YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
玄奘三蔵が味方になったりトータとやらが今から向かう砦にいるとか聞いたり。んでその砦に着いた訳だが。
「・・・着いたぞ。あれが騎士どもの砦だ。守備こそ固いが、なに、見張りは夜目も利かぬカカシども。恐れるに足らぬ」
「・・・哨戒の兵士は外壁にそれぞれ十人、城壁の上に十人、といったところでしょうか?」
「だな。んでマップがこんな感じ。*1内部構造が若干特殊なものになってるから気をつけろ。地下牢にサーヴァント二騎。円卓ではないからトータとやらと静謐殿だろうな」
「どうしましょう、先輩。わたしたちなら城門に跳び乗れますから、うまく兵士の目を盗めば・・・」
「・・・ううん。なんかおかしい。ピリピリするわ。前に来た時より、陰の気が増している。この砦のみんな、緊張している。まるであたしたちの襲撃を知ってるみたいに」
ん・・・?何だこの感じ・・・虹?いや、月面・・・?月って言ったらムーンキャンサーだがこの特異点ってはっきり地球の話だろ。アメリカならともかく*2この特異点で関係することあるか?ないよな?
「・・・なんだ、この視線・・・?宙・・・?」
「どうしたの、柳星?」
んー・・・語るべきか・・・いや、今は目の前の事に集中してもらった方が有難い。隠すか。*3
「・・・いや、気にするな。今はどうでもいい」
「それにしても、警戒されているというのか?・・・いや、円卓のひとりを迎撃したのだ。*4聖都の者どもも我らの動きに敏感になっている・・・と言うことか。・・・フ」
「そこで喜んでどうするのだ百貌の。*5・・・これは機を改めるべきだろう。立香殿。ここで1日、様子を見ましょう。奴らの緊張が長続きするとは思えませぬ。果報は寝て待て。危険を冒すよりは・・・む?」
「しっ、兵士が近づいてきた」
さて、音を風に載せて・・・うん。こっちにも聞こえるようになった。
「まったく勘弁して欲しいよな。こんな夜更けに全員で出張るなんてよ」
「仕方なかろう。円卓の騎士さまがお忍びでいらっしゃるのだ。失礼があっては我らの首が飛ぶ」
「それだよ。事前の連絡も無し、いきなりの来訪だろ?しかもただの円卓さまじゃねぇ。やってくるのは獅子王陛下の補佐官、鉄のアグラヴェインときた!聖都から決して離れない円卓のナンバー2が、こんなしけた砦に何用だってんだよ?」
「・・・あれかもな。先日、ランスロット卿に馬をお譲りしただろう?砦の物資はアグラヴェイン様の許可無しに運用してはならない。その事でお咎めにきたのかもしれん」
「マジかよ。うちの団長、処断されるのか・・・?いやまあ、難民たちにひでぇ仕打ちをするクズだ。クビになってくれりゃあ俺たちも助かるが・・・」
「あるいは先日捕らえた怪しげな弓兵かもしれん。粛正騎士が束になってようやく捕まえた男だ。アグラヴェイン様は自らの手で処断しに来たのかもだ」
「マジかよ。あの兄さん、殺されるのか?何言ってるのか分からないが、いいヤツなんだぜ?それにアイツが来てからうちの昼飯、グレード上がったじゃねぇか。仲間になって欲しいけどなあ・・・」
「・・・いやいや、あるいは・・・地下牢に収容されているという山の翁目当てかも。たいそう美しい娘だと聞く。しかし口が堅い。拷問官たちも音をあげていたが・・・アグラヴェイン様は円卓随一の拷問官。拷問技術の巧みさは河馬ですら人語で助けを請うと言う・・・」
「マジかよ、河馬がタスケテって鳴くのかよ、どれだけ残酷なんだよアグラヴェイン様。そしてどんだけ厄ネタ溜め込んでるんだようちの砦!俺も聖都に住みてえなあ!」
はぁ・・・何なんだよこの砦・・・
「・・・うん。去ってく・・・が・・・頭が痛ぇ・・・」
「・・・そうだな。私も頭が痛くなってきた。おまえたち、実は疫病神ではないのか?」
「あはは・・・」*6
「事情が変わってしまったようね。アグラヴェインがやってくるなら急がないと。あいつは円卓の騎士以外のサーヴァントを認めないわ。一晩も待っていられない。トータがやられちゃう!」
「そうなの?アルトリアさん」
あー俺もアグラヴェインはあまり詳しくないんだよな。ランスロットに殺されたんだっけ?どうだっけ?
「・・・ええ。彼がいつの彼なのかは分かりませんが死後の彼ならば円卓以外のサーヴァントを認めない苛烈さも有り得るでしょう。・・・正確には違いますが、この特異点ではその認識で構わないでしょうね。幸い彼は砦に到着していません。彼が来る前に救出しましょう」
あ?もしや全員で行こうとしてる?ダメダメ。それは止めるわ
「待った。全員ではいけない。アグラヴェイン対策が必要だろ?とりあえず今は俺が足止めしてるけどいつか必ずぶつかる。なんなら足止めも後数分しか保たない。そしたら多分脱出が困難になる。俺と百貌が残る。お前らは転移で地下牢に送る。その後適当に揺動カマして馬とか用意しておくから」
「分かった。お願いね!」
「んじゃ行くぞ。3カウントだ。3・2・1・・・影牢*7」
「なっ、消えた・・・!?」
「これが俺の魔術。転移とかはこれまでほぼ俺専用だったんだけど一度死ぬと分かるんだよ、ある程度のラインが。そんじゃ、足止めも突破されてるし揺動始めるぞ、百貌」
「はっ、若造が。先達にもう少し敬意とか持っておけ、簒奪」