YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
ここはガリアから少し離れたところ。ふくよかな男と1人の兵士の会話である
「申し上げます、皇帝陛下。敵軍の攻勢が増した───と、前線から早馬がありました。槽称皇帝ネロ率いる小部隊が、驚異的な突破力をもって進撃しているとのことです。恐らくは、皇帝陛下の仰っていた【特別】な敵将が部隊にいるものと思われます」
「そうか」
「は」
「うむ」
「は。如何いたしましょう」
「どうもせん。放っておけ」
「は・・・」
「サーヴァントの相手はサーヴァントにしか務まらん。まったく、面倒なことだ。神々の気紛れもここまで来ると笑えんな。やれやれ。何が───
「そ、それは・・・・。皇帝陛下カエサル様、御自らがお出になると?」
「阿呆」
「はっ」
「私が出るのではない。向こうが来るのだ。私は動かんぞ。貴様らも、連中の相手はそれなりにしておけ」
「し、しかし!我らは真に正統なる連合ローマ帝国の兵士です!ガリア支配は神々の意図なれば!撤退などありえません!」
「阿呆が。死に急ぐか。サーヴァントに、人間は勝てん。死ぬだけだ」
「ですが・・・」
「ならば、命令だ。適度に戦え。貴様らの死を私は望まん」
「・・・はっ。全力を以て!」
「と言っても、貴様たちは死ぬのだろうな。自らの信ずるローマのために。まったく・・・あの御方の酔狂も大概だ。完璧な統治。完璧な統率。しかし、それは意思のない群体でもあろうに」
一方その頃、藤丸達はというと
「露払いはあたしとスパルタクスでやる!あんたたちは、ネロと一緒に本陣へ突っ切れ!」
「ははははは。素晴らしい、此処にはすべてが在る。圧制者の魔手と化した敵兵は幾百、幾千、幾万か。まさしく勝利の凱歌の時だ。劣勢ではない。優勢なのだ。是より後の我が叫びはすべて、勝ち関の先触れと同じく」*2
「そっちじゃなくてこっち!あぁもうスパルタクス!」
「ははははは。叛逆の女王は私に味方した。すなわち今こそ勝利は果たされる。強者の潰える時!」
「・・・うむ。頼んだぞ、ブーディカ。他々な意味で頼んだからな。しかし、あのスパルタクスの言葉も間違いではない!今こそ【皇帝】のひとりを倒す時だ!偽なる【皇帝】に占領されたガリアを取り戻す!ゆくぞ、マシュ、柳星、立香!」
「はいっ。マスター!」
「全力で行こう!」
「行くぞテメェら!」
「はい!作戦、了解しました!」
「・・・来たか。待ちくたびれたぞ。一体、いつまで待たせるつもりか。しかし、だ。どうやら私が退屈をするだけの価値はあったぞ。その美しさ───美しいな。美しい。実に美しい、その美しさは世界の至宝でありローマに相応しい。我らの愛しきローマを継ぐ者よ。名前は何と言ったかな」
「───っ」
「沈黙するな。戦場であっても雄弁であれ。それとも、貴様は名乗りもせずに私と刃を交えるか。それが当代のローマ皇帝の在りようか?さあ、語れ。貴様は誰だ。この私に剣を執らせる、貴様の名は」
「───ネロ。余は、ローマ帝国第五代皇帝。ネロ・クラウディウスこそが余の名である。僭称皇帝、貴様を討つ者だ!」
「良い、名乗りだ。そうでなくては面白くもない。そこの客将よ。遠い異国からよく参った。貴様たちも名乗るがいい」
「藤丸立香です・・・それにしてもふくよかな身体だなぁ・・・」*3
「マシュ・キリエライト。マスター・藤丸立香のサーヴァントです」
「・・・名乗ると思うか?*4アンタは名乗ってない。*5なら俺も名乗らない。*6名を聞きたいのはそっちの都合だろ?*7名乗ってないなら今のアンタはただ偉そうにしてるだけの市民と変わらんだろ。*8名乗らせてみろよ」
「聞き慣れぬ響きだ。すべての道はローマに通じる・・・か。やはり、いささか驕りすぎだな。それに・・・なるほど、確かにそれもそうだ。私も名乗りたくない。しかし名を聞くにはまず自分から、というらしい。*9ならば確かに名乗らないのもまた当然か───そしてそこの男・・・立香と言ったか?ふくよかな身体と言ったな。それは当然だろう。ローマは美食の始まりにして頂点の国。カとは、即ちふくよかさである。その証拠に、そら、五代皇帝も実に豊かだ。*10我が情婦、砂漠の女王*11には劣るが、よい、よい」
「・・・むうう、さすがはガリアを平らげた謎の男・・・呼吸をするかのような自然さで女の心を蕩かす・・・だが余は我が母のような女ではなく、皇帝であり、ひとりの乙女!妙にふくよかな男よ、その言葉、いまいち余の心にピーンと来ないぞっ!」
「なんと・・・!」
「ま、皇帝相手への言葉ではないよなぁ・・・」
『あの、そろそろいいかな・・・?』*12
「貴方にはねたいことがあります。連合について。そして、聖杯について」
「ほう。では、貴様が
「言うな、黄金は余のものである!黄金劇場を作り上げし、この、ネロの!」
「はは。その意気だ。そこのデミ・サーヴァント、よく守れよ。貴様の求める聖杯とやら、よく戦えば私が教えてやっても良い」
「・・・!」
「さあ───此処へと進め、既に、賽は投げられているぞ」
「んじゃマシュ。行ってこい。俺はあいつが名乗ってからだ」
男は剣を振るう。しかしマシュの守りは貫けない。しかし、宝具を使ってる気配はない。つまりは・・・うん、名乗ってからが本番ってことだな。なんとめんどい・・・
「ふうむ。強いな、貴様ら。いいや───そもそもだ。名将たる私に一兵卒の役割を任せるとは。最適な人材の運用とは呼べんな、これは」
「こんなに強烈な剣を振るっておいて、どの口で・・・」
『流石はセイバーのクラス・・・相当の手練れのサーヴァントだな、彼は』
「当たり前な事を言うな、ロマン。そんなんだから気が緩むって言われんだよ」
「化け物か・・・くっ、偽の【皇帝】の癖に・・・っ」
「いいや、違うぞ。ネロ・クラウディウス。私もまた皇帝だ。私の頃にその称号はなかったが。その美しさと気に応えて、我が名を言おう私はカエサル。すなわち。ガイウス・ユリウス・カエサル。それが私だ」
あ、名乗ったな?ならこのまま名乗らなくていいような反応を誰かしてくれ・・・!仮面が反応しやがった!
「な・・・それ、は・・・初代皇帝以前の支配者の名・・・しかし・・・過去に死した者が、まさか・・・」
「既にカリギュラには遭遇したな?それなら、貴様は既にわかっているだろう。
「・・・っ」
「肩の力を抜け。笑え。貴様は美しい。実に美しい。その美しさは、世界の至宝に他ならんのだぞ?それに、そこのデミ・サーヴァント。貴様もだ。美しい。ああ、実に良いな。体も良い」
「・・・!」
「貴様らの勇気、強さ、美しさ。私は感嘆したぞ。故に、ひとつ教えてやろう。聖杯なるものは、我が連合帝国首都の城に在る。正確には、宮廷魔術師を務める男が所有しているな」
「魔術師・・・その人物の名を、教えていただけますか」
「できんな。貴様への褒美は終わりだ。これ以上くれてやる道理はない。さて。ネロよ。皇帝よ。貴様の苦難は私の望みではないが・・・私にも、戦わねばならない理由がある。あの聖杯は、私も手にしたい。聖杯を手にすれば、サーヴァントには、カあらゆる願いが果たされる*13という───既に死している身ながら欲深いことだが、
「本気だと・・・?」
「この気配───気を付けてください、マスター!」
『魔力が上昇している!?いや、自ら抑えていたものを解放しているのか!どうやら相手は本気になったらしい!というか、本気ではなかったのか、今まで!』
「ああそうだ、1つ忘れていた───男、名乗れ。私は名乗ったぞ?ならば名乗るが良い。瞳の美しき男よ」*14
ふぅ・・・毎度毎度一度は仮面使わなくちゃならないのはなんでだ・・・?この仮面ってそんなに反応するものじゃ・・・いや、この特異点ならまだ理由はあるか。敵全員皇帝だもんなぁ
「そうだな。確かに名乗られた。ならば名乗るが道理か・・・我が名はハサン。【簒奪のハサン】ハサン・サッバーハである!*15ガイウスよ、いざ、参る・・・!」
「私は来た、私は見た。ならば、私は勝つだけだ・・・!」
ハサンって全員サッバーハも継いでたはず。もし違ってもこいつってキング・ハサンと同じ役割(ハサン殺しのハサン)を継いでるから問題ないっていう手法