YAMA育ちが行く人理修復の旅【現在一部五章完結済み】 作:柳瀬塔矢
「よっし、到着したな。このでかい建物がヴィクターじいさんの屋敷だ。ジキルみたいな半端な奴とは違って正真正銘の魔術師だから気をつけろよ。あれこれと結界やら何やら仕掛けてやがって、知らずにあちこち触ると、サーヴァントでも多少痛い。*1初めて様子を見に来た時はもう、散々な目に遭った」
「何当たり前のことを・・・というかモーさんよぉ、魔術師の工房は下手に弄っちゃいけません、なんてアンタの時代では当然のことだと思ったんだけど?」*2
「モーさんって呼ぶな!*3あー・・・オレはその辺あんまちゃんと聞いてなかったからなぁ」
「そかそか。なら今後は覚えておきな。死んでないからまだマシって感じだからな。本当の工房ってのは」*4
「そうなんですね。はい、わたしも気をつけます」
「う、うん・・・!」
怖がってやんの。まぁそれが普通なんだけどな
『市街地にそんなデス・アトラクション工房を・・・なかなか、肝の据わりすぎた用心深い老人らしいね』
「まずは入り口の扉だ。ほら、見ろよ。デカい扉の───クソ、遅かったか」
「建物の入口に誰か・・・背の高い、あの人影は・・・
ふーん・・・サーヴァント、キャスターか。まぁ・・・倒せるか*5
「おい、そこのカカシ。それともリビングスタチューか?どっちでもいいや。おまえさ、アホみたいに匂うぞ。血と臓物と火の匂いだ。後、じいさんの好きだった元素魔術の触媒。ここまでぷんぷん匂ってくる。殺したな、おまえ。ヴィクター・フランケンシュタインを」
赤と金で作られた服の上に藍色より薄めの羽織り、顔は白く塗られた上に涙の化粧。ハットの横から飛び出すように捻じ曲がったツノの意匠が施された紫色の髪の男。サーヴァント:キャスター。知らんなぁ、お主は*6
「ええ、はい───ああいえ、どうでしょうか。少しお待ちくださいませ」
あ?殺した・殺してない以外に選択肢があると思ってんのか?コイツは
「確かに、確かに。かの老爺は二度と口を開かず、歯を磨かず、物を食べず、息をしないでしょうけれど。ええ、ええ。有り体に言えば絶命しているのでしょう。残念なことです。彼は【計画】に参加することを最後まで拒んだ。しかししかし。だが、けれどもしかし。誰がヴィクター・フランケンシュタインを殺したか?それはとても難しい質問かもしれません。何故なら、彼は
「・・・ッ!」
こいつ・・・!*7
「おやおや、美しいお嬢さんを怖がらせてしまいましたか?これは失礼いたしました。わたくし、見ての通りの悪魔でございます───というのは冗談でして。ご期待に背くようで残念ですが、英霊に御座います。貴方様と同じくサーヴァント。クラスはキャスターにてございます・・・おや?おやおや皆様、おわかりでない?」
「もういい、黙れ」
モードレッドもキレてるよなぁ、そりゃあ・・・キレるよなぁ!
「いえいえ、おわかりでしょう。何故わたくしがこうも容易くクラスを明かしたか?この聖杯戦争ならぬ聖杯戦争では道理というもの。少なくとも、そちらのお嬢さんはおわかりでしょう!遭遇、すなわち即座の総力戦!我らはマスターなきサーヴァントなれば───およそ、地上に在って最強の戦力と呼べましょう。しかし・・・そちらには
「御託はいい。そのニヤけた口元を今すぐに止めろ」
「はい?」
コイツァ・・・許しちゃならねぇ。真性の悪だ。
「ニヤニヤニヤニヤと!鬱陶しいんだよ!ジジイを殺るのがそんなに
「まあ、ええ───我らの【計画】を阻む者なれば、まあ、言ってみれば仕事のようなものでしたので。ねばならない、というのは、また、これでなかなかに厄介なもの。ええ、実に。ですがそれでも、極力、楽しむ。そのためにあれこれ苦心しましたから。最後の瞬間のあの、表情。生から死への切り替わりを理解してしまった人間の顔!絶望!嘆き!ああ!これこそが───!というわけで、まあ、ええ───退屈しのぎ、程度には?なりました、でしょうか?」
「・・・そうか。移民だろうが何だろうが、あのジジイもブリテンの民だ。いいか、それを、テメェは・・・無断で
「───はて?」
コイツ・・・心の底から分かってないんだな*9
「───お前を殺す、って言ってんだよ。道家野郎!」
「いやはやなかなか!殺しますか、私を!殺せますか、私を!貴方様は血の気の多い人であるようだ!よろしい、ええとも、ではご期待には答えましょう!せいぜい、爆発にはお気をつけてくださいませ!我が宝具は既に
「はぁ・・・ダメだ、我慢ならん。死ね、ゲスが」
直後、メフィストフェレスの身体に穴が空き、そうでない場所も全て切れた。しかし、胴体から分離した部位は存在してない。わかりやすく、致命傷だった
「俺の嫌いな人のウチにな、テメェみたいな人種が入るんだよ、好き勝手させると思ったか?よく調べてみろよ、本当に宝具は埋まってるか?埋まってる訳ねぇんだよ、俺が全て消したからな」*10
『確かに会話の裏でずっと魔力使ってるなぁとは思ったけどそんなことしてたんだね・・・』
おい、引くな。前々からできてた事だろうが。*11
「だがそれでもテメェがサーヴァントである事には変わりない。せめてもの慈悲だ。遺言に限って遺すことを許そう」
「実に、実に・・・口惜しい・・・!今回の現界ではそれほど楽しめませんでしたね・・・やはり、マスターは必要なのでしょう・・・そう、マスターとサーヴァントの絆の力が・・・どうこう・・・では、なくて。ええ、そうではなくて。切なる願いを叶えると決めたマスターに、子供一人くらいは手に掛けさせなくては、ね。聖杯戦争の醍醐味を味わえないというもの。ああ、貴方様が妬ましい・・・盾のサーヴァント・・・貴方は、これから先、幾度でも・・・マスターを裏切り、絶望へ落とす機会がある・・・!なんと・・・妬ましい・・・!」
「───黙れ」
直後、メフィストフェレスの首が落ちた。それから二瞬、退去を確認
「サーヴァント・キャスター:メフィストフェレス。退去を確認」
「悪ぃな、最後の一撃だけ持って行っちまったみたいになって」
「いや、アイツは確かに
「モーさん呼ぶな!」
ブンッと振られた剣は俺に当たることなく空振ったのだった