ドールズ・アーカイブ   作:あっぷる⤴ぱい⤵

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第三話です。
そろそろお盆ですが、なんかお盆にかこつけて書けないかな?


襲撃犯確保

「ッ!!スナイパーッ!!」

 

M16は咄嗟にしゃがみ、飛んできた弾丸を交わす。

そしておよそ盾にしてはいけないケースをしっかり盾にして、M16を狙撃地点と思われるところへ撃ちながら物陰へ退避する。

 

「隊長、一時、スナイパー!」

 

「……ここッ!」

 

同時にスナイパーも敵を捕らえ引き金を引く。

このタイミングで一番狙いやすいところにいたのは自警団としてこの作戦に参加していたIWS2000である。

彼女が持つライフルは当たり前のようにIWS2000。

初速マッハ4で15.2mmAPFSDSを撃ち出す持ち歩ける戦車砲である。

そんな12.7×99mm NATOなんぞが可愛く見える口径の弾丸は獣の咆哮のような銃声とともに撃ち出され、およそ襲撃犯であろう人物の元へと飛んでゆく。

 

「スナイプポイントを特定、制圧してきます」

 

狙撃とともに、スプリングフィールドが数名の誠実の生徒を連れて制圧へと向かう。

建物を登り、およそ襲撃現場であろう屋上にたどり着くと、一人の女性が右肩のあたりを押さえもがき苦しんでいた。

おそらく例のIWS2000の放った15.2mmAPFSDSが肩に当たるかかするかしたのだろう。

それだけでももがき苦しむほどの痛みとは…さすが戦車砲をちっこくしたやつである。

 

「正義実現委員会です!両手を上げて投降しなさい!」

 

スプリングフィールドの声が響く。

その撃たれた人物はぶかっとしたコートで身を隠し、頭もフードで隠しているため誰かはわからない。

 

「あ”ぁ”ぁ”……う”ぅ”……」

 

銃を突きつけるのは周りの子に任せスプリングフィールドはオペレーターを突きつけつつ、フードへと手を掛ける。

 

「投降しなさいッ!」

 

フードをめくるとピンク色の髪が見えた。

だが汚れからかそのピンク色の髪は精彩を欠いている。

それでもそのピンクの髪にスプリングフィールドは見覚えがあった。

 

「バレットM82A1?」

 

「…そ、その声……スプリング、フィールドッ」

 

「ええ、スプリングフィールドです」

 

「よ、よかった。生きてたんですねっ……」

 

「はい。生きてますよ。っとその前に治療です。メディック!」

 

スプリングフィールドが振り向き大きな声でメディックを呼ぶ。

すると誠実の生徒の後ろから救護騎士団の生徒が数名出てくる。

 

「右肩がひどいですね……早急に処置に当たります。ペルシカリア博士に連絡を!」

 

素体の生態パーツは吹っ飛び、内部の機械パーツがよく見える。

ちぎれた配線や、破れたり折れたりした金属部品が余計痛々しく見える。

そんな様子を見て人形だと判断した救護騎士団の部員が本部で待機していたペルシカへと無線を入れる。

 

「もうすでに処置の準備はできているらしいです!」

 

「なら応急処置を済ませて搬送します!」

 

おそらくリーダー格の娘が指揮を取り、手早く応急処置を済ませ担架で運び、車へとのせ急いで救護騎士団の本部へと届ける。

 

「ターゲット確保。作戦完了です」

 

最後にスプリングフィールドが無線で全体に伝える。

 

”お疲れ様。事後処理部隊以外は帰還してくれ”

 

「もう飲んでいいか?」

 

”どうぞ。好きなだけ”

 

その指揮の元、約一名はウイスキー瓶を出し、残りの面々は撤収準備に取りかかる。

ひとまずは最近話題の襲撃犯を捕まえたこともあり、達成感と安堵感の混じった顔をした生徒が多い。

あと一部はこの後の書類やらでもうすでに頭を抱えている。

実に悲しき社畜たちである。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

翌日。トリニティ総合学園、救護騎士団本部。

 

”容体はどう?”

 

「容体は安定、素体は右上半身を取り替え、メンタルモデルは異常なし、ツェナープロトコルはじめ各種システムは正常。心配はない、時期に目覚めるわ」

 

”そう……ならよかったよ”

 

先生とペルシカの姿はM82A1の修復用のベッドのそばにあった。

あのあと搬送されたM82A1はペルシカの手でキズがひどいところ…15.2mmAPFSDSがえぐった右肩のあたりだが、そこを新たな素体に取り替え、今はベッドでスリープモードになっている。

 

”そう言えば最近どう?ウタハたちからは知見が広がったと聞いているけど”

 

「ええ、それはこちらもよ。90wishやI.O.Pじゃ聞かなかった技術もあるもの。研究者としては嬉しいばかりよ」

 

”それはよかった”

 

「こちらこそよ。おかげでASSTなどの研究が捗るわよ」

 

”天才科学者ペルシカリアにそこまで言わすとは彼女らの先生として鼻が高いねぇ”

 

昨日の襲撃から一夜明け、空には太陽が登りかけている早朝、徹夜で仕事をこなしていた二人はコーヒーを飲みながら雑談に花を咲かす。

余談だが、ペルシカの例のゲロ甘コーヒーを見てミネ団長が救護しかけたが、こればっかりは必然と言ったところだろう。

 

「おっと、メンタルモデルが動き出したわ。お目覚めのようよ」

 

小さなうめき声がベッドからした。

どうやらお目覚めのようである。

少しするとM82A1が素体をムクリを起こした。

 

”おはよう。バレット”

 

「……指揮官。ですか?」

 

”そうだよ”

 

「……休暇中、ですか?」

 

この発言には思わず先生もん?となるが今の自分が着ているのはグレーのスーツであることに気づくと、思わずクスリと笑みがこぼれる。

 

”いや、職務中だよ”

 

「…それは?一体?」

 

「長くなりそうね……私はこの間にあの子達に伝えてくるわ。彼女が目覚めたって」

 

そう言うとペルシカはコーヒーのようななにかを飲み干し、カルテを持って出ていった。

良く言えば報告をしに、悪く言えばこの先の面倒くさい説明から一抜けしたわけである。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「そんなことが……クスリをやっているわけではないんですね?それかみんな悪質なコンピュータウイルスに感染しているとか………」

 

”なら君もメンタルモデルが狂ってることになるけど…そんな感じないでしょ?”

 

「ええ、それがこの状況が嫌でも真実だと…突きつけてきます……」

 

一通り先生の説明を聞いてM82A1が感じたのはまさに混乱。

ここが異世界だなんてことを聞かされればこの反応は当然のことである。

 

”そして、君が襲っていたシスター服の子たちだけど……”

 

なんとかかんとか状況を飲み込んだ、M82A1に先生は件の一件にまつわる大きな誤解を解こうと言葉を噛みしめるように発した。

 

「まさか……」

 

彼女もなにかを察したようで顔を青くして息を呑む。

 

”うん。彼女たちはシスターフッドという部活の子たちなんだ。人形天使教とは一切関係のない組織なんだ”

 

「…………」

 

冷たい真実を告げられる。

彼女には重くのしかかる事実だが、告げないわけにはいけない。

本来ならもっと落ち着いたときに伝えるべきだが、これだけの騒ぎになったこの事件、情報統制を敷く方が難しいのだ。

さらにここはトリニティ、情報が伝わるのは異様に早い世界である。

そんななかでM82A1が何も知らなければどんな誇張され、曲解された事実が植え付けられるかわかったものじゃない。

だからこそ、先生は辛いことは承知の上で今、伝えることにしたのだ。

 

「……私は、とんでもない、ことを………二度と、力の使い方は間違えないと……誓ったのに……」

 

その呟きに先生は何も返さず、彼女の様子を見守っていた。

しばらくするとM82A1が先生に向き直り、覚悟を決めたように問いかけた。

 

「指揮官。…私はどうすればいいの?これも…私への罰なの……」

 

涙の筋が見える顔を先生に見せる。

先生もそんな彼女から目を離さず、彼女の双眼に眼を合わせて言葉を紡ぐ。

 

”謝るしかない。君のやったことは消えない。だから謝るしかないんだ。そして相手が望むなら償うんだ。許してもらえるとかじゃない。やった以上はそれしかないんだ。辛いことだろうけど、やるしかない”

 

「………そう、ですよね………」

 

”うん、君ならできるよ”

 

「………その、謝罪をさせてください」

 

”わかった”

 

M82A1はのそりとベッドから足を下ろして、かけてあったジャケットを取ろうとしたが…手は空を切った。

 

「まだ素体は馴染んでないわよ。だからベッドから降りるのはしばらく後よ」

 

ペルシカが入ってきた。

その後ろにはナギサにミネ、そしてサクラコがいる。

ついでにスプリングフィールドもいる。

トリニティの重鎮が複数集まる状況に、M82A1も知らずとも汗が額を伝った。

 

「彼女たちには私から君ことはのバックボーンも含めて話したわ。だけど、君の口から言うこともあるでしょう」

 

ペルシカはそんなことを言うと先生を顎で使い、みんなの分の椅子を出させた。

スプリングフィールドは給湯室で紅茶の準備をしている。

 

「本当に…申し訳ありませんでした」

 

ずり落ちるようにベッドから降り、手をつき深く長く、M82A1は頭を下げた。

正直言って彼女の事情を鑑みればこの襲撃騒ぎも同情の余地もあるが、彼女はしっかり謝罪した。

 

”私からも謝罪させてもらうよ。申し訳なかった”

 

先生も横で立ったまま深々と頭を下げる。

こちらはすぐにパニクった生徒から頭を上げてと言われたがしばらく下げていた。

そしてサクラコが頭を上げてくださいと、二人に言うとすっと二人は頭を上げた。

 

「私達もペルシカリア博士から話は聞きました。同じ宗教団体として恥ずかしい限りです」

 

実はサクラコもシスターフッドの中でM82A1みたいなポジションになりかけているのはここだけの話である。

 

「私はあなたを許しましょう。ですが、謝るのは私にではなく、撃たれた子たちにしてあげて下さい。あの子達もあなたの話を聞けばわかってくれますよ」

 

「……ありがとうっ……ございます………」

 

絞り出すように出した声は贖罪の気持ちと…感謝が含まれていた。

 

「大丈夫です。神はあなたを許してくれますよ」

 

最近練習を経て柔らかくなった笑顔でサクラコが座ったままのM82A1をベッドに座らせようと手を伸ばした。

すると病室の機器がアラート音を上げ始めた。

 

「ん?おっと。メンタルモデルに過剰な負荷がかかっているわ。おそらく……メンタルモデルが感情に耐えきれなくなったのね。しばらく一人にしてあげて」

 

ペルシカが機器を見ながらそんなことを呟く。

それを聞いてみんな病室の扉を開けて出ていった。

だが、スプリングフィールドだけはすぐに出ていかず、コトリとティーカップをおいていった。

 

「カモミールティーです。多少は気分も落ち着かれると思いますよ」

 

一言、慈愛の満ちた笑みとともに。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

M82A1の病室から去った先生たちは談話室にいた。

こちらも紅茶を淹れてのティータイムである。

 

「そういえば、先生の前にいたところでは彼女のような境遇はよくあったのですか?」

 

ふとナギサがそんなことを尋ねた。

他の生徒も気になるようだ。

 

”そうだね。よくあったよ……あの世界の荒れようを見ると、宗教に縋りたくのも仕方がないと私は思うよ。現に新興宗教は山程乱立したしね。同時に、その際にイコンとして祭り上げられる存在がごまんといるんだよ。バレットみたいにね。でもただの宗教団体だったらトラウマを抱くまではいかなかったんだと思う。だけど、バレットがいたところはカルトだったんだ”

 

「カルト、ですか?」

 

”うん、シスターフッドとは似ても似つかないカルトだよ。邪教認定すれば聖戦だと刃を振りかざすようなカルトだよ。そんな人形天使教…バレットがいたところは、そんなバレットのAIが予測したことを『導き』だなんて戯言で飾り付けたんだよ。それが悲劇を起こした……こんなところでは語れないほどのね。それから彼女は逃げ出し、グリフィンの私の元へ来たんだよ”

 

これ以上は話したくないとばかりに先生は口へティーカップを持っていく。

 

「そんなことが外ではあったのですね……」

 

”ああ、ごめん。重たくしちゃったね”

 

凄まじく重たい空気になったことを謝るが、そんなもので空気は晴れない。

そんな空気の中さっきまで黙って訊いていたサクラコが口を開いた。

 

「彼女。私達で預かってみようと思います」

 

”その心は?”

 

「彼女のような人を救うのが宗教ではないのですか?私はそう思いました」

 

いつもの笑顔は鳴りを潜め、覚悟の決まった顔でそう言う。

 

「ですが彼女は宗教には大きなトラウマがありますよ!そんな彼女をシスターフッドで預からせることは医療従事者としては反対です!」

 

「ええ、トラウマの悪化も考えられますから、大人しくシャーレに引き渡したほうが……」

 

ミネやナギサが冷たくも納得できることを言うが、サクラコの意思は揺らがない。

だがまぁ、正論なため有効な返しが思い浮かばず、ぐぬぬと苦悶の表情浮かべるだけに収まってしまう。

だがそんな彼女に手を差し伸べるものが現れた。

 

「私は賛成ですよ。そこのシスターさんがバレットの世話をすることは」

 

みんなが眼を向けた先にいたのは一人の少女であった。




☆ツェナープロトコル(ドルフロ)
人形間の相互通信用のプロトコル。
ダミーネットワークシステムやASSTと並んで第二世代戦術人形の目玉のシステム。

☆90wish(ドルフロ)
第三次世界大戦の中期に突如として現れ、高度な技術研究の成果を世間に公表した後に、再び存在を消してしまった謎の研究機関。
ペルシカはこの研究機関から離脱・亡命をしていると考えれば、どんな組織は察せれる。
ちなみに「ツェナープロトコル」や「エッチング理論」はペルシカがこの期間に在籍時に発表した。

☆ASST(ドルフロ)
烙印(スティグマ)システムとも。
自身のエッチング理論をペルシカが発展させたシステムで、人形と銃に特殊なつながりを持たせるシステムで、このシステムがインストールされた戦術人形は銃をまるで体の一部のように使えるようになる。
ちなみにこのシステムは銃の性能や歴史的資料に基づき、その銃に最適な人形の造形・性格が自動で選択するため、同じ戦術人形でも個体ごとに個性ができる。

☆人形天使教(ドルフロ)
M82A1が”メシア”として祭り上げられたカルト。
M82A1の高性能なAIから演算される様々な予測や助言を”導き”として神聖視された結果、M82A1はカルトの教祖として祀り上げられ、狂信者達に囲まれていた。
そしてその”導き”と狂信者たちが起こした悲劇でM82A1はメンタルに深い傷が刻まれたらしい。
ちなみに二代目”メシア”もいた。
現在は初代も二代目もグリフィンに在籍している。

第三話です。
M82A1のメンタルをなんとか考察して書いてます。
あの子も結構不思議ちゃん。
このキャラこんな口調じゃないとか、こんなキャラじゃないとかそんなご指摘お待ちしてます。
なおあまり強く言わないでくれると嬉しいです。
コメント、出してほしい人形や生徒、出してほしい人形と生徒の組み合わせとか待ってます。

次回は筆が乗り次第。

ここから評価!

ぶっちゃけブルアカとドルフロやっている?

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  • ドルフロはやっている!
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  • 昔ブルアカやっていた!
  • 昔ドルフロやっていた!
  • 両方やっていない!
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