YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「・・・敵影、遠ざかっていきます・・・追跡は不可能ですね・・・せっかく、話の出来る人たちに出会えたのですが・・・」
「・・・話、成立したかなぁ・・・」
「いや、しないだろ。*1俺もハサンだから分かるけど基本知らん奴とは会話せんよ。こんな戦場なら尚更な」
「それは・・・はい。なんていうか、何を言っても逆効果な雰囲気でした・・・」*2
「とりあえず縄と猿轡はは解いたが・・・気絶してるな。起こすか?」
「ですね、起こしましょう」
ぺしぺし。実は殴るよりもビンタの方が高威力になりやすいんだぜぺしぺし。*3フォウも一緒にぺしぺし*4
「・・・ん・・・いけませんファラオ、そのように、私の髪を引っ張られては・・・それは耳のように見えるかも知れませんが、ホルスを表した魔術触媒・・・決して寝癖では・・・───は!?」*5
「あ、起きた」
「起きたな」
「─────────」
「(まずいかな、これ)」
「(はい、固まっていらっしゃいますね・・・)」
「───おのれ無礼者たち、何者です!私をファラオ、ニトクリスと知っての狼藉ですか!」*6
「(ニトクリス───!彼女は古代エジプトの魔術女王です、マスター!)」
「・・・こそこそと小声で話して・・・!貴方たち、私を笑いものにしたのですね!*7私を薬で眠らせ、神殿の外にまで連れ出すなど!その蛮行、もはや温情はかけられません!本来であれば太陽王への帰順を問う所ですが───貴方たちはまず、蛮勇を以ってこの私、女王ニトクリスの情けを得なければなりません!冥界の鏡よ、いでませぇい!この者どもに我が恥辱を千倍増しで返してください!」
「ニトクリスの鏡・・・!マスター、彼女は戦闘態勢です!彼女を攫った犯人と誤解されています!話し合いたいところですが───」
「無理だろ、さ、行ってこいマシュ。落ち着かせる事に関しては俺よりもお前の方が適任だろ。俺は出たら殺しそうで怖い」*8
「あっ、はい!わかりました、マシュ・キリエライト・・・出ます!」
ざっと見て、ニトクリスに近接の心得はない。出来るのは
「・・・寝起きで半分の力も出せない私ですが、それでもここまで追い詰めるとは・・・なかなかの蛮勇と言わざるをえません。貴方たちは一角の戦士。それは認めましょう。ですが試練はここからです。私を失態に晒させた罪、贖うだけの勇士かどうか・・・ファラオから預かりしこの神獣を以って!その手足が砕けるまで試す事にします!」
「上品そうに見えてむちゃくちゃだ!?」
「当然です。ファラオたる者、まず自らの正義を主張するのですから!」
うわぁお、こいつぁ本当に無茶苦茶・・・いや、太陽王に関しては【喚んだら殺される】って師範もいってたからなぁ。そこんところ英雄王とは違うんだよ*10
「聞いてください、女王ニトクリス・・・!わたしたちは本当に、暗殺者に捕まっていた貴女を助けただけなんです!」
「───だとしても!私の失態を見たことに変わりはありません!そもそも証拠がありません!なぜ貴方達は私を助けられたというのです!偶然ここに居合わせたのですか?そして、名前も知らない私をわざわざ助けたと?それこそあり得ない話です!この終末の地において、無償で他人を助けるなど!」
言えない・・・!ある程度ファラオだとは予測を付けてたから助けた恩であの都市に招待されようとしてたなんて、口が裂けても言えない!*11なんなら立香やマシュにも黙ってるから絶対に言えない!
「どうする?ここまで言ってるんだ。倒すぞ?」
「・・・でも、悪い人には・・・」
「*12その鎧は聖都の騎士たちのもの!信用はできません!いきなさい、スフィンクス!この者たちに偉大なりし太陽王の裁きを!」
ん?なんか気になること言った気がするんだが・・・なんだ?
「スフィンクス・・・!この状況で、あの神・・・獣・・・?」*13
「いえ。どうか顔をあげて。貴女の盾はいかな神獣であろうとも砕けない。そして皆さんの正義は正しいもの。誤解から生まれた戦いなぞ、たやすく乗り越えましょう」
あー、スフィンクス?なら少し魔力制限しておきたいし弾丸の方で対応させて貰うわ。なんかちょうど味方側の乱入者来たし。*14
「何者・・・!?」
「まだ名乗るほどの因果はありません。ですので、どうぞ敵として考えなさい。藤丸立香、という名の方は貴方ですね?私はルキウス。主のいないサーヴァントです。見るに見かねて口を出してしまいました。お節介とお思いでしょうが、そこは寛容に。私でよければ助太刀を致しましょう。我が剣、存分にお使いくだされば」
「なら俺に合わせろ。5秒後だ・・・起源弾、起動」
うん。これで動きは止まったし復活しなくちゃあならない。
「助かります───銀の腕よ、私に輝きを!我が魂喰らいて奔れ、銀の流星───」
「───ご免!」
「すごい・・・スフィンクス、完全に消滅しました!霊子復元、おこりません!」
「ありゃーあれは・・・アレか。ケルトの戦神、ヌァザの神腕だな。*15いやぁ、なんでこの時代に呼ばれてんだ?アメリカだろ、アメリカ。ケルトが出張ってくるのは一個遅ぇよ」*16
「あわ、あわわ・・・ファラオの神獣が・・・オジマンディアス様から預かった貴い神獣が・・・完全に、地上から消え去るなんて・・・な・・・なんだと言うのです──────!?」
そんなに驚くこと・・・だな。無限蘇生持ちの神獣なら完全消滅とか普通出来ないからなぁ・・・
「ですので、ご免、と。こうでもしなければ収まらないと判断しましたので。そして話を聞きなさい、寝起きのファラオ。ホルス神の化身、ニトクリス殿。彼らが貴女を助けたのは本当です。なにしろ私が見ていました。彼らは山の翁たちに連れ去られようとしていた貴女を見かけ、義をもってこれを救った。それを信じられない、というのであれば、この銀腕をもう一度振るう他ありませんが・・・これ以上、太陽王の信頼を失ってよいのですか?貴女の立場も危うくなるのでは?」
いやあ、太陽王への信頼とかあるからね?あの人はそんな無闇矢鱈に世界の消滅とかするような人ではないことは分かってるよ?まぁ似た様ななにかをする可能性までは否定できないけど。英雄王もアンリ・マユを有効活用?してたし。事故みたいなものだけどアレは*17
「う・・・でもですね、エジプトの民でもない者達が、私を助ける理由がですね・・・」
あ、やっぱエジプトなのね?変に断定しちゃったから違ったらどうしようとか少し考えてたんだけど合っててよかった*18
「では逆に問いましょう。山の民ならいざ知らず、聖都の騎士が貴方を攫う必要があると?」
すまん、俺は山の民の末裔みたいなものなんだわ。・・・いつ明かせばいいんだ?*19
「それは・・・そうですね・・・そもそも・・・我が神殿に忍び込めるのは、山の民ぐらいのもの・・・でした・・・」
「ニトクリスさん、しゅんとしてしまいましたね・・・後悔していらっしゃる、のでしょうか・・・?」
「ならいいか?ファラオ・ニトクリス」
「なんでしょう?」
「俺達はアンタを助けた。実際の所、真名は分からんかったが素性くらいは助けた段階で気がついていた。だからこその
「*20・・・コホン。いいでしょう、分かりました!特例中の特例として、貴方たちを私の客人とします!持てなしを受けたいのですね?であれば、私を神殿まで護衛しなさい。スフィンクスの問いかけに答えた者のみが招かれる太陽王の複合神殿───この砂漠において最も栄えた理想の国。