シャーレの五条先生   作:未来跳躍

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遅くなってすいません!戦闘やら心理描写やら盛りだくさんになりましたので、楽しんでいただけると嬉しいです。


「鏡」奪還作戦 参

押収品保管庫に向けて走り出すゲーム開発部を見て、ユウカとアカネは焦燥を露わに、追いかけようとする。

 

「逃げられる!」

 

「そうはさせません……!アスナ先輩を後ろへ!」

 

アカネが近くの警備ロボに命令すると、警備ロボは倒れているアスナを持ち上げ運ぶ。

 

「逃がしませんよ!」

 

アカネとユウカが追いかけてきたことに気づいたモモイが、驚きの声を上げた。

 

「ゲエッ!ユウカが追いかけてきた!」

 

「ど、どうする!?」

 

焦るモモイとミドリの二人に、アリスは振り返り武器を構えてある提案を力強く声に出す。

 

「ここで倒しましょう!」

 

「うえぇ、本気(マジ)!?」

 

本気(マジ)です!ここで倒さないと、伝説の宝には到達できません!」

 

真剣なアリスの目を見たモモイとミドリは、互いの顔を見合い頷いた。

 

「分かった!やろう!」

 

「そうだね、ここで逃げてもすぐに捕まるし……先生はどう思う?」

 

「そうだね、僕も賛成だよ。逃げるより倒した方が後が楽だからね」

 

五条の同意を得て、三人の心は決まった。おそらくこれが最後の戦いになる。五条はこの大きな戦いに挑む小さな勇者たちにある知恵を授ける。

 

「そうだね、最後にGTG(グレートティーチャー五条)のありがたーい教えを一つ」

 

「え?何々?」

 

ヒソヒソと三人に耳打ちをすると、三人の顔はパアッと明るくなった。

 

「よーし、それじゃあゲーム開発部レディーゴー!」

 

モモイの号令と共に、三人は一斉に動き出した。「鏡」を手に入れ、ゲーム開発部を存続させるための最後の戦いが今始まる。

そして、ゲーム開発部の動きが止まった時点でユウカとアカネは何があったと訝しんでいた。

 

「止まった?あの子たち、観念したのかしら」

 

「いえ、これは……ユウカ、下がって!」

 

立ち止まったゲーム開発部は、モモイの叫びと共にこちらへと振り返るなり即座に攻撃を始めた。アカネの言葉に足を止めたユウカは、即座に後ろに飛び退いてアカネの横に並ぶ。戦闘経験が豊富なアカネの呼び止めが無ければ、ダメージを受けていたであろう。

 

「アカネ、ありがとう。あの子たち、ここで決着(ケリ)をつけるつもりのようね」

 

「ええ、ですが好都合です。アスナ先輩を再起不能にして調子に乗ってるようですけど、私もC&Cのエージェントだということを身をもって教えてあげますね」

 

最初にユウカが先陣を切った。両手に持つサブマシンガンの掃射でモモイとミドリの距離を分かつ。ユウカはモモイとミドリのことはよく知っている。あの二人の恐ろしいところは、双子のコンビネーション。だからこそ、そのコンビネーションを断ち切る。1対のサブマシンガンが正確にモモイとミドリの動きを止める。ユウカのサブマシンガンは、連射力に優れている代わりに攻撃力は高くない。しかし、ダメージが入らないと言っても、痛いものに変わりはない。現に、モモイとミドリはユウカの攻撃を避けるのに手一杯で、肝心のコンビネーションはバラバラである。

 

「ちょっとミドリ、何してんのさ!早く助けてよ!」

 

「お、お姉ちゃんこそ、さっさとこんな攻撃を止めてよ!」

 

(計算通り、これであの子たちの動きは封じた。おそらく、あの子たちの本命は――)

 

「アカネ!!」

 

ユウカの声と共に、アカネが真っ直ぐ走りだす。その狙いは、一番後方で火力の高い――。

 

「「アリス!!」」

 

「ごめんなさいね、あなたにはまた眠ってもらいます」

 

「――うわあっ!?」

 

アリスはアカネに向けて光の剣を構える。慌てて撃つが、碌にチャージもされていない弾丸はアカネに軽々と躱されてしまう。拳銃を取り出したアカネは、アリスに向けて発砲する。撃ちつけられた数発の弾丸がアリスの体に命中する。威力が低い拳銃でも、アリスの動きを委縮させるのには十分だった。そして、アカネはその隙を見逃さない。アリスが体勢を崩し、光の剣を上に振り上げた瞬間にドレスから取り出した爆弾をアリスの足元へと投げつける。一度昼間に戦った相手、攻略法が分かっているアカネにとって、アリスを倒すのは造作もない。勝利を確信したアカネの口元が緩む。

 

「さあ、これで――」

 

「これで、私たちの勝利です!」

 

「なっ!?」

 

アリスがニカッと笑うのを見て、アカネの笑みが消える。アリスは振り上げた光の剣をゴルフのスイングの要領で一気に振り下ろした。振り下ろされた光の剣は足元に転がる爆弾に命中し、真っ直ぐアカネの眼前に飛んでいった。猛スピードで飛ぶ爆弾はアカネの額に命中し、そのまま爆発した。爆弾のエキスパートと言えども、眼前で爆発する爆弾に対応できるはずもなく、アカネの身体は地に伏したのだった。

 

「――アカネッ!?」

 

眼前でアカネが爆発するのを見ていたユウカが慌てて声を掛けた瞬間、彼女の攻撃が止まった隙を見計らっていたモモイとミドリが、ユウカへ一気に距離を詰めてその頭にライフルの銃口を当てる。

 

「あなたたちっ!」

 

「これで――」

 

「チェックメイトだよ!」

 

モモイの笑顔を見て、ユウカは両手のマシンガンを落として静かに両手を上げるのだった。

 

「先生、お願ーい!」

 

「はいよ~」

 

ユウカにライフルを突きつけた状態でモモイが五条に声を掛ける。すると、どこから持ってきたのか分からないロープを手に、五条がやってきた。五条はユウカの両手を後ろにして、両手首を縛っていく。両手を縛られながら、ユウカは不服そうに五条に尋ねた。

 

「先生ですよね、この作戦を考えたのは――」

 

「まあね」

 

「私の計算では、アリスちゃんがいたとしても私たちの勝率は100%でした。一体何時から勝ちを確信していたのですか?」

 

ユウカの口から出た言葉は悔しさと疑問が入り混じったものだった。それを聞いた五条は静かに答える。

 

「最初からだよ。君たちが一番警戒するのは、三人の中で最も火力が高いアリス。でも、アリスだけに集中すればモモイとミドリはフリーになる。それをこの場で一番知っているのはユウカ、君だよ。だからこそ、君はモモイとミドリの妨害に徹すると思った。アカネがアリスを倒せれば、あとは楽だからね。君は率先して攻撃することはしない。だから、モモイとミドリにはなるべくユウカの攻撃で自分たちが動けないように見せてもらったんだ。そして、アリスにはアカネの爆弾を誘うように動くように指示しておいた。勝ち筋の決まっている相手は、その勝ち筋を用意しておけば簡単に動いてくれる。アカネは昼間の戦いでアリスに勝利しているから、その時と同じ方法を使うと踏んでいた。そして、結果は見ての通りさ」

 

「……」

 

ユウカは五条悟という男を見誤っていた。普段は軽薄で何を考えているのか分からない男であったが、自分たちやゲーム開発部たちのことを見ているからこそできる鋭い観察眼と素早く勝利へと導く作戦を立てられる頭脳に言葉が出なくなっていた。そして、少し顔を伏せていたが、すぐに顔を上げて真っ直ぐと敬意をこめて彼に賛辞を口にする。

 

「完敗です。先生は素晴らしい方ですね」

 

それを聞いた五条は、ニコッと不敵な笑みを浮かべていつもの言葉を口にした。

 

「当然。だって僕、最強だから」

 

 

 

押収品保管庫に到着したゲーム開発部は、部屋に入って驚いた。

 

「うわっ、何これ!?ここが押収品保管庫?滅茶苦茶じゃん」

 

モモイの言葉の通り、保管庫の中は先ほどの戦闘の余波で滅茶苦茶に荒らされていた。窓は割れ、棚は倒れてここが保管庫とは思えない惨状だった。

 

「でもまあ、あとはゆっくりと『鏡』を探して帰るだけだね」

 

「そうそう。帰るまでが遠足だよ」

 

「はーい、先生」

 

ゴソゴソと三人が部屋中を探し回っていると、ミドリが目当ての「鏡」を発見した。

 

「あ、見つけた、『鏡』!これさえあれば……!」

 

「よしっ!さあ早く帰ろー――」

 

「……静かに、ミュートでお願いします」

 

アリスが口元に人差し指を当てながら言うので、モモイとミドリは疑問に思いながら静かにする。アリスは耳を澄ませていると、コツンコツンと小さな足音が聞こえてきた。

 

「……誰かがこちらに向かってきています。足音から考えて、おそらく人数は一人」

 

「ええっ!?」

 

ユウカとアカネは縛って部屋に閉じ込めているので追ってこれるはずはない。アスナは戦線離脱しており、カリンはウタハ先輩の足止めで動けない。では一体誰がとモモイとミドリが考えている中、アリスはこちらに向かっている人物の特定を成功させる。

 

「接近対象を確認、ミレニアムの生徒名簿を検索……対象を把握。身長146㎝、ダブルSMG、メイド服の上から龍柄のスカジャン……」

 

「「え……?」」

 

アリスの言葉に、モモイとミドリが凍る。このミレニアム広しと言えど、この特徴に当てはまる生徒は一人しかいない。二人はすぐにアリスの両腕を掴み、机の下にねじ込もうとする。

 

「隠れてっ!!」

 

突然の事に困惑するアリスだったが、二人の恐ろしい剣幕に圧されて言うがまま机の下に隠れるのだった。アリスが入ったところで、ミドリは五条のことを思い出した。

 

「そう言えば、先生は!?」

 

「あれ、いないです」

 

「もう、今は先生は後でいいよ!」

 

アリスが机の下から顔を覗かせるが、五条はいつの間にかいなくなっていた。しかし、今は時間が惜しいモモイは五条のことを後にして、自分も机の下に隠れるのだった。

その直後、保管庫の扉が開き、一人の少女が中へと入ってきた。小柄でありながら鋭い目つきをした一人の少女、彼女の名をモモイとミドリは知っている。

 

(ね、ね、ネル先輩だ!!)

 

美甘ネル、C&Cのリーダーにして、ミレニアム最強の少女。ヴェリタスの情報では、彼女は今ミレニアム郊外に出ていて学校にはいないはずなのに、どうしてここにいるのかとモモイとミドリは心の中でパニックを起こしていた。ネルは、荒れた保管庫を一瞥し呆れたようにため息をついた。

 

「たくっ、滅茶苦茶じゃねーか。リオの奴、今すぐ戻れなんて無茶言いやがって……」

 

面倒くさそうに頭を掻くネルは、ここにいない依頼主に悪態をつく。それを机の下から見ていたアリスは、ネルを見て初めての感情に戸惑っていた。

 

(この人、今まで出会った人たちと何かが違います……。これが、恐怖……初めての感情です……)

 

全身の毛が逆立つような感覚と震える手を見て、アリスは恐怖という感情を理解した。目の前のネルに戦いを挑んでも、勝てるヴィジョンが浮かばない。その時、震えた手が机の角に当たり小さな音が鳴った。ネルはその音にすぐに反応する。

 

「ふーん……。確かに気配が……机の下か?」

 

一歩、また一歩、こちらに向かってくるネルに対して、アリスたちは両手を口に当てて息を殺して忍んでいた。ネルの足音が命の終わりのカウントダウンのように感じる。心臓の音がバクバクと大きくなっていく。そして、ネルの手が机に掛かる。このままネルが屈んで覗き込まれれば、一発で見つかってしまう。もう終わりだと諦めかけたその時――。

 

「あ、あの……!」

 

「あん?」

 

保管庫の扉から聞こえた声に、ネルの顔がそちらに向く。その声の主は、恐る恐るネルの元へと近づいていく。そして、その声の主を三人は知っている。

 

(ゆ、ユズ……!?)

 

ネルはユズの前に立ち、眉間に皺を寄せながら尋ねる。

 

「あんたは……?」

 

「せ、生徒会『セミナー』所属の、ユズキです」

 

敬礼を取りながら答えるユズは、真っ直ぐとネルの目を見ながらそのまま続けて用件を伝える。

 

「じ、実は戦闘ロボットが暴走したせいで、あちこちがめちゃくちゃなんです!アカネ先輩とカリン先輩が、制圧を試みていますが……」

 

「暴走か?あのロボット、ずいぶん前に差し押さえたのに、まだ整備終えてねえのかよ」

 

はぁと、ため息をつくネルに、ユズはさらに続ける。

 

「じょ、状況的に、助けが必要だと思い……それで、ここにいらっしゃると聞いたので……」

 

「チッ、仕方ねえな」

 

「わ、わたしはここの整理をします……。そ、その、戦闘は怖くて……経験もあまりないですし……」

 

「んなこたどうでもいいけど、それよりあんた……」

 

頭を掻きながらユズを睨みつけるネルの言葉に、ゲーム開発部全員の緊張が走る。

 

「覚えときな。戦闘で一番大事なのは、武器でも経験でもねぇ。

 度胸だ。その点で、あんたに素質が無いとは思わねぇ。

 自分がどう思われてるかくらい、あたしにも分かってる。それに、あんたが結構ビビりなこともまあ分かる。それなのに、初対面でこのあたしに声かけるなんてのは、それなりに度胸がいることだろうからな」

 

「は、は、はい!あ、ありがとうございます!?」

 

バシバシとユズの肩を叩きながら笑顔で言うネルに、ユズは苦笑交じりにお礼を述べる。

 

「じゃあな、またどっかで会おうぜ」

 

「は、はい!」

 

ネルが部屋を出てもしばらく敬礼を続けていたユズだったが、ネルが見えなくなったと同時に緊張が切れたのか力なく尻餅をついた。

 

「ふぇぇ……し、死んじゃうかと思った」

 

目にいっぱいの涙を堪えながら、ボソッと小さく呟いたユズに、机の下に隠れていた三人がユズへと抱き着いた。

 

「ユズうぅぅぅぅぅー!!」

 

「ユズちゃんすごい!おかげで命拾いしたよ!」

 

「ち、力になれて、良かった……。そ、それよりもアリスちゃんが今持ってるのが……」

 

「はいっ!これが人類と世界を救う、私たちの新たな武器――『鏡』です!」

 

頭上に「鏡」を掲げるアリスに、モモイたちは胸の奥から嬉しさがこみあげてきた。幾多の苦難があったけれど、自分たちの力で捥ぎ取った勝利に叫びそうになる。しかし、まだ終わりではない。この「鏡」をヴェリタスに持って帰らなければならない。そんなとき、窓の外から彼の声が聞こえる。

 

「おめでとう、みんな」

 

「「「「先生!?」」」」

 

窓の外で宙に浮かびながら拍手する五条の姿に、ゲーム開発部全員が驚愕する。そんな驚きを余所に、五条は彼女たちに賛辞の言葉を投げかけるのだった。

 

「ここまでよくやったね。頑張ったご褒美に、僕が君たちを下まで運んであげようじゃないか」

 

「えっ、いいの!?」

 

「もちろん!さあさあ、みんな掴まってー」

 

「わーい……って、どうやってそこに行くの?」

 

窓から2mくらい離れているところで浮いている男にどうやって掴まれというのだろうか。そんな当たり前な疑問を投げかけるモモイに五条は両腕を大きく広げて――。

 

「ヘイ、カモン!」

 

「よーし、いっくよー……って、できるかー!!」

 

「アハハ、良いノリツッコミだねー。まあ、冗談はこれくらいにして」

 

窓へと近づき部屋の中へと入る五条に、ゲーム開発部全員が彼にしがみつく。五条が掌印を結ぶと、五条とゲーム開発部の姿は保管庫から消える。次の瞬間には、地面に到着していた。

五条から降りたゲーム開発部の四人は、それぞれの顔を見合わせて息を揃えて心の内を声に出して叫ぶ。

 

「「「「これで、任務達成だー!!」」」」

 

四人は手を上に掲げて、一斉にハイタッチをする。色々と苦しい場面もあったが、仲間たちの協力を得て、最後には自分たちの力で「鏡」を手に入れることに成功したのだ。四人は嬉しさで泣きそうになるが、その後ろにいる五条が声を掛ける。

 

「ちょっとー!言ったでしょう、遠足は――」

 

「「「「帰るまでが遠足!」」」」

 

「……そうだね」

 

四人は「鏡」をヴェリタスの部室に届けに走っていく。その背中を後ろから見ていた五条は、任務を無事に成功させた彼女たちを嬉しそうに微笑むのだった。

 

 

 

その翌日、ミレニアム校舎の廊下でアスナ、アカネ、カリンの三人は正座させられていた。その三人の前に仁王立ちで立つネルは、黙って三人を見下ろしていた。なぜこうなっているかは、アカネたちが一番知っている。ミレニアム最高のエージェントであるC&C。そのC&Cが、任務を失敗した。これに対して、リーダーであるネルから何もない訳がない。アカネとカリンは、何も言わないネルに緊張して生唾を呑むが、アスナは能天気そうな顔で辺りをキョロキョロと見渡していた。そんな中、ネルが静かに口を開いた。

 

「なるほどな……。ゲーム開発部、か。知らねぇ部活だったが……。お前らは、そいつらにしてやられた、ってことだな?」

 

その言葉に、アカネとカリンがビクッと震えた。アカネが顔を伏せたまま静かに頷いた。

 

「……申し訳ありません。この依頼を受諾して、作戦を準備したのは私です。メイド部の名に、傷をつけてしまいました……」

 

アカネの謝罪に、ネルは肩をすくめる。

 

「んなこたぁどうでもいい」

 

「……え?」

 

ネルの言葉に、アカネは思わず顔を上げる。ネルはそのまま続けて話す。

 

「あたしがここに戻ってきたときに、リオから連絡が来た」

 

「ミレニアムの生徒会長から?」

 

カリン思わず疑問が口に出た。確かにネルは、セミナーのトップである調月リオと共に出ていたということは聞いていた。昨夜、急遽戻ってきたのもリオからの頼みだと聞かされたが、一体何の連絡なのかとアカネとカリンに緊張が走る。

 

「あぁ。依頼は撤回。無かったことに、だとよ」

 

思わぬ内容にアカネとカリンは驚愕する。アカネが、ネルにリオの真意を尋ねる。

 

「それは、一体なぜ……?」

 

「あたしの知ったことかよ……けど多分、リオもヒマリも確かめたかったんじゃねぇのか?」

 

「確かめる……私たちの力を、ですか?」

 

恐る恐る問いかけるアカネに、ネルは冷たく言い放つ。

 

「逆だ。あの、アリスとかいう奴の方だろ」

 

「あっ、私を倒した子か~」

 

「……アスナ先輩、少し静かに」

 

キャッキャッと騒ぐアスナを、横にいたカリンがそっと注意する。ネルは、アスナを無視して話を続ける。

 

「ま、その辺の事情は知ったこっちゃねえ。依頼とは関係なくなったが……アカネ、調べておいてくれ」

 

「はい、何をですか?」

 

「ゲーム開発部だ、関係者もまとめてな」

 

「いきなり何故……?」

 

キョトンと首をかしげるアカネに、ネルは楽しそうに笑って答える。

 

「興味があってな。一通り情報が洗えたら、そいつらんところに行くぞ」

 

「はい、畏まりました」

 

綺麗なメイドの所作でお辞儀をするアカネに、ネルはその場を後にする。アスナとカリンも来るべき再選に楽しそうにする。

 

「あ、それはそうと……依頼は無くなっても、負けは負けだからな。おめえらのたるんだ根性はキッチリ直さしてもらうぜ」

 

「「……」」

 

ネルがそう一言言って去ると、アカネとカリンの顔はみるみるうちに青ざめていく。その場に、二人の様子を見て楽しそうに笑うアスナの笑い声が響くのだった。

 

 

 

ゲーム開発部の部室。そこでは昨日の勝利の余韻を感じながら、ミレニアムプライスに向けて新作を作る彼女たちの姿が――。

 

「「「……」」」

 

無かった。

モモイとミドリとユズは、この世の終わりのような感じの落ち込み様だった。心配したアリスが、三人に声を掛ける。

 

「あ、あの、モモイ……?」

 

「ふふっ、ふへへへへ、全部終わった!お終いだぁ!!!」

 

モモイは焦点の合わない目で、乾いた笑いを上げていた。

 

「み、ミドリ?その、大丈夫ですか?」

 

「アリスちゃん、ごめん……今は何も話したくない気分なの……」

 

ミドリは体育座りで虚空を見つめて呆然としていた。

 

「えっと、ユズ――」

 

「怒り、破滅、腐食、絶望、虚脱……世界は今、破滅に向かって……」

 

ユズはもう何を言ってるのか分からなかった。アリスはこの混沌とした状況に困惑していた。

 

「あ、あの!えっと、私はあまり理解できていないのですが……もしかして、この状況は、G.Bibleののせい、ですか?」

 

その言葉に、三人は黙る。何も言わない三人に向かって、アリスはそっと語り掛ける。

 

「えっと、G.Bibleは、嘘は言ってないと思いますが……」

 

「そういう問題じゃないっ!!」

 

モモイが大きな声を上げるので、アリスは驚いて後ろに下がる。

 

「いっそのこと嘘って言ってくれた方がまだマシ!うわあああんっ、終わった!私たちのはもう廃部なんだ!ふえぇぇぇんっ!」

 

泣きじゃくるモモイに、アリスは何も言えなくなっていた。

なぜこうなったのか、それは2時間前に遡る。

 

「ハ~イ、ゲーム開発部のちびっ子たち!マキちゃんからプレゼントのお届けだよ!」

 

ゲーム開発部の部室にやってきたマキを見て、ゲーム開発部の四人は待ってましたと云わんばかりの様子でマキを歓迎する。

 

「おー、遂に!」

 

キラキラと目を輝かせるモモイに、マキはカバンから例の物を取り出す。

 

「ジャジャーン!」

 

そこにはG.Bible.exeと書かれた端末。それを見て、四人は歓喜する。

 

「ようやく、G.Bibleが私たちの手に……!」

 

ミドリは手にしたG.Bibleに興奮する。

 

「遅くなってごめんねー。『鏡』をセミナーに返すことになって、その件でバタバタしちゃってさー」

 

「ええっ、『鏡』返しちゃったの!?」

 

驚くモモイにマキは、笑って答える。

 

「実は、ヒマリ先輩は最初から全部知ってたみたい。それくらいあげてもいいから、これからはあまり無茶しないでって。えへへっ」

 

最初からヒマリの掌の上だったことに、悔しながらも納得するモモイたち。そこで、あることを思い出したマキが、それを口にする。

 

「あ、それでね。G.Bibleを開いていた時にこの、〈Key〉っていうフォルダを見つけたの」

 

マキがそう言いながら端末を指さすと、そこには〈Key〉と書かれた1つのフォルダが存在していた。覗き込んだモモイがそれを見て、首をかしげる。

 

「何これ……ケイって読むのかな?」

 

「……ケイ?」

 

アリスも首をかしげると、ミドリがモモイの肩を叩いて静かにツッコむ。

 

「キーでしょ。お姉ちゃん恥ずかしいから余所で言わないでね」

 

「実は、こっちについては何一つ分からなくてさ。ファイルは壊れて無さそうだけど……私たちの知ってる機械語じゃ解読できない、信じられない構造をしててさ。

 G.Bibleの方はきちんと開けたけど、こっちはちょっと見ただけじゃ何にも分からなかったの。この〈Key〉のこと、何か知ってたりする?」

 

「いや、全然……」

 

マキの質問に首を横に振るモモイだったが、ミドリはあることを思い出していた。それはG.Bibleを手に入れる時に、モニターが映したあの質問――。

 

『あなたはAL-1Sですか?』

 

「まさか、あの時の……?」

 

「ふうん、何かあったの?ま、でもとりあえず今はG.Bibleの方でしょ。〈Key〉についてはまた今度ね。時間があったら頑張って解析してみるよ」

 

「うん、分かった」

 

モモイが頷くと、マキは笑顔で手を振って部室を後にしようとする。

 

「じゃ、間違いなく渡したから。またね!」

 

「マキちゃん、ありがとね!」

 

「今度会う時は、秘書を通して連絡してね!なにせ私たちは、『TSC2』で大ヒットする予定だから!」

 

「あははっ、楽しみにしてるよ!」

 

こうして、マキとのお別れを済ませて、ゲーム開発部はG.Bibleの起動を開始する。

 

「みんな、集まって!あらためて……G.Bible、見よっか」

 

モモイの言葉に、三人は頷く。

 

「みんな知ってる通り、この中に何が入ってるかについては、ほとんど誰も知らない。ただ最後にG.Bibleを見たと噂される、あるカリスマ開発者によると……『ゲーム開発における秘儀。みんな知ってるようで、誰も知らなかった奇跡』……って言われてる。

 私は、それが知りたい」

 

「うん……最高のゲームを作るために」

 

「そう。それが出来れば、これからもみんなでこの場所にいられる」

 

モモイは、みんなの顔を見渡して決意を固める。

 

「もし失敗すれば……ユズは寮に戻って、顔を合わせたくない奴らに会わなきゃならなくなる。それに、アリスは……」

 

「……もしものことは考えたくないけど、その時はきっと先生が、シャーレが助けてくれるよ」

 

「シャーレ……?先生と一緒なのは、とっても嬉しいのですが……アリスはもうここに……みんなと一緒には、いられなくなるのですか?」

 

不安そうなアリスを見て、モモイはハッと我に返る。ここで自分が不安そうになっていては、アリスも不安にさせてしまう。だからこそ、モモイはアリスの手を強く握りしめ、真っ直ぐに言い放つ。

 

「そんなことはない!私たちは絶対に、最高のゲームを作るんだから!大丈夫、『TSC2』もアリスのとっての『神ゲー』になるよ!」

 

そんなモモイを見て、アリスは笑って頷く。

 

「それじゃあ、始めよう、アリス!」

 

「はい!」

 

アリスは端末を手に、ゆっくりと深呼吸をする。

 

「G.Bible……起動!」

 

G.Bibleを起動させると、端末にメッセージが表示される。

 

『G.Bibleの世界へようこそ』

 

無事に起動されたことを確認できた四人は笑顔で喜んだ。

 

『最高のゲームとは何か……この質問に対して、世界中で様々な答えが模索され続けていました。

 作品性、人気、売上、素晴らしいストーリーの爽快感、鳥肌の立つ演出など。

 そういったものが最高のゲームの「条件」として挙げられることは多いですが、それらは全て、あくまで「真理」の枝葉に過ぎません。

 最高のゲームを作る秘訣、それはたった一つです。

 そしてこのG.Bibleには、その真理が秘められています』

 

「い、いよいよ!」

 

「なんだかすごそう」

 

「はあ……!」

 

待ちに待った瞬間に、誰もがドキドキと緊張と興奮を抑えきれなくなっていた。そして、その時が訪れる。

 

『最高のゲームを作るたった一つの心理、秘密の方法……それを今こそお教えましょう』

 

「……来ますっ!」

 

『…… ゲームを愛しなさい』

 

「おお……オープニング、みたいな感じかな。それっぽい!」

 

「そ、そう?」

 

興奮するモモイにミドリが横で首をかしげる。G.Bibleの表示が続く。

 

『ゲームを愛しなさい』

 

その表示のまま動かなくなった。

 

「……まさか、これで終わり……じゃ、ないよね?」

 

ユズがモモイたちの顔と端末を交互に見ながら、ゆっくりと尋ねる。モモイたちも徐々に焦りを見せ始めてくる。

 

「な、何かバグってるんじゃない?」

 

「ちょっと待って!ええっと、設定変更はどこから……」

 

端末を調べようとするモモイたちに、新たなメッセージが表示される。

 

『あなたがこのボタンを押したということは、ファイルが壊れた、もしくは何か問題があったのでは、何らかのエラーが生じたのでは……と疑っている状況なのでしょう』

 

「あっ、やっぱり!このまま終わるはずないよね!」

 

ホッと安心して胸をなでおろすモモイたちだったが、次のメッセージに驚愕する。

 

『しかし、エラーではありません。

 残念ですが、これが結論です。

 

 ゲームを愛しなさい!』

 

そしてG.Bibleはこれ以降、何も反応することはなかった。驚愕したモモイとミドリは、急いでファイルの再確認を行う。

 

「こんなのは間違いだ!きっと何かのエラーが……!」

 

「ファイルの損傷とか修正も見当たらない……最後の転送情報、ファイルサイズ、それにデータ構成も問題なし」

 

「そ、それじゃ、本当に……」

 

「これで終わり!!」

 

あまりの状況に現実を飲み込めないモモイ、ミドリ、ユズの三人は、呆然としていた。

 

「お、お姉ちゃん……私たち、何か悪い夢を見てるんじゃ……」

 

「終わりだあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

モモイの悲痛な叫びがミレニアムに響き渡った。

 

 

 

そして、今に至る。

それからモモイとミドリ、ユズの三人は、すっかり落ちこんでしまった。大好きだったゲームにも触らず、ずっと現実を直視せずに塞ぎ込んでいた。アリスは心配そうに三人を見ていたが、遂に意を決して声を上げた。

 

「今のみんなは……まるで、正気がログアウトしたみたいです!」

 

「「「……」」」

 

「こんなことしてても何も変わりません。『テイルズ・サガ・クロニクル2』を作らないといけないんじゃないんですか!」

 

「うぅっ……」

 

アリスの正論の刃がモモイの心に突き刺さる。そのまま伏せていたモモイは、目にいっぱいの涙をためて泣きじゃくり出した。

 

「仕方ないじゃん、最後の手段だったのに!それが、あんな誰でも知ってる文章が一つ入ってるだけだなんて!釣りにも程がある!知ってたよ!世界にそんな、それ一つで全部が変わって上手くいくような、便利な方法なんて無いって!でも期待ぐらいしたっていいじゃん!うわあぁぁぁんっ!!」

 

「ごめんね、アリスちゃん……私たちは……G.Bible無しじゃ、良いゲームは作れない……」

 

瞳に光を失ったミドリが、茫然自失したまま膝に顔を埋めて小さなか細い声でアリスに言う。三人に希望は無くなっていた。ゲーム開発部の存続のための最後の希望を失ったショックは、アリスの想像以上に深いものだった。アリスも何も言い返せなくなり諦めかけたその時、五条の言葉を思い返す。

 

『アリスはさ、アリスのやりたいことをやればいいんだよ』

 

(アリスのやりたいこと……)

 

アリスは思い返す。自分のやりたいこと、それはみんなと一緒にこのゲーム開発部で共に過ごすこと。それをやるために、自分がやるべきことは――。

 

「否定します」

 

「「え?」」

 

アリスの言葉に、モモイとミドリはアリスへと顔を上げる。アリスは凛とした様子で二人に、アリス自身の思いを伝える。

 

「アリスは『テイルズ・サガ・クロニクル』をやるたびに思います。あのゲームは、面白いです。感じられるのです。モモイが、ミドリが、ユズが……。このゲームを、どれだけ愛してるのかを。そんな、たくさんの思いが込められたあの世界で旅をすると……胸が、高鳴ります。

 仲間と一緒に新しい世界を旅する、あの感覚は……。夢を見るというのが、どういうことなのか……その感覚を、アリスに教えてくれました。だから、待望のエンディングに近づくほどに、あんなに苦しんだのに、思ってしまうのです……。

 この夢が、覚めなければいいのに……と。アリスは、そう思うのです」

 

「アリス……」

 

「アリスちゃん……」

 

「……」

 

アリスの言葉に、心が解けていく中、いつの間にかロッカーに閉じこもっていたユズがミドリの隣にいた。

 

「うわっ、ユズちゃん!?いつからそこに!?」

 

「『テイルズ・サガ・クロニクル』の話が始まった時から……」

 

「最初からいたの!?」

 

「……作ろう」

 

「え?」

 

突然の事に驚くモモイとミドリを横に、ユズが小さな声で、けれども強い意志で口にする。突然の言葉に、ミドリが思わず聞き返してしまう。するとユズは、アリスと同じように自分の思いを口に出すのだった。

 

「わたしの夢は……わたしが作ったゲームを、みんなに面白いと言ってもらうこと。でも、わたしが初めて作った『テイルズ・サガ・クロニクル』のプロトタイプは……四桁以上の低評価コメントと、冷やかしだけで終わっちゃって……。それが辛くて、ゲーム開発部の部室に引きこもっていた……。けれど、二人が、訪ねてきてくれた」

 

6ヶ月前、初めて作ったゲームが大不評だった。来る日も来る日も浴びせ続けられる心無いコメントに、ユズの心は壊れてしまった。寮を飛び出し、部室に引きこもり続けた。部室に閉じこもっても、壊れた心は戻ることはなくて、どんどん自分に自信が持てなくなり、自己嫌悪に陥る。そんな負の連鎖がずっと続く地獄の毎日だった。

そんな時、部室の扉を叩く音に、驚いて跳び起きた。

 

『だ、誰……?』

 

布団に包まりながら恐る恐る問いかけるユズに、扉越しから声が聞こえた。

 

『えっと、ここって「テイルズ・サガ・クロニクル」のプロトタイプを作った、ミレニアムのゲーム開発部で合ってますか?』

 

『な、何……?今度は、直接……?』

 

ユズの頭に思い浮かぶのは、自分に直接殴り込みをかけてきたクレーマーだと思った。そう考えたユズは布団から飛び出し、扉の前で土下座をする。そして、泣きながら精一杯の謝罪をするのだった。

 

『ご、ごめんなさい、ごめんなさい……!もう二度とゲームは作りません、だから、許して……!』

 

『えぇっ!?』

 

『何言ってるんですか、こんなに面白いのに!プロトタイプだけ作ってやめちゃうなんて!続き、すごく気になってるんですよ!ここまでワクワクさせておいて、そんなの無しでしょ!』

 

『……え?』

 

今、なんて言ったんだ、脳が飛び込んできた言葉を理解できなかった。すると、扉からの声はすごく嬉しそうに語ってくれた。

 

『「テイルズ・サガ・クロニクル」、すっごく面白かったです!』

 

『お姉ちゃん、徹夜でやってたもんね』

 

『ミドリだってニヤニヤしながらプレイしてたじゃん!もともとゲームにそんなに興味なかったのに!』

 

『え、う、うーん……確かに、ドットだけどキャラとか可愛かったし……』

 

『とにかく、あの、失礼します!』

 

そう言って、扉が開かれ、双子の少女が部室へと入ってきた。突然の事に、腰を抜かすユズを見つけた活発そうな少女が、キラキラとした目で、ユズを覗き込む。

 

『あなたがUZ様!?』

 

『え、あっ、はい……』

 

『ファンです!!』

 

後から入ってきた少し大人しめの子も、ユズに頭を下げてお辞儀をする。そして、最初に入った活発そうな少女がユズの手を取って、笑顔で思いを口にする。

 

『私も、ミドリも!UZ様みたいに、面白いゲームが作りたいです!』

 

『……っ!!』

 

顔も名前も知らない二人の少女が、自分の作ったゲームを初めて“面白い”と言ってくれた。そして、その感想をいう為に、会いにに来てくれた。それがとても嬉しくて、ユズは思いっきり泣いた。

それが、ゲーム開発部の始まり。ユズはそれを思い出した。

 

「……あの日、二人と出会った。それから一緒に『テイルズ・サガ・クロニクル』を完成させて……今年のクソゲーランキング1位になっちゃったけど……」

 

「「……」」

 

「その後、アリスちゃんが訪ねてきてくれて……。面白いって、言ってくれた。それで、わたしの夢は叶ったの。心の通じ合う仲間たちと、一緒にゲームを作って、それを面白いと言ってもらう……ずっと一人で思い描いてるだけだった、その夢が」

 

「ユズ……」

 

「これ以上は、欲張りかもしれないけど。叶うなら、わたしはこの夢が……この先も、終わらないでほしい」

 

「ユズちゃん……」

 

パチンと叩く音が鳴る。モモイは両の掌で、自分の頬を叩いていた。真っ赤に腫れた頬と少しの涙目になった顔で元気よく立ち上がる。

 

「よし!

 ねえ、今からミレニアムプライスまで、時間ってどれくらい残ってる?」

 

「お姉ちゃん……!」

 

立ち上がるモモイの顔は、先ほどまで駄々をこねて泣きじゃくっていた子ではない。ゲーム開発部のシナリオライターとしての役割を自覚したクリエイターの顔になっていた。それに感化されて、ミドリも気を引き締める。アリスがモモイの質問に答える。

 

「6日と4時間38分です」

 

「……それだけあれば十分。さあ、ゲーム開発部一同!

 『テイルズ・サガ・クロニクル2』の開発、始めよう!!」

 

「「「うん!!」」」

 

こうして、ゲーム開発部は「テイルズ・サガ・クロニクル2」を作り始める。自分たちの居場所を、自分たちの夢を守るために、彼女たちの本当の戦いが始まるのだった。

 

 

 

そんなゲーム開発部の部室の外で、五条は扉にもたれかかる姿勢で彼女たちの一部始終を聞いていた。そして、そのまま扉から背中を離して、廊下を歩く。

 

「まったく、少し目を離しただけで勝手に成長するもんだね……。これだから、『先生』はやめられないんだ」

 

そう嬉しそうに呟く五条は、頑張る生徒たちを労うためと小腹がすいたので、スイーツショップに向かうために街へと繰り出すのだった。




次回で、ゲーム開発部第1章の物語は最終話になります。お楽しみに!

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