YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「おおっ戻ったか、立香。戻ったばかりですまぬが、これからガリアへと遠征を行おうと思う。無論、余、自らが出ねば意味がない。苦戦する配下を助けつつ鼓舞するのが目的だ。立香とマシュ、柳星には供を頼みたい。どうだ、来てくれるな?」
「・・・どうしますか、先輩、柳星さん?」
「そんなん行くに決まってんだろ。何の為にここにいると思ってるんだ。それに苦戦するほど強いって事は連合の将がいる可能性が高いんだしな」
「そうだね、命を大切にしつつ頑張ろうか」
「どうした、立香に柳星よ。馬には乗らんのか?」
「わたしは騎乗スキルがありますが・・・その、先輩はあまり馬に慣れていませんので。柳星さんの場合は・・・」
「ん、馬よりも何倍かは速く走れるからな。*1今は馬に合わせてるにすぎない。魔術師・・・それもある程度戦闘を念頭に置いてる人なら誰でもできると思うぞ?」
「そ。そうか・・・魔術師とか凄いのだな・・・」*2
「先輩、大丈夫ですか?長距離を歩き詰めです。疲労が蓄積していませんか?」*3
「これぐらい大丈夫だよ、マシュ」
「なんと。カルデアに来る前はアウトドア派だったのですね」
『マシュに合わせない方がいいわよ、藤丸立香。デミ・サーヴァントの体力は桁が違うんですから。素直に馬に乗れば良かったものを・・・さっき落馬しそうになったのがトラウマになったのですか?それなら帰還後に騎乗訓練でもしましょうか。それと今のうちから柳星に習っておきなさい。これまで色んな化物に乗ってきたので騎乗についても学べる*4でしょう。いい?柳星』
「おう、了解した」
『───待ちなさい。前方に生体反応です。サーヴァントではないけれど、どうやら敵のようですね』
「ふむ、ふむ。姿のない魔術師殿は便利だな!余の斥候よりも早いとは。良ければ、宮廷魔術師に召し抱えることも考えよう」
『いえ、私はカルデアに生涯を捧げると決めておりますので・・・そろそろ戦闘態勢に入りなさい!』
「うむ、散らしてくれる!柳星、左の軍は任せたぞ!」
「おう!」
とは言ったもののサーヴァントでもなければワイバーンの様な亜竜でもない雑魚に魔力消費はしなくていいからなぁ・・・適当に【
「あの連合の手練れたちを雑兵扱いか。本当に、その手勢の数でよくやるものだ。マシュの腕か?柳星の魔術の腕か?それとも───それとも、立香の指揮の賜物か。どちらであれ、初めて会った時よりそそるではないか。どうだっ?余のものとなるか?各将と言わず、余のものとなるか?この世の栄華を余の傍らで味わうことができるぞ?無論、連合帝国を討ち果たして後のことだが。どうだ?悪い話ではなかろう?」
「流石にそりゃ無理だな。俺達の目的は話してるだろ?聖杯探索。ここの聖杯を回収して、異変を解決したらまた俺らはここから去らなくてはならない。そして多分二度と来ない。だからアンタの隣に立てるのはこの異変が解決するまでだ。ま、ある種後腐れなく別れられる関係なんだからいいじゃねぇか」
「・・・ふむ・・・なるほど、その様な関係は初めてだ。なるほど、では別れが来るその時までそなたらの活躍を見届けてやろうではないか!」
『そろそろ目的地に到着するはずですね。見えてくると思います』
「・・・本当に便利なものだな。一国にひとり欲しくなるぞ、魔術師殿。*5・・・おっと。魔術師殿の言う通りだ、立香。長旅ご苦労だったな。既に、ガリアの地に入っているぞ。ガリア遠征軍の野営地とは目と身の先。しばらくぶりに、ゆっくりと寝所で休めるぞ」
「皇帝ネロ・クラウディウスである!これより誰聴を許す!ガリア遠征軍に参加した兵士の皆、余と余の民、そして余のローマのための尽力ご苦労!是よりは余も遠征軍の力となろう。一騎当千の将もここに在る!この戦い、負ける道理がない!───余と、愛すべきそなたたちのローマに勝利を!」
「すごい歓声ですね。これが、皇帝ネロ全盛期のカリスマでしょうか」
『そうなんだろうね。しかし、不思議なものでもあるか。こうまで人心を集めた皇帝が、晩年には・・・フッ・・・いや、止めよう。いけないな。過去を生きる人間に未来を知らせない。それが方針だ』
「・・・キュー・・・」
『む。これは・・・この反応、マシュ、そこに───』
「おや、思ったよりお早いお越しだったね、ネロ・クラウディウス皇帝陛下。───んーと。そっちの頑張ってる女の子が噂の客将かな? 見かけによらず強いんだってね。遠路はるばるこんにちは。あたしはブーディカ。ガリア遠征軍の将軍を努めてる」
「ブーディカ───?」
「そう。ブーディカ、ブリタニアの元女王ってヤツ。で、こっちのでっかい男が・・・」
「戦場に招かれた闘士がまたひとり。喜ぶがいい、此処は無数の圧制者に満ちた戦いの國だ。あまねく強者、圧制者が集う巨大な悪逆が迫っている叛逆の時だ。さあ共に戦おう。比類無き圧政に抗う者よ」
「?」
「おう、こちらこそよろしくな」*6
「・・・はつ。言葉に戸惑いかけましたが、この気配は・・・」
「え。え?うわあ、珍しいこともあるんだぁ。スパルタクスが誰かを見て喜ぶなんて、滅多にない。あ、ううん、訂正。他人を見て喜んでるのに襲い掛からないなんて、滅多にないわ」
「(・・・ドクター。この巨大で筋肉な男性は)」
「(フォオォウウウウ・・・)」
『(う、うん。間違いなく
「(彼が何を言っているかまったく翻訳できません。わたしたちを見て、圧政に抗う者、とは一体───)」*7
『(クラスはバーサーカーかなあ。きっとそうだな・・・ああ、多分・・・)』*8
「叛逆の勇士よ、その名を我が前に示す時だ。共に自由の青空の下で悪逆の帝国に反旗を翻し、叫ぼう」
「柳星だ。よろしく!」
「立香です、よろしく」
「名前を聞かれたんですか、今の?そうなんですか?」
「だってそう言ってたろ?その名を我が前に示す時って。それ即ち名乗れってことに決まってるだろ。まぁマシュにはまだ慣れてないのか。言語破綻してないのになんか違う様に聞こえる奴の会話」*9
「そんなのに慣れる環境は聞いたことがありません、柳星さん」
『とは言え、しかし、この時代にもはぐれサーヴァントが存在するのが証明されたか。何らかの理由でボクらに敵対するサーヴァントとは別に、自由意思を持って、時代の側に立って戦う者もいる。既にふたつの時代で確認されたからには、きうと、すべての特異点の時代でもそうなんだろう。正確には、冬木を数えれば三度目か───何にせよこれは心強いな。召喚という手段以外にも、こうして味方がいるのは』
「えーっと。姿の見えない魔術師殿ってのは、あんたかな?」
『これは失礼。自己紹介をしておこう。ボクはロマン。そして・・・』
「マシュ・キリエライトです。こちらは藤丸立香・・・総督、です」*10
「名前は聞いてるよ。ここにも届いてる。お気に入りの客将なんだってね、皇帝陛下?」
「・・・」
「ネロ陛下?」
「ん。な、何か言ったか?少し疲れたようだ。ブーディカ、客将たちを頼む。ガリアの戦況について教えてやってくれ。余は頭痛がひどい。少しばかり床につく」*11
「わかったよ。この子たちはあたしに任せといて」
「では、頼んだぞ。立香も疲れているだろう、休むとよいぞ」
「・・・」
「申し上げます!敵斥候部隊を発見!」
「・・・追撃は?」
「敵兵の速度に追い付けていません!このままでは、離脱されてしまう可能性が!」
『あっ、本当だ。野営地から離れる一団あり!こちらの陣営の情報を持って行かれるぞ!叩いておいた方がいいだろうね、マシュ、立香くん、柳星』
「方角と10秒後の予想位置は?」
『えーとね・・・このあたり!』
「近くに森林が無い位置に逃げてくれて助かった!んじゃ魔術師としての力を見せておくかね───逆雷*12!」
「へぇ、流石皇帝がベタ褒めするだけの魔術師だ。こんな見えない所の賊も撃ち抜けるんだね」
「ま、一般兵とか、自然発生した生物に限るけどな。サーヴァントとか竜種とかには効かない戦法なんだよな、これ」
「それでも凄いよ、それじゃ、お互いの情報交換と行こうか」