シャーレの五条先生   作:未来跳躍

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どうも、プロローグを読んでくださり、誠にありがとうございます。
本当は単発で終わらせる予定だったのですが、ブルーアーカイブの面白さについ先日ドップリとハマってしまい、そのまま続きを書くことになりました。
もしよろしければ、感想や五条先生への質問などがあれば、ドシドシとお寄せください。


対策委員会編
対策委員会へようこそ


五条悟がシャーレの先生に就いて数日が経過した朝。

 

「おはようございます、先生!」

 

「おはよう、アロナ」

 

笑顔で挨拶するアロナに五条は挨拶も返す。

 

「さて、先生がここに来て数日、色々と準備も終わり今日から本格的にシャーレでの仕事が始まるわけですが、見てください!

 こんなにもたくさんの手紙が来ています!ですが……ちょっと不穏な、こんな手紙がありまして。先生にも読んでもらった方が良いかなと」

 

五条はアロナから言われた手紙を開いて読み始める。

そこには丁寧な字でその逼迫した事情が書かれていた。

 

『連邦捜査部の先生へ

 

こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。

今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして

こうしてお手紙を書きました。

単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。

それも、地域の暴力組織によってです。

こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが……。

どうやら、私たちの学校の校舎が狙われているようです。

今はどうにか食い止めていますが、

そろそろ弾薬などの補給が底を突いてしまいます……。

このままでは、暴力組織に学校を占領されてしまいそうな状況です。

それで、今回先生にお願いできればと思いました。

先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?』

 

手紙を読んだ五条はアロナに尋ねる。

 

「アロナ、このアビドスってのはどんな学校なんだい?」

 

「うーん……アビドス高等学校ですか……。

 昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました」

 

「厳しいって……?」

 

「アビドスは元々砂漠地帯にあった街なのですが、砂嵐の影響で砂漠が街を飲み込んでどんどん大きくなっていると聞きます」

 

「砂漠…」

 

「どれほど大きいかというと、街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるくらいだそうです」

 

「あはは!それは言い過ぎでしょ!いくら砂漠の街でも街のど真ん中で遭難なんてありえないって!そんな馬鹿がいるなら、顔でも拝みたいよ!」

 

手をたたいて爆笑する五条にアロナも苦笑交じりで答える。

 

「そうですよね……。さすがちょっとした誇張だと思いますが……。

 それより学校が暴力組織に攻撃されているなんて、ただ事ではなさそうですが……。

 何かあったんでしょうか?」

 

「さあね。そんなことは行ったらわかるでしょ」

 

そう言って、五条は椅子から立ち上がり身支度をする。

 

「――ということは先生!」

 

「シャーレの記念すべき初仕事はアビドスで決定だよ」

 

こうして、アビドスへと向かった五条悟。

すぐにアビドスの自治区に到着したはよかったものの、砂漠に埋もれた街という巨大な迷宮に捕らえられて何日も彷徨うことになるのだった。

 

 

 

アビドス自治区の朝。

 

ここに一人の少女がロードバイクで颯爽と走っていた。セミロングの銀髪が風に流されて揺れる。少女にとってはなんてことはないいつもの通学路。このまままっすぐ行けば学校にたどり着く――はずだが、その日はいつもと違っていた。

 

「……ん?」

 

それは道の真ん中に倒れていた。とりあえず自転車を降りて、手で押しながらそれに近づいてみる。

それは男の人だった。少女は彼に近づき、声をかけてみることにした。

 

「……あの……大丈夫?」

 

そう尋ねると、彼が少し動いて何かを呻きだした。

 

「あ、生きてた。道のど真ん中に倒れてるから、死んでるのかと」

 

とりあえず生きてることに少し安堵するが、彼は何かか細い声で呻いている。

よく聞き取れないので、顔を近づけると男の声が聞こえた。

 

「……み……水……水を…ちょうだい……」

 

どうやら飲み物を所望しているので、彼女は自分のカバンを探る。

 

「エナジードリンクならあるけど……これでよければ。えっと、コップは……」

 

少女はボトルを取り出して、コップ探そうとするが――。

 

「……あ!」

 

男はすぐにボトルを奪い、そのまま一気に飲みだした。

 

「あ……それ……ううん、何でもない。…気にしないで」

 

男があまりにも必死に飲むその姿に少女は何も言えなくなってしまった。

 

 

 

「いやあ、助かった!ありがとね。君は僕の恩人だよ」

 

エナジードリンクを飲んで復活した五条は、目の前の少女にお礼を言う。

 

「まさか、本当に街の真ん中で遭難するとは思わなかった。店も全然閉まってるし」

 

「ここは元々そういう所だから。食べ物がある店なんか、とっくに無くなってるよ。

 こっちじゃなくて、もっと郊外の方に行けば市街地があるけど。この辺は初めてなんだね」

 

「まあね。仕事で」

 

少女は五条を見て尋ねる。

 

「あなたは連邦生徒会の人なの?」

 

「まあ、それに近い人ってとこかな」

 

「そうなんだ、お疲れ様。学校に用があってきたの?

 この近くだと、うちの学校しかないけど……もしかして……『アビドス』に行くの?」

 

「ピンポーン!正 解!」

 

五条がそう答えると、少女は少し嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「……そっか。久しぶりのお客様だ。

 それじゃあ、私が案内してあげる。すぐそこだから」

 

「そりゃあ、助かるね」

 

少女に案内されて五条はようやくアビドス高等学校へと向かうのだった。

 

 

 

アビドス高等学校・対策委員会部室

 

「ただいま」

 

「おかえり、シロコせんぱ……い?」

 

「シロコちゃんが大人を拉致してきました!」

 

「シロコ先輩!ついに犯罪を……!」

 

「みんな落ち着いて!速やかに証拠の隠滅を」

 

銀髪の少女と五条が部屋に入ってきた早々、部屋にいた三人の少女たちがパニックになり大騒ぎになった。そんな慌ただしい様子を見て五条はニヤニヤと笑っている。

 

「違う。この人、うちの学校に用があるんだって」

 

五条が最初にあった銀髪の少女がそう言うと、残りの三人の動きが止まった。

 

「えっ!ということは、お客さん?」

 

「そう。お客さん」

 

「どうも、お客さんです」

 

五条は笑って言うと、三人は互いに目配せをし、そのうちのベージュのロングヘアの少女が恐る恐る尋ねる。

 

「あの……よろしければ、あなたのことを伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「僕は五条悟。連邦捜査部『シャーレ』の先生をやってる」

 

そう告げると、彼女たちの顔はたちまち笑顔に変わっていった。

 

「ええっ!連邦捜査部『シャーレ』ってことは!?」

 

「支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」

 

「はい!これで……弾薬や補給品の援助が受けられます!」

 

少女たちは手を握り合って嬉しそうに飛び跳ねた。

その後、五条は彼女たちに『支援要請受理証明書』を手渡し、アビドスへ来た目標の一つが完了した。

すると、眼鏡をかけた少女があることを気づいて声を上げる。

 

「あ、ホシノ先輩にも知らせてあげないと……」

 

「ホシノ先輩ならいつもの場所で寝てると思うし。私、起こしてくるね」

 

黒髪のツインテールの少女が元気に部屋を飛び出していった。

その次の瞬間、突如として大きな銃声が鳴り響いた。

 

「「「!!」」」

 

少女たちが窓の外を見ると、フルフェイスマスクタイプのヘルメットを被った生徒たちが殴り込みに来ており、手に持つ銃を乱雑に打ちまくっていた。

 

「わわっ!?カタカタヘルメット団です!」

 

「あいつら……!!性懲りもなく!」

 

そこに先ほど部屋を出て言った少女がもう一人の少女を連れて戻ってきた。

 

「ホシノ先輩を連れてきた!先輩!さっさと準備して!」

 

「え~まだ眠いよ~」

 

先輩と呼ばれた子は眠そうな眼をこすりながら、部屋に入ってくる。

 

「ホシノ先輩!ヘルメット団が襲撃を!こちらはの方はシャーレの五条先生です」

 

「ありゃ~そりゃ大変だね…。あ、先生?よろしくね~」

 

「……」

 

少女は五条を一瞥すると、ゆっくりと自分の武器を取りに行った。

 

「ほら先輩!早く!」

 

「わかったよ……」

 

「ん…先生のおかげで弾薬と補給品は十分」

 

「はーい、みんなで出撃です☆」

 

「私がオペレーターを担当します」

 

少女たちは準備を終えて、ヘルメット団が暴れる校庭へと降りて行った。

一人残った五条は部屋の窓から少女たちを見物することにした。

 

「さてと、ちょうどいいタイミングの襲撃だ。アビドスの生徒たちの強さ、見せてもらうよ」

 

椅子に腰かけて文字通りの高みの見物で嬉しそうに五条は笑った。

 

アビドスの生徒たちは五人という少ない人数でありながらも、その戦闘は凄まじいものだった。

前衛三人、後衛一人、そしてそれを援護するサポーター一人の攻勢で成り立つ彼女たちのチームワークは、五条の目から見ても興味深いものだった。

まずは前衛三人。銀髪の少女と先輩と呼ばれた小柄の少女が切り込み、その二人の死角をツインテールの少女がカバーをする。

次に後衛の少女がマシンガンで砂煙を上げて前衛の姿を隠したり、後ろからくる敵の増援を一掃したりする。

最後にサポーターの少女がドローンを用いて前衛への弾薬を補給したり、敵の来る数と方向を正確に捕捉。そこからの指揮もこなす。

たった五人で学校を守ってきたというのも間違いではないのだろう。そう思わせる強さを見ることができた。

 

「なるほどね。これは色々と楽しくなってきた」

 

そして、アビドスの生徒たちの活躍によってカタカタヘルメット団は泣きながらアビドス高校から逃げていくのだった。

 

 

 

アビドス高等学校・対策委員会部室

 

「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね」

 

先輩の少女がゆるい口調で話すと、眼鏡の少女が注意する。

 

「勝っちゃうなんてね、じゃありませんよ、ホシノ先輩……。

 勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……。

 あ、そういえば、少し遅れちゃいましたけど、改めてご挨拶します、先生。

 私たちは、『アビドス対策委員会』です。

 私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネです」

 

アヤネと名乗った少女はぺこりと礼をする。その次にツインテールの少女を指して紹介を続ける。

 

「こちらは同じく1年のセリカ」

 

「どうも」

 

ツンとした態度で挨拶するセリカ。その次に――。

 

「2年のノノミ先輩とシロコ先輩」

 

「よろしくお願いします、先生~」

 

「さっき、道端であったのが、私。

 ……あ、別にマウントを取ってるわけじゃない」

 

笑顔で挨拶するノノミとそのまま淡々と挨拶するシロコ。そして――。

 

「3年のホシノ先輩です」

 

「いやぁ~よろしく、先生~」

 

机に突っ伏したまま、気だるげに手を振るホシノ。

こうしてアビドスの生徒たちの自己紹介は終わった。

特徴的な生徒たちに五条は笑って帰す。

 

「ははは。みんな、中々個性的で面白いねー」

 

「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています…。

 弾薬と補給品が尽きていたので、先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られてしまったかもしれません。本当にありがとうございました」

 

深々と頭を下げるアヤネに五条は――。

 

「別に気にしなくていいよ。それが僕の仕事だから」

 

そう言って手を振って返した。そして、あることを尋ねる。

 

「ところで対策委員会ってのは何かな?」

 

「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは、このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です」

 

「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!

 まあ、全校生徒といっても、私たち五人だけなんですけどね」

 

アヤネが説明し、ノノミが笑って補足した。

 

「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出ていった。

 学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われる始末なの。

 現状、私たちだけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生として恥ずかしい限りだけど……」

 

そういうシロコの顔はどこか暗い表情だった。

 

「いやー。補給品も底をついてたし、さすがに覚悟したよね。ナイスタイミングだったよ、先生」

 

突っ伏した姿勢のまま親指を立てるホシノに、ノノミも笑顔で頷く。

 

「うんうん!先生のおかげでもうへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」

 

「かといって、攻撃を止めるような奴らじゃないけど」

 

「そうよね。あいつら、しつこいから」

 

「いつまでこんな消耗戦を続けなければいけないのでしょうか……。

 こんなことしている場合じゃないのに……」

 

先の見えない戦いに疲弊の顔をする対策委員会一同。

そんな重くなった空気を換えるために五条がある提案をする。

 

「はいはい、みんな落ち込まない。

 まったく、しょうがないな。

 そんな困っている生徒たちに、このGTG(グレートティーチャー五条)のワンポイントアドバイスを与えようじゃないか」

 

「「「「「ワンポイントアドバイス……?」」」」」

 

五条の言葉に全員が首をかしげる。

 

「確かにこのまま学校を守るだけなら、いずれジリ貧になる。

 なら、逆の発想をすればいい」

 

「逆の発想って……?」

 

尋ねるセリカに五条はニッっと笑って答える。

 

「こっちから攻めればいいのさ。今からね」

 

「い、今からですか?」

 

「そうだよ。向こうもこちらの行動を読んでおそらく補給のタイミングになるだろうから、その瞬間に奇襲する。

 シンプルだけど、相手からすると嫌だろうね。少なくとも僕ならそうするかな」

 

「そ、それはそうですが……」

 

迷っているアヤネだったが――。

 

「いいんじゃない。おじさんは賛成かな」

 

「ホシノ先輩!?」

 

真っ先に手を挙げたホシノに驚愕する。

 

「先生の言う通り、今なら奴らが一番消耗しているだろうし、補給とかの面倒なことも先生がいるしね」

 

「ん…。なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30㎞くらいだし、今から行けば叩ける」

 

「そうですねー。あちらも、まさか今から反撃されるなんて夢にも思っていないでしょうし」

 

ホシノの言葉にシロコとノノミも賛成する。

残された1年組に五条は顔を向ける。

 

「二人はどうするの?」

 

ニヤニヤと笑いながら聞く五条にセリカとアヤネは考えた結果――。

 

「わかったわよ!行くわよ!アヤネちゃん、準備お願い」

 

「……分かりました。行きましょう」

 

観念して『ヘルメット団ぶったおそう作戦』(命名者:五条)の準備に取り掛かった。

 

 

 

カタカタヘルメット団前哨基地

 

アビドス高等学校を襲撃してきたカタカタヘルメット団の不良たちが帰還する。

 

「疲れたー」

 

「お疲れ、どうしたんだ?」

 

作戦通りなら今日でアビドスを落とせたはずなのだが、帰還した仲間たちの様子がおかしいので尋ねる。

 

「どうしたもこうしたもねえよ。あいつら、全然元気だったぞ。弾薬と補給が底をついているって話じゃなかったのか!?」

 

「えっ!?でも、もらった情報には確かに……。どうする?」

 

「どうするって聞かれても知るか!とりあえず、補給を済ませてまた後日に再び襲撃するしかないだろう」

 

とりあえず、補給をしようとしたその瞬間、警報が鳴り響いた。

全員がその警報装置に目を向けて、幹部が監視班に大声で叫んだ。

 

「なんだ!何があった!?」

 

幹部の問いに監視係が信じられないものを見たような震える声で答える。

 

「あ、アビドス……。アビドスの連中が攻めてきました!ものすごい勢いでこちらに向かってきます!」

 

「な、ななな、なんだってー!急いで防衛態勢に入れ!」

 

中にいた不良たちが慌てて準備に入ろうとするが、その時間もなく基地の正面玄関が爆破された。

全員が振り返ると、砂煙の向こうから小さな影が現れた。

 

「はい、ごめんねー」

 

気だるげな言葉とは裏腹に素早い動きでヘルメット団のメンバーがやられていく。

このままではまずいと察した幹部は全員に通達する。

 

「う、裏口だ。裏口から撤退だ」

 

そういうと残ったメンバーが裏口へと駆け寄る。

しかし、そこには――。

 

「ん…。大人しくして」

 

「さもないと、痛い目みるわよ!」

 

裏口にもすでに敵の魔の手が忍んでいた。

裏口に真っ先に駆け込んだ者たちはすでにやられてしまっていた。

 

「ど、どうしよう?」

 

「窓だ!窓から脱出するぞ!」

 

玄関も裏口も抑えられたヘルメット団たちは窓から散り散りに逃げようとする。

だが――。

 

「はーい。逃がしませんよー☆」

 

マシンガンの猛攻に撃たれて落ちていく。

こうして、カタカタヘルメット団の前哨基地はわずか30分で陥落したのだった。

 

 

 

アビドス対策委員会部室

 

「ただいま~」

 

「おかえりー。おつかれー」

 

対策委員会の部室に帰ってきた委員会のメンバーを五条は部室で迎え入れる。

一人だけ優雅にアイスを食べながら。

その姿を見たセリカの怒声が響く。

 

「おつかれーじゃないわよ!何してんの!?」

 

「えっ!?見てわかんない?アイス食べてんだけど」

 

「それは分かるわよ!なんで一人だけアイス食ってんのよ!私たちが苦労してるっていうのに!」

 

「まあまあ、セリカちゃん。

 先生の作戦のおかげで無事にカタカタヘルメット団のアジトを破壊できたんだからいいんじゃないかな」

 

怒るセリカをアヤネがなだめる。とりあえず怒りを鎮めるセリカを見たノノミが口を開く。

 

「とりあえずこれで火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。

これで一息つけそうです」

 

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる」

 

「重要な問題って?」

 

シロコの言葉に五条が尋ねる。

 

「そ、それは……」

 

「待って!アヤネちゃん、それ以上は!」

 

アヤネが答えようとした時、セリカが慌てて止めようとするが、それをホシノが割って入る。

 

「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし」

 

「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」

 

「別に罪を犯したとかないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」

 

ホシノの言葉にシロコも同意する。

 

「ホシノ先輩の言う通りだよ。先生は信頼していいと思う」

 

「で、でも、先生だって結局部外者だし!」

 

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。

 でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、先生くらいしかいないじゃん?

 悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもよー?」

 

「それでも!先生はさっき来たばかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?

 この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、こんな大人が首を突っ込んでくるなんて……。

 私は認めない!!」

 

セリカはそう叫んで教室を飛び出していった。

 

「セリカちゃん!」

 

「私、様子見てきますね」

 

ノノミがアヤネの肩に手を置いて話すと、そのままセリカの後を追っていった。

静寂となった教室にホシノが手を挙げて、説明を始めた。

 

「えーと、簡単に説明すると……この学校、借金があるんだー」

 

「借金?」

 

「そう。まあ、ありふれた話だけどさ。

 でも問題はその金額で……9億円ぐらいあるんだよね」

 

「それはまた、えらい額だねー」

 

ホシノから出たあまりの金額に、五条でさえ驚きを隠せなかった。

 

「……正確には9億6235万円、です」

 

アヤネが訂正してそのまま説明を続ける。

 

「アビドス……いえ、私たち『対策委員会』が返済しなくてはならない金額です。

 これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります。

 ですが、実際に完済できる可能性は0%に近く……。

 ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去って行きました……」

 

「そして、私たちだけが残った」

 

「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、実はすべてこの借金のせいです」

 

「詳しく聞かせてもらえるかな?

 なんで借金なんかをすることになったのかをね」

 

五条がそう尋ねると、アヤネは静かに頷いて再び説明を始めた。

 

「数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです。

 元々アビドスで砂嵐は頻繫に起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のものでした。

 学区のいたるところが砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも砂がたまり続けてしまい。

 その自然災害を克服するために、我が校は多額の資金を投入せざるを得ませんでした……。

 しかしこのような片田舎の学校に、巨額の融資してくれる銀行はなかなか見つからず……」

 

「結局、悪徳金融業者にたよるしかなかった」

 

アヤネの説明っとシロコの言葉で五条は事情を理解した。

 

「なるほどね。最初はすぐに返せると思っていたけど、自然災害がその対策以上の規模で来るものだから、結果さらに借金をしなけりゃならない。

 その悪循環に陥った結果、残ったのは多額の借金だけってとこかな」

 

「……はい、その通りです」

 

「「……」」

 

アヤネが頷き、ホシノとシロコも黙ってしまう。

 

「私たちの力だけでは、毎月の利息を返済するので精一杯で……」

 

「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生、あなたが初めて」

 

「……まあ、そういうつまらない話だよ。

 で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけー。

 もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にいいからねー。話を聞いてくれただけでもありがたいし」

 

「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。

 これ以上迷惑はかけられない」

 

自分達の辛い状況を話してくれたアヤネとホシノとシロコに、五条はあっけらかんとした顔で答える。

 

「え?何言ってんの。僕も手伝うに決まってるじゃん」

 

「「「……え?」」」

 

アヤネたちは目を丸くして首をかしげた。

 

「僕を誰だと思ってるんだい。僕はみんなの先生だからね。

 スーパー教師五条先生は困ってる生徒は見過ごせないのさ」

 

堂々と胸を張ってと笑う五条に、三人はパアッと顔を輝かせていく。。

 

「せ、先生……。はいっ!よろしくお願いします!」

 

「へえ、先生も変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込むなんて」

 

「良かった……『シャーレ』が力になってくれるなんて。これで私たちも、希望を持っていいんですよね?」

 

「うん、そうだね」

 

嬉しそうに喜ぶアヤネたちを、セリカは教室の外から眺めていた。

 

「……ふんっ。なによ、みんな先生先生って」

 

自分にボソッと文句を吐いて、そのまま踵を返して、一人で帰っていった。

一人だけ取り残された疎外感を感じて……。

 

 

 

一方、ノノミはというとーー。

 

「セリカちゃーん、どこですかー?」

 

一人、セリカを探して校舎をさ迷っていた。

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