YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
村に帰るとベディヴィエールが突然倒れた。だからとりあえず寝かしたのだった。
「ベディヴィエールは寝かせてきたぜ。目立った外傷はないが、とにかく体力を消耗している。こっちに治癒専門のサーヴァントがいれば良かったんだがな・・・」
「生憎今の私はアヴァロンを持ってませんからね。*1それにしてもあの腕は身体に合わないというのに・・・」
「体に負担がかかっているのは確かだが、ありゃあ
「それは・・・そうでしょうね。円卓の騎士と融合しているだけのわたしでさえ、彼らと戦っていると言いようのない焦燥感にかられます。アーサー王に対する叛逆だ、という罪悪感で。あのベディヴィエール卿なら尚更でしょう───いえ、この場に騎士王たるアーサー王がいらっしゃるのも理由なのでしょうね」*2
「ねえマシュ。ベディヴィエールってどんな騎士なの?柳星からは『あまり語りたくない奴だ』ってはぐらかされたんだよね」*3
しかしマシュは少しばかり遠慮してしまう。まぁそれも当然だろう。彼が仕えた王がこの場にいるのだもの。
「私よりも本人から聞いた方がいいと思うのですが・・・」
「いえ、私が語るとどうしても偏ってしまう。それならば貴女が語るべきでしょう、マシュ」*4
「そ、そうですか。それでは。ベディヴィエール卿はアーサー王に仕えた最古参の騎士の1人です。隻腕でありながら戦場では他の騎士の三倍の戦果を出したと言われています。あ、他の騎士というのは通常の騎士の話です。円卓の騎士のなかでは、という話になると、ベディヴィエール卿の活躍は地味なものになります。*5ベディヴィエール卿でもっとも有名な逸話はアーサー王の最期を看取った時のものです。・・・アーサー王最後の戦い、カムラン丘の戦い。それは侵略者であったサクソン人との戦いではなくブリテンの騎士同士の内乱でした。アーサー王はカムランの丘で叛逆者モードレッドをうち倒したものの、自身も瀕死の傷を負いました。『血に濡れた丘では回復しない』そう信じたベディヴィエール卿はアーサー王を清らかな森まで運びました。横たわったアーサー王は静かに卿に語ります。『この森を抜け、丘を越えた所に湖がある。そこに、我が名剣を投げ入れよ』と」
『・・・有名な聖剣返還の伝説だね。聖剣エクスカリバーは元々湖の妖精に与えられたもの。己の死を悟ったアーサー王は、最期に聖剣を人間の手から妖精に戻す事を選んだ。しかし・・・それはアーサー王の死を意味する。忠臣であるベディヴィエールは王をいたわるあまり、これを二度にわたり失敗するんだ。聖剣がある限り王は不死身だからね。モードレッドに受けた致命傷も聖剣があれば治ると信じていたんだ。森を越え、丘を越え、湖については剣の返還を迷い、結局、聖剣を捨てられず彼は王の元に戻る。その度に彼は『剣は返した』と王に嘘をついてしまった。ベディヴィエール卿、ただ一度の不忠と言われている』
「はい。ベディヴィエールさんらしい、優しい選択です。でもアーサー王に嘘は通じません。王は静かな声で『役目を果たすがよい』とだけ告げます。そうして、朝焼けを迎えた三度目の丘越え。もう王の心は変えられないと受け入れたベディヴィエール卿は、湖に聖剣を投げ入れました。聖剣は湖の妖精の手に渡り、ベディヴィエール卿は森に戻ります。・・・そうしてアーサー王は息を引き取り、その任を終えました。王の遺体は船で海に送り出され、伝説の楽園、アヴァロンに辿り着いたと言われています」
『まぁそれが一般的に伝わってる話でしょうね。その裏側についてはかなり波瀾万丈だったのよ。カムランの丘での戦いが終わった直後、アーサー王は世界と契約。時は飛んで1994年の聖杯戦争にセイバーとして現れ、そこから無限の輪廻を過ごしていたらしいわ。その後の2004年の聖杯戦争によってアーサー王はやっと答えを得て息を引き取ったらしいわね・・・ほんとかしら?』*6
「ええ。本当です。あの時私は世界と契約して死ぬ直前の私は生きたままサーヴァントになりました。聖杯戦争に呼ばれキリツグと共に挑み一時は願いました。ブリテンの復活を、やり直しを。しかしその果ては何も変わらない。どうやってもカムランの丘に辿り着いてしまう。*7そんな中私を呼んだのがシロウです。その聖杯戦争で私はやっと答えが分かったのです。故に、契約を切り*8当時の私に戻り・・・あとは伝説の通りです。しかし何故かあの時返して貰ったはずの鞘が無かったり不完全ですが・・・まぁ、そこはどうにでもなるでしょう」
さて、最後は誰が来るかな
「私です。初めましてですね」
んんん???
「サーヴァントじゃ・・・ない?」
「ええ。私は【アルター・アリス】。クロニカ側の人だと言えば伝わるでしょうか?」
「ああ!師範が言ってたのってアンタらだったのか!一度も会った事ないから半信半疑だったんだよ!」
「そうですか。しかしこの場で会えたのは僥倖だと思いましょうか。私は貴方に伝えるべき事がありますから」
「なんだ?それは」
「今外は何もかも燃えています。なので問題が発見されていませんが、一度貴方はあの場所に戻ってください。貴方には私たちの世界を知って貰う必要があります。それが貴方の役目なのですから」
「それが異聞帯の王とやらの役目か?」
「異聞帯・・・なるほど、貴方達は私達の世界をそう認識しているのですね。ええ、そうです。クロニカ・・・異聞帯を統一して欲しいのです。それぞれが乱立しているこの状況、どこか一箇所中心となる場所が必要なのです。生憎アリス・クロニカはとある理由から存在し得ない。なのでこうやって貴方に会いにきたのです。覚えていて下さいね」
「・・・分かった。とりあえずこの問題が解決したら次はお前たちの所に行くとするよ」
「ありがとうございます。あ、向こうの光を超えれば目覚めるらしいですよ」
「ありがとな。アルター・アリス」