YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「見るがよい、しかして感動に打ちふるえるのだっ!これが余の都、童女でさえ讃える華の帝政である!」
「こりゃ活気が凄ぇな」
「だね、みんな笑ってるし!」
「うむうむ、そうであろう、そうであろう。なにしろ世界最高の都だからな!はじめに
「へいらっしゃ*1・・・ああっ、皇帝陛下!どうぞお持ちください。陛下とローマに栄光あれ!」
「そうかしこまらずともよいぞ店主。うむ、うむ・・・これはうまい林檎だな。どうだ、おまえたちもひとつ。やや行儀が悪かろうと気にするな。戦場帰りだ。戦場疲れには甘い果物が効果的だ。傷は癒えぬがやる気だけは回復するぞ!」
「いえ、わたしは結構です。お気持ちだけありがたく・・・」
「ならばそちらの2人はどうだ?うまいぞ。そら、遠慮するでない」
「んじゃ貰おうかね。立香はどうする?」
「うん、貰おうかな」
「おお、なかなか見事な食べっぷり。うむ。改めて、余はそちらの方が気に入った。所々、言ってることはよく分からぬが・・・正直者である事は分かるのだ」
「ま、そう言ってもらえると助かるよ陛下。だな。簡単に言うと魔術師達ってだけで良いんじゃないか?認識としては。偶に遠方から言葉を告げてくるってだけで基本判断はこっちがするからな」
「そうか?では、サーヴァントだのマスターだの、よく分からん言葉については忘れよう。それで?余を助けるのが目的───そう言ってたな?」
「そうか・・・?そうだな。言ったな。うん」*2
『世界の中心にして世界そのもの。世界に君臨せし最大の帝国にして都の名でもあるローマ。この時代、首都が脅かされるはずはない。やはり聖杯の影響で事象に狂いが起きているのでしょうね。つまり貴方達がすべき事、分かるわね?』
「・・・うわぁ、マジ?ローマそのものを守り、あの敵さんを退去させる事?これまでよりもハードじゃねぇか・・・」
「・・・ん、んん・・・す、すまぬ。よく分からぬ。もちっと分かりやすく話すがよい」
「すみません、所長も柳星さんも自己完結する人なので*3・・・わたしからも説明します。わたしたちの求めるものは聖杯と呼ばれる、特別な力をもった魔術の品です。それはあるだけで多くの事柄を狂わせます。現在のローマを蝕んでるのは、この聖杯である可能性が高いのです」
「・・・なるほど。聖なる杯が、余のローマをか」
「言わば俺達はその聖杯が甚大かつ修復不可な被害を出す前に回収、修復する事だな。今回でいうと連合帝国・・・だったか?それをどうこうするのが作戦ってことになるな」
「そうか・・・よし。まずは共に来るが良い。我が館にて、ゆっくりと話すとしよう・・・と、何だ?何やら市場の様子が?」
「う、うわあ!何だ!うちの店に何するんだあんたたち!」
「フォウ!?」
「余のローマで、余の民に対して何たる!敵の工作か?何であれ許されぬ、参るぞ!」
んー・・・炎系は却下。*4水系もやめとくか。*5攪拌はしなくて良い。*6うん、物理一択だな
「マシュ、そっち押さえつけとけ。俺はこっち〆とく」
「了解です!」
後ろ、心臓に発勁。*7うん、やっぱり単体制圧だとコレが一番速くていい*8
「ん。これで終わりだな。そっちはどうだ?」
「終わりました、柳星さん」
「やはりお主達は迅速だな。あとは役人に任せて館に行こうか!」
「───さて、余のローマは、今、危急の時にある。栄光の大帝国の版図は、今や、口惜しくもばらばらに引き裂かれておるのだ。かたや、余が統治する正統なるローマ帝国。この首都ローマを中心とした領域だ。かたや、なんの先触れもなく突如として姿を見せた余ならぬ複数の【皇帝】どもが統べる、連合だ。連合ローマ帝国。かの者どもはそう自称し、帝国の半分を奪ってみせた。連合は、その実態もよく判からぬ。斥候を放てど、いずれも戻って来ぬからな。偽の【皇帝】どもが集うという、首都の位置さえ一向に分からぬ始末」
「複数の皇帝たち、ですか」
「そうだ。余にとっては大逆の徒である。そして・・・いや、他愛もないことだ。逆賊どもが妄言を述べているに過ぎぬ。そうとも、皇帝などと、所詮は僭称に過ぎぬ。有り得る事ではないのだからな」
「魔術師から言わせてもらうと有り得る事ではない事なんぞ魔法でしかないんだよ。*9師範もよく言ってた。『目の前の事象を否定する為にはまず自分の実力が足りない』って。有り得ないことが起きるのが魔術師の世界。気になる事があるなら言えばいいさ、もしかしたら何かの糸口になるかもだぜ?」*10
「・・・そうだな。確かにそうだな。そういえば先刻、共に目の当たりにしたな。連合の敵将カリギュラ。おまえたちが来る前、余の軍勢を単身で屠った男。あれは【皇帝】を名乗る連合の大逆者のひとり。そして、この、余の・・・伯父、なのだ」
「既に死んでる人間ってことか」
「そうだ、その通りである。我が宮廷魔術師も伯父カリギュラの手に掛かったが、生きていれば、そなたと話があったかも知れぬ。かの魔術師は、死を乗り越えたと嘯いていてな。*11事実、大した魔術を余に見せたこともある。しかし・・・かの【皇帝】のひとりの刃に掛かって果てた。死なぬはずの魔術を修めたかの者が、容易く死した・・・有り得ないはずのことだ。だが、死んだ」*12
「死なないって基本魔術師が目指す過程*13だからなぁ・・・まぁ、うん。なんとなく分かってきた」
「正直なところ、連合帝国はあまりに強大だ。各地で暴虐の戦いを引き起こし、民を苦しめている。余の配下たる総督や将軍の全員を派遣して、軍団の殆どを投入した。それでも連合の勢いは納まらぬ。先刻など、連合の遠征軍が首都に迫る始末。街中にさえ、あのように入り込む。それを防ごうにも、余には僅かな手勢のみだ。口惜しいが・・・思い知らされた。最早、余ひとりの力では事態を打破する事はできまい。故に、だ。貴公たちに命じる、いや、頼もう!余の客将となるがよい!ならば聖杯とやらを入手するその目的、余とローマは後援しよう!」
「乗った!こっちから頼みたかったくらいだ皇帝ネロ!これからよろしく頼もうか!」
「おお、そうかそうか!快諾とはな!貴公たちのうち一名に総督の位を与えるぞ。それと、先刻の働きへの報奨もな。今夜はゆっくりと休むがよい。それぞれに総督に相応しい私室を用意させよう」
「位とか報奨は立香に渡してくれ。こうやって基本は俺が出てるがリーダーは立香だからな・・・ああ、そうだ。こんな感じの見た目のやつ見た的な報告はなかったか?」
と言ってレフの姿を作る。*14今回の話的にアイツが出てきてもおかしくない。きっと聖杯を使ってるのはアイツだろうからな・・・
「・・・む・・・むむ・・・?ああ、そういえば噂程度だが連合にいる強大な魔術を操る輩が居るとの兵たちの噂を聞いた事があるが確かにその噂によく似ている」
「・・・当たりか。なら1つ頼みがある」
「うむ、何でも言ってみよ」
「俺達を最前線に配置してくれ。今見せたのは俺達の敵だ。確実に殺さなくてはならない」
「必ず、借りは返す・・・!」*15
「あいわかった。その願い、ネロ・クラウディウスが必ず叶える。貴公たちが仇敵を討ち果たすこと、余も、ローマの神々と神祖に願うとしよう。まずは、そうだな。休む前に宴か!戦時ゆえに普段通りの規模とはいかぬが、贅を尽くした宴を供そうではないか。立香、マシュ、それに柳星。酒はいける口か?東方より取り寄せた、とっておきのものがあるぞ!」
「あっ、い、いえ、お酒は・・・」
「恐れながら皇帝陛下に申し上げます!首都外壁の東門前にて、連合の中規模部隊が襲来!先刻の遠征軍の残党と思われます!我が方の東門守備隊では、押さえきれず・・・!」*16
「・・・むう。せっかく、稀に見る愉快な宴になりそうだったものを」
「行くぞテメェら!せっかく受け入れてくれたんだ。なら出撃するしか無ぇよなぁ!?」
「出撃しよう、マシュ!」
「・・・はい!」
「頼んだぞ、立香総督。先刻の手腕をもう一度見せて貰おうではないか!宴はその後だ!楽しみに待っているからな!」
「そういえばどうしてレフ・ライノールが出てきたんですか?てっきり皇帝の誰かが聖杯を使ってるのだと思ってましたが・・・」
「あ?サーヴァントだろ、皇帝って。なら呼ばれなくちゃならない。だけど呼ぶにたる聖杯はオルレアンのジルが使ってたような敵側のしかない。なら必然誰かが使ってるんだが、この時代のローマに抗おうなんてのは居ない。つまり必然この時代からも外部って事だ。そしたら俺達が思い浮かぶ相手はレフだけって話だな」
『なるほど・・・確かに聞けば納得出来るわね・・・』
「ま、すぐには出てこないだろ。せめて皇帝を全部倒した後だな。厄介なのは初代とかか?ローマを築いたそのカリスマが原因だと思うんだよなぁ・・・斥候が戻ってこないのとかネロがちょっと言い淀んだ所とかはそこら辺が関係してるのかもなぁ・・・」
「敵部隊、発見しました。交戦中の模様です」
『相手はサーヴァントや怪物じゃなく人間の部隊だ。軽く捻ってやりなさい、ふたりとも』
「了解しました。マスター、指示をお願いします」
「長丁場になる予感がするぞ、こりゃあ」