YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「ここがアトラス院の中心部───地下なのに空があります、マスター!」
「ふむ、一つの町ほどの空間・・・やはりメイガスの技術とはこちらの予想を上回って来ますね。ここが学院というのも納得です。ここでなら学徒の心も穏やかだったでしょうね」*1
「そして、中心にあるあのオベリスクがアトラス院最大の記録媒体、擬似霊子演算器トライヘルメス。カルデアに送られた霊子演算器トリスメギストスの元になったオリジナル、という事だね」
「ん、そういやここの作りってカルデア管制室と同じだな。同じ空間を必要とするってどうなんだ?」
「同じ空間を再現する事は大事な事だよ。何に於いてもね。さて。アクセス権は既に回収してある。本来であればスタッフに声を掛けるところだが・・・見ての通り、ここは完全に無人の廃墟だ。申し訳ないが無断で使用させて貰おう」
「・・・はい。ですが、なぜスタッフは不在なのでしょう。砂に埋もれているのの、機材はどれも正常稼働してるのに」
「そんなんアトラス院が土地依存での稼働してたからオジマンディアスに引っ張られたんだろ。だけどこれ現代のアトラス院だな。幾らアトラス院だからって未来の記録まであるとは考えたくない」*2
にしても、うん。ふと思ったがコレ俺いるか?勢いだけで俺も接続したけど。
「あー・・・コレかぁ・・・」
「どうしたんですか、柳星さん?」
「いやコレって記憶媒体であると同時に演算器な訳よ。だからパラレルのデータ突っ込めば差異を示してくれるんだけどお陰で理解出来た。なるほど、そう来るか」
・・・て事はカルデアの人全員純人類じゃないのか?どうなんだ?
「さて、恐らくキミも私と同じ結論に至っているようだね。では答え合わせと行こうか」
「だな」
「全ての始まりは2004年だ」
「正確にはマリスビリーが動き出したのが、だけどな。偽魔術王の動機を始まりにするなら紀元前まで遡る・・・いや、それでさえ2004でいいのか」
「ともかく、彼が聖杯戦争に勝ち、聖杯により願いを叶えた所から始まった」
「願いの中身は財産だな。パラレルだとカルデアが作られてなかった。それは即ちカルデアを運営するだけの財がなかったんだろ」
「記録では彼には助手が居たとされる。その人物は翌年、スタッフとしてカルデアに招かれている」
「ロマニ・アーキマンだな。・・・いやまぁここまで来ると状況証拠だけで真名を当てれるけど」
「ほう、彼の経歴は一切が不明だ。どう調べても聖杯戦争以前の記録が見つからないが、何処にあったのかな?」
「調べたのが現代だから見つからんのだよ。アイツサーヴァントだぞ?なら調べるのはアイツが元々生きていた時代に決まってるだろ・・・まぁホームズはロマンと直接会ってないから気付かないのは当然だが」
「え!?」
「ドクター・ロマンがサーヴァント・・・?でもあの人にサーヴァント特有の気配はありませんが・・・」
「そりゃ聖杯に願ったんだろ。人間にしてくれ、ってな。だが肉体を人間にしたところで魂はサーヴァントのまま。なら俺はその違いは理解出来るんだよ」
「ではその真名がとびきりの真相に近い、と言うのも間違ってなさそうだね。名前にアテはあるのかい?」
「まぁそりゃあな。そしてそこから逆算するとあのパチモンの名前もわかる訳だが・・・お、帰ってきた」
にしても動作音ないのはちょっと寂しいよな
「ロマンがサーヴァントだとして、じゃあ真名は?となるとアイツの言動に一つの伏線があった。アイツ偽魔術王がソロモンを名乗ってる間ソレを全く信用してなかったんだよ。なんでだ?サーヴァントなんざ幾らでも別側面があってもおかしくないのにアイツは『それだけはありえない』と言ったんだ。だからその時に察したよ。なんだ、お前がソロモンなのか、ってね」
「ロマンが・・・ソロモン・・・?」
「まぁだからと言って何か俺たちに不利があるかと言われたら何も無いんだけど。アイツのおかげで魔神王が全力を出せないんだし。最後の指輪も多分ロマンが付けてるだろ」
「だとしたらマリスビリーは何をしてるんだ?彼には人理焼却を望む理由がない。資料から読み取れる彼の性質は良識だ。人並みの欲があり、人並みの妬みを持ち、人並みの幸福を愛する───そんな人物だ」
「いやそれは違うだろ。アイツに魔術を教わってたからわかるが、アイツは超究極的なまでのルッキズム主義だぞ」
「ルッキズム主義・・・ですか?余り彼にそんな印象はありませんが」
「だろうな。ソレを表に出す事は醜いだろ?だから見せない。人並みの欲は美しい。人並みに妬みましょう、それは美しい。幸福は愛しましょう。それが美しいのだから。だから外見も完璧なんだよ、アイツ」
過去に聞かれたことがある。「君の美しさは作られたものなのか天然なのか」って。だからこう答えたんだ。「そんなん親のおかげだろ」ってな。内面までを問われてたらちがうのだろうがな
「では彼は人理焼却を望みかねない、と?」
「それは早とちりだぜ。あいつは焼却なんて醜い手段は選ばない。だからこそ本題に入るんだ」
「そうか、偽魔術王が人理焼却を行なった理由になるのか。マリスビリーが」
「アイツが選んだのは人理の漂白化。いやぁ、俺も驚いたよ。まさか地球があんなことになってたなんてな。そりゃ魔神王も燃やすわ。燃やさないと漂白化に対応出来ないんだから・・・」
「漂白化・・・しかしその手段は?」
「カルデアスだろうな。アレは異星だ。地球のコピーといえば聞こえはいいがその身事象が逆転可能性な代物だ。【地球に起こった事がカルデアスに保存されるならカルデアスに起きた事が地球に起きてもおかしくない】ってな。だからアイツはカルデアスに何か仕込んでる。・・・いや、もしや全部読み通りなのか?そうだ、そうだ・・・!」
畜生、ここまで読まれてたなら最悪だぞ!?いや、でもまだ挽回できる筈だ!だってアイツの用意したパーツはまだ揃ってない!
「ちっ、死んでからも俺に迷惑かけやがってあの未亡人が・・・!」
「未亡人って・・・マリスビリーさんって男なんでしょ?だったらそう呼ぶのは違くない?」
「いや合ってる。アイツは究極的なルッキズムって言ったろ?それは外見にも現れる。アイツは美しすぎる。儚げな美人って言えば良いのか?そんな感じなんだよ。だから師範はアイツを未亡人って呼んでたし俺もそう呼ぶ」
「・・・確かに、敢えて未亡人だと認識して彼を思い返すと本当に未亡人だと言われても違和感はないですね・・・」
「まぁ最後にはアイツに会えるだろ。アイツはそう言う奴だ」