YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「本当に欲しかったものを手にした途端、自分の手で壊してしまう運命を思い知るだけだから」
まあ、そうなんだよな。こいつはそう言うやつだ。
「なに・・・何を言う、魔女め!鄙びた神殿に籠っていただけの女になにがわかる!王の子として生まれながら叔父にその座を奪われ、ケンタウロスの馬蔵なんぞに押し込まれた!その屈辱に甘んじながら才気を養い、アルゴー船を組み上げ、英雄たちをまとめ上げた!このオレのどこが!どこに!王の資格がないというのだ!?オレは自分の国を取り戻したかっただけだ!自分だけの国がほしかっただけだ!それの何が悪いと言うのだ、この裏切り者が───!」
そう言う所じゃないかな?現代の王ならばともかく、戦乱収まらぬ世界の王となればそこに必要なのは【武力】と【求心力】と【精神力】だ。*1ぶっちゃけて言えばそこに国を治める力なぞ不要なんだよ。だがお前は忍耐力はあっても【前に出て自らも争う】と言う精神力が足りない。ならばお前は王の器にはなれないのさ。だから海賊船なんだろう?
「・・・残念です。私は召喚されて以来、ずっと本当の事しか言っていませんでした。わたしは裏切られる前の王女メディア。外に連れ出してくれた人を妄信的に信じる魔女。だから彼の王に選ばれてしまったアナタを、こうしてお守りしてきました。全て本当です、全て真実です・・・多少の誤解は、あったかもしれませんけど。例えば、今しがた守ると言ったでしょう?どうやって守るかと言うと───」
・・・あ、そういうことか?*2間に合うか?いや、間に合わせる。*3
「え?」
「こうやって、です」
「なっ、おま、おまえ!?やめろ!何する!ひっ、やだっ、からだ、とけるっ・・・!!」
「聖杯よ、我が願望を叶える究極の器よ。顕現せよ。牢記せよ。これに至るは七十二柱の魔神なり」
・・・間に合ったか!?遅延のルーンは掛けてあるから・・・刺さって内部に溶け込んでる事を願うしか無いか*4
「が、ぎ、が、あ、ぎいいいいいいいいい!!」
「───戦う力を与えましょう。抗う力を与えましょう。ともに、滅びるために戦いましょう。さあ、序列三十。海魔フォルネウス。その力を以て、アナタの旅を終わらせなさい!」
『魔神、これで二柱目ね。まさか、本当に現れるとは・・・』
さて起動するかと悩んでたら、*5辺りに響くは1発の銃声
「当たった!ようし、当たるんだったら倒せるさ!これが正真正銘最後の戦いだ!ほらほら、しっかりしな!コイツをぶっ倒すためにやってきたんだろう!?ならシャンと胸を張りな!こいつはアンタらの為の大一番だ!不敵に笑ってこう返してやんな!」
「・・・ははっ、まさか悩んでるとは思わないで。スゥ・・・」
「「化物なんかに用は
「うおおおおおおおぉ!?いま、今世にも珍しいモン聞いたぞオレら!?姉御がマトモに女っぽい台詞を口にしたぁ!?」
「うるさいね、黙って船室に隠れてな阿呆ども!ありゃあアンタらでどうにかなるモンじゃない!い、いいからやるよマシュ!あとやっぱり今のは忘れな!もたもたしてるとアタシが二つ目の聖杯をいただいちまうからね!」
「そうか、ならば俺も本気を出そう。今の俺は人を辞めてるんだ。歴史の重み、その片鱗を見せてやるよ・・・!」
手元には黒い弓。そしてその弓で飛ばすとは思えない捻れた槍。
「一撃だ。この一撃で以て・・・理想を抱いて溺死しろ!」*8
「・・・ふん、やはりリリィはこの程度か。*9ならばそろそろこれも起動してやらんとな!目覚めろ!」*10
直後、
「お、あ、が・・・メディア、めでぃあ、めでぃあ・・・」
また、メディア・リリィも致命傷であった。当然である。魔女と恐れられた今よりも成熟している本来のメディアですらボロボロになった
「───はい、
「・・・なおしてくれ、ぼくのめでぃあ。いたいんだ、いたいんだ、いたいんだよぉ・・・!」
「・・・」
治せる訳がない。リリィとは言えこの時点で既にコルキスの魔女であるメディアは分かってしまっている。自分も、彼も、既に霊基を保っている事自体が奇跡だと。
「なにを、やってるんだ。こののろま・・・なおせと、いってるだろう」
「───出来ません、イアソン。ごめんなさい」
「・・・・・・・・・え?」
「だって私も、もう倒れます。残念でした。本当なら、貴方と共に世界が沈んでいたのに」
「・・・おまえ、やっぱり・・・」
「この私には関係のない事だけど。私は、確かにアナタを知っていました。こうしている今も、王女メディアの記憶がまざまざと蘇ります。裏切られても、罵られても、そもそもの発端から騙されていたとしても。彼女はイアソンさまが本当に、本当に大好きだった。あなたは、神の力を授けられながら───どこまでも、無邪気だった。拙い宝物を手に入れて、はしゃぐ子供のように。どうしようもなく残酷で、まったく無邪気なあなた。弱い癖に、人を惹きつけて離さないあなた。それがイアソンだった。それが彼女の初恋だった。でも、貴方はすぐに全てを裏切る。そういうふうにしか生きられない人だから。だったら───裏切られないよう、世界ごと沈んでしまった方が楽でしょう?アナタは永遠に───
・・・結局、リリィも本体も。何もかもが変わらないってことか
「まじょ、め・・・!・・・うらぎり、の・・・まじょめ・・・!しね、しね、くたばれ!ちくしょう、ちくしょう、畜生───!」
サーヴァント・・・あれ、コイツってクラスどれだ?*12まぁ、イアソン・・・退去、確認
「・・・ごめんなさい、イアソンさま。彼からアナタを守りたかったけど、私には手段がなかった。これが限界・・・せめて最期の瞬間まで、楽しい夢が見られたらいいのだけれど」
「・・・アンタほどの人が勝てない相手って事でいいんだな?」
「・・・ええ。しかしその相手について口にする自由を私は剥奪されています。魔術師として私は彼に敗北していますから」
「・・・そうか」*13
「どうか覚悟を決めておきなさい、遠い時代の、最新にして最後の魔術師たち。アナタたちでは彼に敵わない。こと魔術師においては、あの方には絶対に及ばないのです。アナタのその摩訶不思議な魔術でも。*14だから───星を集めなさい。いくつもの輝く星を。どんな人間の欲望にも、どんな人々の獣性にも負けない、嵐の中でさえ消えない、宙を照らす輝く星を───」
「・・・サーヴァント:キャスター、メディア・リリィ。退去を確認した。聖杯は?」
「はい、聖杯は回収完了しました。残敵なし。戦闘行動終了。時代修正───完了です」
・・・まぁ
「風が止んだ・・・ああ、こりゃあ終わりだね。もうどうしようもない。この海はもうすぐ終わる。でも、あの大渦の時のような破滅じゃあない。これは良い終わりだ。新しい誕生だ───アタシたちの海が戻ってくる!」
「オオーーーイ!これでこのトンチキな海ともお別れだー!」
1人、
「やったなヤロウども、でもちょっと寂しいぜ!こっちの海はロマンに満ちていたからな!」
また1人と消えていく。所詮特異点は泡沫なのだ
「おお、バンバン消えていくじゃねえかオレら!やっぱり雑兵から退場するのは世の常かー!じゃあな、マシュちゃん、立香、それと親分!船長を助けてくれてありがとうよ!オレらはいずれ縛り首だが、アンタらはまともな人間だ!これに懲りたら海賊なんぞに関わるなよー!」
「・・・ハッ、せめて最後くらい名前で呼べよお前らよ」
魂の輪郭を戻していく。レイシフトまでには間に合うだろうな*17
「皆さん・・・」
「はーっ!やっとここから帰れるわ!さあ、行きましょうオリオン!愛の逃避行へ!」
「お前なぁ、ここ別れのシーンだろ?ちょっとはイイトコ見せようとか思わないの?ああもういいや、なんか疲れた。じゃ、いつか違うナリでお前さんとは出会いたいモンだ。じゃあな!ああ、それからマシュちゃん。せっかくだから、1発別れの・・・*18あ、はい。なんでもないです」
「ダーリン、逝くわよ?」
「すんません、すんません、すんません!」
結局こいつらってなんでこの特異点にいたのかね?もしかしたら
「これで私たちの役割もおしまいか。あーあ、なんて酷いお仕事だったの。
「・・・おれ、かいぶつ。なんにんも、こどもを、ころした。なんにんも、なんにんも、なんにんも、なんにんも・・・ころした、ころした、ころした、ころした。なにもしらない、こどもを、ころした。ちちうえが、そうしろって。ちちうえが、おまえはかいぶつだから、って。でもぜんぶ、じぶんのせい、だ。きっとはじめから、ぼくのこころは、かいぶつだった。でも、なまえを、よんでくれた。みんながわすれた、ぼくの、なまえ。ますたぁ、ありが、とう。ますたぁ、も、おやぶん、も、なまえ、よんでくれた。みんな、かいぶつだと、きらわなかった。うまれて、はじめて、たのしかった!ぜんぶ、えうりゅあれの、おかげ、で───ぼくは、えうりゅあれが、だいすき、だ!」*21
「そうかよ。なら次会った時には、ちゃんと言ってやりな」
これで、味方側のサーヴァントも全員退去を確認した。*22あとはフランシス・ドレイクだけだな
『
「いいってことさね。結局、アタシは大した事は出来なかったしさ。これでアタシが本物の英雄とかなら、もちっと格好がついたと思うんだけどねぇ。でもまあ、そいつはムリな注文か。アタシみたいな海賊が英雄扱いされるはずもないしさ」
「船長はもう十分に立派な英雄だよ、ね?柳星」
「そもそもアンタは俺達からしたら英雄なんだよ。世界の踏破、スペイン海軍への勝利、それらの功績は十分英雄の条件を満たしてるだろうよ。ただ───聞きたいのはそう言う事じゃないのは分かってる。そうだな・・・確かにワイバーンとか真なる竜種にも怯えずに挑んだこと、女神や怪物と恐れられた存在にも豪胆に接するその精神力は───間違いなく英雄である、と言えるだろうな」
「・・・随分と真面目に答えたさね。まあアンタらの言うことだ。話半分くらいに信じておくよ。で、やっぱり修正されるとアンタたちのことは記憶から消えちまうのかい?」
「だな、そうなる。今回は何も残せないからなぁ・・・まあ、その聖杯は消えないから*23使いこなしてみたらどうだ?そしたら俺達の事も思い出せるかもな」
「そっかぁ、アンタたちと世界一周は無理か、残念。でもいいよ。短い間だったけど、面白可笑しい旅だったからさ。さ、行きな。海の人間にとっちゃ、別れはいつだって唐突だ。砲弾で吹っ飛ばされて、波に掻っ攫われて、挙げ句に行き先を見失って死んでいく。だからアタシたちはそんな恐怖を───いつでも笑って、
「はい、さようなら。自由の海を渡り歩く
「ん?ああ、いつぞやのアレかい。アンタは無欲だから厄介だってヤツ!バカだね、気にしてたのか。というか───望みはもう持ってるよ、マシュ。アンタは自分がやりたいことをよく分かっている」
「え・・・?ドレイク船長、
「望みがない、なんてのは乱暴な言い方でさ。そもそも【欲】の無い人間なんていないんだ。人間、誰だって望みは持っているんだよ。望みが無い人間は生きていられないからね。ただ、それを自覚して生きるのか、一生自覚できないかの違いがあるだけなんだ・・・あのイアソンと同じさ。あんなヤツでも【理想郷を作る】という望みがあった。自分を追放し、自分を助けなかった故郷。それを見返すためなのかどうかは分からない。でも、アイツは自分の国を【平和な国】にすると言った。支配欲に取り憑かれていた男だったけど、最期の最期で、自分の本当の望みに辿り着いたんだ」
「・・・はい。イアソンの行為、行動は非道なモノでした。でも───彼は、驚くべき事に、民を見ていた。利己的でありながら、他人を庇護しようとしていた」
「ああ。悪人が善行をなし、善人が悪行をなすこともある。それが人間だ。それがアタシたちだ。だから、望みは誰にでもあるんだよ。ただ、本当の望みってヤツに気がつかないまま、一生を終えるヤツがいるってだけの話さね。アンタは・・・うん。自覚しないほうがいいタイプだ。アンタはそのままでいい。きっと最後に分かるさ。アンタは何がしたいのか。アンタは何をする為に最期までその盾を振るうのかってね。アタシとは真逆。アタシはもう知ってる。・・・多分、アイツも知ってる。そして早くに知っているヤツほど、最期は酷いオチを迎えるのさ。多分アイツにとっちゃあ、今はボーナスタイムみたいに思ってるのかもね」
「・・・ドレイク船長。貴方は、その・・・貴方の、これからの人生は、」
「いいよ、そんな分かりきったコト言わなくても。アタシの最期なんて知ってるよ。死ぬんだろう?人生ってのは死ぬコトが分かってからが面白い。いや、必ず死ぬからこそ、今を楽しく生きたくなる。アタシ、別に財宝マニアってワケじゃないよ。ほしいのは金さ、享楽さ。いずれ死ぬから、とにかく今を楽しく生きたいだけさ!アンタらのおかげで世界は広いって分かったんだ。きっと、死ぬ気で旅しても終わりはない。アタシはほんのちょっと、数多くある道の一つを拓ければそれでいい。それはなんて幸福で、はた迷惑で、アタシが望んだ通りの終わりなんだろう。だからいいんだ。アタシの最期なんて気にしないでおくれ。じゃあな、マシュ、立香、柳星!それと軟弱な学者先生と所長さん!時代を救った報酬はそうだねぇ───アンタらの旅の終わりに、アタシとの旅は楽しかったって思い出してくれれば、それでいいさ!」
・・・時間だな
「・・・よい航海を!」
「おかえりなさい。そしてお疲れ様、貴方たち。これで三つ目の特異点も消去完了です。人類史を守るというこの壮大な任務も貴方達は絵空事のように感じる事は出来なくなってきたでしょう。あの魔神についてはこちらで調査をすでに始めています。次は第四特異点。前半戦最後の特異点です。特異点はその現状が掛け離れれば掛け離れるほどイレギュラーになって行きます。きっと次の特異点は今回以上にイレギュラーなものとなるでしょう。ですので今は英気を養いなさい。次のレイシフトまでは数日は掛かりそうですから。では、解散とします」
・・・分割出来ませんでしたぁ!7429文字の読了、お疲れ様でした。明日はEX、明後日からロンドンです。ではではー