隠れんぼ中
「何処だ小娘とそのあさしん!隠れてないで出てこい!」
「アナキン、今外に出たらカレーか虎の先生の所に送り込まれますわ。最悪別のカレー先生がいる正気度がどんどん減る因習村に送り込まれる危険性がありますわ。そのまま地面の中に潜んでやり過ごしましょう」
「落ち着けお嬢様。貴女テンパリ過ぎてなんか変なところにジャックされてるぞ」
山中の森の中で牛鬼が吠えながら暴れる中、カミラ達は錬金術で作った即席シェルターに上からアナキン、シモ・ヘイヘの宝具『白い死神』(ベーラヤ・スメルチ)を一つ作ってその上に被せ、周囲の環境に変えてから逃げ込み、魔力切れで撤退することを画策していた。
「それにしてもとんでもないのを隠していたな。お嬢、牛鬼について詳しいことは」
「私も詳しいことは知らないですが」
牛鬼。それは西日本を主な出現場所とする妖怪で水辺があるところを縄張りとしその付近を歩く人間を襲っている。
他にも毒の息を吹く、祟って病気にする、濡れ女や磯女と共に出てきたり、実際に神様として祀られている場合もある。何より今重要なのが。
「多分、今の牛鬼さんのステータスでは私たちは太刀打ちできませんわ」
変化を解いた牛鬼は山の森を砕き、切り、捻り、推し流しながら行進している。白のキャスターもまた黒い炎に包まれた蟲で森を焼き払ってる。このままでは魔力切れよりも破壊活動の余波で消し炭にされる。
「アナキン、あの二人のマスターの所在はどう?」
「分かりません、先ほど見渡したとき人の気配が感じられなかった」
自分たちでは正攻法で勝てない、ならばマスターを探し出して人質にする作戦にしたが肝心のマスターが見つからない。サーヴァントが現界するには魔力が必要だが、特殊なのを除いて普通は自分で生み出せず、マスターが近くにいないと碌に宝具の発動や行動が出来ない。マスターが居なくても魔力の消費を抑える単独行動というスキルがあるが、あれも大抵はアーチャー専用なので普通のサーヴァントは持っていない。
「だとすれば遠くパスを繋げられるのか、はたまた隠すのが上手なのか」
「だとしたら作戦を変えます。逃げるか、助けを待つか、勝つか」
人質作戦は無理、なら他のでいく。最初は無理、瞬殺される。二つ目は間に合うかどうか分からない。なら。
「アナキン、覚悟はよろしくて」
「生前はアカ相手にコールド勝ちしたんだ。生き延びますよ」
両者は視線を交わし合い、そして作業を始めた。
「ええい、あの分からんくなる宝具のせいで足取りが掴めん。おい糞坊主聞こえているか!?」
「アアア」
牛鬼の呼び声に意図的に無視しているのかキャスターは森を焼き討ちする。
「チッ、きゃすたーを遠くから操って自分は引きこもっている癖に返事すらしやしない。まあいい、吾が湿らすからそのまま焼いてろ」
そういうと牛鬼は森に向かって自分の身体から水を出現させ振りかける。しかし木は折れずそのまま湿ったままになった。
「ア?」
「そのまま火をかけろ、奴らを燻製にする」
牛鬼の言葉を受け、キャスターいや枢機卿、グラナダは森を焼く。水によって湿った木々は全てそのまま燃えず、熱を持った煙をそこらじゅうに出てくる。
「おえっ、ゲホっは、いきなり何しますの!?美少女の嗚咽なんて誰得ですの!?」
「出てきおったな。さあそのまま燻製になるかボロボロになるかはっきりせよ」
煙が肺に入り、慌てて出てきたカミラにそう言いながら今度は高密度の水塊をぶつける。
「アンギャーーー!!助けてアナキーーーン!!」
隠れんぼは一転して鬼ごっこに変わり、美少女が出すには汚すぎる声が出てきた。
「こっちは終わった!、今行きますよ!」
水塊に向けてアナキンはグレネードを投げ込み、霧散させる。だが隙を突くかのようにグラナダは炎蟲を嗾ける。自分の危機に気づいたアナキンはすかさず避けようとするが。
「今度は見逃さん」
牛鬼の蜘蛛のような爪先から更に倍の水塊を作りだし、無防備なアナキンに叩きつけた。
「あさしんであれば死んだな。さてどうする小娘。頼みの綱のさーゔぁんとは死んだぞ」
「こうするまでですわ!」
二の句を告げずにまた3体の小型ゴーレムを牛鬼に突撃させる。それを嘲笑いながら砕いていくが慢心から2人に変化を解かされた直前なのと準備が終わったと言い残していた事から何か残していないかもう一度アナキンが倒れた場所を横目で見るが。
「はあ!?」
「悪いな牛鬼、私は生前からしぶといぞ」
「よそ見厳禁ですわ♪」
「邪魔をするなぁ!」
致命傷になる筈だった一撃を軽傷で切り抜け、こちらにランチャーを構えていた。すかさず斜線上から抜け出そうとするが更にその隙を突いて生き残っていたゴーレムに足を掴まれ、砕く時間も与えずにそのまま吹き飛ばされてしまった。残ったグラナダは炎蟲を再度生み出してアナキンに嗾けるが。
「くらえ必殺、カミラくしゃみ玉!………お嬢様、毎回これを言わなければならないのですか?」
「当たり前ですわ!これは日本の伝統、必殺技はちゃんと言う。様式美ですわ」
バズーカに込められたくしゃみ玉をぶつけられたグラナダは絶叫を上げながらのたうち回った後、憑き物が落ちたのか急に起き上がった。しばらく周りを見渡すと吹き飛ばされている牛鬼のところに駆け寄って行った。
「牛鬼さん大丈夫!?ここはどこであの子達は誰!?」
「………貴様ら何をした。あの糞坊主の術を解くとは」
「ふっふーん、簡単ですわ。マスターがいない、そして貴方達の先程の会話。よってキャスターさんのマスターはなんらかの方法で自分のサーヴァントとの共通点を重ねて一体化する感染魔術によって一定量の魔力問題を解決していた。ならば後はこっちが解くか、相手が解けばいいだけですわ」
(にしてもあっちのキャスターさんのアレが素なら、あのどヤバい蟲使いなのに感性が普通過ぎますわ。無辜の怪物でも持っていらっしゃるのかしら)
感染魔術、又の名を類感魔術。文化人類学者のジェームズ・ブレイザーが定義した魔術の一つ。似ているものはお互いに影響し合うというもの。グラナダはあれを魔改造して自分のサーヴァントを遠隔操作していたが。
「しかしそんなこと何故お嬢が出来たので?」
「簡単です。サーヴァントとの一体化なんて危険過ぎるし成功したとしても繊細すぎる。また魔力も問題無しに出来るまで一体化できるということはフィードバックもまた酷い。見る感じそこまで上手ではなかったのでちょっと突っつくだけで壊せますわ」
牛鬼の疑問にスラスラと答える。言うは易し、しかしそんな高度な技術は普通の魔術師は兎も角ベテランでも出来ない。それを可能にしたのは。
『カミラちゃん、ちょっとさバーサーカーさんと感染魔術で一体化してみたけどどう?ちゃんと出来た?』
『懇願されたから試しにやってみたが、まさか成功してしまうとは』
『凄いですわ!!どうやったのですか!?』
『簡単だよ。といってもサーヴァントの令呪から共通項を見出してやったからそれ無しだともう少し難しくなるね。後あっちでキャスターさんの宝具を受けたことも大きいかな』
『ずるいですわ、羨ましいですわ。………そう言えばサーヴァントとの一体化って外部から解けれるかしら』
『うーん教授に聞けば何かしら教えて貰えるんじゃないかな?』
『感染魔術を解く方法だと、簡単だ共通する物を取り除けばいい。………ファ◯ク!!何だとサーヴァントとマスターの感染魔術を解くだと!!出来るわけが無いだろう!!出来るとしたらあのバカぐらい………あのバカだな!!そもそもメリットが少しの間魔力問題を解決できる以外無くサーヴァントと一体化するデメリットが大きすぎる!!そこまで臆病かつサーヴァントに対する信頼が低いマスターなどいるか!!何でそんな無駄なことを聞きにくる!?』
『義兄上がバーサーカーさんと少しだけ一体化出来るからそれを解いてみたいと思って』
『やっぱりか!!あのバカのバカなことに対抗してバカなことをやろうとする!?』
『だってあれとこの前家族も連れて一緒に旅行した際、義兄上がゴーレムと一体化した魔術を簡単を解いたところを見て少しやってみたくて』
『ゴーレムとサーヴァントは話が違うではないか!!』
『仕方ないのです。旅行先のカジノでヴァンおじ様の中級ゴーレムの一体化を解いたのを見て魔術師ならやってみたいと思いませんか!私何て初歩中の初歩の十分の一人前ゴーレムしかできなかったのに』
『この才能に飽かせたバカどもがよぉぉぉ!!!』
『アバーーーー!!!せ、先生アイアンクローをおやめになってくださいまし!』
『うるせぇ!!!あの時の僕にもこんな力があったらなぁぁぁ!!!』
「我が恩師、グレートビッグベン⭐︎ロンドンスター先生と義兄上の教えの元ですわ」
「その回想の中で答えは出ていなかったような」
アナキンがただ一つ分かったことはお嬢とその義兄上はとんでもない馬鹿と天才は紙一重を行く方々で教授と呼ばれる方は常識人で胃薬を常備していることだけだった。
(どうする。蟲が消え去り、正気に戻ったきゃすたーは戦闘の役に立たん。かといって退いたらますたーとあの糞坊主の小言がうるさい。あさしんの宝具は分かった。おそらく宝具は二つ、一つ目の何処にいるか分からんのは対策できる。二つ目はおそらく手に持つ武器を自由自在に宝具へと変えるのだろう。あの小娘の泥が吾に通じたのもそうだったら理由が着く。吾を殺せる手段があるのは確実)
目の前のすっとこどっこいお嬢様とそのサーヴァントのコントとは逆に牛鬼は自らの不利を悟る。正気を取り戻したキャスターは牛鬼の後ろに隠れており、すっかり怯え切った様子を見せている。魔力は微力だが自前で回復するスキルを持っているから消える心配はない。対するカミラはアナキンに牽制させつつ何やら懐から何かを取り出し、泥人形を混ぜ合わせている。
実際、牛鬼の推察は正しくアサシン、アナキンことシモ・ヘイヘの宝具は2種類あり、一つは迷彩型宝具『白い死神』。もう一つは対人・対軍型宝具『殺戮の丘』(キラー・ヒル)。自分の宝具を銃火器限定で変えられる事が可能で更にこのサーヴァントが手にした物は短時間だけだが銃火器以外にも神秘を宿す事が可能である。
「やるか、きゃすたーよ」
「う、うんどうしたの牛鬼?」
「下がれ、死ぬぞ」
淡々といっているが付き合いが少しあるキャスターには分かった。アレを使う気だ。
「無事でいてね」
「言われんでもないわ」
「アナキン、宝具が来ますわ準備を」
「怪物化(あれ)がそうだったら良かったんですがね」
牛鬼が前に歩き出し、カミラとアナキンが迎撃の構えを取る。
「伝承を、伝説を、吾はこの日の本に潜む妖魔なり『ぎゅ』」
『止まれアサシン』
詠唱を始めた牛鬼に空を飛んでいたカラスが人の言葉で止めた。それと同時にカミラ達の行動も止まる。ただそこにいるだけで生物としての格が違うことを実感させられたのだ。
「なんだ、帰ってきおったかますたー。そっちはどうだ」
「『煽動者』からの仕事は終わった。青のセイバーを確認。これで後は青のキャスターとアーチャー、ライダー以外の出現情報は分かった。撤退だ」
「此処で潰さなくても良いのか」
「?唯の有象無相にか」
「っ!」
牛鬼の問いに対して心底興味が無いように言うカラスに対し屈辱に震える2人。しかし使い魔越しに見える存在感に反抗することすら出来ない。
「それではな、お互い会うことが無いことを精々祈っておれ」
「えーとあーと、また会う時に今度はキッシュを作っておきますね」
「阿呆、何処に殺し合った相手に料理を振る舞う奴がおる」
カラスが声も無く姿を消すとサーヴァントもそれぞれ消えていった。数秒の静寂の後、緊張が途切れたのかカミラは腰を落としてしまった。
「まーさか牛鬼さんのマスターが推定死徒だとは、殺されちゃうんじゃないかと思いましたわ」
「それよりもお嬢様。青に」
「ええセイバーが来ましたわ。早速早いうちに友好的な接触をしないと、その前に三人が無事なのか確認しないと」
動き出そうとしたカミラにスマホの着信音が響いた。開いてみると自分達と同じ陣営のサーヴァント、バーサーカーからだった。
「もしもし司教様。如何なさったので?」
『おお無事だったか二人とも、こっちは君が言ってた執事君とお友達二人保護出来たぞ』
「マジですか!安心しましたわ!」
『あと朗報だが青の陣営でセイバーのサーヴァントと繋がりが取れたぞ、どっか出掛けていたキャスターから連絡がきて迎えに行くから待っときなさい』
「はーい!」
バーサーカーとの連絡が終わり、戦闘の余波で生成された切り株に腰を押しつかせた。
「にしてもお嬢。あの子らが無事なのもそうですがセイバーと接触出来たのは良い事だな」
「本当ラッキーですわ。あとアナキン私戦闘で魔力すっからかんですので寝ますわ。お爺様が来たら起こさないように運んでいってくださいね」
そう言うと地面の上で手足を広げすぐさま寝入ってしまった。それを見たはアナキンはため息をつくと自分の上着を掛け布団がわりに被せた。
「取り敢えずここまで離れれば問題ないかな」
稲葉山から抜け出した3人。ターバンの男はそう呟いたが両脇に抱えられている二人は走っている最中のGと突風を受け続けてグロッキー状態になっており、辛うじて腕を動かしているだけだった。しばらく休憩して調子を取り戻した二人から質問が飛んできた。
「取り敢えず助けてくれてありがとう。俺は天開凌駕でこっちが天宮花音。えーとあなたの名前を教えてもらってもいいか?」
「リョーガにカノンかよろしく頼む。私は青のセイバー、ーーーーーだ」
「ん?」
「ええっと、よく聞き取れなかったんですが」
二人からの自己紹介を経て、ターバンの男はセイバーと名乗り、その後何かを口走った。しかし、出てきたのはテレビなどのノイズ音に似た音だった。
「…………?…………!。そうか、あのエセ詩人の死徒になんかつけられて英霊になってもまだ残っているのか」
「しと?」
「ああマスター達が気にする必要はない。これは私の生前の話で終わっているからね。私のことはセイバーと呼んでくれ」
自分の名前が言えない事に気付き、怪訝な表情で暫く中を睨んだあと、何かに得心したのか直ぐに次の話に移っていった。
「まずリョーガ、君が私のマスターで大丈夫かな。一応右手の甲を見てくれ」
「うわっ、なんだこれ!」
ターバンの男、セイバーに促され手の甲を見た凌駕は赤い三本の線で描かれた樹のような紋章が浮かんでいたことに驚いた。
「それってカミラちゃんが言っていた令呪?」
「そうそのサーヴァントを使役できる令呪。それによって君と私はお互い魔力パスが繋がれていることが分かる」
「俺魔術師じゃないから魔力ない筈なんだが」
「私も魔術回路はあったんだがそこら辺はファーディやイスファぐらいしか詳しくないしな。取り敢えず君が私のマスターであると分かってくれればある程度は問題ないよ」
魔術回路。マジックサーキットとも。魔術師が持つ擬似神経で、生命力から魔力への変換、大魔術式への接続などを担う。魔術回路を持たない人間は魔術師になれず、魔術回路の数が多いほど優秀な魔術師であるとされる。
魔術回路が一本でもなければサーヴァントを現界させ続ける程の魔力を貯めることは出来ないが出自が一般人である天開凌駕には魔術回路が有るはずがないのである。よってキャスターでもないのにそのことに悩むのは後にした。
「取り敢えずマスター達の言ってた友人もマスターなのかい?」
「そうだよ。私たちを助ける為に殿になって、アルフさんも無事かな?」
「そうか、無事かどうかちょっと確認するよ」
「本当か!?どうやってするんだ?」
「簡単さ、もう一仕事頼むよアジュル!」
花音の発言に暫く間を置いた後、セイバーはもう一度アジュルと呼ぶ雷を纏う大鷲を顕現させる。方角を教えてもらい飛ばしてから数分、アジュルからの連絡が来たらしい。どうやらカミラの仲間に救出されているらしく屋敷に搬送されているとのこと。
「良かった〜無事で」
「本当にね。お礼に何持っていけばいいのかな」
「それなら羊羹などは如何かな?アルフ君確かニホンに来た際に羊羹が好物になったと聞いてな」
「じゃあ一回カミラの家に行ってから買いに行くか」
「そうした方が良いじゃろう」
「………………………えーと、取り敢えずお爺さん貴方は誰だ、てかサーヴァントじゃないか!」
自然に会話に混ざっていた謎のサーヴァントに対し凌駕と花音を抱えて後方に跳ぶ。謎のサーヴァントは白い法衣を見に纏い、背中には白い大剣と槍を背負っている珍妙な姿をしていた。
「あいや待たれい推定セイバー殿!儂はカミラちゃんの仲間だから貴殿と敵対する必要はないぞ」
「えっ本当!」
「本当本当、少女よどうやら足を怪我しているようだな。儂に治させてくれぬか」
「待て。…………貴方は私と同じ陣営、『青』のサーヴァントか」
「然り、クラスはバーサーカー。取り敢えずその子の傷を治させてくれ。真名は皆がいるところで話そう」
安全な場所で二人を下ろし片刄刀を構えてセイバーは警戒していたが、バーサーカーが手を上に上げ敵対心がないことを示すと鞘に収めた。後から二人が知った事だがバーサーカーのスキルに洗礼詠唱がありそれによって治療を行なったようだ。
そこからはバーサーカーを先頭にしながらカミラ邸にまで歩いて行った。歩きなのは上空で旋回しているアジュルから離れすぎないようにするためともしも車の中で誰か一人でも人質に取られないようにするというセイバーからの提案だった。途中、歩いている最中にバーサーカーが懐からスマホを取り出してカミラと電話をしていた。話が終わったのかスマホの電源を落とし、二人は無事だと無事だと教えた。
「バーサーカーさん、貴方やアスキンの他にもサーヴァントはいるんですか?」
「他にはランサーとキャスターがおるよ。ランサーとキャスターもどっちも顔は怖いが性格はそこまで怖くないから安心すると良い」
途中で会話などしながら歩く内に屋敷が見えて来た。千鶴市内から5キロ離れた郊外に置かれており、大きさに比べて周りの風景と一体化している。近づいて行くと先に着いていたカミラが全速力でこっちに走って来た。
「お二人とも無事だったのですね!」
「足を少し怪我したけどバーサーカーさんに治してもらったから平気だよ」
「それよりアルフさんはどうなんだ?」
「アルフなら今魔術回路を使い過ぎてオーバーヒートを引き起こして病室で寝ていますわ。命に別状が無いのが奇跡なほど酷かったのです。ところで初めましてセイバーさん、セイバーさんのマスターは今どこにいらっしゃいますの?」
「隣のリョーガだ」
「俺がマスターらしい。令呪もほら」
「……………………ウッソでしょう!?マジですか!?」
カミラがセイバーのマスターとコンタクトを取るため聞くが凌駕がマスターだと知って仰天するなどの騒ぎが止んで、屋敷で起きている他のマスターに挨拶することになった。
「カミラちゃん、他のマスターって私たちも知ってる人たちなの?」
「花音ちゃんたちには会わせないようにしていたからお互い初対面ですわね」
「大丈夫かな。魔術の使えない半端者とか言われないかな」
「それよりもジェイコブ翁は笑顔で鍛え上げてやると言いそうですわ」
そうこうしている内に応接室にたどり着きカミラがドアを叩いてから中に入る。中で待っていたのは三人の男女であり、一方は黒色の服を着た老人で年齢は60を超えているように見えるが老いを感じさせなほど大樹のような感じであった。隣で腕を組み壁に佇むのは黒色の髪をして暗く感じるような壮年の男性の一組。最後の一人は柔和な顔と所作をしている女性であった。バーサーカーが中に入っていくと女性は声をかけた。
「おかえりなさいバーサーカー。後ろの子達は?」
「ただいまマスター。この人がセイバーで男の子の方がマスターだね」
「初めまして、天開凌駕と言います」
「天音花音です」
「此方こそ、俺はジェイコブ・マキシトフ。後ろのランサーのマスターだ」
「私はマリア・ルージュ。バーサーカーのマスターだから宜しくね」
「えっと、すみませんがキャスターのマスターさんは?」
「あの子はちょっとね」
応接室にいるマスターと挨拶を交わした後、ここにいないキャスターのマスターについて聞くがマリアは困ったように目を逸らす。すると先程凌駕達が入ってきたドアからノックの音が鳴り、そこから褐色の男が入ってきた。
「すまん、寝かしつけるのに時間が掛かってしまった。件のマスターとそのサーヴァントは」
「キャスターさんこちらですわ」
キャスターと呼ばれた男に見られて花音は平然としていたが凌駕は思わず体が震えてしまった。自分のサーヴァントも含めてこの場にいるサーヴァント全員とは何処か異質に感じる雰囲気を感じ取った。
「初めましてだな、己はキャスター。真名は明かせられん」
「初めまして、セイバーのマスターで天開凌駕と言います。隣は天宮花音」
「初めまして」
「………初めまして」
「どうしたんだセイバー?」
「いや大丈夫だ。セイバー殿の反応が正しい」
挨拶を交わし合う四人だがセイバーの反応が少しおかしく、凌駕が声をかけるがキャスターはそれを止める。反応が正しいとは?その疑問には無口でいたランサーが直ぐに答えた。
「キャスターは言動ともに違和感なく感じるが本人が言うには人間ではない」
「人間じゃ、ない?」
「ランサーが話す通り生前人間の義妹がいた事はあるが、己本人は神の血が混じった鬼でしかない」
「えっ!?でも角ついてない、いやついてませんよ?」
「この地にかつていた、いや今も細々と潜んでいるのとは違って角が付いてない種だ。後かしこまった言い方をしなくても気にしないぞ」
「まあセイバーよ、儂も初手でぶん殴っちゃったが快く許してくれたから他の魔性共とは違って良い奴じゃよ」
「まさか初手で殴りかかってくるのがアホの弟弟子以外にもいたとは驚いたな」
「………取り敢えず危なくないですよね」
「安心しろセイバー、妻と師と義妹、そしてマスターに誓って青に仇なすことをしないと誓おう」
キャスターの真摯な宣言を聞き、安心した表情をセイバーがした。暫くお互いの状況を話し、夜も遅いためお開きにする事になったが、部屋を出る前にバーサーカーから呼び止まれた。
「そういや儂の真名を話してなかったな。儂はシャルルマーニュ十二勇士の1人、テュルパン。これから宜しく頼むぞ」
「テュルパン?」
「シャルルマーニュってカール大帝の別名だっけ?十二勇士は聞いたことある」
「うむ、陛下のことや他の勇士(子)達の事を聞きたいならいつでも儂のとこに来なさい」
バーサーカーがそう話し終えると奥で物音がした。奥を見ると壁に身を任せていたランサーが頭を掻きながら何かを言おうとした。
「………バーサーカーは言ったがお互い信頼できないため俺は未だ話せん」
「ランサー口が足りんぞ」
「あー、何と言うか今この場で会ったため未だ善かどうか知らんから今は言えん」
「大丈夫ですランサーさん。後そうだこの中で呪いについて詳しい人は居ますか?」
「己とバーサーカーが幾らか出来るがどうした。一応貴殿とセイバー殿はどこもおかしくはないが」
そう言いながら申し訳なさそうに言葉を紡ぐランサーの後に思い出したかの様に凌駕は全体に声を掛ける。
「えーとセイバーがなんか誰か自分の名前が思い出せないらしい」
「そうなのか」
「ああ、ーーーーー。どうだ聞き取れたか?」
セイバーは自分の真名を答えるが、やはり周りにはノイズが走った音にしか聞こえなかった。
「なるほど取り敢えず己とバーサーカーで調べるが、遅いし我らサーヴァントが現界しているとお互いのマスターの魔力を食うため明日来い」
「有り難い、礼を言わしてくれキャスター」
「それではカノンちゃんにリョーガさん、お部屋まで案内させてもらいますわ」
こうして唯の一般人だった2人の長い夜がやっと終わった。
次回「ゼロから始まるマスター生活」
「画面の前のみんな!準備は良い?」
「カミラとー」
「花音のー」
「ア、アナキンの〜」
「「「なぜなに?サーヴァント!はっじまーるよー!」」」
「今日はマスターにサーヴァントといっぱい出て来たね。そしてアナキンさんの本当の名前がシモ・ヘイヘだったなんて」
「本編で呼ばれているアナキンは生前渾名のひとつで一番有名なやつはワンチャンバレるからお嬢様から真名隠しの一つとして呼ばれているんだ。まあ自分は何でか知らないけどここでは凄く有名になってるな。有名になるとしたら曹長や中尉に元帥閣下の方だと思うんだが」
「あの人達もあの人達で有名ですがあなたもまあおかしいことやってますからね。じゃあ早速真・ステータスをご開帳ですわ」
青のアサシン
真名 シモ・ヘイヘ
属性 秩序、中庸、人
好きなもの 狩り
嫌いなもの アカ
ステータス
筋力:D
耐久:C
敏捷:C
魔力:E
幸運:A+
宝具:C+
保有スキル
気配遮断:A
固有スキル
単独行動:A
情報抹消(痕跡):A
スオミの狙撃手:B
コッラからの生還:A+
宝具
白い死神(ベーラヤ・スメルチ)
ランク:B
種別:迷彩宝具
常に発動している宝具で、形が服の宝具で周辺の環境に合わせて変化し、サーヴァント判定から免れることができる。精度はプリテンダークラスと同じくらい。戦闘時中でも、常に気配遮断:Bを発揮する。戦闘してなかったら更にA+に上げる。この宝具が発動している最中は周りと同化し、一才の魔力感知や監視カメラに引っかからない。普段はこれで一般人と見せかけている。この宝具は魔力を多少使うが何枚でも
殺戮の丘(キラーヒル)
ランク:C+
種別:対軍宝具
小銃はライフルを宝具として生み出す。だが、この宝具の真価は自分の主観で手に持った武器類に神秘を付与させることができる事。
「おお〜、分からなかった宝具名と詳細が書かれている」
「それではアナキン、せっかくだからゲストのあなたに宝具の解説をお願いしますわ」
「了解しましたお嬢様。
ではまず『白い死神』はありがちな透明化して分からなくするのではなく周りに同化して分からなくします。流石に万能ではないのですが、スキルの情報抹消(痕跡)も合わせると魔術師や同じサーヴァントからも目を離したら本家アサシンと同じ気配遮断になりますから本編のように、タッグ戦や混戦に潜入捜査にも使える中々使い勝手が良いです。
次に『殺戮の丘』はコレもまた中々使い勝手が良くて本編に見せたように小銃、火炎放射器、ランチャーなど場所によって変えれますしお嬢様のゴーレムもサーヴァントに届くぐらいまでには強化できますしね」
「隠しスキルのあの2種は何なの?」
「まずスオミの狙撃手は相手に気付かれていない時に攻撃体勢に移っても気配遮断のランクが下がらなくなります。これで先ほど話した2つのコンボで本編の牛鬼とキャスター戦で不意打ちを何度も決めることができました。
そしてコッラからの生還はかなり特殊で相手からの致命傷を軽傷に軽減できる宝具並みに強いです」
「強いじゃん!それもしかして死なないの」
「いいえカノン、傷は負ってしまいますわ。あの時牛鬼さんがある事に気づいていたら私達はヤバかったですわ」
「ええお嬢様の言う通り、あの時にもし森を焼かれたりしたらそのまま火の中で燃やされたり、水の中に閉じ込められたら抜け出せなかったりと弱点自体はあります。
総括すると普通の聖杯戦争では生前の通り狙撃兵としてサーヴァントかマスターの暗殺。今回では多対多で不意打ちを決めたりとコソコソ立ち回るのが基本ですね」
「それにしてもアナキン有りとはいえカミラちゃんもサーヴァントと戦えるの」
「「いえ全く」」
「ありゃ?あんだけ優位に立ってたのに?」
「カノン貴方サーヴァントを舐めすぎですわ!私たちが生き残れたのはお相手が油断しまくってたのとこっちが初見殺しを惜しみなく使っていたからですわ」
「後普通に宝具使われたらこっちが火力なくて死ぬ」
「………もしかしてかなり不味い状況だったの」
「はい」
「バカ!!バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ!!バカ!!!」
「あ、あいや確かに馬鹿なことをしたという自覚はありますが……」
「私は何もできないけどね!自分のせいで友達が死にそうになるなんて、私も凌駕も嫌だからやめてよね!次やったら友達やめるからね!」
「分かりましたわ次から危険なことからは逃げるように行動しますわ!!」
「本当?」
「約束しますわギアスロールでも何でも使いますわ!」
「そ、そこまでしなくてもいいよ!でも良かった。これでカミラちゃん死ななくてすんだよ」
(まあ言うことではないが、聖杯戦争でマスター狙いは基本だからどうしても安全ではないけどな)
「まあ初めてのゲスト回もすんだことですしそれではまた次回!」
「まったねー!」