『アサシン、初陣の時だ。準備せよ』
『何じゃ些か急じゃのう、ますたーよ。もう少し余裕を持たぬか』
戦闘が始まる前、いきなり念話を繋いできたことに軽口を叩くアサシンに対し、そのマスター『黒鳥』は無視して話を続ける。
『【煽動者】から恐らくマスターが近くにいると連絡を受けた。よって行け。貴様だけでなくキャスターもだ』
『ほう、きゃすたーもか。良いのか?あのばーさーかーはまだしもあーちゃー、らんさーではなく吾らを使うのか』
『黒鳥』の発言にアサシンは疑問を露わにする。
事実、バーサーカーの高すぎる狂化を無視すれば、まだ呼び出されておらず詳細が分からないライダーを除いて白の陣営最強であり、アーチャーとランサーも、特にアーチャーは規格外に及ばずとも普通の聖杯戦争なら優勝候補に上がる程の実力で、3騎ともアサシンなど意にも介さぬほどの強さを誇る。
また、『黒鳥』はサーヴァントに匹敵する実力者でありながらも病的なまでの慎重さがある。
そのためクラスまでも分からぬ情報が無い未知の敵に対して自分はともかく、あのサーヴァントとして使いづらすぎるキャスターまでもぶつけるとは考えられなかった。
『………もしやあの狂人からの指示か。』
『そうだ、貴様らはサーヴァントとそのマスター。【黒鳥】は共に行動しているマスター候補に成りかねんものを殺せと言われた』
アサシンの忌々しげな声に『黒鳥』は首肯する。
『煽動者』。セイバーとバーサーカーのマスターである男、アサシンの見立てでは何百年も生きた妄執の化け物、自分以外を食い物としか見なしておらず、恥を知らぬ者。これまで見た中でもそうそういない悪鬼畜生。
キャスターのマスターである『枢機卿』は人間で坊主でありながら自らを全能だと酔い、化け物すらも目を背ける程のどうしようもない愚者でもあるが、『煽動者』はそれを容易く超える。
だが、『煽動者』は生粋の煽動者であると同時に人の身を抜け出た超越者。奴の言葉には間違えは無かった。
『………良かろう、それではきゃすたーを連れ出るわ』
アサシンの言葉を聞き、『黒鳥』は何も言わずに念話を切った。
「ハァーーー。それじゃ行くか」
「どうしましたか◼️◼️さん、そんな疲れたような顔をして?」
自分のマスターとの念話が終わったアサシンの隣にいつの間にかキャスター、白のキャスターがちょこんと肩に顎を乗せながらくっついていた。
「きゃすたーか、気安く吾の名を呼ぶでないわ」
「いいじゃないですか。せっかく貴方のマスターさん以外に私にだけ真名を教えてくれたんだし」
「それは吾が酒を飲んでいった軽口だ。分かったら真名で呼ぶな」
後ろから意地悪だのケチだの声が聞こえる中、アサシンはいそいそと出かける準備をした。
魔術師であると同時に運転手でもあるアルフに2人を託し、車から降りたカミラとアサシンはそれぞれの武装を手にとって前に陣取る2人のサーヴァントと相対する。
「さて、出てきたか青のますたーとそのサーヴァントよ。挨拶は礼儀じゃからな。吾は白のあさしん、そこで蹲っておるのは白のきゃすたーじゃ」
「ドーモ、初めまして。白のアサシン=サン、白のキャスター=サン。カミラ=ソシアです」
余裕を持って挨拶をした白のアサシンに対し、カミラもまた日本で知った礼儀で返す。
「初めましてだな青のアサシン、キャスター。私は」
「あっ彼はアサシン、アナキンですわ」
「ちょっっっっと待てえぇぇぇぇぇい!!」
続いて、最低限の情報だけの自己紹介をしようとしたアサシンの前でカミラは全部ばらした。普通の聖杯大戦ではクラスがバレることは即ち味方陣営に多大な被害を被らせる戦犯行為に等しいのである。
「お嬢様!何故!ばらしたんですか!?」
「?わざわざクラスまで教えて貰ったのですから」
「だとしたら私のことをアーチャーといえばよかったでしょうに!それにアナキンは私の」
「ほう、あなきん。それがヌシの真名か青のあさしんよ」
「………へ?」
「とぼけてももう遅いわ。お互いますたーが底抜けの阿呆で運がないのう」
カミラの肩を掴んで揺らしながらアナキンは怒りを露わにしていたが、対する白のアサシンはどこか同情めいたところを見せながらも手に入れた情報に悦を示していた。
『………ふっ、どうですのこの真名を誤解させる私の頭脳プレイ』
『貴方のミスが功を奏しただけでしょうが!!』
念話でしてやったりと言うカミラにツッコむアナキン。しかし、偶然の産物とはいえ相手に誤情報を与えることができたのも事実。アナキンは自分のマスターが生み出した結果に対して喜ぶべきかそうでないかが分からなかった。
「じゃがそろそろじゃな、吾のますたーにも言われておることじゃ。殺し合おうではないか」
その言葉が流れ、場の空気が変質する。アサシンは何処からか骨状の太刀を出し、蹲っていたキャスターはいつの間にか立ち上がっていた。対してカミラは懐から小型のゴーレムを創り出し、アサシンは持っていたショットガンを構える。………そしてカラスが鳴き、
「シャッッッッ!!!」
「アアアアアァァァァァァァァアァァァァァ!!!!!」
アサシンが威声を上げカミラの側に瞬時に近づき太刀を振り落とす。その隙にキャスターは自身のスカートから蟲を出現させアナキンに攻撃する。それに対しカミラはゴーレムで防ぎにかかり、アナキンはショットガンを火炎放射器に変えキャスターの蟲に応戦する。
「はっ、そのような玩具では吾の太刀を止めることも壊すことも叶わんぞ」
「なら動けないことは」
「ほう」
ぶつかり砕けた瞬間、ゴーレムは液状となってアサシンの腕ごと太刀に纏わりつき動きを止めにかかる。
「何とさーゔぁんとに通じる神秘が宿っているとは驚いたぞ。だがな、さーゔぁんとがそれで封じれるとは考え方が甘いぞ」
「私ではございませんわ。貴方自身が封じるのです」
「…何?」
カミラの行動を嘲笑うアサシンはそのまま軽く脳天に振りかざそうとするが、腕が動かない。それだけでなく。
「貴様、吾の魔力をその土人形で奪っているな!」
「ええ、予め私の義兄上からサーヴァントについてレクチャーさせてもらいましたので」
『カミラちゃーん!そろそろ聖杯戦争に参加するならバーサーカーさんを連れて行かない?』
『義兄上!申し出は有り難いのですが既に貴方のバーサーカーさんに負けないかっこいいサーヴァントを呼ぶつもりですわ』
『えええぇぇぇー、そうなの。じゃあさ、そのサーヴァントの名前、教えて教えて。』
『ふっふーん、聞いて驚けですわ。私が呼ぶサーヴァントは』
「温いわ、こんなもの直ぐに流して…」
「アナキン!やってお仕舞いなさい!」
「御命令(オーダー)了解だ!お嬢様!」
怒りを露わにしながらアサシンはゴーレムを自らの腕から水を出現させながら洗い流そうとするが、キャスターの蟲を撃ち落としていた青のアサシン、アナキンがアサシンの後頭部にショットガンを構えていた。
(何故だ!?何故吾が気づかなかった?いやそもそも交戦していたあの糞坊主が何故みすみすあの行動を見逃しておる?)
キャスターの方を見ればアサシンを見失ったのか探している様子を見せていた。
「透明化する、それが貴様の宝具か!」
「不正解だ。脱落しろ!」
アナキンはそう言うとそのまま撃鉄を引きアサシンを吹き飛ばす。
「アアアアアアアアァァァァァァ!!!」
「くらえ必殺、即席カミラ殺虫剤!」
こちらを見つけたキャスターは新たに生み出した蟲を嗾けるが、カミラはそれを錬金術で生み出した殺虫剤を一度アナキンに渡して、それをまた返してから使い全て撃退する。
「アア?」
「じゃあな」
ただの魔術師に蟲が撃退されたのを見て理解できず硬直したキャスターにアナキンは小銃を眉間に貫いた。
「やりましたわアナキン!いきなり華麗に二騎も倒しましたわ大金賞ですわ!」
「………いや、まだだ」
「ふぇ?」
あんまりにもあっさりと倒したアサシン、キャスターを見てカミラは大喜びだったが、アナキンはマシンガンを構え直す。アナキンの読みは当たり、へし曲げられたガードレールからアサシンが起き上がってきた。
「化け物かお前は、後頭部にショットガンを当てたんだぞ」
「あれは効いたわあさしんよ。鉛玉(あれ)が眉間に入ってたら一撃死だったぞ、痛くて今にも変化が解けそうだ」
「変化?、…………それでは貴方は!」
「吾の正体を有料で見せてやる。そのツケは貴様ら2人の影で勘弁してやろう」
そう言うと青のアサシンの身体は変質していく。頭には2本の角が生え、身体は大きな蜘蛛になり、顔は牛と鬼が合成されたような表情を浮かべる。その姿はまるで。
「冥土の土産に吾の真名を聞かせてやろう。吾の名は牛鬼。この日の本に潜む大化生だ」
白のアサシン、牛鬼は地面のコンクリートを砕きながらそのまま近づいてくる。キャスターもまた、いつのまにやら何事もなかったかの様に起き上がり、今度は黒い炎に包まれた蟲を生成させながら迫ってくる。
「わぁぁぁーーー!!タンマタンマ落ち着きなさってくださいまし牛鬼さんに白のキャスターさん!私達の影が食べたいのでしょう!お腹空いていらっしゃるなら私のクッキーとチョコあげますのでどうかここはお互い引き分けにしませんか?それにほらあなた方は2騎、こちらは1騎と1人なので大健闘したのでどうでしょう!?」
「鉛玉を喰らわしておいて見逃せだと。ふざけたことを言うでないわ!そもそも吾は洋物は好きでないわ!」
「ギャァァァァァァァァァァァァ!!!お助けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ふざけてないで逃げるぞお嬢様!とりあえず山に駆け込め!」
聖杯大戦初戦は一気にただの一方的な逃走劇に変わり、カミラの悲鳴が満天の夜空に響き渡った。
「zzz………」
「すみませぬ御友人方、ですがお嬢様の命令です」
車内に眠らされた凌駕と花音を鏡で見ながらアルフはそう謝罪する。カミラとアナキンが戦いに出向ける時、二人は止めにかかったが。
『ごめんなさいお二人とも………くらえ必殺、カミラ睡眠スプレーverねんねんコロリやバタンキュー!』
『『あああぁぁぁぁぁぁぁ!!』』
「じきにランサー様が来てくださいますのでどうか安心してくださいませ」
カミラの気遣いによって10分前に行われた惨劇に対し、謝罪と安心させるようにアルフは言う。
「うぉぉぉぉぉぉーーー!カミラァァァァァァ!いきなり何すんだ!」
「おわぁぁぁぁぁーーー!」
普通は30分は目を覚まさないカミラの特性催眠スプレーを自力で起きた凌駕に驚いたアルフはハンドルを間違いかけた。
「りょ、凌駕様何故直ぐに目が覚めたのですか!?」
「何って、え、あれってそんな名前の通り激ヤバ物品なの?」
恐る恐る聞くアルフに対し、凌駕はキョトンとしながらそう答える。
「アルフさん、カミラは」
「………お嬢様は戦いに赴きました。ですがバーサーカー様が援軍としてくるので安心してください」
「だけど」
「それにお嬢様は毎回なんだかんだ切り抜ける悪運と生き汚なさがあると思いますが」
「ねぇそれって褒めてるの貶してるの?」
アルフの発言を受け、凌駕は一応仲がいい友達なのでツッコんだ。しかし、自分はカミラの魔術師としての姿は見たことがない。なのでもしかしたらと思うと。
「凌駕様」
「何?」
「くらえ必殺、カミラ睡眠スプレーverこれで貴方は眠らないと!(ちゃんとお約束に則ってくださいましとの書き置き)」
「アアアアアアアア!」
アルフがそう言いながらボタンを押すと車内から催眠ガスが溢れ、哀れ凌駕はまた眠らされた。
「申し訳ございません凌駕様、ですがご安心を。お嬢様はきっと高笑いしながら帰って来ますので」
「そうか、だがあの娘らが生きていても貴様らはどうかな」
外から聞こえる声、アルフはハンドルを握りながら使い魔を上空に放つ。そこには星の光が届かない黒い空だった。いや、数百、数千を超えるカラスが行列して遮るように飛んでいた。
「カラスの使い魔、だとしてもあそこまで………!まさか『黒鳥』か!?まさかⅦ階梯の死徒が参加者だと!」
死徒、吸血鬼。赤き月の姫君から創られしモノたち。ある世界と比べて星に対する毒素は少ないがそれでも人類史とは相反する存在。吸血鬼には九つの位階がありⅠ〜Ⅲは死者、Ⅳ〜Ⅴは夜属、Ⅵ〜Ⅸが死徒となっている。その中でもⅦの位階は上級死徒であり、Ⅷの二十七祖の“後継者”、最上階Ⅸ、死徒二十七祖の特殊な階梯を除けば独力で上がれる最上階である。
しかし『黒鳥』は自分の親である死徒を殺して、更に詳細は不明だが、Ⅷと同等以上の実力を持っており噂によれば“埋葬機関”から一度逃げ切ったこともあるらしい。
「説明は終わりか?なら死ね」
言った瞬間、カラスの群れが車に襲いかかった。アルフは周りに三重の水の幕を纏い、そこから電流発生させたが。
「ぬるい。そんな電撃では死徒には効かん」
だが、カラスの群れはそれに怯むことはなく突撃してきた。幸い、特注の金属製であるのと水の幕で衝撃は殺されていたため、一回目の襲撃は凸凹になるくらいで済んだ。
「何!何の音!ってかカミラちゃんは!?起きてリョーガ!」
「グッがはっ!な、何だ今のは!」
衝撃によって目を覚ました二人。アルフの前を見ると何とかハンドルを操縦しているが、先程の衝撃と魔力消費により顔が青ざめていた。
「すみませんお二人ともリラックスさせることが出来なくて」
「そんなことよりもアルフさんその顔は」
「お二人ともよくお聞きください」
アルフに近づこうとする二人に対し静止する。
「この車体はもう直ぐで壊れます。なので私が声を上げたら直ぐに車から飛び降りて逃げてください」
「アルフは」
「私はもう少しだけ、大丈夫です。カラスを使役するだけの魔術師なんて苦戦しませんよ」
嘘だ。そんな顔で、苦しげに言ったって。
二人が信じていない表情を浮かべていたのを察したアルフはそのまま笑顔で、ドアを開いて崖に落とした。
「〜〜!〜〜〜〜〜!!」
「すみませんこのような手荒な真似をしてしまって」
そして、一匹のカラスが車に突き刺さり、爆発した。
「グウゥゥゥウウウ!」
「成程、咄嗟に風と水で構成された防護壁を作って爆発を遮ったのか」
一命は取り留めたが、全身は所々やけどと引っかき傷があり、動くことすらおぼつかない。カラスの群れはそのまま過ぎ去ろうとする。
「待ちなさい」
「貴様に用はない」
「尚更止めます」
「その恐怖に満ちた様子でか、笑わせる」
『黒鳥』に指摘される様に、カラスの群れを見つめるアルフの目は恐怖に満ちていた。
「…………確かに私は貴方に対して恐怖を抱いている。だからどうしました?お嬢様からの命を守れない。その御友人を自らの命惜しさに逃げ出す。舐めないでいただきたい。そんな使用人はソシア家に使えていません」
「成程、その忠義あっぱれ也」
向きを変えたカラスの群れはそのまま暫くアルフの上空を旋回すると、そのまま突撃する瞬間、
大地が、空気が震えた。それと同時に超抜級の魔力の放出が近く出来るほどに下から感じる。
「なっ何ですか今のは!?」
「ふむ、ヤツの言う通りマスターだったか」
「あぁ、いた、いよぉ」
「もう少し離れたら休憩するからそこまで頑張って」
アルフに突き落とされたが、何かの呪文をかけられていたのか二人とも地面にぶつかった衝撃はなかった。しかし、ガードレールの先から落とされた時、木の枝に引っかかれたのか花音の足は自分で歩けない程傷を負っていた。凌駕は自分の上着で止血しようとしたがカラスの声が聞こえたため、花音を背に乗せて歩きながら逃げていた。
ガードレールの下は深い森になっていて幸いスマホの地図で道筋が分かることが出来たので、このまま歩き続ければ市内に入ることが出来る。所々で休憩しなが二人は目指していっている。あと少しで森を抜けられるところで、
“ウォォォーーーーーン!!!”
耳をつんざくような獣の咆哮とともにキメラと呼ばれていた合成獣たちが2人の周りを囲んでいった。彼らがここに来ることは知って待ち伏せしていたようだ。それに続いて中心から馬のキメラに乗っている銀色の甲冑を纏った白のセイバーが降りてくる。
「あ…………あ…」
「喜ぶと良い異教徒どもよ。貴様らの血肉によって千年王国は誕生するのでな」
下卑た笑いを浮かべながらそう言うと腰に差した長剣を抜きとってわざわざ見せびらかすように頭高く振り落とそうとする。逃げようにも周りはキメラに囲まれている。
「た、助けてよリョーガ…」
背中で花音が長剣を見つめて声を恐怖で震わせながら凌駕に助けを呼ぶがこっちも恐怖で思考が半分止まっている。頭が正常に働かない。そのまま長剣が自分達に向かって、
「ガァァァァァァァァアアアアアア!!!!!」
「は?」
突如右手を掴んだと思うと獣じみた咆哮を上げたのに驚き、セイバーはそのまま驚き動きを止めてしまった。そして気付く。目の前の異教徒の右手に一本の樹を形取っている赤い線があることに。
「令呪だと!?させるか!」
令呪。聖杯大戦に参加しサーヴァントを使役できるマスターの証。目の前の異教徒に呼ばれる前に斬らればならない。勢いよく斬り殺そうとするが天開凌駕の右手から光が放たれ始め、
「令呪によって呼び出された。私はセイバーのサーヴァント」
3人を巻き込むように光が天高く放出し、無くなった後に切先が少し曲がった細身の片刄刀、シャムシールでセイバーの剣を容易く受け止めるターバンを巻いた褐色の男がいた。
「セイ、バー?」
「いきょう、と、異教徒異教徒異教徒異教徒ぉぉぉぉ!!!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえぇぇぇ!!!!」
「………貴様、匂うな。あの強盗崩れと同じ腐れ外道の匂いが」
目の前に現れた褐色の男に固まる二人に対し、騎士のセイバーは我を忘れたように無茶苦茶に長剣を振り回すが、目の前のターバンの男の手に持つ片刄刀が淡く光ると次の瞬間には長剣どころか騎士のセイバーの腕ごと切り落とした。
「ググギャアアアアアア!!!!!こいつらを喰らい尽くせ!」
「来い、雷鷲(アジュル)」
痛みに悲鳴を上げながら騎士は周りのキメラに三人を襲うよう命じたが、動く前にターバンの男は短く何かを呟く。すると一匹の雷鷲が雷鳴を轟かせながら騎士とキメラに突っ込んで行く。
「がぁ!ふざけた真似を!」
「私に捕まってくれマスターに背の女の子。アジュルが足止めしてるから今なら逃げれる」
「マスターって俺が?」
「今の状況を見るに突然呼び出されたみたいだな、落ち着ける場所でまた話し合おう」
そう言うとターバンの男は二人を両脇に挟むと、一般車並みの速度でこの場を離れていった。後ろから怒声が響くが追いかけて来る気配はなかった。
「貴公らとお茶を飲み合うのも久々だな。コーバックにデジテリウス」
「えぇ、最近といっても一年前ですがゼリア・アッフェンバウムの騎士と蛇の件で教会内でバタついてて会える時間がなかったからですね」
『まぁ私としてはいつでもスマホかケータイか受話器があれば話せるからそこまで気にしてないけどね』
「そういえばいつの間に機種変したんですか」
『いつまでもケータイのままでは時代遅れだと分かったからね』
夜が遅い中、この世界のどこでもない空間で久々の旧友に会ったかの様に呑気に喋っている三人、いや、二人と一つ。一人は高齢だが、何処か太い大木の感じがして思わず威圧されてしまうような老人。二人目は気が弱そうな優男である。最後の一つは黒いスマホであり、そこから陽気な男性の声が聞こえてくる。
『そういえば私はゼルレッチに呼ばれたけど、何の話をするんだい』
「僕も聖杯大戦の監督役として来たついでに呼ばれたのですが」
「おお、そいつはな」
「私から説明させてもらおう」
二人を呼び出した理由を話そうとするゼルレッチを遮ったのは古い貴族の様な装飾をしている男であった。顔は色白く目は閉じている。男は優雅に礼をした。
「初めまして、この世界の第十三位デジテリウス殿。私の名はズェピア・エルトナム・アトラシア。以後お見知り置きを」
「初めまして、ズェピア殿。席を取ってきますね」
「いえ、それには及びませぬ。私の話しはそれほど長くはないので」
ズェピアの座る席を取ってこようとしたデジテリウスに対し、軽く拒否し、少し間を置いて話を始めた。
「話しと言ってもデジテリウス殿。貴方にお願いがあるのです」
「何かな?簡単のだと良いですけど」
「聖杯大戦に置いて青の陣営、それもセイバーのマスターを前面支援していただきたい。」
「……………ちょっとそれは難しいですね」
聖杯戦争のマスターと監督役との癒着、またはそれを逸脱する行為。それは聖堂教会の信頼を著しく損なう行為であり、実際にトゥリファスで行われたシロウ神父の事件により魔術教会と一時期ギクシャクしていることがあった。
「それは世界が崩壊するかしないかより優先するべきで?」
「……………詳しく聞いても宜しいでしょうか」
「この聖杯大戦には『隠者』と『黒鳥』、そして聖堂教会の司教、グラニダが手を組んでいます」
「『隠者』に『黒鳥』!それにグラニダだって!何で!?『隠者』と司教が手を結んでいるの」
ズェピアからの口から溢れでた名前にデジテリウスは驚愕を隠しきれなかった。
『隠者』死徒二十七祖第十位。新参者でありながら第三位と並んで聖堂教会から最重要危険死徒と認識されており、死徒二十七祖の中でも信者でありながら他の信徒を喰らい、自分から死徒になった裏切り者であるため、第三位『詩人』よりも狙われている。
グラニダ。ヴァチカン市国で枢機卿をしているが、他宗教に酷く偏見を持ち、カトリックや聖堂教会内でも横暴な態度を隠さないため、人望が限りなく薄い。また、噂でしかないが自分の私兵に異教徒を攫わせては自分の手で殺害しているとの噂もあった。
「何で?幾らグラニダでも教会から厳しい目を向けられている死徒と手を組むなんて」
「デジテリウス、重要なのは此奴ら三人が阿呆な真似をしようとしている事だ」
『そーそー、暑くなっちゃうのはいけないぜ』
「………すみません少し落ち着きました。話しを聞いても良いでしょうか」
冷静さを取り戻し、デジテリウスは話しを聞こうとする。
それに応え、ズェピアは死徒二十七祖二人と魔法使い一人を呼ぶほどの理由について説明を始めた。
「まず私が幾つか観測した聖杯大戦(演劇)の主催者である彼らの目的は………」
『成程、今から私そっちに出向いて直々にぶっ殺しに行っても良いかな?』
「駄目ですって、そんなことしたらアルクェイドに真っ先に殺されますよ!」
『でも仕方ないじゃないか。信仰的にアウトもいいところじゃないか。コロコロしないといけないじゃないか』
「成程、貴公の行う観測は興味深いな」
話しを終えた後の三者の反応はそれぞれだった。コーバックは殺意を漲らせ、デジテリウスはテンパり、ゼルレッチは感心していた。
『うん、これなら私が呼ばれた理由も分かる。ナビゲートをすれば良いのかい』
「その通りですがコーバック殿、貴方には聖杯大戦で我々以外の死徒二十七祖が介入しない様にしていただきたい。ゼルレッチ殿には時計塔で決して暴走しない魔術師の派遣を」
『オーケー』
「うむ、良いだろう」
「デジテリウス殿、これでも監督役をすると」
「………分かりました。一応他の子たちやメレム…はダメだった。局長に法王庁、最悪教皇猊下にも話しをしてから接触します」
ズェピアの催促にデジテリウスは首肯した。この計画が為されたのなら第六魔法を待たずして世界の均衡が崩れる。
「それでは儂は時計塔に戻ってこういうのに打ってつけな連中を寄越してくる」
『じゃあ私はズェピアと一緒に他の二十七祖が来ないようナビゲートするよ』
「あっコーバック、スマホ貸してもらっても良い?みんなに電話するから」
「そうか。済まないが先に己(オレ)と話しをさせてもらえんか」
それぞれは準備を始め、動き出そうとした時、ナニカがいる。三人が目を動かすが姿は見えない。
『どうしたんだい、全員返事をしてくれ!?』
「これは……、隠遁か?デジテリウス!」
「今聞いてるよ!モリエ分かる?」
[無理!いるのかどうかすら分かんない!何この変態的な魔術を使うの!]
「誰だ。これ程までの技力を持つ魔術師は」
魔法使い、「千年錠」、「代行者」、劇作家。それぞれ神霊に匹敵するほどの力を持つ者たちが皆混乱していた。魔術の痕跡も見つけられない。いる筈だがいない。知覚できない。気配も、匂いも、感覚すらも麻痺しているかのような錯覚をしていた。
「成程。貴殿ら死徒とは神々の残滓に匹敵するか」
「神々、となると儂と同じ神代の魔術師か」
「お初にお目にかかる」
死徒二十七祖、魔法使いを超える魔術師。口から放たれた神々の残滓。自分の知らない、前の神代の魔術師。未だピースが足りずゼルレッチは真名が特定出来ない。それと同時に薄い白い霧が舞い上がり、中からスーツを身につけた褐色肌の男が現れた。耳は尖り、瞳孔は翠玉色に輝き、顔は狼のように引き締まっている。
「己は青のキャスター、貴殿らに問わせて貰う。己のような者が呼ばれた理由、知っているか」
次回「妖と人間の遊戯」
「皆さんこんにちはもしくはこんばんは!」
「今回もカミラとー」
「花音のー」
「「なぜなに?サーヴァント!はっじまーるよー!」」
「カミラ先生!今回は名前の出た牛鬼さんの事を解説するのですか?」
「いいえ、牛鬼さんは白のキャスター、◼️◼️◼️◼️・◼️◼️◼️◼️と一緒に解説するのでまた今度ですわ。今回は前回出てきた白のセイバーについて解説しますわ」
「白のセイバー、あの人目がキマってて凄く怖かったよ」
「マジですか。それじゃステータス、ドン!」
白の陣営
セイバー
真名 ◼️◼️◼️◼️◼️・◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️
属性 混沌、狂 人
好きなもの 神への祈り
嫌いなもの 異教徒
ステータス
筋力:B
耐久:C
敏捷:C
魔力:E
幸運:D
宝具:C
保有スキル
対魔力:D
騎乗:D
固有スキル
カリスマ:E
精神汚染:A
略奪:A
信仰の加護:A+++
宝具
???
ランク:C
種別:対軍宝具
「………何と言うかその………」
「………スキル名が………the悪役なロクでもないスキルが高くてまともなのが低いのが…その……酷すぎますわ………」
「属性が………狂って……なにアレ」
「えーーーと、文字通り狂ってるとしか言えませんわ」
「あの、スキルについて」
「一つずついきますわ。
まずカリスマ。これは軍団を率いる才能でBもあれば一国を治める君主という証なのですが、Eランクという事で率いれるには率いれるけどセイバーと同じ狂信キメてるのしか率いれず、シラフの方は無理ですわ。
次に精神汚染、これは文字通りイカれてる度を表していて精神が錯乱している為、ほかの精神干渉系魔術を遮断できますが、同ランクの精神汚染を有していない人物とは意思疎通が成立しないというデメリットが酷いスキルですわ。
3番目の略奪は文字通り略奪の上手さを表していてAあれば戦闘中に相手サーヴァントから少量とはいえ自己回復(魔力):B程の魔力を少しずつ奪う事が可能でまあ、名前を無視すれば燃費の良さを誇る良いスキルなんじゃないんですか?」
「さ、最後のやつすっごいランクが高いよ」
「最後の信仰の加護は一つの宗教に殉じた者のみが持つスキルで加護とはいっても最高存在からの恩恵ではなく、自己の信心から生まれる精神・肉体の絶対性を誇りますわ」
「おお!凄い!」
「なおランクが高すぎると人格に異変をきたしますわ、精神汚染と合わせて中身が最悪ですわ」
「最悪じゃん」
「えーとそれじゃ最後に宝具について簡単な補足を…‥………………………………………………………………………………」
「カ、カミラ先生?どうしたの天を仰いじゃって。ちょっと見せ…………………………………………………………………」
「えーーーーーーーーーーーーーーーと詳しくは言えませんが大迷惑宝具です。少なくとも私はこの人とは本編で関わりたくありませんわ」
「ひ、酷い。何ていうんだろう酷いと迷惑しか出てこない」
「取り敢えずこのサーヴァントの強みは精神が強い、他は酷いか迷惑に限る以上!それではまた次回!」
「まったねー!」