YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
ここは白亜の城の中
「ま、そういうワケだから。今までお世話になったわね、円卓の皆さん」
しかし帰ってくるのは沈黙である
「あれ?なんか一気に空気が重くなってない?あたし、ヘンなコト言ったかしら?『いい加減、この都にも飽きたからお暇するわ』って言っただけよね?」*1
「・・・無論だ。つまり、玄奘三蔵。貴殿は今、我らと袂を分かつ、と宣言したが?」
「なんでそうなるのよ。*2別にあなたたちと敵対する気なんかないわ。もともとここには立ち寄っただけ。あたし、天竺からの帰りだし、故郷に戻らないと」
「貴殿は既にサーヴァント。であれば、生前の行いを繰り返す必要はない。貴方には故郷を目指す理由も、その責任もない。何よりこの世界には貴殿の故郷は存在しない。一体、どこに帰ると言うのです?」
「もー。そういう即物的な話じゃないの。心の在り方よ。あたしは故郷を目指すものなの。旅をしてナンボの高僧なの。お弟子がいないと寂しいの。*3ええ、この都は凄いと思う。平穏で、裕福で、綺麗で、食べ物もいっぱいあって・・・きっと理想郷ってこう言う場所を言うんでしょうね」
「ありがとうございます。そう言って頂けて、我々も誇らしい。だからこそ、レディ・三蔵。この城に留まる、と言う選択肢はないのでしょうか?」
「ありがと、ガウェインさん。貴方のそう言う、女性に丁寧なところって好きよ。でも諦めて。これはもう性分だから。とりあえず砂漠にでも行ってみるわ。あ、トータも連れていくからそこはよろしく。*4それじゃあ、今までお世話になりました!バイバ〜イ!チャオ、
そうして、玄奘三蔵は城を去ったのだった
「・・・行ってしまわれましたね。実に残念です。その場にいるだけで場が活気付く、まさに太陽のような女性だったのですが」
「そうかよ。*5オレは清々するぜ。前から気に食わなかったしな。で、どうすんだよアグラヴェイン。父上の赦しなくして城を去ることはできない───それがこの円卓の決まりじゃなかったか?というより、あの女、邪魔だろう?」*6
「その意見には私も同感だ、モードレッド。だが王からの赦しは既に降りている。玄奘三蔵が城を出るというのであれば、これを止める理由はない、と」*7
「マジかよ。チッ、せっかく後ろからブッ刺すチャンス*8だったのになあ。まぁいいさ。女1人であの砂漠をどうにかできるもんか。なあ、そう思うだろトリ野郎!生きてんのかテメェ!」
「・・・!・・・失礼。寝ていませんでした。*9私に構わず、話を続けてもらうよう、お願いします・・・また、女性の話でしたら、私ではなくランスロットに・・・ええ・・・実に悲しい事ですが・・・彼の方が恋愛経験は多いのですから・・・」*10
「・・・サー・アグラヴェイン。王と直接話せるのは副官である卿だけです。王は他に、なんと?*11この聖都の護りに関して、何かお言葉はありましたか?」
「思い上がるな。*12王から卿らへの言葉などない。卿らはただ騎士として王に忠誠を示せばよい。玄奘三蔵は異邦人ではあるが、*13星読みが予見した【叛逆者】ではなかった、というだけだ」*14
「異邦の星輝く時、白亜の結託はひび割れ、王の威光は陰り、神託の塔は崩れ落ちる───・・・美しくも悲しい詩です。・・・ええ。必要とあらば、今からでも、私が」
「王は赦すと言ったのだ。*15玄奘三蔵は放置してよい。卿らが気を配るべきはこの後に来る異邦人だ。人理を守る大役───さぞ重い事だろう。*16じきにこの世界で最後のマスターがやってくる。失礼がないように努めろと王は仰せだ。だが王は世界を担う重責の身。下らぬ些事は全て、
風強くない!?何この砂漠ぅ!*17
「マスター、柳星さん、こちらへ・・・!そこに立っていると飛ばされます・・・!」
「フォウ、フ───ウ──────フォ───!」
「ここが・・・エルサレム・・・!?」
「んなワケあるか!一面の砂嵐がエルサレムそのものなら既に人理焼却済みだろうが!」*18
「マスター、柳星さん、とにかく岩陰へ!また突風が来ます!」
「オッケー、そこの竜種並の大きさの骨の下だな!?確かにそこなら問題なさそうだ!・・・てかカルデアと通信できないんだが、マシュ、そっちはどうだ?」
「・・・カルデアとの通信、安定しません。所長も対応してくださっているようですが・・・!」
「なにしろEXだからね・・・!」
「上に振れたかぁ・・・」*19
「その通りですマスター。わたしたちはわたしたちだけで現状を確認しましょう。レイシフトは無事完了。我々は十三世紀の中東に到着する予定でした。ですが・・・現状は、この通り砂嵐のまっただ中です!これがこの時代のエルサレムだといた言うのでしょうか!?」
「いや、どうやらここは十三世紀ではないらしいな。*20時代証明が一致しなかった理由だろうよ。・・・っと、何かくるぞ!砂嵐と共にやってくるからマシュも戦闘準備!」
「はい!」