シャーレの五条先生   作:未来跳躍

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メリークリスマス!

今回はクリスマス特別編です。
最近書いてなかったので、色々と拙い部分が多いですが、楽しんでいただけると光栄です。


じゅじゅさんぽ 陸

『ホシノのクリスマス』

 

すっかり寒くなった12月、シャーレで仕事中の五条に1通の連絡が入る。

 

「ん、ホシノ?」

 

スマホを確認すると、連絡の差出人はホシノだった。そこには短く1文が書かれていた。

 

『先生、今すぐ来て~』

 

何かと思ったが、五条はすぐに返事を返す。

 

『どうしたの?』

 

『実は用事でシャーレの近くまで来たんだけど、ちょっと困ったことになっちゃって~』

 

『オッケー、すぐ行くね!』

 

既読がすぐに付くと同時に椅子から立ち上がり、ホシノの元へと向かうのだった。

 

 

 

言われた場所に向かうと、こちらに気づいたホシノが五条へと手を振る。

 

「あっ、先生~!」

 

「お待たせー。どうしたの?」

 

「実はね……これなんだ」

 

そういいながらホシノはポケットから1枚の紙を見せる。

 

「何々……『海の生き物の神秘と歴史展』?」

 

見せられた紙はこの近くの博物館で期間限定で行われる特別展示のチケットだった。

何のことか首を傾げる五条に、ホシノは事の経緯を説明を始める。

 

「実はこの前商店街の福引でこのチケット当たったたんだけど、みんな忙しくて行けないんだよね」

 

「ふーん、ホシノ1人で行けばいいんじゃないの?」

 

「このチケット、ペアチケットで入るには二人一組が必要なんだよ~」

 

「なるほど」

 

事情を理解した五条は頷きすぐに手を差し出す。

 

「事情は分かった。それじゃあ、行こっか」

 

「さすが先生!話が早くて助かるよ」

 

こうして2人は博物館へ向かうことになった。博物館に向かう道中で五条がホシノに声をかける。

 

「しかし驚いたね。ホシノ、こういうのも好きなんだ」

 

「ん、何が?」

 

「前はアクアリウム行ったけど、今日のここはあくまで展示であって、実際の動物がいるわけじゃないんだよ」

 

ホシノは海の生き物が好きで対策委員会のみんなで行ったのとは別に、2人でアクアリウムを回ったこともあったのだが、正直海の生き物を見ることが好きだと思っていたので、この博物館の特別展示はあくまで海の生き物を見るのではなく、海の生き物の不思議やその歴史を紐解く内容になっているので、こういったものには興味が無いと思っていた。

 

「うへ~、そんなことないよ。こういうのを見て大好きなものの知識を得ることも私は好きなんだ~」

 

「なるほどね」

 

ホシノとの他愛のない会話をしている間に、目的の博物館に到着した。

 

「「おぉー!!」」

 

中に入った二人は思わず驚愕する。キヴォトスでも大きな博物館の特別展示は想像を超える規模の大きさと数の展示がされていた。

しかも展示の仕方もこだわっているのか、堅苦しい雰囲気にはならないように、それでいて楽しませるような内装になっていた。

 

「先生、早く行こう!」

 

「わかったわかった」

 

目を輝かせるホシノが五条の手を取って引っ張る。五条もまた軽やかについていく。

二人は展示を見て回る。展示を見て、聞いて、触れて回っていった。

 

「いや~、楽しいね。先生!」

 

「ふふっ」

 

満点の笑顔を見せるホシノを見て五条は思わず笑みがこぼれた。

それを見てホシノは我に返ったのか、少し照れ臭そうに頬をかく。

 

「……ごめんね……私だけはしゃいじゃって……」

 

「いや、ホシノが楽しいって思えるんなら、一緒に来てよかったと思っただけさ」

 

「……うへ~、先生ズルいね」

 

顔を赤くして顔をそむけるホシノに五条は分からずに首を傾げる。

 

「さてと、これで展示も終わりかな。物販コーナーあるけど、見ていく?」

 

「……う、うん。行こっか」

 

駆け足気味に物販コーナーへ向かうホシノの後をついていく。

物販コーナーでは色々なものが売られていた。身近な文房具からぬいぐるみやタペストリーの他にクッキーやチョコといったお土産系も揃っていた。

ホシノはたくさんの物販を物色していた。

 

「もうすぐクリスマスだし、対策委員会のみんなにお土産買っていかないとね」

 

対策委員会のみんなの顔を思い浮かべながら、商品を手に取る。

 

「自転車が好きなシロコちゃんにはこのステッカーとか良さそう。ノノミちゃんにはこのぬいぐるみとか喜びそう。アヤネちゃんにはこの本とかいいんじゃないかな。この工芸品の食器とかセリカちゃん好きそうだな」

 

みんなの贈り物を考えている中、あるものが目に入る。

 

「……ぁ」

 

それはクジラのネックレスだった。一目見て気に入ったホシノはそれを手に取って眺める。小さな白銀のクジラの付いたネックレスは、ホシノがクジラが好きなのもあるのも相まって目が離せなくさせる。

買おうかと思って値札を見るのだが、その値段を見て体が固まる。

 

(こ、これは……ちょっと高すぎるな~)

 

購入を諦めてネックレスを戻す。そのままカゴに入ったお土産を購入するためにレジへと向かうのだった。

購入を終えて博物館を出ると、五条の姿が見えなかった。どこに行ったのかとキョロキョロ見渡していると、彼が手を振って博物館から出てきた。

 

「先生、どこ行ってたの?」

 

「うん?ちょっとね……」

 

「……?」

 

「さてと、このままご飯でも行こうか。どこがいい?」

 

急に聞かれて困惑するホシノだったが、ふと頭に浮かんだのはあのお店だった。

 

「え、えぇっと……じゃあ、柴関ラーメンがいいかな」

 

「オッケー」

 

そうして2人は柴関ラーメンに向かう。

アビドスに戻ってきたときにはすっかり夜になっていた。

柴関ラーメンに到着すると、五条は扉を元気よく開いた。

 

「ヤッホー、大将!元気?」

 

「おー、先生じゃねえか。久しぶりだな」

 

「今日は大将だけ?」

 

「ああ、セリカちゃんならさっき帰ったな」

 

その時、なぜかホシノは心の奥底で安堵したことを彼女自身も気づいていない。

 

「そっかぁ……ま、いいか。いつもので。ホシノは?」

 

「……え、えぇっと……私も同じので」

 

「あいよ!」

 

席に座った五条がホシノに尋ねる。

 

「ホシノ、大丈夫?ボーっとして」

 

「う、うへへ……私は大丈夫だよ。元気元気」

 

ニコニコ笑ってへっちゃらだと見せるホシノに、五条は少し黙っていたが静かに笑う。

 

「……そうか。ならいいんだ」

 

少し気まずい空気になってしまったのを自分に苛立ちを覚えるホシノは、何とか場の空気を温めようと話を切り出した。

 

「そういえばさ……先生はどうして先生になったの?」

 

「僕が先生になった理由、か……」

 

「あ、答えたくないことなら答えなくていいんだよ」

 

「いや、別にいいよ。隠すようなことでもないし、ラーメンが来るまでの短い時間で語れるようなことさ。ほら、僕って最強じゃん?」

 

ドヤ顔で尋ねてくるが、五条が最強なのは事実なのでホシノは首を縦に振る。

 

「ただね、僕だけが最強でもダメなんだ。僕が助けられるのは、助けられる覚悟がある人だけなんだ。それに、ホシノはもう知ってると思うけど、生徒たちがこれから生きていく以上いつかは糞みたいな人間の悪意と向き合う時が来る」

 

「……」

 

ホシノは何も言い返せない。かつて自分も大人の悪意に振り回され全部失くしてしまうところだった。それを助けてくれたのは、他でもない大切な仲間たちと――目の前にいる一人の大人だった。

 

「僕らみたいな大人は心に回った毒を吐き出す手段を知ってる。でも、多感な時期の若人は別だ。一度の毒が心を壊すこともある。だから、僕は教育を選んだんだ。若人が心に回った毒を吐き出す手段を教える。そして――強く聡い仲間を育てる。それが僕の夢なんだ」

 

「……先生」

 

そう語る五条の顔は優しく、けれども悲しそうに見えた。

そういい終わったと同時に柴大将がラーメンを運んできた。

 

「ほら、お待ち」

 

「あっ、来た来た――って、大将。なんか多くない?」

 

「そうか、ちょっと前が見えなくてね。トッピングの量を間違えちまった」

 

こちらを向かない大将だが、目元をゴシゴシとこすっているのが見えた五条はくすっと笑い手を合わせる。

 

「大将もああ言ってるし、食べようか」

 

「うん、そうだね」

 

「「いただきます」」

 

 

 

二人でおいしくラーメンを食べ終えてお会計のために席を立つ。

 

「ごちそうさま。今日もおいしかったよ、大将」

 

「大将、ごちそうさま~」

 

「おう、毎度!」

 

店から出ると、急な寒さにホシノはくしゃみをする。

 

「ん、ホシノ寒い?」

 

「いや~、さすがにね~。おじさんにこの寒さは堪えるね」

 

「ほら」

 

ホシノに向かって手を差し伸べる五条。差し伸べられた手をそっと握ると、グイっと引っ張られホシノの小さな体は五条の懐に埋もれた。

 

「~~っ!?」

 

声にならない叫びを出し顔を真っ赤にして混乱するホシノだったが、それに気づいていない五条は掌印を結ぶ。五条は無下限の範囲を調節し、五条とホシノを寒さから守るようにした。

 

「はい、こうすれば寒くないでしょ。ホシノ……?」

 

「あ、いや、うん……」

 

「――?」

 

結局この後動きづらいという事で結局普通に歩くことになった。

そうして、ホシノの家まで五条は彼女を送り届けることにした。

 

「いやー、今日は楽しかったねー」

 

「先生、忙しいのに来てくれてありとうね」

 

「いいのいいの。ホシノの頼みならいつでも駆けつけるよ」

 

「も~そんなこと言って」

 

「あはは」

 

そんな楽しい時間も終わりが近づいていく。ホシノの家が見えてきた。

 

「じゃあ先生、今日はありがとうね」

 

「あ、ちょっと待って」

 

ホシノが玄関の扉に手を伸ばしたところで、五条が声をかけて止める。すると、ホシノをその場に止めて彼は少し離れる。物陰からゴソゴソと何か音が聞こえた。

そして、物陰から現れたのは――、

 

「ジャジャジャジャーン!GSG(グレートサンタゴジョー)だよ!」

 

そこには白い付け髭と赤い帽子をかぶった五条が元気よく飛び出てきた。その姿に驚愕するホシノを余所に五条はある一つの細長い箱を手渡した。

 

「……これは?」

 

「開けてごらん」

 

言われた通り、包装紙をめくり箱を開ける。中から取り出したものを見てホシノは目を見開いた。

 

「これって――」

 

それは博物館で諦めたクジラのネックレスだった。あの時のことは言っていないし、五条が傍にいたわけでもなかった。

 

「……どうして?」

 

「分かるさ。だって僕は君の『先生』だからね」

 

髭と帽子を外した五条がニコッと笑う。その時には思わず彼に抱き着いていた。

 

「嬉しい……大切にするよ、先生」

 

「喜んでもらえてよかったよ。それじゃ、ホシノ。メリークリスマス!」

 

「うん、メリークリスマス」

 

そうしてホシノは五条の背中が見えなくなるまで彼を見送っていた。その後、風呂に入り寝るまでずっと彼女はもらったネックレスを嬉しそうに眺めていた。

 

 

 

その翌日、アビドス高等学校にて、ホシノは昨日のお土産をみんなに渡していた。

 

「はいはーい、おじサンタが良い子のみんなにプレゼントだよ~」

 

「わぁ、ありがとうございます!」

 

「ん、これ大切にする」

 

「ま、まぁ……ありがとうね。ホシノ先輩」

 

「ありがとうございます、ホシノ先輩」

 

アビドスのみんが貰ったお土産を喜んでいる中、ノノミがホシノの胸元に光るものを見つける。

 

「あれ、ホシノ先輩それ……」

 

「うん?あ、ああ、これね。これはその……」

 

急にもじもじするホシノを見て、ノノミの中の乙女レーダーが反応した。

 

「ホシノせんぱーい、もしかして――」

 

「な、何ニヤニヤしているの!ノノミちゃん!別にこれは先生にもらったとか、あ……」

 

「ん、先生って聞こえた」

 

「何々、先生がどうかしたの?」

 

「ホシノ先輩、教えてください」

 

四人に囲まれたホシノはしどろもどろになりながら追い詰められていく。

そして――、

 

「さらば!」

 

その場から逃走したのだった。

 

「逃げたわ!」

 

「ふふふ、待ってくださーい」

 

「ん、逃がさない」

 

「みなさん、待ってください」

 

追いかける四人、こうして対策委員会でのクリスマスの鬼ごっこが開催されるのだった。

 

「うへ~、勘弁してよ~!」




次回は本編を投稿するのでよろしくお願いします。
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