもなく、隠れるようなものも無いから入っても袋の鼠になるだけしかない。

 

「諦めたのかな?」

 

「やはり、あの子たちでは無理だったことでしょう!」

 

ヒビキも首をかしげ、コトリは自信満々に自分たちのドローンたちの方が優秀であることに胸を張るのだった。しかし、ウタハはこの状況にどこか違和感を感じ取っていた。

格納庫に逃げ込むアリスたち。モモイがアリスに尋ねる。

 

「アリス、どうするの!?」

 

「アリスちゃん、ここ行き止まりだよ!?」

 

格納庫の奥にまで逃げてきた三人を追って、ドローンとロボットが迫り込む。絶体絶命の状況に、二人がパニックになる。

 

「「うわ~、もうおしまいだ~!」」

 

そんな中、アリスは不敵な笑みを浮かべる。

 

「……この時を、待ってました!」

 

アリスは、光の剣を構える。光の剣は、先ほどの逃げ回っている間に、発射に必要なエネルギーを充填し終えていた。

そして、ウタハはここでアリスの作戦に気が付いた。

 

「ま、まさか!?」

 

作戦はシンプルかつ単純なものである。だからこそ、気づけなかった。

ウタハの横で佇む五条が、ニカッと笑う。アリスが、彼の意図を読み取れたことに喜んでいた。

そして、勝負は間もなく幕を下ろす。

 

「――光よ!!」

 

引き金を引いた光の剣から放たれる一撃が、格納庫に固まっていたドローンとロボットを全て吹き飛ばすのだった。

轟音と共に辺り一帯が煙に包まれる。煙が晴れた先には、アリスがとびっきりの笑顔で五条に向けてピースをしていた。

 

「やりました、アリスの勝利です!」

 

「……」

 

呆然としたままアリスを見ていたウタハが、静かに口を開いた。

 

「素晴らしい。見事なものだ」

 

コトリが悔しそうにしながら、アリスに拍手を送る。

 

「く、悔しい……ですが、これが結果ですね。

 アリス、その『光の剣』はあらためて、あなたの物です!」

 

「わぁ、わぁっ……!」

 

アリスが嬉しそうに笑って飛び跳ねる。その横で、ミドリが額を拭って安堵の息をこぼす。

 

「ふぅ、とりあえず良かった……」

 

ヒビキがアリスに近づいて、彼女の肩に手を置いて称賛する。

 

「それを使いこなせるなんて、本当にすごいね……。

 おいで、アリス。もう少し使い方を教えてあげる。それから、取っ手の部分をもう少し補強しようか」

 

「ありがとうございます!」

 

ヒビキが、アリスと楽しそうに話し合いながらレールガンの整備をしているのを見たウタハは、五条の元へと近づいて話しかける。

 

「先生、少しいいかな」

 

「うん、どうしたの?」

 

五条が尋ねると、ウタハは神妙な面持ちで口を開いた。

 

「先生も気づいているだろう。アリスについて――」

 

「……」

 

「最低でも1トン以上と推定される握力、発射時にもブレない安定した体感バランス、強度や出力は元論、肌全体に傷すら見当たらない綺麗な肉体……いや、機体。

 つまり、最初から厳しい環境での活動を想定し、ナノマシンによって『自己修復』することを前提として作られた体……。その目的はきっと……」

 

「『戦闘』だろうね」

 

五条が答えを言い、ウタハは静かに頷く。

 

「アリス、君は一体――?」

 

困惑と警戒が入り混じった瞳でアリスを見つめるウタハに、五条は静かに答える。

 

「あの子は僕の生徒だよ。

 それ以上でもそれ以下でもない。ただ、それだけさ」

 

その言葉を聞いて、ウタハは――、

 

「ああ、そうだね」

 

と、静かに笑うのだった。

 

 

 

ミレニアムの案内とアリスの武器の調達を終えたゲーム開発部はというと……。

 

「アリスー、一狩り行こうよー」

 

「分かりました。アリスは次の討伐方法は完璧に把握済みです」

 

普通にゲームで遊んでいた。

 

「ちょ、ちょっと待って!気を緩めるには早くない!?」

 

「なにー?どうしたのー」

 

ゲームをしたまま、だらけきった口調で尋ねるモモイに、ミドリは呆れながら話しかける。

 

「ユウカにはもう言ったの?部員が四人になったから、部の資格条件は備えたって」

 

「もっちろん。それで今日の午後に、アリスの資格審査に来るって……あっ、アリス!それブレスの攻撃の予備動作!危ない!」

 

「危険を察知、回避して攻撃に移ります!」

 

「今は現実の方が危険だよ!資格審査って何!?そんなの初めて聞いたんだけど!?

 その『資格審査』に、私たちの部の存続がかかってるのに……暢気に狩りに言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

ミドリが怒ってモモイに説教をするが、モモイはゲームを止めることはなく、笑って答える。

 

「心配しすぎだって、アリスの準備についてはもう完璧なんだし」

 

「え、そうなの?」

 

「アリス、自己紹介を!」

 

モモイがそう言うと、アリスは立ち上がり自己紹介を始める。

 

「私の名前はアリス・ザ・ブルーアイ、ドワーフ族の槍騎士。使用武器はガンランス『火竜の牙』、出身地は鋼鉄山脈。幼いころ、魔族の襲撃により家族を失って、煮えあがる鉱山の中へと単身入り込み……」

 

「いやゲーム内のアバターのプロフィールじゃなくて、アリス自身の!」

 

「あ、理解しました」

 

(不安だ……)

 

アリスとモモイの会話から何一つ安心できる要素が見つからないことに、絶望するミドリ。

アリスは気を取り直して、今度こそ自分の自己紹介を始める。

 

「私の名前はアリス、ミレニアムサイエンススクールの1年生。最近転校してきたばかりで受講申請のタイミングを逃してしまったため、まだ授業の登録が出来ていない状態なのですが、来月から正式に授業に参加する予定です。授業にはまだ参加できなくても、部活動への参加は可能とのことでしたので、ゲーム開発部に入部しました」

 

「あ、結構いい感じじゃん」

 

ミドリは、思ったよりもちゃんと考えていたことに感心する。

 

「ゲーム開発部で担っている役割は、タンク兼光属性アタッカー……」

 

「ちょっとーッ!違うよ、アリス。役割はプログラマーでしょ!」

 

「あっ、そうでした!プログラマーです!生まれた時から、母国語よりも先にJabaを使っていまし――」

 

「ううっ、やっぱりダメかもしれない……!?」

 

こんな先行き不安な状態で、あのユウカの審査を通過できるのか不安になるミドリだった。

それから、ユウカが来るまでの短い間、ミドリはアリスの自己紹介を徹底的に指導するのだった。

そして、その時はやってくる。

 

 

 

「……あり得ないわ。本当にゲーム開発部に新入部員が入ったんですか、先生?」

 

「だからー、そう言ってんじゃん」

 

ゲーム開発部部室に向かうユウカは、五条を睨んで問い詰める。五条はいつものの軽薄そうな態度で、のらりくらりと返していた。

モモイと五条からゲーム開発部に新入部員、それも転校生だということを聞かされたユウカは、その新入部員が本当にゲーム開発部の部員なのかどうかを確かめるべく、資格審査を行うことに決めた。五条は――、

 

「あっ、そう。じゃあ、あとはよろしくねー」

 

と言って、帰ろうとしていたので、逃げないように捕まえてともに向かうことに決めさせられた。文句を言う五条だったが、五条はゲーム開発部の担当顧問という扱いになっているので、ともに付いてくるよう言われて渋々ユウカの後を付いている。

ゲーム開発部の部室前に到着したユウカは、扉をノックして声を掛ける。

 

「セミナーのユウカよ。約束通り、資格審査に来たわ」

 

そう言って、扉を開けて中に入る。

 

「うげっ!?」

 

「ユウカ……」

 

「人の顔見るなり、露骨に嫌がるのはやめてもらえないかしら。

 まあ立場上、そうなるのは仕方ないんだけど……」

 

部屋に入った途端に、嫌な顔をするモモイとミドリを見て、ユウカは肩を落とす。そして、部屋にいるアリスを見つけて、信じられないものを見たように驚いた。

 

「そんな……ゲーム開発部に新入部員が入ったなんて、あり得ない……!?」

 

「そっちも結構失礼だと思うんだけど……本当だよ、残念だったね!」

 

「……?」

 

首をかしげるアリスに近づいて、ユウカはアリスに声を掛ける。

 

「あなたが噂のアリスちゃんね。ゲーム開発部に入った、四人目のメンバー」

 

アリスの頭の先からつま先まで隅々調べるように見て回るユウカは、疑心を抱いたまま静かに呟く。

 

「ふーん、ミレニアムの生徒ならほぼ全員把握してると思ってたけど……私がこんなに可愛い子を知らなかったなんて、ちょっと信じられないわね」

 

ユウカの後ろでモモイがビクッと心臓が跳ね上がるようになるのを必死で抑える。

 

「……???」

 

アリスは、自分のことをまじまじと見つめるユウカを見て、口を開く。

 

「……よ、妖怪が出現しました……!」

 

「「「ぶーっ!!」」」

 

アリスの言葉に、モモイとミドリ、そして五条の三人が思わず噴き出した。五条はそのまま膝から崩れて、腹を抱えて爆笑していた。

 

「い、今この子、私のことを『妖怪』って言ったわよね!?」

 

「か、勘違いだよ!『妖精』って言ったのを聞き間違えたんでしょ、もう、アリスは嘘が付けないんだからー」

 

「くっ……悪役には慣れてるとはいえ、まさか初めて会う子に妖怪扱いされるだなんて。いい度胸してるじゃない」

 

ユウカの額に青筋を浮かばせて、怒りで眉がピクピクと痙攣しているのを見て、モモイが慌てて彼女の袖を掴む。

 

「お、落ち着いて!生徒会が個人的な感情を挟んじゃダメでしょ!?

 とにかく、部の規定人数は満たしたよ!これでゲーム開発部は存続ってことでOKだよね?」

 

袖を掴むモモイを振り払って、咳払いをして息を整えるユウカは、アリスを見て冷たく笑みを浮かべる。

 

「確かにそうね……この子が本当に、自分の意思でここに来た部員だったら、の話だけど」

 

その言葉に、モモイはドキッと背筋に緊張が走る。

 

「本来は部員の加入を申告すれば、それだけで良かったのだけれど……。最近は部活の運営規則も少し変わって、もう少し厳しくする必要が出てきたの。

 だから、アリスちゃんには、取り調べ……あら、思ってもない言葉が……じゃあ、いくつかの簡単な質問をするわね」

 

「思いっ切り、本音が出たよねー」

 

五条が笑ってツッコむが、それを無視して、ユウカはアリスの方に向き直る。

 

「そんなに時間はかからないわ」

 

アリスは緊張で生唾を呑む。

 

「せ、選択肢によっては、バッドエンドになることもありますか?」

 

「バッドエンド……まあ、そういうこともあるかもね。それじゃあ……アリスちゃん。

 質問を始めるわ!」

 

緊張のユウカの質問が始まる。

ユウカは、小さな声でアリスに囁く。

 

「……アリスちゃん。もしゲーム開発部に脅されて仕方なくこの場にいるのなら、左目で瞬きをして」

 

「……?」

 

質問の意味が分からないアリスは、首をかしげた。

 

「ちょっと、最初から何その質問!?小声で言っても聞こえてるから!っていうかそんなことしないって!!

 ほら見て、この眩しい学生証を!ミレニアムの生徒だっていうまごうことなき証明!」

 

アリスの首に掛けられている学生証を見せつけるモモイに、ユウカは余裕のある態度でいた。

 

「ふーん……確かに、生徒名簿にアリスちゃんが登録されていることも確認したけれど……。私はそんな簡単に騙される女じゃないわ」

 

(ば、バレた!?)

 

ミドリは冷や汗が流れるのを感じた。ドキドキとする緊張の中、ユウカは再びアリスの方に向き直る。

 

「さて、それじゃあ取り調べを再開しましょうか」

 

「アハハ、もう隠すつもりもないね!」

 

五条が笑う中、ユウカはアリスに最初の質問を投げかける。

 

「アリスちゃん、あなたがゲーム開発部に来たきっかけは何?」

 

「気が付いた時には、ここに……ではなく!」

 

モモイが鬼の形相で睨んでくるのを察したアリスは、思わずボロが出そうになるのをすんでのところで食い止めた。

 

「モモイ!アリスちゃんを睨むのはやめなさい!取り調べの邪魔になるようなら、即刻ゲーム開発部は廃部よ」

 

ユウカがモモイに注意されて、モモイは渋々と引き下がっていった。そして、アリスは必死に頭の中で弁明を探しながら、ゆっくりと答える。

 

「えっと、『魔王城ドラキュラ』がやりたくって……それで、ゲーム開発部の存在を知って……」

 

「ふーん……そうなの」

 

(よし!アリスちゃん、その調子!)

 

ミドリが心の中でガッツポーズをしていると、ユウカはアリスに問い詰めていく。

 

「でも、ここはレトロゲーム部じゃなくて、ゲーム開発部。

 つまり、あなたもゲーム作りに参加するということよね?何を担当するの?」

 

「タンク兼光属性アタッカー……」

 

「えっ!?」

 

「じゃなくて、えっと、ぷ、ぷ、ぷ……プログラマラスです!」

 

「……はい?プログラマー、じゃなくて?」

 

「あ、はい。そうです、その通りです。間違いなく私は完璧なプログラマーです」

 

(まずい……っ!?)

 

正直今の答えで、ユウカの抱く疑心がますます大きくなってしまったことに、モモイは心の中で焦っていた。

 

「プログラマーね……すごく難しい役割だと聞くけれど」

 

「はい、そ、そうです。ぷ、プログラマーは大変です。たまに過労で、意識を失ったりもします」

 

「な、なんですって!?」

 

とんでもないことをサラッと言ったことに驚愕するユウカに対して、アリスはまだ続ける。

 

「それでも大丈夫です!」

 

「いや、大丈夫じゃないでしょ……ちゃんと休みなさいよ……」

 

「宿屋で寝て起きるか、聖堂にお金を払えば、仲間たちと一緒に復活できます!」

 

「そっ、そんなわけないでしょ!?」

 

「そんなわけないのですか……?常識のはずですが……もしかして、『英雄伝説』や『聖槍伝説』をご存じないのですか?」

 

キョトンと首をかしげるアリスだが、満面の笑顔でユウカに言い放つ。

 

「みんなどれも本当に『神ゲー』ですよ」

 

それを見たモモイは膝から崩れ落ちる。

 

「終わった、全てが……」

 

もうゲーム開発部は廃部になる。最後の希望も潰えた。モモイは真っ白に燃え尽きた。

 

「……ありがとう、分かったわ。

 短い間だったけれど、アリスちゃん。あなたのことについて概ね理解できた」

 

ユウカは静かに頷く。

 

(もうダメだ……)

 

(お終いだ……)

 

モモイとミドリは、絶望してうなだれてしまう。アリスも緊張して、ユウカの答えを待ち望む。

 

「ちょっと怪しいところはあるけれど……ゲームが好きだってこと。それに、新しい世界を冒険したり、仲間と一緒に何かをやり遂げるストーリーが好きなんだってことは、十分に伝わってきた……そんなあなたがゲーム開発部の部員だというのは、何も不思議なことじゃないわ」

 

その答えに、うなだれていたモモイとミドリが顔を上げる。

 

「えっ……!?」

 

「ということは!?」

 

ユウカはそれまでの冷たい笑みとは違う柔和な笑顔で静かに伝える。

 

「指定人数を満たしているので、ゲーム開発部をあらためて正式な部活として認定……部としての存続を承認します」

 

「やったぁっ!!」

 

「良かったぁっ!!」

 

モモイとミドリは、喜びのあまり飛び跳ねてハイタッチをする。

 

「そ、そしたら部費も貰えるし、このまま部室を使ってもいいんだよね!?」

 

「ええ、もちろんよ」

 

その言葉に、モモイとミドリは顔を合わせて喜んだ。

しかし――。

 

「『今学期』までは……ね」

 

「わーぃ……え?」

 

ユウカの言葉に、モモイとミドリは止まる。二人は、慌ててユウカに詰め寄る。

 

「な、な、なんで!?」

 

「そうだよ!?部の指定人数は満たしたのに!?」

 

「あら、知らなかったのかしら。

 今は部活の指定人数を満たすだけじゃなく、同時に部としての成果を証明しないといけないの。

 もちろん、最近急に変わった要件だから、猶予期間はあるけれど……」

 

「うーわ、マジか……」

 

さすがの五条も引き気味になっていた。ユウカは、モモイたちに向けて言い放つ。

 

「その期間は今月末まで。今月中に結果を出さなければ、あなたたちの部はたとえ四人でも四百人でも、廃部になるのよ」

 

「嘘だ、ありえない!」

 

モモイが抗議するが、ユウカはしかめっ面で強く言い返す。

 

「あり得るの!この前、全体の部長会議でちゃんと説明した内容なんだから。

 ただ、あなたたちの部長、ユズはそこに参加してなかったけれど」

 

その言葉に、ミドリは驚愕する。

 

「つまり、あなたたちの責任よ」

 

「くっ……卑怯者め!」

 

「『鬼』とかならまだ分かるけど、規則通りに事を運ぶことの何が『卑怯』なのよ……。正直なところアリスちゃんの正体も怪しいし、本当なら今すぐに退去を要請しようかと思っていたのだけれど……」

 

親の仇の様に睨みつけるモモイの言葉に、ユウカは呆れながら正論で殴りつける。ユウカの言葉に、二人は何も言い返せなかった。

 

「……正体はさておき、ゲームが好きっていう純粋な気持ちは本物だと思った。

 猶予を与えたのは、その気持ちに相応しい成果がきちんと出せることを期待しているからよ。

 モモイ、あなた言ったわよね?ミレニアムプライスで、ビックリするくらいの結果を出して見せるって」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

ユウカの挑発的な笑みに、モモイはたじろいだ。確かに先日言ったのは、覚えている。しかし、あの時はアリスが入る前で、部員の数が足りなかったから結果を出すといっただけで、アリスが入部したので、成果はもう必要ないと考えていた。

 

「新しいメンバーも増えたことだし、前よりもちゃんと面白いゲームが作れるんでしょうね?

 それじゃあ、楽しみにしてるわよ。じゃあね~」

 

手を振って笑いながら部屋を出ていったユウカに、モモイがありったけの罵声を浴びせる。

 

「あっ、待って!鬼、悪魔、太もも魔人!もおぉぉぉ!」

 

「行っちゃった……」

 

残されたゲーム開発部はただただ立ち尽くすだけだった。

それから少しして、ゲーム開発部では会議が行われていた。

 

「はあ……。結果的に、まだゲーム開発部は存続の危機……ってことだよね」

 

「でもこんなの、どう考えても詐欺だよ!謀略だよ!!」

 

怒りを露わにするモモイに、五条が口を開く。

 

「でもさあ、部長会議で決まったことなんでしょ。ゲーム開発部はこういう時ってどうしてたの?」

 

五条の言葉に、ロッカーから出ていたユズが小さく畏まっていた。

 

「ごめんなさい、私が人見知りで参加できなくて……」

 

「ゆ、ユズちゃんのせいじゃないよ!こういう場合は、お姉ちゃんが代わりに参加するってなってたはずでしょ?」

 

ミドリの言葉に、全員の視線がモモイに向けられる。それを不服に感じたモモイは、立ち上がって断固抗議する。

 

「仕方なかったんだよ!あの時はゲームのイベント周回で忙しかったし、他にも新作の予約もあったし、そして前日徹夜で眠かったからで……」

 

必死に言い訳するモモイに、笑顔のミドリが近づいてくる。笑顔だが、後ろに不動明王が立っていると感じるほどのオーラを纏っていた。そして――。

 

「じゃあ、お姉ちゃんは何か言うことは?」

 

「ひゃい、どうもしゅみましぇんでした……」

 

ボコボコになった顔で、涙を流しながら頭を下げるのだった。

 

「うぅ……とにかく、やるべきことは一つ。

 ミレニアムプライスで受賞できるような、すごいゲームを作ること」

 

「そうだね……ってことは、結局G.Bibleが必要なんじゃん!またあの廃墟に行くの!?やだぁ!!」

 

なぜか顔が元に戻ったモモイが、両手を上げて駄々をこねる。それを呆れるミドリと宥めるアリス、そして、ユズは唇を噛み締める。

 

「責任、取らないと……」

 

「え、ユズちゃん?」

 

ボソッと呟いたユズの言葉聞いたミドリが、ユズの方に振り返る。そして、ユズは震えながら、一歩前に出る。

 

「G.Bibleを探しに、また廃墟に行くなら……わたしも、一緒に行く」

 

「え、え、嘘!?」

 

その言葉を着てモモイがものすごい驚きを見せる。

 

「ユズちゃん、もう半年近く校舎の外に出ていないのに。授業もインターネット受講だけだし……」

 

「……元々は、わたしのせい……だから。それに、この部室は……もうわたしだけのものじゃない。

 ……一緒に、守りたいの」

 

「「ユズ(ちゃん)……」」

 

恥ずかしながら言うユズを見て、モモイとミドリの胸に湧き上がるものを感じた。

 

「パンパカパーン、ユズがパーティに参加しました」

 

「……うん、よし!やるしかない、行こう!」

 

「アリスちゃんも、武器とか装備を持って!」

 

「アイテムを選択、『光の剣:スーパーノヴァ』を装備しました」

 

全員が武器を取り、覚悟を決めて準備を始める。

 

「よし、行こっか!今度こそ、G.Bibleを手に入れるために!」

 

「みんなで部室を守るために!」

 

「が、頑張る……」

 

「アリスは、ダ腕を伸ばしてンジョン攻略頑張ります!」

 

四人が意気込むのを見て、五条は嬉しく笑う。そして、外に向かって大きく腕を伸ばして指をさして、高らかに宣言する。

 

「それじゃあ、幻のお宝を目指して……行ってみようか!」

 

「「「おおー!!」」」

 

「お、おー……」

 




モモイ「五月病って言うけどさ、五月に限らずやる気って大体いつも出ないよね~。

次回『そこにあったもの』」

モモイ「今日も眠いので寝まーす」
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