2025年10月4日追記
星遺物の誤字を修正しました。ご報告ありがとうございます。
―――少し遡り、闇虚が神域由来の暴走生物を討伐した頃。
「キェェェェェェェ......」
「ええっ!まじで?まだ立ち上がるの?やば、ゆうて神様級つよすぎなんだが......?」
「鹿のくせになかなかやりおる。ビリビリするし、健康によくない」
「キュォォォ...!!
キェェェェェェェ......!!!」
「ええええ!出力上がってるんだけどッ!」
ルドルフが唸り声を上げ、頭上の巨大な雷球を作り出す。
徐々に大きさを増していく雷球は、あっという間にルドルフ自身を覆い隠せるほどになった。
「ちょっと......今あんなのくらったらほんとにやばいって!!!」
「くっ......どうやら我々は、あの暴君を侮っていたようです」
「みんな!このままだと全滅するかもしれない。ここは一旦引いて仕切り直そう!」
「そうは言っても......」
ルドルフの作り出した雷球がゆっくりと浮かび上がる。
まずい。このままだと......いや、もしかしたら......。
そう考え、
「おおおぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!」
誰かの雄叫びが聞こえ、次の瞬間には何かがカノンたちの間を通過してルドルフを吹っ飛ばした。
浮かんでいた雷球は消え、代わりに大量の砂埃が辺りを舞う。
「けほっけほっ......こ、今度はなに?」
「みんな、大丈夫......?」
みんなの返事を聞きながら、先ほど聞こえた声の人物を探す。
「げほっ......やっべ、ちょっとやりすぎたかも?」
「あれ?この声って......」
プロブレムの言葉に、先ほどの人物の正体を確信する。
やがて風力魔術が発動され、砂埃が晴れた先に見えたもう1人の仲間の顔に頬が緩んだ。
自分で起こした砂埃に咳き込みながら、僅かな後悔を呟く。【
左腕の魔導呪具を操作し、風力魔術を使って砂埃を晴らす。見知った顔を確認すると、その内の1人が手を振りながらこちらに声をかけてきた。
「あー!やっぱり虚くんじゃん!久しぶり!」
「お久しぶりです、プロブレムさん」
近づきながら挨拶を返す。
彼女はプロブレム。第八騎士団〝
俺が普段使っている魔導呪具も〝
「すんごい派手に登場したねぇ!もしかしてGARDENからの援軍とか?」
「いえ、皆さんの作戦エリア付近に複数の暴走天使が観測されたので、そいつらの討伐をしていました」
「え、暴走天使を1人で倒したんですか!?それも複数......?」
「虚、相変わらずおかしい」
「普通は私たちでも苦戦するはずなんだけどねぇ......」
「あいつらバカなんで、上手く誘導すれば勝手に同士討ちしてくれますよ」
「え、同時に相手したの?......ごめん、なんで生きてるのかわからない」
なんでか知らんがドン引きされてる件について。そんなに変なことは言ってないんだけどなぁ?他のガーデナーならともかく、騎士の皆さんならできると思うんだけど。
理解不能な視線に首を傾げていると、彼女たちの後ろから新たな声が聞こえる。
「虚、来てくれてありがとう。おかげで助かったよ」
そう言ったのは【皇帝】久条運命。『非公式』である俺を除いた49人の騎士の中で、
俺と同じ唯一無二の
「間に合ったようで良かったです、陛下」
「にしてもよくここが分かったね」
「嫌な気配がしたのでその方向へ振り返ったら、偶然にも落雷が見えたので。皆さんと俺以外にこの神域で任務を行っている人はいないと聞いて、もしかしたらと思って駆けつけました―――それで、あいつは?」
「魔剣使いの魂に封印されていたこの世界の『魔王』だよ。魔剣もあの中にある」
「なるほど、じゃああいつを倒す必要があるわけっすね」
「キェェェェェ......」
そこで件の『魔王』が立ち上がり、こちらを睨みつける。
『魔王』はもう一度声を上げると、魔剣の力を使い天使を召喚する。どうやら殺る気満々らしい。
「向こうもかなり消耗しているはずだけど、こんな風に天使の召喚に足止めされて止めを刺せないんだ」
「なら俺が天使の相手をしますので、皆さんは『魔王』の討伐に集中してください」
「お、頼もしいねぇ。私らもこれ以上の長期戦はしんどいし、お言葉に甘えさせてもらおうかな!」
「うん、向こうも、苦しんでる。最後のあがき。やるなら、今しかない」
「だからこそ、次の一撃で決めます」
三人の騎士が各々の得物を構える。
「サポート、ね」
「おけ、任せてー♪」
「陛下もいいですね?もう一度、『
「無茶はしてほしくないけれど...!カノン!お願い...ッッ!」
プロブレムさんとシオンさんが『魔王』を足止めする。
それに合わせてショルダーホルスターから引き抜いた拳銃型魔導呪具で魔術を撃ちつつ、
「『
陛下から承認を得たカノンさんが必殺技―――
「応えよ聖剣...!
これが、エルスタニア流、真・聖剣技...!!
自らを刃として!自らを剣として!!
たとえ相手が神であっても切り伏せる...ッッ!!!
天牙煉斬閃ッッ!!!!!!!!」
カノンさんの剣が青白い光に包まれる。
正式にはB.L.A.D.Eと書くそれは、元々は魔剣が生み出した天使や軌道修正が使用する能力だったが、長年の研究を経て騎士たちが陛下の認証と承認を条件として発動可能になった必殺技。
使用者は超常たる力を得る代わりに暫くの間”暴走状態”に陥ってしまうリスクがあるが、それに見合った破格の絶技でもある。
そして、
「はぁぁぁぁぁッ!!!」
一瞬で『魔王』に肉迫したカノンさんが、自らの愛剣―――聖剣カノンを目にも止まらぬ速さで振るう。
「キェェェェェェェ......」
「...逃がさないッ!」
「カノン!今だよッ!!」
「これで...!終わりですッ!!!」
放たれた究極の五連撃、その最後の一撃が『魔王』を討ち滅ぼす。
「キェェェェェェェ......」
力尽き倒れた『魔王』が光となって消え去ると共に、魔剣が破壊される。
「―――はぁ、はぁ。倒し...、ました......ッ!」
「さすがだね...!ありがとう、みんな!」
「はぁ......終わった」
流石にあまりの連戦に疲れた。正直立つのもやっとだ。
「......この世界、もう終わりね」
シオンさんの言葉に、疲れを感じる気ではなくなる。
それだけ、軌道修正との戦いは重く辛いのだ。なぜなら―――
「そうだね......。この神域を作ってた魔剣は、あの鹿さんと一緒に倒しちゃったから。この世界は、もうそろそろ夢から覚める時間だ」
「本来、存在するはずのない歴史―――混濁した星の記憶が見せる、触れる夢......」
「現実の地上は、もう滅んでしまったから―――そうでない世界を、星が望んでいるのかな」
神域とは、本来はあり得ない―――あり得てはならない歴史だ。神域1つ放置するだけで、現在生き残っている俺たち『
それを回避するために、魔剣を破壊し神域を消し去る必要がある。
「この世界の人たちから見れば、立派な「魔王」......
恨んでいいよ、妬んでいいよ。
その罪は全部せおっていくから」
「うん、そうだね
もっと魔王業をがんばらないとっ!」
感傷的になってしまった心を、カノンさん明るく吹き飛ばしてくれる。
それはそうと―――
「あー...、あのさ。いい感じにポエんでるところ悪いんだけど。なんかこの世界、ヤバくない?いつもの魔剣を破壊したときの感じと違ってさ......」
「たしかに......なんか、地面、揺れてる...?」
「―――すごい力の反応...!一体何が......?」
これ、すんごい嫌な予感するんだよね。具体的には大爆発とかしそうな、良くて地割れ程度に収まるかな?って感じ。取り合えず全力で逃げた方が良いと思う。今すぐに。
「陛下...?」
「うーん、どうやら少しまずいかもしれない。少なくとも600km四方が吹き飛ぶっぽい」
バッカじゃねぇの?
それが?少し?どこが?まずいとか言うレベルじゃねぇんすけど。規模感解ってますか陛下サマ?核兵器でもそんな威力滅多に出さねぇよ。騎士全員のBLADE一斉全力ブッパでも無理だろ。はあ?
「でた、運命のなぞの知識」
「待って待って、それじゃあ急いで逃げなきゃじゃん!」
「逃げて間に合います?俺でも3時間掛かりますけど......?」
「でも、いつまでもここにいる訳には...ええと、ここから一番近いGARDENの回収ポイントは......」
「でも、やらないといけないことがあるんだ。協力してくれる?」
は?アホなのこの人?
「―――はぁ。また始まった」
「あぁ!なるほどなるほど!救うんだね、「この世界」の人たち!」
マ ジ で す か 。
そんな余裕あるかなぁ。普通に全員で全力多重防御とかした方が良いと思うんだけど。
「この世界を終わらせた張本人のくせにぃー♪」
ほんとそれ。やってることDVと変わんねぇもん。
「まったく、仕方ないですね。陛下の自己中は今に始まったことではないですし。だからこその「魔王」......ですしね!」
「もし世界が終わってしまうなら。せめて、美しく、きれいな空の下で―――」
「例え記憶に、記録に、歴史に残らなくても」
「願わくば、幸せな終末...ね」
「虚も協力してくれるかな?」
......まぁ言いたいことは解るし、ある種の罪滅ぼしだと思えば納得できるか。それに、今の俺はただの一ガーデナー。【皇帝】様の指示には逆らえない。
「陛下のご命令とあらば」
「うん。ありがとう」
「......で、何したらいい?」
「えーと、とりあえず中心地っぽいところに3人で全力『BLADE』かましてみる...とか!」
「じゃあ俺は、防護術式を死ぬ気で張ります。『BLADE』が使えない以上、それくらいしかできませんので」
「
「......まじで?」
「それ、今回の任務の―――...!」
「
え、目的の品を本部の命令ガン無視で使うの?しかも勝手に?それ普通に降格ものじゃない?
「何が起こるかわかんないってこと?」
「わかんないから
「まさか、例の謎の知識で!」
「実は知ってた?」
「1ミリも知らないっ!」
おい。
「でも、たぶん大丈夫...、そんな気がする。私のことを信じてくれる...?」
「後で司令官に怒られても知りませんよ......」
「大丈夫大丈夫!マリアは優しいから許してくれるよ!」
はい、俺もう知ーらね。
「うひゃー!運命くんめちゃくちゃ言い過ぎ!でも、なとかなる気がしてるんでしょ?私と一緒じゃん♪だったらうまくいくよ、絶対!今までもそうだったし、これからも!でしょ?」
「意味がわかんないのはいつものこと。でも、思うように生きるほうが健康によい、ね。運命が運命を感じてるなら、それをまもるよ。力、貸すね」
「今まで、私が陛下を信じなかったことがありますか?まぁ、確かに?この人どうかしてるなーって思うことはありますが......それでも、陛下を信じているから私たちはここにいるんです」
「......あ」
カノンさんの言葉に、思わず
―――たとえ世界の全てが敵になって疎まれても、私は、私たちは、君を信じてる―――
俺は間違いなく、その言葉に救われていた。
......やめよう。今考えることじゃないだろ。
気付けば俯いていた頭を振り、意識を切り替える。
「虚くんはどうですか?」
カノンさんの問いかけに答える。
「......今の俺はガーデナーです。過去がどうだったかなんて関係ないし、GARDENには廃人寸前だった俺を保護してくれた恩があります。その恩に報いるためなら、どんな命令にも従うつもりです。信用とは違いますが、それが俺の覚悟です」
俺の返答に満足したのか、カノンさんは大きく頷いて陛下に言う。
「さぁ、いきましょう...!」
左腕の魔導呪具を操作し、保有する魔力と
発動するのは、以前編み出した
許容量を大幅に超えた魔導呪具がオーバーヒートを起こす。左腕が火傷しそうだ。この温度なら回路は焼き切れているだろう。
やっべ製作者に殺されるかも。でも必要経費だから許してくださいお願いします本当に。
「「「たぁぁぁぁぁ...ッ!!!」」」
3人の騎士が、自身が誇る究極の絶技を揮う。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」」」
「はああああああああああああああッッ......!!!」
放たれた3つの『BLADE』が、暴れ出す災厄を少しでも抑え込む。
同時に陛下が
やがて世界は白い閃光に包まれ、音が消え去る。
どれだけの時間が経ったのだろう。気が付けば仰向けに倒れていた。視界に映る空の色はどこまでも青く澄み渡って
「ぷはぁー...、みんな生きてる?」
「なんとか生きてますー」
「げんき」
「陛下と虚くんは?」
「大丈夫!問題ないよ。全身が、少し痛いけど......」
「......なんとか」
ほんと、辛うじてギリギリ死にかけで済んでるわ。魔力も呪力も枯渇したら命削るからね。
左腕を見れば、魔導呪具は黒い煙を上げ所々が破損していた。
あぁ......終わった。これは完全にご臨終DEATH()。
「―――位相反転、青い空...だね」
「
「あっちの世界、消えちゃった?みんな、この空が見えたかな?」
「大丈夫ですよ、きっと!」
「にしても、あの爆発をよく耐えたよねぇ......」
まったくだ。あんなイカれた爆発の対処なんて二度とやりたくない。というか出来ない。
「ちょっとだけ、世界へこんだ」
「世界へこむとかパワーワード過ぎません?」
「あはは...、まぁ、この程度で済んでよかったということで」
「この程度......」
「んー、この何もない感じ戻ってきたって感じがするなー!」
「ふふふ♪そうですね!おかえり、私たちの『
こんな現実嫌すぎる。更地になってんだぞ。
「運命、おなかすいた」
「わたしもーー!運命くんのラーメンたべたい!」
「席予約、ね」
「あ!ずるい!私も食べたいです!」
「カノン、さっきもなにか食べてなかった?」
「ぎくっ!」
「世界が消える前に名物食べとくの、まぁ、わかる」
「だって、おいしそうだったから!」
「からの、ラーメンかぁー罪だなー」
「いいんです!魔王だから!悪だから!ですよね、運命くんっ!」
皆元気だなぁ......俺もう動けないんだけど。間違いなく過去一疲れた。
『大尉、応答してください!そちらの状況はどうなっていますか!?』
やっべ、報告すんの忘れてた。
なんとか腕を動かし、掠れ気味の声で応答する。
「......こちら闇虚、陛下たちと合流し魔剣を破壊しました。これより帰還します」
騎士ズ「あー疲れた!ご飯食べに行こ!」
闇虚「死ぬ......ほんとに死ぬ」
区切るタイミングが判らずこんな長さに。主人公が合流するまでは前回の内に終わらせて良かったかも。