50人目の『最弱の非公式騎士』   作:ジェネレータ

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お待たせしました。今回は一人称視点と三人称視点を混ぜてお送りします。


OPERATION 1-2 殺し合い。あるいは戦争

【天帝 リデル=フォン=エルスタニア】。

軌道修正の1人とされており、この神域の舞台となったエルスタニア帝国に関係していると思われる人物。直接の面識こそ無いが、エルスタニアの名を持ちながら軌道修正の側についている時点で、碌でもないクズであることは間違いないのだが、よりにもよってここまで人の地雷(トラウマ)を的確に踏み抜いてくるとは思わなかった。もしかして俺の記録が抜かれているのか?だとすればどの程度?或いは偶然か?いずれにせよ修(・)正(・)する必要がある。今はまだ正体がバレたり対策される訳にはいかない。切り札は知られていないほど強力になる。

 

「ちっ」

 

ギュンッッッ!!!という音を残して、世壊(せかい)が放った光線が闇虚の左頬を掠める。

闇虚は命中しそうなものだけ魔(・)力(・)を(・)纏(・)わ(・)せ(・)た(・)蛇(・)腹(・)剣(・)で(・)叩(・)き(・)切(・)り(・)、それ以外は無視して距離を取る。

既にこの付近に帝国民はいない。彼らは闇虚たちの戦闘にこそ気付かないが、流石にいきなり家が倒壊すれば避難する。もはやいつ警邏隊と鉢合わせてもおかしくないが、未だに見かけない辺り当分来ないだろう。

 

「オラオラどうしたァ!さっきの威勢はブラフですってかァ!?尚更オマエはカスじゃねェか!『最高傑作』だってんならご(・)自(・)慢(・)の(・)魔(・)眼(・)くらい使ってみろやァ!!!」

(簡単に言いやがって。アレは元々『本調子』の時しか使えねぇっての。しかも今(・)使(・)え(・)ば(・)ど(・)れ(・)だ(・)け(・)性(・)能(・)に(・)制(・)限(・)が(・)掛(・)か(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)か(・)判(・)ら(・)ね(・)ぇ(・))

 

もっとも、それ以前に脳(・)が(・)過(・)剰(・)演(・)算(・)処(・)理(・)で(・)即(・)座(・)に(・)イ(・)カ(・)れ(・)る(・)の(・)だ(・)が(・)。

 

「はぁ......ギャーギャー大声出してうるせぇよタコ。つーか煽り方が低レベルのガキなんだよ。テメェこそデカい口叩いたかと思えば、さっきからやってくるのはバカみてぇにレーザー撃つだけじゃねぇか。他に出来ることねぇのかよ単細胞」

「死ねゴラァ!!!」

「おーこわwもしかして図星?ねぇ図星?図星なの?www」

 

膨れ上がった殺意に任せて放たれた光線を防ぎながら、闇虚は確信する。

 

(やっぱり、あの光線は本質的には魔術で間違いない。でなければ魔力で防ぐことは出来ないし、なにより光線から魔力の残り香が洩れている。ただ気になるのは、あ(・)の(・)男(・)か(・)ら(・)は(・)一(・)切(・)魔(・)力(・)を(・)感(・)じ(・)な(・)い(・)ことだ。平時であれば隠すのも解るが、戦闘中まで隠すメリットはないはず。術式かあの男のどちらかを改造しているか、その両方だろうな)

 

「チョロチョロと逃げてんじゃねェぞクズガキがァ!!!」

 

こいつもそろそろ鬱陶しい。数擊入れて黙らせるか。

 

闇虚は光線が放たれる合間を狙い、刀(・)身(・)に(・)纏(・)わ(・)せ(・)て(・)い(・)た(・)魔(・)力(・)を(・)斬(・)撃(・)と(・)し(・)て(・)放(・)つ(・)。同時に【刹那】を使って一気に距離を詰め、右下から逆袈裟を放つ。

世壊は飛ばされた魔力の斬撃を回避するが、逆袈裟には反応できず胸に一直線の鮮血が奔る。

 

「チッ...クソがァ!!!」

 

その瞬間、開かれた世壊の口から熱波が撃ち出され、凄まじい衝撃と共に闇虚の全身が宙に弾かれる。

灼熱の気塊で焼け死んだ敵を眺め、冷静になった頭でため息を吐く世壊。

 

「......ま、確かにちったァ遊び過ぎた気はするな。単に殺すだけなら初手からこうしてりゃよかった。時間を無駄にしたな」

 

仕(・)事(・)も終わり、リデル(主)の許に帰るために踵を返そうとしたところで―――

 

「まったくだ。大体制服とパンツが灰になったらどうしてくれんだ。全裸で戦闘なんてみすぼらしい絵面なんざ御免だぞ」

 

―――殺したはずの少年が立っていた。

なんてことないかのような表情で、ガーデナーの制服についた火の粉を叩いて消している。

 

「あークソ暑ぃ。俺は暑いの嫌いなんだよ。二度とサウナ体験コースに招待すんじゃねぇ」

「......何故生きてやがる」

「訊く必要あるか?俺はテメェの言う偉大な『最高傑作』様だぞ。並みの人間なら見事にこんがりだっただろうが、生(・)憎(・)俺(・)の(・)肉(・)体(・)は(・)特(・)別(・)性(・)だ(・)か(・)ら(・)な(・)」

「答えになってねェよ」

「答えてやるつもりがねぇからな。

 これでもウチの騎士基準で考えれば最弱の雑魚になっちまった。俺にできることなんて騎士の人たちは誰でもできる」

 

世壊の言葉をはぐらかした闇虚は、少しの間を置いて首を鳴らしながら口を開く。

 

「さて、そろそろ反撃させてもらうぜ。せっかく手厚い歓迎をしてくれたんだ、応えてやるのが礼儀だろ?」

「ハッ、オマエに何ができるってんだ。ここまで防戦一方だった事実が、オマエのポンコツ具合を正しく表してんだろうが」

「事実と正解はイコールじゃねぇだろアホ。どんなバカでも同じミスを繰り返せば、学習の1つくらいする。お前の能力と熱波の逆算は終わった」

 

闇虚はショルダーホルスターから魔導呪具を引き抜く。

 

「チェックメイトだ」

「―――!!!」

 

闇虚が引き金を引くと、魔導呪具の銃口にあたる部分から赤(・)黒(・)い(・)光(・)線(・)が迸る。

それを間一髪で躱した世壊を、今度は灼(・)熱(・)の(・)熱(・)波(・)が襲う。

 

「ア゛アアアアアァァァァァァ!!!!!!」

 

自らの熱波を超える温度で全身を焼かれた世壊は絶叫する。

そんな世壊を冷たく眺めながら、闇虚は答え合わせをしていく。

 

「お前の光線の正体は、お(・)前(・)用(・)に(・)改(・)造(・)さ(・)れ(・)た(・)出(・)力(・)制(・)限(・)版(・)【(・)乙(・)女(・)の(・)祈(・)り(・)】(・)。大がかりな準備と儀式を必要とする秘術クラスの代物を個人用に調整したせいで全体的に弱体化してるから、劣化版と言ってもいいな。

【乙女の祈り】の概要くらいは知ってる。術式はお前の身体に直接仕込んでいるな?あれは術式を仕込んだ座標でしか発動できない。にも拘わらず、今まで散々移動したのにお前は術式を発動できている。ならお前と一緒に術式が移動しているとしか思えん。

次に発動の起点となる霊子媒体だが、そいつはお前が術式を発動させる度に噛み砕いてる結晶で代用しているんだろう。大方術式の改造内容の1つってところか。そして生贄となる人間はお前を造ったクソ計画で量産すれば解決できる。夏(・)休(・)み(・)の(・)自(・)由(・)研(・)究(・)だ(・)な(・)」

「ハァ...ハァ......ぶっ殺してやる」

「熱波に関しては言うことねぇな。ちまちま噛み砕いてる結晶は魔力の塊でもある。劣化版【乙女の祈り】の発動時に余った魔力で発動してるだけのただの魔術だ。魔術なんてのは魔力さえあれば誰でも使えるしな。付け加えるとすれば、1度の発動で消費する魔力量で温度の上限を変更できるってことくらいか。蓋を開けてみればこんなもんかよ、くだらねぇ」

 

流石神サマの考えることは違ぇな。そう皮肉を言う闇虚に、世壊はドス黒い憎悪の視線を向ける。

 

「ナメやがって......オマエに普通の殺し方はしねェ...徹底的に嬲って、大事なモン全部ぶっ壊して、目の前で仲間皆殺しにして、死ぬ理由も奪ってから殺してやる」

「間(・)に(・)合(・)っ(・)て(・)る(・)か(・)ら(・)諦(・)め(・)ろ(・)。出来もしねぇことばっかほざくんじゃねぇ雑魚。無力な分際でイキるからこうなるんだよ。廃棄処分だ」

 

そして1人、消え去った。

何も残らず。

何も残せず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――同時刻。

 

音信不通となった闇虚の捜索と救助、及び魔剣の破壊任務を受けた〝神を狩る剣閃(ブレイドライン)〟は現在、軌道修正【天帝 リデル=フォン=エルスタニア】が造り出した死界(しかい)と対峙していた。

 

「......!!」

「......は?」

 

その時、突(・)然(・)カ(・)ノ(・)ン(・)が(・)声(・)を(・)上(・)げ(・)る(・)こ(・)と(・)も(・)な(・)く(・)倒(・)れ(・)た(・)。

すぐ側にいたソナタでさえも呆然とし、何が起こったのか理解できない。やがてカノンの状態を理解したソナタが慌ててカノンを抱き起こす。

 

「カノン!カノン!しっかりしろカノン!!」

「......っはあ!はぁはぁ...お姉ちゃん...?」

「うそ......今、一体何が?」

 

ソナタに抱き起こされたことで、カノンが思い出したかのように浅い呼吸を繰り返す。虚ろだった目には光が戻り、自分の身に起こった出来事に困惑している。

 

「あはは!すごいすごーい!!おねーちゃんたち本当に死なないんだ!あははは!ま(・)ち(・)が(・)い(・)な(・)く(・)こ(・)ろ(・)し(・)た(・)の(・)に(・)!(・)あはははは!ぜったいに死んだはずなのに!あはっ♪︎」

 

死界(しかい)の言葉に戦慄する〝神を狩る剣閃(ブレイドライン)〟と運命。

殺した?いつ?どうやって?何かをする素振りは見えなかった。魔術や呪術の類いが発動する兆候も、他に仲間が隠れているような気配もしなかった。それなのに、突然カノンが死んだ。正体不明の何かで、殺された。

 

「それじゃあ次は、そこのおねーちゃんをころすね?」

「え?......!?」

「トロイさん!」

 

死界(しかい)はそう言ってトロイメライを指差すと、カノンの時と同じく突然トロイメライの身体から力が抜ける。倒れゆくトロイメライを、ブルーが駆け寄って抱き止める。

 

「トロイさん!?どうしたのトロイさん!お返事してよトロイさん!」

「まさか..また?」

「一体どうやって...」

 

またしても何らかの要因によって仲間が倒れる光景に、運命たちは戸惑いを隠せない。

運命たちが謎の攻撃手段について考察をする中、遂にトロイメライが生き返る。

 

「......っはあ!はぁはぁ......どうして?」

「あはははは!生き返った!すごい!なんで!?なんで生き返ったの!?ちゃんところしたはずなのに!しっかりころしたはずなのに!なんで!?あはははははははははは!!!」

 

幼いその容姿に似合わない狂気的な笑い声に、運命たちは恐怖心を抱く。

 

「......教えて。あなたはどうやって、私やトロイを殺したの?一体、何をしたの?」

「あはははははははは!いいよ!いいよ!教えてあげる!おもしろいもの見せてもらったから教えてあげる!!」

 

カノンの問いかけに対し、死界(しかい)はより一層狂喜的な笑みを浮かべながら答える。

 

「わたしの能力は、「目(・)を(・)合(・)わ(・)せ(・)た(・)相(・)手(・)を(・)即(・)死(・)さ(・)せ(・)る(・)魔(・)眼(・)」なの!あは、あははははははは!」




第0章の時は伏線の所に分かりやすく傍点を付けてましたが、1章からは試験的に傍点を付けずにしれっと書く箇所を徐々に増やそうと思います。

追記。
投稿前に思いつきで加筆している復帰後の筆者です。魔眼の設定ってなんだっけ?(読者に訊くな)
なお、加筆したのは最初のリデルについての説明とブレイドラインと死界のやり取りです。
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