「イブキぃぃぃぃ………」
「ここ最近、うちの議長ずっとこんな調子なんです」
ある日、先生たちは万魔殿へと呼ばれていた。
呼んだのは万魔殿のメンバーの一人、棗イロハである。
その彼女案内のもと議長室へ来てみれば議長である羽沼マコトがぐったりと机に突っ伏して何やら嗚咽混じりにブツブツ何かを言っていた。
”なんであんな感じになってるの?”
「最近、イブキに仲のいい友人ができたようで……その人の元へ連日遊びに出かけて万魔殿にいる時間が減ってああなってます」
”子離れできない親みたいだね”
「ええ、はっきり言って仕事が進まないのでとっとと立ち直って欲しいものです」
「まぁ、マコトちゃんの気持ちもわからないことはないけど、それでも友達ができたことは素直に喜ぶべきことよ。だからああ落ち込んでいるのではなくてイブキのためにも立ち直って欲しいわ」
結構バッサリ切ったイロハに比べ、どこか擁護も交えサツキがそういった。
そんな横でチアキだけはなんとかかんとかマコトを慰めようとしているが、上手くは言っていない。
余談だが、トップがこんなだから風紀委員へも風当たりも随分弱くなり、風紀委員たちはこの状況が長く続けと思っていたりする。
”それで、そのイブキと仲の良い友達って一体?”
「名前だけは聞いあります。彼女はトンプソンと言うらしいですよ。ついでに今日挨拶がてら伺いますので先生たちを呼んだ次第ですよ」
「トンプソンさんでしたか。どうりでイブキさんに好かれるわけですね」
スプリングフィールドも納得と首を振っている。
「お知り合いのようですね…」
”うん、グリフィンにいた頃にね”
トンプソンと言えば初心者の味方として活躍しているみんなの姉貴である。
そんな彼女ならイブキも懐くだろうと先生もなるほどと思った。
「じゃあ、イブキも待たせていますし私達も行きましょうか」
当のイブキはとっとと準備をしてイロハの愛車でもある虎丸に乗っているため、話もそこそこに慰め要因にサツキとチアキを残しイロハと先生、スプリングフィールドの三名も虎丸へと向かった。
◇◆◇◆◇
爆発音と銃声がそこらじゅうで聞こえるゲヘナの通りを戦車で進むこと十数分。
ついたのはゲヘナの郊外のアパートである。
ここらへんはゲヘナでも
内心ブラックマーケットのような治安の悪いところに遊びに行っているのではないかと思っていたイロハもこれには安心である。
そのアパートの一階の一室。
そこがトンプソンの住処らしい。
「トンプソンさーん!遊びに来たよー!」
インターホンを鳴らしイブキがドア越しに声をかける。
すると奥から鍵空いてるぞー!と声がしたためイブキを先頭に残りの面々もドアを開け入っていく。
「おお、イブキ。来たか」
「うん!今日は良いものを見せてもらえるんだよね!!」
「ああ、そうだぞ。ブラックマーケットで仕入れた一品だ。それはそれとして……ボスにスプリングフィールドじゃないか!久しぶりだな」
”久しぶりだね。トンプソン”
「お久しぶりです」
「いやー再び会えるとはな…M16から色々聞いているが先生になったんだってな?サイガとエロ本の取引をしていたボスが先生とはな………世の中わからないなァ」
露骨にイロハから先生への視線が冷たくなる。
そして先生はすーっと冷や汗を流した。
「んで、イブキ。この赤毛のモジャモジャの嬢ちゃんは?」
「イロハ先輩だよー!」
「ああ!この嬢ちゃんがイロハ先輩か。トンプソン・サブマシンガンだ」
「棗イロハです。イブキがお世話になってます」
「ハハハ!まるでイブキのマミーみたいだな」
ペコリと頭を下げるイロハにトンプソンも笑いが漏れる。
快活な笑顔でそう言われて気分が悪いものはいない。
ちなみにその一言に対し、ボソリとイロハが”パピーは今机に突っ伏していますけどね”と言ったことは、その言葉を聴覚モジュールで拾えたスプリングフィールドのみが知るところである。
一通り顔合わせも済み、トンプソンの手でコーヒーが入れられ一息ついた後イブキが待ち切れないとばかりに口を開いた。
「トンプソンさん!あれ見せて!」
「わかったわかった。少し待ってろ」
トンプソンは立ち上がると奥の部屋へと向かうと何か箱を持って帰ってきた。
ノートパソコン程度の大きさの箱である。
高さもそれなりにある。
先生たちもそんな無地の段ボール箱から何が出てくるのか思いながらトンプソンが箱を開けるのを待つ。
箱の中からは黒のパーツがいくつか出てきて、トンプソンは慣れた手つきで組み立てて行く。
そんな様子をイブキはキラキラとした目で眺める。
それだけでみんな幸せになれる。
組み立て自体はすぐに終わり、内容物が姿を見せた。
”タイプライター……珍しい”
「ええ、コンピュータが発達した今ではぱったり姿を隠しましたからね」
「初めて見ました……」
「うわぁ……!このボタン押して良いの?!」
完成したタイプライターにみんな目が奪われる。
黒いボディに洒落たフォントのキーが鈍く光り、かすれて読めないがおそらくブランドのロゴである”I…p…r……al ”の文字列。
以下にも過去の産物だと言わんばかりの一品に皆の視線が注がれる。
「ああ、押して良いぞ。少し待ってな、紙を挟む」
今すぐ使いたいと期待をふくらませるイブキのためにもトンプソンは手元の紙を慣れた手つきでタイプライターへと挟ませる。
「いいか?ここで文字を打って、ここで改行だ。もちろんバックスペース……パソコンの文字を消すボタンだな。あれはないぞ。だから慎重に打つんだぞ」
「わかった!」
愛らしい返事とともにイブキの人差し指がキーに触れる。
トンプソンの愛銃とよく似た打鍵音と共に紙にはdの文字が印字された。
「おぉ〜!」
初めてのタイプライターで初めての文字を打った感動だろうか、イブキの目が輝き声を上げた。
その後夢中になったのか、タッタッタとなれない手つきで一文字ずつ打っていく。
弱冠十一歳でローマ字を覚えているのはさすが飛び級なだけある。
「ねぇイロハ先輩も打ってみたら?これ音がすっごく気持ちいいんだよ!」
「いいんですか?」
「うん!」
やはり音がクセになるようでイロハもイブキもこの音の虜になったようである。
そんなイブキたちの後ろでふと、先生がトンプソンになぜタイプライターを持ってきたのか訊いていた。
「ああ、それはな。私の銃はシカゴ・タイプライターって言うだろ?それを知ったイブキはタイプライターが気になったんだよ。だからコルト・ウォーカーの伝手で手に入れたんだ」
「あの人もすごいですね。ロゴがかすれて読めませんがこれおそらく高級品ですよ」
「そうだな。頭文字がIのロゴのタイプライターなんてあのイギリスのブランドしかないだろう?」
眼の前の機械に夢中の子どもたちと打って変わりこちらは大人の会話。
純粋にモノに感動はするが、同時に価値にも目が行くのが大人の性である。
”にしてもトンプソンは何処に言っても子供に好かれるよね”
「ですね。グリフィンにいたときもトンプソンさんはメンタルが幼い子から人気でしたね」
「おいおい。スプリングフィールドがソレを言うのか?いつもスプリングフィールドがお菓子を持ってきたらチビどもは蜘蛛の子を散らすように私から離れていくのにか?」
「そんなこともありましたね」
話題は昔の回想に変わり、ああこんなことがあった、ああそんなこともあったなと大人たちは思い出話に興じる。
そんなことをしているとタイプライターの紙も数枚文字でぎっしり埋まったいた。
そしてそろそろ日は傾きかける頃である。
”みんな。そろそろ帰るよ”
「そうですね。いい時間です」
「ですね。行きますよイブキ。それとトンプソンさん。これからもイブキをお願いします」
「ああ、任せな。……っと。イブキ。日本語キーじゃないが、これはお土産だ。イブキの大好きなマコト先輩に打ってる姿見せてやりな」
そんなことを言いながらトンプソンがイブキにタイプライターの入った箱を渡す。
イブキも嬉しそうにしながらもしっかりお礼を言ってから貰う。
うーん…良い子。
思わぬお土産を貰ったところでみんな戦車へと戻っていく。
「今度は万魔殿に招待するからね!」
「ああ、待ってるぞ」
虎丸のハッチから顔を出したイブキがぶんぶん腕を振る。
それをトンプソンは見えなくなるまで見送っていた。
そんなイイハナシダナーという空気の中、先生とイロハ、スプリングフィールドはふと思った。
そう言えばマコトの機嫌をとる方法考えていない、と。
☆作中のタイプライター
モデルは英王室御用達のイギリスを代表するブランドの一品。
☆虎丸(ブルアカ)
イロハの愛車。
モデルはおそらくティーガーI。
イロハのEXスキルで出てくるアレ。
☆シカゴ・タイプライター
トンプソン・サブマシンガンの別名。
トミーガンやトムソン銃と称されることも。
余談だが、トンプソンは世界で最も古いサブマシンガンを名乗った銃である。
そう言えば最近のイベでトンプソン姉貴活躍していましたね。
それはそれとしてほんの数日前までやっていた『確認! Reloading...【復刻】』は融合勢力が使えませんでしたが攻略できました?
作者はAUGを含めたマシンガン3とショットガン1で焼き払いました。
このキャラこんな口調じゃないとか、こんなキャラじゃないとかそんなご指摘お待ちしてます。
なおあまり強く言わないでくれると嬉しいです。
コメント、出してほしい人形や生徒、出してほしい人形と生徒の組み合わせとか待ってます。
次回は筆が乗り次第。
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昔両方やっていた!
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