YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「戻ったぞお前らー」
「思いついたわ、わたし!今こそくじ引きをしましょう!」
「・・・はい?」
「だから、こういうときはやっぱりくじ引きよね!アマデウス、作って頂戴!」
「くじを引きたいだけだろう君は。・・・わかったって。くじを作るよ。それでグループ分けしよう」
「私がマリーと、ですか」
「アマデウス。立香さんたちをお願いね」
「正直に言って、いま君と離れるのは不安だ。いや、君に不安を感じない時はないワケだけど。・・・だが、くじは運命によるもの。これに逆らうのはよけいに悪運を呼びそうだ。まあ、君の宝具は逃走にも使える。ジャンヌは守護に特化している。それに柳星君もそっちについてくれている。むしろ不安なのはこちら側かな。」
「守りならマシュだって負けてないよ」
「マスター・・・ありがとうございます!」
「いや、こっちには負傷したジークフリートがいるからなんだけどぉ。あーあ、うまいことダシにされちゃったなぁ」
「アマデウス、仲良くするのよ。あなた、お友達に誤解されるタイプだから」
「君に言われたくはないよ。それより、マリア」
「うん?」
「いや、何でもない。道中気をつけるように。空腹になったからって洋菓子店を探すんじゃないぞ」
「なあんだ!わたし、てっきりまたプロポーズされるかと思ってドキドキしていたわ!」
「───待て。なぜ今その話をするんだ君は!」
「プロポーズ・・・ですか?マリーさんと?アマデウスさんが?」
『あれ、知らないのかいマシュ。わりと有名な話だよ、それ。そちらにいらっしゃるミスター・アマデウスは六歳の時、七歳の彼女にプロポーズしたんだよ』
「ええ、転んだ彼にわたしが手を差し出すとキラキラした目で見つめて、“ありがとう、素敵な人。僕はアマデウスと言います。もし、貴女のように美しい人に結婚の約束がないのなら、僕が最初でよろしいですか?”そう言ってくれたの!あんなにときめいたのは、生まれて初めてだったわ!」
「まさか後世にまで伝わっているとは・・・悪夢だ・・・」
「うふふ、それはそうでしょうとも。わたし、嬉しくって嬉しくって方々に広めたんだもの!」
「君のせいか!君のせいだったのか!断ったクセに、なんて魔性の女なんだ!」
「それは仕方ないわ。だってわたし、婚約相手は自分では決められなかったのだし。それに───」
「それに?」
「その後のわたしの人生を知っているでしょう?わたしはあれで良かったの。だから貴方は音楽家として多くの人に愛される事になった。だからわたしは愚かな王妃として命を終えた。しょうがないの。しょうがないじゃない。だってわたし、いつだって恋に夢中なんだもの。わたしはきっとフランスという国に恋をしていたのね。人々を愛さず、国そのものしか愛さなかった。そんな風に思い上がった女だから、最期はあんなふうに、国民たちの手で終わったのよ」
「マリー、それは・・・」
「なんだそれ。馬鹿じゃないのか、君」
「馬鹿なの、わたし?」
「ああ。とんでもない勘違いだ。フランスという国に恋をしていた、だあ?それは違う。君が国に恋をしていたんじゃない。フランスという国が、君に恋をしていたんだ」
「・・・うん。ありがとう、モーツァルト。あれ?でもそれっておかしくない?じゃあ私に恋をしてくれた人が、私を殺したってこと?」
「ああ。人間とはそういうものだ。愛情は簡単に憎しみに切り替わる。
君は愛されたからこそ、人々に憎まれたんだよ」
「・・・愛されたから憎まれた・・・恋しながら、その恋人を手にかけた・・・」
「そっか。人間ってむつかしいのね。結局死ぬまで、ううん、死んでも愛には届かなかったわ。でも今はそれでいいと思うの。わたしはマリー・アントウネット。フランスに恋された女だものね!じゃあね、アマデウス!行ってくるわ!帰ったら久しぶりに、貴方のピアノを聞かせて頂戴!」
「あ、ジャンヌさん。それに柳星さん。連絡を一定時間ごとに取り合いましょう。カルデアの通信機です。魔力による念話が可能になります。柳星さんがいるので問題ないとは思いますが、彼、魔力使いすぎると眠ってしまうので・・・」
「わかりました。お預かりします」
「・・・」
「ジャンヌ、ジャンヌ。怖い顔をしていますわよ?」
「え・・・・・・こ、怖いですか!?」
「うふふ、怖いっていうか.・・・難しい?」
「はぁ・・・そう、ですね。少し考え事をしていたもので。」
「それば“竜の魔女”について?」
「・・・はい。仰る通りです。私は生まれてから神の啓示を受けて走り出し、振り返ることなく進んできました。死して英霊となり、ルーラーとして召喚される。そのこと自体、当然のように受け止めています。竜の魔女の言葉は、本当に───何一つとして、身に覚えがないのです。あの“私”は、一体・・・誰なのでしょう」
「───うん、やっぱりジャンヌは綺麗よね。すごく、すごく、すごく───美しいわ」
「か、からかわないでください。」
「いいえ、真実よ。だってもし、わたしがジャンヌの立場だったら───“竜の魔女”の話を、多分受け入れているもの」
「・・・マリー?」
「わたしはわたしを処刑した民を憎んではいません。それは九割の確証を持って言える事実です。けれど、残り一割・・・もしかすると、もっともっと小さなものかもしれないけど。わたしは、わたしの子供を殺した人たちを・・・少しだけ、憎んでいる」
「・・・!」
「わたしへの意趣返しで殺された子、シャルルのことを・・・本当に哀れに思っている。だから、わたしにとっての“竜の魔女”が現れたら、多分『ああ、これはもう一人のわたしだ』と、そう納得できる気がします。*1けれどジャンヌはそうじゃないのでしょう?それはとても凄いことで、とても綺麗なこと。汚れたくないからじゃない。思いたくないからじゃない。欠落しているからでもない。ジャンヌは───人間が好きなのよね?前に進もうとする人間たち、這いつくばってなおあきらめない、理不尽の弾効者たちが」
「・・・ええ。大好きです。ああ、そうか。好きだから───恨めるはずもなかったですか」
「ええ。だからこそ、フランスは貴女に救われたのです。大丈夫、“竜の魔女”に会ったら言ってやりなさい」
「言ってやるですか。その、何をでしょう・・・?」
「言いたいことを、はっきりと口にするの。あなたはあたしじゃない、とか。あなたのことなんか、知るもんか、とか」
「マリー・・・そう、そうですね。その通りです。確かに私は・・・あ、れ?知る、ものか?」
「また顔が難しくなっているけど・・・ごめんなさい、参考にならなかった?」
「い、いえ。・・・たいへん参考になりました。次に彼女と相対するときは、きちんと伝えられると思います」
「ええ、あなたならきっと。・・・ところで柳星さん、話に入ってこないのは助るけど流石にここまで一切喋らないのもなんだか怖いわ」
「いやだってジャンヌ・ダルクとマリー・アントワネットのガールズトークだぞ?俺が邪魔しちゃあいけないだろうが。そういうもんだ。なに、会話したくないと言う訳じゃない。ただ・・・そう、何も聞かれてない上にあえて話すようなこともないっていうか・・・」
「なら貴方から見てあの黒いジャンヌ・・・オルタ、と呼んでましたね。アレはどう見えたのかしら?」
「最初はただの復讐者。だけどあの考えとか色々知った後だと・・・ただただ可哀想だなって」
「かわいそう・・・?それはどうして?」
「ジャンヌが望んだって訳でもない・・・あーいや違う。そんな薄っぺらいのを聞きたい訳じゃないんだよな。・・・あのジャンヌ・ダルクは色んな意味で偽物だ。本物はここにいるから偽物。そしてあの霊基が偽物、故に思考も間違っている。そんな事に気がつかないまま復讐してるのは・・・なんか可哀想だなって」
「重ねてどうして?」
「オルタはサーヴァント:キャスター=ジル・ド・レェが聖杯に願い、願望を混ぜて作り上げた存在だ。だからオルタは自らの境遇なんか疑問に感じないし【ジル目線】の過去しか思い出せない。復讐を肯定する気はないが否定する気もない俺からすると・・・間違ったままの復讐ほど虚しいものもないからな」
「そうね・・・あ、そういえば貴方、洗礼詠唱を教わってたみたいだけど教会の関係者なのかしら?」
「いいや?違う。俺はどこにも属してないさ。今はカルデアにいるってだけでカルデアに来る前はフリー・・・というか住んでた土地を守る為だけの人間だったしな。ま、それは楽しくはなかったが充実はしていたと思う・・・そろそろ連絡しなくちゃいけないんじゃないか?」
「そうでした。では───」