YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
それは想定外の事態である。何故なら村が発見されるとは思ってなかったからだ。*1確かに魔術的隠蔽はしてない。しかし自然の地形を活かしたこの隠蔽、バレるとは思えなかった。だからこその困惑である*2
「西の村が遊撃騎士に発見されるとは・・・!アーラシュ殿、村と敵軍の距離はどれほどか!?」
「峠一つ向こうだ!狼煙の色は黒!接触間近ってことだな!」
「西の村・・・他の村が襲われているんですか!?ならすぐに助けに行かないと・・・!」
マシュは焦っていた。遊撃騎士、と聞いて嫌な予感がしているのだ。*3
「落ち着きなさい、マシュ。今出来る事は限られています」
「・・・すみません。でも、円卓の騎士と聞いて・・・」
「分かります。放っておく事は出来ません。この状況で戦力を失う事は避けたい」
・・・それにしても、この場にいるサーヴァントってかなりヤバくないか?自分が召喚したのは柳星から何度も聞いている正真正銘最優のサーヴァント【アルトリア・ペンドラゴン】。ましてや聖剣を受け取り、その霊基は数段階上昇している。そして現地のサーヴァントはそのアルトリアに勝った経験もある【呪腕のハサン】、アーチャーの語源たる【アーラシュ・カマンガー】。立香は考える、どう動けばいいのかを。自分には戦闘能力はない。だからせめて作戦立案はしなくては、と焦っていた・・・のもある。*4
「・・・無論。しかし、ここから西の村まではどう急ごうと2日はかかる・・・今から駆けつけたところで・・・」
「百貌の姉さんは長引かせるのは上手いけどな・・・それでも、もって半日だろう」
そしてひとつ思いつく。不確定要素は多いが、全滅が最悪なのだとしたらこれは最悪だけは避けれる。既に死んだ命を無駄にしない為に、
「村を捨ててこっちに投げてもらうのは?」
「・・・そうですな。ソレが今出来る限界でしょう・・・それで何人が逃げ延びられるかは祈るしかありませぬが・・・」
しかし、アルトリアはそれを否定する。確かにサーヴァントたるものマスターには従うべきだろう。しかし、それはあくまで方針のみである。間違っていたら修正するのも役目だ。ましてやブリテンが滅んだ理由でもある食料事情ならば修正しなくてはならない*5
「いえ、それは愚策でしょう。備蓄が無いこの村でさらに匿うだけの余裕は無い。こちらから守りに行くほか選択肢はないでしょう」
マシュはふと思う。こんな時、あの人ならなんで言うのか。どんな場面においても考える事をやめ・・・いや、割とライブ感で動いてないか?まぁ、こんな時に頼りになるのは確かだったが・・・*6
「こんな時、柳星さんならなんて言うでしょう・・・そう、多分『空があるじゃないか』って・・・笑ったかもしれませんね」
実際、ローマでは空に浮いていたしオケアノスでは翼が生えた。ならば彼は空すらも自身の領域なのだろう*7
「お!そうか、その手があったな。それなら間に合うかもしれん」
「は?」
「え?」
「なんと?」
「アーラシュさん?」
「いやあ、一度だけ、かつ片道でいいのなら、空を飛んで一気に西の村までは届かないが、それでもいいか?」
「構わない、今すぐ行こう!」*8
作戦があって。それが可能なら、今の自分に躊躇う理由はない。だからこその即決である。アルトリアはこの時、ふと彼に士郎の面影が見えた。・・・まぁ、士郎はどこかネジが外れていたが。リツカはただ目の前から逃げない、とても強い人だと思ったのだった。だからこそアルトリアは覚悟を改めた。おそらく第四次聖杯戦争のバーサーカー・・・いや、確かアレは例外だったか?だが、彼の時のように自身の生前との決着なのだろう、と覚悟を決めた*9
「立香殿・・・」
「よし。なら強襲するメンバーを決めろ。俺は当然として、立香とマシュ。騎士のお二人はどうする?相手は円卓だぞ?いけるか?」
「お気遣い、感謝します。ですが無用です。私は獅子王の騎士ではありません」
「ええ。元はといえば私の騎士達です。ならば問わなねばならない。何故このような所業をするのかと」
「よく言った。移動するぞ、ついてこい!」
そして案内されたのはとある民家の屋根である。
「そこに潰れた家の屋根を粘土で補強した土台がある。よく見てみろ、取手がついているな?」
「あ・・・付いていますね。よく見るとカカトまで入る穴まであります」
「この取手を掴んで、穴に足を入れるってことだね」
「そうだ。しっかり掴んでろよ。・・・アルトリアさん*10はしっかりマスターを掴んでてくれ。時速300キロ以上は出るからな!」
そして彼は準備する。土台に縄を張って固定、そのまま特大の矢に繋ぐ。いや、想定していたとは言え恐怖感は消えない。
「よし、準備はできた。角度はこんなところか。今日は追い風だ。西の村の手前まで飛ばせるぞ!」
「まさか・・・そんな・・・」
「阿呆、笑い話で済まされるか!命懸けの、酒盛りの時の定番ネタだぞ!土台と矢を繋ぐ。おもいっきり矢を放つ。矢、20キロ先まで飛ぶ。一緒に土台も飛ぶ。な?簡単だろ?」
・・・本来ならマシュが猛抗議するがここではそんな事は起きない。何故って?サーヴァントではない柳星がもっとやばいことを普通にやってしまうから「出来ると断言したのなら出来るのでしょうね」と納得しているからだ。まぁそれと恐怖心は別物だけどね!
「着地点見えた!んじゃ行くぞ!」
レッツ、弾丸飛行!
さてさて、四人目は誰かな・・・
「やあ、初めましてだね」
「マーリン死すべしフォーーウ!!!」
お前かい!?素で反射的に殴りかかってしまったわ!
「うわ!?えぇ、君にはまだ何もしてなくない?」
「人の事千里眼で覗いといて何もしてないはねぇだろテメェよ?よかったな?俺が何も仕掛けなくて。今頃その魂ごと壊してたかもだぞ?」
「うげぇ、君ならやりかねないのが恐ろしいな」
「にしても何の理由で呼ばれたんだか・・・」
「そりゃアレだよ。予言の為さ。君に伝えなくてはならないことがあるからね」
「は?なんだよそりゃ」
「君の山にいた化物どもの正体は次の特異点でハッキリする。だからぜひ来てくれ。そこで君の運命も分かるだろう」
「そうかい」
これは厄ネタの予感がするなぁ・・・