YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「───ふう。今回も無事、転移に成功しましたね先輩。風の感触、土の匂い───どこまでも広くて青い空・・・不思議です。映像で何度も見たものなのに、こうして大地に立っているだけで鮮明度が違うなんて」
「やっぱりレイシフトは緊張する?」
「はい、レイシフトは緊張します。でも、この精神状態はそれとは無関係のような気がします・・・なんていうか、圧倒されている、のでしょうか。フランスの時は驚きばかりだったから。やっと、この景色と向き合えている気がするんです」
「フゥー・・・ンキュ、キュ?」
「フォウさん!?」
「また付いて来ちゃったのか!?」
「まぁ・・・着いてくるだろうな、とは思ってたが・・・」
「キュー、キャーウ!」
「フォウさん、今回も同行すると言っています。*1狭い基地より外の世界の方がいいそうです。その意見にはわたしも同意なのです。戦いは怖いものですが、こうして新しい世界を知るのは嬉しいので・・・でも、この時代の空にも【あれ】が見えているんですね。あの光の輪。前回、フランスの空にも存在していたものと同一です。いいえ、同一であるように見えます。正確に観測できている訳ではありませんが。あれは、一体、何なのでしょうか。あんなにも大きな───」
『光の軸か。相変わらず観測できないんだ。こちらからはしっかりと観測できないんだよ。けど、確かに気になる現象だ。引き締き調査は進めておこう。ところで、そこは・・・おや?首都ローマ・・・では、ないのかな?』
相変わらず見えるあの光輪帯・・・やっぱり
「だな。丘陵地だぞここ?どうなってんだよ。俺のレイシフトの方に合わせたのか?」*2
『あれ。おかしいな。こっちも確認したよ、そこは首都じゃないね。転送位置は確かに固定化したはずなんだけどなあ・・・えーと、そこは首都ローマ郊外にあたる場所のようだ』
「転送座標の調整ミス・・・ですか?時代については?」
『時代は正しいよ。特異点の存在する一世で問違いない。ローマ帝国第五代皇帝───ネロ・クラウディウスが統治する時代。それは確かだ。しかし、おかしいな。どうして首都からズレたんだ?先年に皇太后アグリッピナを毒殺したとは言え、今はまだ、晩年のネロ危急の時代ではないんだけどな。皇帝が人々に愛されている時代の、繁栄の都ローマが・・・君たちを出迎えるはずなんだが』
「一つ、単純にそっちのミスで俺のレイシフト位置にズレた。二つ、特異点の影響である。どっちだろうな?」
『うん、何かしらの理由があるのかも知れない。周囲に何か変わったものは見えないかい?』
「フゥー、フォーウ!」
「・・・聞こえてきます」
『なに?』
「これは───多人数戦闘の音と思われます。丘の向こうのようですね」
『多人数戦闘?いや、いやいや。有り得ない話だ。この時代に首都ローマ付近で本格的な戦闘があったなんて話はないぞ。なら、それはつまり───』
「歴史に異常が起きている。そういうこと、ですね」
「フォウ!」
「ま、なにが起きてるのか分かりやすいのはありがたいか?」
「あれは・・・間違いありません、戦闘中のようです。片方は大部隊で、もう片方はきわめて少数の部隊です。大部隊は【真紅と黄金】の意匠。少部隊もまた【真紅と黄金】ですが、意匠が異なります」
『真紅と黄金は古代ローマで特に好まれた色彩だね。他に特徴は?』
「・・・女性です。数名の小部隊を率いているのは、年若い女性一名。ほとんど一人で敵部隊を相手取っています。首都方面へ雪崩れこもうとする軍団を、たった一人で」
「きわめて強力な個人です。サーヴァントでしょうか?」
『いや、サーヴァント反応は感じない。君も気配は感じていないね』
「はい」
「サーヴァントじゃねぇなこりゃ。ただ多少抑止力の影響が見えるぞ?つまりは味方だな」
『なら確実だ。その女性はこの時代の人間だよ』
「個人的な感想ですが───
『ジャンヌに?尊いもののために立つ聖人系かな?んー・・・この時代の人間で、そういった人物は・・・思い当たらないなあ。ボクの知識不足か。ともかく、だ。有り得ないはずの戦争が発生している訳だね。それなら───』
「あの女性を助けよう」
「はい。わたしも先輩の強気な方針に賛成です。
フォウきんも湧き立っています。」
「キューウ!キュキュ、キュ!」
『相手はサーヴァントや怪物ではないようだけれど、規模が規模だ。注意したまえ!』
「はい!」
「さて、どことなぁく感じるこの予感・・・当たらなければいいなぁ?」*3