YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
聖都、円卓の場に一人の騎士が帰還する。紫の鎧を身に纏い、湖の剣を持つ【不浄】たる騎士である
「只今戻りました陛下。補佐官殿より火急の任が入り、帰還が遅れたこと、お詫び致します」
「良い。卿に命じた任務は聖抜に適う人間を保護する事だ。それが達成されているのなら、私から下す罰はない。面を上げるがいい」
「は。ありがたきお言葉。陛下の御心を汚さずに済んだ事、このランスロット至上の喜び。聖抜に適った者は十二名。既に聖都に入場し、管理官に引き継ぎを行いました。───以後は私も聖都の守備に入ります。補佐官殿も、それでよろしいかな?」
アグラヴェインは若干苦い顔をしていた。まぁそれは当然で。
「・・・もちろん。叛逆者の討伐に長く時間をかけた事は問題だが、王の赦しがあったのだ。不問としよう。卿には第三尖塔の守備に入ってもらう。卿の活躍により王の計画は最終段階に入った。オジマンディアスとの対決も近い。第三尖塔こそ王城の守りの要。それを任された事を光栄に思うが良い。───早々に塔に向かわれよ」
「・・・その前に。どうか質問を許されたい。我が王よ」
「不敬、かつ不要である。王には聖槍の準備が待っている。発言は控えよ」
「待てアグラヴェイン。長きにわたる任務にも褒美一つ求めぬ騎士の願いだ。無碍には出来ない」
「・・・・・・は。発言を許す。何かね、ランスロット卿」
「今回、私はトリスタン卿の要請に応え、叛乱分子の村を襲撃いたしました。その村に、聖都正門で罪を侵した叛逆者達が居たが故の協力です」
「聴いている。見事な活躍だったな、ランスロット。それが?」
「・・・何故、聖槍を振るわれたのです。戦いはトリスタン卿の焼き討ちですら過剰でした。その上に裁きの光を落とすのは過酷極まりない。王はこの荒野を治める為に聖槍を振るってきた。されど、例え叛乱分子であろうと、その居住区に裁きの光を落とした事は一度もない。・・・この危機下、統治を早めるには恐怖を利用する。それが獅子王の正義だと私達は信じてきた。ですが、村に聖槍を振るわれるのは違う。それは正義でもなく、恐怖すら通り越してる。王よ。何故村にあのような仕打ちをなさったのです。その真意をお聞かせ願いたい。それが貴方の決定ではなく、貴方以外の者───政を預かる者の意見であるなら尚のことです。卿らも気になるのではないか?王の判断は、本当に王による物だったのかと。ましてや、二発も撃つ必要はあったのか、と」
「・・・何が言いたいのかな、ランスロット卿。ずいぶんと、含みのある物言いだが」
「そう聞こえるのは邪念ある者だけだ。探られれば痛む腹など、我ら円卓には不要なり」
「・・・貴様」
「下がれアグラヴェイン。・・・ふ、ランスロットが相手となると、貴卿は何故か短気に成る。そして聞け、我が騎士達よ。聖槍による粛正は、全て我が意志によるもの。これまで居住区に落とさなかったのは明白だ。村を焼けば反抗勢力の火は強く成る。山の民達の結束は強まり、聖都を侵攻する軍備の一つでも整えるだろう。それは無用である。聖槍の準備が整うまで、下らぬ掃討戦にかまける時間はない。だが───聖槍は最終段階に入った。最果ての塔は、ついに我らを迎え入れる」
「・・・我らにとって最大の敵は時間だった。人理焼却を終えた彼の王が次の準備段階に入る前までに、最果ての塔を開かねばならなかった。そして、それはじき成ろうとしている。もはや山の民達の反抗など些事に過ぎない。よって、村への直接粛正を行った。これにより反抗勢力が蜂起するのであれば、それも良い。少数による聖都への玉砕ならば、その殲滅はガウェイン卿一騎で
「しかし・・・!そうであれば粛正の必要もありますまい!聖都の守りが完全であるなら、無闇に彼らの命を奪う必要など・・・!」
「いえ、この状況において完璧な守りはもはや存在しません」
その言葉に全円卓の騎士が驚愕した。このタイミングで帰還したトリスタンもその前の言葉は聞けていないがこの言葉は聞いてしまった
「どう言うことですか、我が王よ」
「確かに一発目については先に語った通りの理由ですが、二発目は違います。二発目は確かめたのです、あの土地に二振り目の聖槍の持ち主がいると推測しての二発目でした・・・結果は当たりなので貴方達では勝てない相手だと判断したまでです」
「成程、彼ですか・・・」
「戻ったのですね、トリスタン・・・彼、と言う事は心当たりがあるのですね?」
「ええ、彼はカルデアの魔術師、無疆柳星だと名乗っていました。彼ならば、或いは・・・と。確証は無く、予測のみですが・・・彼の魔力量はかのマーリン殿と同等かそれ以上か・・・それ程でしたので」
「成程、彼ですか・・・確かに私のギフトも破りかねない実力の持ち主、あり得ないことではないですが・・・」
「結果だけ言わせて貰いますが、叛逆者達は生き延び、山を去りました。砂漠方面に向かいましたが、そこで私の弦は切れた。恐らくオジマンディアスと手を組む腹でしょう。・・・考え得る限り、最悪の組み合わせです」
「・・・本来ならばなんと言う不手際、と言いたい所だが彼相手ならば単騎での衝突はまず避けたい。それこそもっと早く現れて居たのならばその待遇は太陽王や欠地王とも変わらなかったであろう戦闘能力だ。よって、村への焼き討ちが成功している点を以て私からは不問とする」
「しかし、追いかける戦力は必要である。彼らが自由に動く事は、今現在に於いては魔術王よりも厄介と言える」
「ならばここは不肖このトリスタンが追いかけます」
「間に合うのか、ランスロット。叛逆者達の星は遠く、また自由だ。貴公にその星を捕まえられると?」
「無論。我が宝剣、アロンダイトに賭けて」
「では叛逆者の追跡を命じる、ランスロット。急げよ。王城の壁はじき現れる。その前に戻るがいい」
「は!」
「・・・アグラヴェイン卿。もう一つ、報告を続けてよろしいでしょうか」
「なんだ」
「実は、叛逆者たちの中に、想定外の者が居たのです。騎士王のアーサー王が」
「なん・・・だと!?何故だ!そんな筈がない!冗談は酒場か、女にのみ披露したまえトリスタン卿!騎士王など、最もあり得ない話だ!」
「ああ、その通りだぜアグラヴェイン。おかしいにも程があるだろ?」
「モードレッド!貴様、知っていたのか!?」
「あ・・・いや、報告する機会も無かったし報告しても信じてくれないだろ?現にあの魔術師と遭遇したアグラヴェインも騎士王のことは知らなかったじゃねぇか」
「ついでに言わせて貰いますが正門では騎士王は居ませんでした。つまり彼らが山に逃げてから召喚した、と言うことになるでしょうね」
円卓最後の受難が、現実として襲いかかってきた
なおベディヴィエールと遭遇したのがモードレッドとガウェインだけなんですよね。ランスロットはニアミス。その上でガウェインはベディヴィエールを些事だと判断した。モードレッドは直後の騎士王遭遇で報告を忘れた結果「じゃあいっか」となった