種子体狩りを始めてからしばらく経った。天使の殲滅と並行して順調に進んでおり、時間的にもそろそろ〝
「はぁぁぁぁぁ!!!」
ララベルの振り下ろした剣が天使を切り裂く。
かなりの回数天使と戦っているが、ララベルの剣筋には目を見張るものがある。
今の一撃も、無駄な力が一切無い完璧な一振りだった。警邏隊所属と言っていたが、かなり腕の立つ方らしい。それともこの時代の連中は皆これくらい強かったのか。どちらにしろ見事と言わざるを得ない。
正面の天使の右腕を振り下ろされる前に左逆袈裟切りで切断し、そのまま右腕を引き絞って突くと同時に刀身を展開。飛び出した剣先が天使の顔面を貫き、粉々に破壊する。
右から襲いかかってきた天使には魔導呪具の銃口を向け、爆撃魔術で全身を破壊する。
刀身を連結させ、振り向きざまに背後にいた天使の頭をかち割るように叩き切る。
背後で新たに天使が生まれる音が鳴る。振り返れば、そこには数十体の天使がいた。
雑魚の分際で面倒だ。一気に片付けてやる。
魔導呪具をショルダーホルスターに収める。
練り上げた『氣』を噴射させながら、現れた天使の間を縫うように次々と切り捨てる。
【
敵軍を壊滅させるまで止まらない刃を以って天使たちを蹂躙する。たかが数十体程度ならこんなもの。一々苦労はしない。
蛇腹剣を血振りしてから鞘に収める。やっぱり遅い。
「お疲れさまです!この付近にある種子体の破壊、および天使の殲滅は完了しました!早く次の場所に行きましょう!」
「そうですね」
妙に活き活きとしているララベルに違和感を覚えながらも後に続く。
そう、違和感。
いくら天使を滅ぼせる方法が分かったからと言って、ここまで笑顔になるものだろうか。
それに、だ。
確かに、常に種子体の場所が分かる訳ではない。しかし、どこにあるのかをサーチする手段なら持っている。だがその手段を使う前に、ララベルは1人で先に進んでしまう。
まるでどこに種子体があるのか知っているかのように。
彼女はこの異変が起こったのは数日前と言った。それだけの時間が経っているなら、種子体の場所をある程度把握しているのも理解できる。だが、現在破壊した種子体の数は50を超えている。流石にこの数を把握しているのは異常だ。複数人で調査して把握したのならまだしも、この異変に気付いているのは自分1人だとも言っていた。おまけに天使の出現元が種子体であることを知らなかった。そんな状態でこれだけの数の種子体の位置を正確に覚えていられるだろうか。
だからこその違和感。何か致命的な勘違いか見落としをしているような―――
「アランさん?どうかしましたか?」
「いえ、なんでも」
首を傾げて尋ねるララベルになんでもないと返す。
今は警戒するだけで良いだろう。尋問するのは何か決定的な疑いが生まれた時で良い。
「そうですか?それより早く行きましょう!もっと結晶を壊さないと!」
やっぱり何かおかしい。どうしてここまで嬉しそうにしていられる?ララベルにとって、この国の住人たちなどどうでもいいのか?天使に消された人たちを悼む心があるなら、こんなにはしゃぐのは不謹慎だと気付けるはずなのに。
一度抱いた疑念が晴れることは無い。思考が深くなるほど、周囲への警戒も疎かになる。
だから、直前まで気付けなかった。
「――――――ッッッ!!!?」
ふと顔を上げた時には、
蹴り飛ばされた。そう理解した時には、既に何件もの民家を貫通していた。
「―――ッが!...げほっごふ......ゔぉえ」
瓦礫と化した建物から這い出る。襲撃者は不明だが、一先ず態勢を立て直そうと思い左腕に右手を伸ばして―――思い出す。
リストバンド型の魔導呪具はまだ修理されてない。
以前の任務が終わった際、製作者が不在だったためプロブレムさんに預けたのだが、翌日ブチ切れた製作者から「プロブレムが勝手に直す前に奪った。次の任務が終わるまで修理しない」という旨のメールを送られていた。
あの魔導呪具は補助や防御などの術式が使えるだけに、今の状況は少しまずい。拳銃型の方は戦闘特化の攻撃重視な術式しか使えない仕様になっている。これじゃあ防護術式も身体強化術式も使えない。
『大尉、先ほど大尉の座標が高速で移動すると同時に、大尉の心拍数が上昇しましたが大丈夫ですか?』
「......こちら闇虚。敵襲に合ったけど問題ない。襲撃者を撃破して同行者と合流、任務を再開する」
『大尉?聞こえていますか?大尉、応答してください!大尉!?』
「葵さん聞こえてる?葵さん?―――クソっ」
最悪だ。どうやら今の衝撃で通信機がイカれたらしい。こちらからの通信は届かない。孤立無援の状態に追い込まれた。
仕方ない。ここで襲撃者を返り討ちにしよう。
「ハッ!えらく派手にぶっ飛びやがって。先制攻撃を許した時点で、オマエはオレ様に劣るカスだってことが確定したなァ!」
周囲を見渡し襲撃者を探していると、上から見下したような声が聞こえた。
声のした方を見ると、そこには屋根の上に返り血を浴びたような鉄錆色の男が居た。
「おーおーテメェか、いきなり人様に蹴りぶっ刺しやがった脳みそハッピーなクソ野郎は」
「誰が『人』だボケ。オマエは
「―――――――――あ?」
『次世代』。その言葉に強烈な嫌悪感が湧く。
鼓動は早く鳴り、全身から冷や汗が流れる。
―――そんな、まさか、だって
「ま、さか―――」
「なァにが
―――じゃ、もう死ねよ」
そう言い終わると同時に、男は結晶のような物を噛み砕き赤黒い光線を撃ち出す。
―――来る!
その直前に感じた直感に従い右に避ける。同時に左腕の制服が裂け、腕を浅く焼き穿つ。
「......ちっ、なんだ今の」
「―――超能力」
左腕を焦がした痛みに舌打ちをしながら呟くと、男がそれに答える。
「
「オレ様たち...?仲間がいるのか」
「いい加減オマエを殺したくて堪んねェんだよ。冥土の土産だ、意味ねェだろうが教えてやる。
―――
―――同時刻。
「急いで虚くんを見つけないと...!」
魔剣・
彼らは現在、天使の撃破とそれを使役する種子体を破壊しながら、襲われている帝国民の救助を行っていた。
「虚との通信が途絶えた場所までもう少しだ。何か手掛かりがあれば良いが......」
「虚さんよく通信切っちゃう癖あるから、すぐに声が聞けると良いけど......」
「そーだよねー。でもしょーじき手遅れだと思うよ?だって今頃死んでるんだもん♪」
突如聞こえた聞き覚えの無い声に、全員が飛び退り臨戦態勢を取る。久条運命を守るように立つ〝
「あははははは!すごいすごい!みんな思ったより反応はやい!でも声をかけるまで気づかなかったのはちょっとざんねんかも」
「女の子......?」
「操られてる訳...じゃない?」
「いやいや、そんなことよりすごい
ロンドの言葉を聞いてさらに警戒を強める〝
明らかな敵意を向けられているにも関わらず、少女はやはり無邪気に笑う。
「うん!だからね、『やみうつろ』っておにーさんはもう死んでるの!『かいおにーちゃん』が殺したから!あはははは!!!」
「......穏やかじゃないわね。けど残念、彼はシドウたちが認める最強の武人の1人。むしろ、その『かいおにーちゃん』とやらの方が返り討ちにあっているわ。おわかりかしら」
「そんなのわかんなーい。だってそのおにーさん、
「ハッタリだな。本当に弱っている人間は、複数の暴走天使を1人で討伐することなどできない。しかし彼はそれを成した。我々ですら不可能なことをだ。そんな人物が弱いことなどあり得ない」
「なに言ってるの?
もしその言葉が真実なら、本来の彼は一体どれだけの強者なのだろうか。もしかすると、比喩ではなく
もちろん、嘘の可能性もある。そもそも敵の言う言葉を真に受ける方が間違いだ。しかし、闇虚が普段から言っている言葉が信憑性を増してしまう。
―――今の俺って
「......どうしてそんなことを知っているの。そもそもあなたは何者?」
「あー!そうだ、すっかり忘れてた!わたしまだみんなに名乗ってなかったよね!」
カノンの問いに答える少女。しかしその正体を知った一同は、思いもよらない言葉に更なる衝撃を受けることになる。
「わたしは
何年か前の天帝「人類も面白いこと考えるじゃん!これを盗んで人類同士で殺し合わせたら楽しそう!」
現在の闇虚「ふざけんなクソが。ぶっ殺す」
第1章が終わったら幕間を書きたいな思ってます(未定)