YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「はぁ───、やっと太陽の下に戻ってきたー!色々あったけど皆無事で何よりね!」
「うむ、初代様の協力は得られましたな。しかし、この首が繋がっていようとは・・・」
「初代様、怖すぎません?」
「まぁ教団のトップなんだから怖くて当たり前。そもそも各国に恐れられてた山の翁を殺す為だけの山の翁なんだから本来なら会える事自体おかしいんだよな。んで呪腕が生きてるのは割と計算通りだったり」
「え、そうなの!?」*1
「ほら、キングハサンも言ってたが俺ってば二代目キングハサン、つまりあの人の後継なのよ。*2だから俺もまたハサンを殺すハサンって訳で。だから呪腕が俺を頼った時点で本来なら殺されても誰も文句は言えないんだよね。*3それなのに生かしてたのはこの場面に持っていきたかったから。そうすりゃ的確な対処札が一つ増えるからな」
「ちなみにどの辺りでキングハサンに頼るって決めてたの?」
「え?砂漠で百貌に会った瞬間。*4ハサンが呼ばれる場合ってのは土地由来のみだからね。だから基本こう言う中東的な場所か冬木だから。ここが冬木じゃないなら他のハサンもいるだろうしそうなったら初代の霊廟もあるよな。的な?」*5
「なんでそれを教えてくれなかったの?」
「だってもしハサンが敵だったらキングハサンなんざ出てこない相手の事を気にする理由はないだろ?なら知らない方が楽だろ」*6
ちなみに後継って事で多分俺は一度だけなら現代でも力を貸してくれると睨んでる。そんな場面なんざ来ない方がいいんだがな
「それより静謐めに声をかけていただけませぬか。ほれ、先ほどからあのように」
「・・・すみません、すみません、すみません・・・私、こんな事ばかりで・・・すみません、すみません、すみません・・・」
「あのように平謝りで顔を上げませぬ。みな事情は分かっているというのに、まったく」
「まぁ初代は初代なりに人を見る目はあったりなかったりだからな。規則に則った人の動きは見える癖に立香を試そうとしたんだもの」
「どう言う事?」
「山の翁教団のルールが適用されるのは信仰者の中だけ。*7だから呪腕や静謐には適用されるが立香やマシュとかには本来適用されないはず。だから会いに行った所で一度目は見逃さなきゃならんのよ。*8なのに天秤を選ばせようとしたのは違うよなって。まぁ俺とか言う会いに行っても殺されない事が確約されてる存在がいたから乱入して止めたけど元々全員を生かす気でいたんだろ?」
「そうだね。味方だし、生きていて欲しいよね」
「なら結局結果は変わらないのさ。だから初代も自らの誓約に則って姿を現したんだし。別に話すだけなら姿を現す必要は無いんだけどな。割とはしゃいでるぞ、あの人」
「そ、そうなんだ・・・」
「この失態は、なんとしてもお返しします・・・具体的には体で・・・この命に代えても・・・」
んー、完全毒耐性かつ貫通毒の体質持ちと英雄に連なる英霊ホイホイな体質の間の子供ってどうなるんだ?・・・その場合アレだな、サーヴァント同士の戦争が座かカルデアで起こりかねないな・・・*9
「てことでそろそろ通信も繋ぎ直すか。霊廟詣りは終わらせたんだし」
『・・・あ、やっと繋がったわ!何してくれてるのよ柳星!唐突に通信を切るなんて!藤丸立香のモニターは出来てたけど一時死んでたし!こっちでは皆慌ててたのよ!?*10何があったのかきちんと説明しなさい!』
「んー、まず切った理由だけどロマンがあまりにも邪魔だった。さっきまで居たのは霊廟アズライール。つまりは初代山の翁に会いに行ってた訳だけどそこでの交渉中にロマンが余計なひと言を言いそうで切った。実際途中でロマンが割り込む可能性のあった言動がいくつかあったから英断だと思ってる。んで俺たちは今から砂漠に戻ってアトラス院に向かう事になった。以上報告終わり!細かい部分は帰還してからだな」
『アトラス院って
「はい。そのアトラス院かと」
「マシュ、アトラス院ってなに?」
「アトラス院とは魔術協会の一部です。魔術協会は主に三つの流派に分かれていますが、その中でも錬金術に特化し、独自の成長を遂げてきた学院がアトラス院です。カルデアスを解析する擬似量子演算機───トリスメギストスは、アトラス院寄贈のものです。その他にも、アトラス院はカルデアに多くの技術を提供してくれています」
『それで、紀元前のアトラス院なんて厄ネタの塊じゃないのよ。魔術協会設立以前のあの集団なんて何があってもおかしく無いわ』
「あ、その事で追加報告」
『なによ、怖いわね』
「多分現代のアトラス院だと思うんだよな」
『なんでそう思うのよ』
「砂漠の中にもう一つ別の時代があるのは知覚してた。ソレがなんなのか不明だったがアトラス院なら納得だ。しかし紀元前のアトラス院ならそれはあり得ない話になる。何故なら砂漠も、他の建造物も、ソレら全てが太陽王オジマンディアスに付随して現れたからだ」
『つまり紀元前のアトラス院では無いって事ね。それでそれがなんで現代に繋がるのかしら?』
「全ての始まりを探して来いって言われた。ならこの時の全ての始まりとは何か、アンティオキアじゃない。そう、人理焼却の始まりだ。それを探るなら───なんで、今を選んだ?その理由を知る必要がある。その為に必要なのは現代のアトラス院以外にないんだよ」
『・・・なるほど・・・筋は通ってるわね』
「まぁなんで現代のアトラス院がこんな所にあるんだよ、ってのはまた別の話になるんだけどそこは考えなくていいだろ」
『ところでアンティオキアって何の話かしら?』
「・・・やべっ」*11
『また何か隠してるわね!?話しなさい!致命的なタイミングになる前に!隠してること吐きなさい!』
「いやもう関係ないんだよコレは!だって太陽王がソロモンの聖杯を獲得する前の話だし!円卓の連中が既に倒して、この特異点に於いては既に影も形もない陣営の話なんざしなくていいだろ!」*12
『それもそうね。ただし帰還後の報告書には書くこと。いいわね?』
「了解」
『まぁ私としても幾つか気になってる事があるのは確かよ。なんでソロモンは人理焼却なんて道を選んだのか。その起源もそうだけどこの特異点にもまだまだ疑問は多いわ。聖杯を使わずに人理定礎を乱してる方法と理由とかね。でも大丈夫なの?あのアトラス院よ?』
「問題ねぇだろ。だってアトラス院のトラップって土地の魔力依存だから砂漠に転移してたら稼働するトラップはたかが知れてる。【知識の持ち出し禁止】に抵触する可能性はあるがそこは力技で突破すればいいしな」
『そう、なら向かいなさい。報告はまた砂漠から帰還したら、ね』