YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
いつの間にか囲まれていた。まぁそうなるまで敢えて見逃してたんだけども*1
「さてさて、俺達と争うか?食べ物も水分も無いんだぜ?*2あまり争いたくねぇよ?」*3
「ヒヒ・・・太陽王の人喰い獣どもから逃げてきたんだろうなぁ・・・ヒヒ、ヒヒヒヒヒヒ!ありがてぇ・・・ありがてぇ・・・オレの為に生き延びてくれてくれてありがてぇ・・・!」
それに呼応するように、周囲からも「殺せ、殺せ、肉だ、肉だ!」と。怨嗟の連鎖ほど悲しいものもないんだけどなぁ・・・*4
「殆どが人を半分辞めてる。殺すが・・・いいか?立香」
「・・・出来るだけ、殺さないようにって出来たりしないかな?」*5
「はぁ・・・甘ちゃんだねぇ。いいよ。なら出来るだけ殺さないようにしてやる」*6
彼らは襲ってくる。まぁ、彼らは武人じゃあないんだ。乱王塵殺なんかも使わずに制圧出来るに決まってるんだよな
「いてぇ・・・いてぇ・・・!ちくしょう、ちくしょう───せっかく、上等の肉にありつけると思ったのによぉ・・・クソが、クソどもが・・・なんでおとなしく殺されねぇんだ、クソどもがぁ!」*7
「去るならさっさと去れ。そうしたら殺さないでおいてやる。今殺されないだけまだマシだと知らないのか?」
そうだよ、さっさとこうやって威圧しておけばよかったんだ。そうしたら、大体のやつは逃げていくじゃないか
「・・・あのさ、柳星。残った人に、少しだけでも分けてもいいかな?」
「・・・お前がそうしたいならすればいいさ。それを止める理由は俺にはない」
「ぁ・・・やったあ!水だ、水だぁ───」
それに群がる亡者擬きども。浅ましいねぇ・・・ん?一人だけかなり冷静だな?
「アンタら、東に行くのか。・・・まさか、聖都に?」
「だな、その
「・・・気を付けな。綺麗なものほど怖しい・・・壁には近付くな。死にたくなかったら、砂漠に戻るんだな!」
「おう、とりあえず頭の隅にでも入れておく」
ん?カルデアからの通信?直ったのか
『良かった、やっと繋がりましたね!大丈夫ですか!?』
「ああ、俺達は問題ない。とりあえず今はとある目的地に移動してる途中だから移動しながら報告するぞ」
『ええ、お願いします』
さて、何を隠すべきかね?
「レイシフト先は【古代エジプト】。時代証明が失敗した原因だった。確かにこの時空はエルサレムだが、召喚されたサーヴァントがファラオだったこともありエジプトごとの召喚となった。つまり時代がズレていたってわけだな。それゆえに通信ができなかったと予測。聖杯の所持者は特定したが、それとは別の要因がここが特異点となっている為、その要因があるとされる現地呼称【聖都】への移動中である。質問は?」
『そのファラオ、真名は分かってるのかしら?』
「それは関係ないことだな。*8他には?」
『通信途絶に対しての対応は何かできますか?』
「無理だな。レイシフトがエルサレムの方に焦点を合わせてる関係でエジプト領に入れば通信は出来なくなるだろうな・・・すまん、遠距離でサーヴァント反応だ。通信切るぞ。こっちから再度繋ぎ直す」
『了解しました』
オジマンディアスの名前とか
「・・・ここまでか。これだけの同胞を連れて逃げ延びる事は不可能・・・不覚、そして無念なり。万事、ここに休した」
片方はハサンだ。それは分かる。仮面付けてるからな。しかしもう一人の男の方が問題だ
「・・・悲しい。私は悲しい、山の翁よ。貴方一人であれば窮地を脱するは容易い。・・・しかし、貴方は運命を受け入れた。貴方の背後に怯える聖地の人々。彼ら難民を守る為に、貴方は残り続けるのですね・・・価値なきものを守らんと、価値あるものが失われる・・・私には、それが悲しい」
岩陰に隠れてる俺達は、この様子を傍観するしか出来ない。そうするのが最善である事を俺は知っているからだ
「あれは・・・ハサンですね。赤い髪の方はアーチャーのサーヴァント、でしょうか・・・?両者は敵対しているようです。ハサンの後ろには一般人が40人ほど。対して、アーチャーは単騎です・・・その、マスター、柳星さん。わたし、あのアーチャーを見ていると震えが止まらなくて・・・胸が、とても痛くて・・・」
「無理もない。アレはトリスタン、円卓の騎士だからな。俺の予想が正しければ・・・マシュ。お前の中の英霊の真名を解放出来るかどうかの分水嶺がこの特異点だ。逃げるな、怯えるな。ただ勇敢に立ち向かえ。*10まあ、今は動いちゃいけないんだけどな」
なあ、そうだろう?
「・・・価値がある。彼らより、私の方が価値がある、と言ったな?」
「はい。私の弓の以てしても、貴方を捉えるのは骨でしょう」
「・・・取引だ。貴様の騎士道とやらが誠のものであるのなら───我が命を、ここで差し出す。その代償として民たちを逃がしてほしい」
「それは悪手も悪手だろうが・・・!」
「なんと高潔なお方か。・・・しかし、逃すと言っても具体的には?私は撤退を許されていません。・・・申し訳ありませんが・・・貴方たちを捕らえるまで、この場から立ち去る事はできないのです・・・」
「・・・では、右腕と足だ。我が首の代わりに、その右腕と足を貰う。これより一日、その足を動かさず、また右腕を封じられよ。情けない我が首だが、その代償としてなら釣り合おう」
「それじゃあアイツは止まらないのに・・・!」
「な・・・なんという。いけません、それでは、貴方は・・・」
「走れ、同胞たちよ・・・!東の呪腕であれば、そなたらを受け入れよう!」
ほんとに、ハサン全員集合みたいな感じなんだな。まぁ中東のハサン限定だろうけど。*11・・・後でその遺体も埋めさせてもらう
「ああ・・・!ありがとうございます、ありがとうございます!」
「・・・自ら首を斬るとは・・・これでは、私も約定を守るしかありません。お見事、お見事です。───ですが」
ポロン、と音が響く。その音に連動するように、難民たちは切り裂かれていく。・・・だからダメだと・・・!だけど今飛び出したら俺も殺せる確信が無い・・・!
「ああ、私は悲しい・・・それではいけない、と言ったのに。そこから一歩も動くな、などと、なんという慢心なのでしょう。我が妖弦フェイルノートに矢は合いません。これはつま弾く事で敵を切断する音の刃。一歩も動かず、弓を構えずとも───肉袋を断つ程度、一息でこなせましょう。愚かなる山の翁よ。貴方はこう言うべきだった。『どうか、指の一本も動かすな』と」
このクラスの敵が今回複数だろ?・・・でも、許されちゃあならねぇな