「でだ、らんさーに坊主よ貴様らはあーちゃーのますたーについてどう思う?ちなみに吾としては誰かに殺されたとしてもまあ残当だったと思うが」
「かなり横暴だったんで我慢出来ず遂に謀殺されて後ろから射抜かれたかって思いましたよ」
「アーチャー自身は生前にオレが聞いてた父親殺した噂があったんだが、会ってみたら意外と良いやつだったんだがなあ、マスター殺しはせんだろう。まあそれはそれとしてマスター死んでもそこまで気にせんだろ彼奴は。まあ正直オレとしてはあん時お前が半殺しにしてたから遂に殺ったのかと思ったんだが」
「ええ、一応人が死んでるのにその反応はなくない?」
殺害現場に向かう途中、キャスターは自分以外が死者への手向けはなく、出てくる内容が遂にやられたかという反応しかしないため軽く引いていた。
アーチャーのマスター、ダニエル・シュミットは魔術師らしい魔術師であった、それだけである。だからこそ死んでも誰も悲しまない、キャスターでさえ自分と牛鬼のことをただの使い魔以下のヘドロのような劣情を隠さない目を向けられていたため死んだと言われた時は流石に笑うことは無くても悲しむ感情は湧かなかった。
「よう、どこ行くんだテメェ等」
「その様子という事はやっぱりヌシが殺したのか、あーちゃーよ」
駆け足で急ぐキャスターと牛鬼、ランサー主従にお気楽そうに話しかけた丸いキャップ状の帽子を被った男、アーチャーが姿を現す。牛鬼からの指摘に欠伸を掻きながら答える。
「おらぁ殺してねえぜ、謀殺される事を言わんかっただけで手を出しちゃいない」
「ほとんどその犯人の共犯的な感じではないか」
「違うね、余りにもバレバレな陰謀に気付けなかったアイツが悪い。いや本当にあのバカがわざわざ分かりやすくしてたのに何で何も考えずに引っかかるんだろうな?」
「単純に脳が足りなかったのではないんですか?腕前も三流どころでしかなかったし」
自分のマスターが死んだことに悲しみや怒りが湧くどころか、本人的には何であんな杜撰に分かりやすく殺してますよアピールしていたのに何むざむざ死んでんだという困惑しかしていなかった。
「とにかくテメェ等も襲撃の準備をしておきな。三日後辺りに大きな戦争が起こるぞ」
「セイバーのマスターが言っていたのかアーチャー」
「おうよ。あのバカはバカだが決してアホじゃないからな。ちゃんと俺らを使い潰して勝つ目算はある程度できてるぞ」
「前から思っていたが随分と見知った感じがしますね、生前に会ったことでもあるんですか?」
アーチャーがセイバーのマスター、『扇動者』に対して知ったように話す事が多いため、他の白のメンバーはいつも疑問符を思い浮かべていた。
「生前って訳じゃねえが、まあちょいと昔に縁があっただけのハナシさ」
「ええい毎回毎回やけに格好付けて煙に撒きたがるなるしいめ、分かった。取り敢えずヌシの正体がそれなら戦は任せる」
「おうともさ。任せとき、自慢じゃないが進むときと退くときを見誤った事は一度もないんでね」
「結局自慢じゃないですか」
何はともあれそこまで言うとアーチャーはまた鼻歌混じりに向こうへ行った。
「にしても三日後に青の陣営に攻め込むって嘘でしょう。未だ本拠地も特定出来ていないのに」
「分からんな、あのぼっちのバーサーカーが見つけたのか?」
「何にせよ、準備するに越した事はないだろう、戻るぞきゃすたー」
「あっ待っ「そこに居たかアサシン!!」」
キャスターと共に部屋に戻ろうとしたアサシンに真正面から司祭服を着た男が立ち塞がった。
「何だ禿げ、貴様に関わっている暇はない。疾くと去れ」
「貴様に話しかけてはいない!そこで飯炊き女になり下がっているのに話がある!」
最初にアサシンに怒鳴ったのにそれをすぐに忘れているのか顔に怒りを浮かべながらアサシンではなくキャスターに詰め寄ろうとする。
「ガバァ!」
「アサシンよ、『黒鳥』の手を煩わせるな」
「これは吾が悪いのかますたー」
「ああ悪い、このようなデブに見つかる貴様が悪い」
そうしてキャスターのマスター、グラニダ・カミュエルの首を絞めて持ち上げていた手を離して後方に放り投げる。息を取り戻した『黒鳥』を睨みつけたグラニダは足音を立てながら勢い良く向こうへ行った。
「『黒鳥』さんありがとうございます」
「お疲れ様です」
「Fよ、貴様この屋敷の執事なら客人とはいえそれ相応の事をするべきではないのか」
「客であるますたーがそれを言うのか……」
厄介者の司教を去らせてから『黒鳥』は廊下にあったソファーに腰を下ろす。ランサーのマスターF。またの名をファウンであり、神崎家を切り盛りするたった一人の執事である。Fはどっかから持ち出した紅茶と緑茶を作り振る舞う。
「あのふざけた霧を何とかできるかもしれない物を知り合いから手に入れた」
「本当かますたー、まさか怪しいところを攻撃すればいいという訳じゃないだろうな」
「物と言っただろう、神霊を超えるサーヴァントを呼び出せる触媒を手に入れた」
そう言ってから紅茶を飲み干し、一同に持ってきた触媒を見せる。それは煌びやかな花のような円形の装飾をしたカーペットみたいな物であった。普通の雑貨屋にあるような物でどこも朽ち果ててる様な部分はない筈だが込められている魔力は凄まじく、そのままサーヴァントにも通じる程である。
「呼び出すのはライダー、かつて神話の時代に世界を制した王を呼び出す」
「これは、凄まじいな。もしかしたらバーサーカーすらも超えるやもしれん」
「………その王とやらはあの霧を何とかできる逸話を持っているのか」
「無い。だが格だけならば敢えて言おう、この聖杯大戦だけでなく全ての聖杯戦争、話に聞くイギリスの大乱の金のアーチャーや赤のキャスター、神霊であったルーラーですら足元にも及ばないだろう」
そう『黒鳥』は断言する。触媒を懐に戻し立ち上がる。
「『黒鳥』はこれから『扇動者』の元に行ってこれを預けに行く。貴様等は何があっても良いように準備しておけ」
そう言い残すと『黒鳥』はそのまま歩き去っていく。残った四人はそれぞれ自分たちの部屋に戻っていく事になった。
「ますたーも行ったし吾らも部屋に戻る。茶、美味かったぞ」
「二人とも後で作ったご飯持っていきますよー」
牛鬼とキャスターもそう言って戻っていき、残ったのはランサーとFだけであった。
「我らも戻りましょうかマスター。“姫様”には会いに行かないので?」
「まあーーーーーーーーーうん、頼れる騎士がいるから平気だろう。点滴だけはしておかないとな」
そう言って“姫様”の元へ向かう前にFとランサーは機材を取りに奥へと走って行った。
「やっべえ事聞いちまったぜ。全聖杯戦争最高の格のサーヴァント呼び寄せるって?コイツはとんでもない土産話を手に入れたぜ」
街から離れ、稲葉山の深い霧の森の中の大きな洋館。それも地下深くでの出来事を近くした令呪持ちのサーヴァントは頬を綻ばせる。耳元に付けたイヤホンを取り外しながら稲葉山の森を足に気をつけながら静かに抜け出る。
「コイツと後はライダーのクラス、まだ言いたかないが真名を言えば信用してもらえるかな。所でそこのアーチャー、何でお前いるの?」
「いや逆にこっちとしてはどうやってテメエは此処を知ってその情報を得られたんだよ?」
そう言いながら算段を立てるライダーは森の中を進んでいくが、途中で止まり、背中に背負っていた斧と盾を構えながら誰もいない霧の中で声をかける。そうすると困ったような表情をしながら頭を掻いている白のアーチャーが現れた。
「いや正直さ、アサシンのマスターって結構俺らサーヴァントでも場合によっちゃボッコボコにできる程の実力なんよ。それの使い魔を一時盗む所かこっちの情報全部抜きされる事ができるってどゆこと?」
「バーカそれを正直に言う馬鹿が何処にいるっつー話だ。逆にお前どうやってあそこから此処まで来た?」
「誰が喋るかばーかこれでもくらってな!」
会話の最中にそう言い放つとアーチャーは小弓を出現させライダーに矢を放つ。
「オイオイオイ会話の最中に矢ブッパしてくるサーヴァントなんて聞いたことないぞ!」
「ハッ!テメエも斧ぶん投げる目をしておいてよくいうわ」
「思っただけで不意打ち仕掛けてくるオメエよりはまだマシだろうよ!」
不意打ちで放たれた矢を盾で防ぎながら何処からともなく馬を出現させるとアーチャーに向かって斧を振りかざす。すんでのところで躱すアーチャーはこちらもライダーから距離を取って赤黒い馬を出して乗る。そのまま騎乗戦にもつれ込む。アーチャーの矢を盾や斧で切り払いそのまま突っ込んで切り掛かる。対するアーチャーもライダーからの斬撃を馬を巧みに操って避けていく。両者の闘いは一進一退だったが、徐々にアーチャーの馬にライダーの馬がついて行けなくなっている。
「どうした?ライダーの癖して馬の扱いがそんなに高くねえな」
「クソが!こちとら海の男なんだよ!」
(それにこのクソ野郎俺が逃げる場所を無くしやがったな)
何とか馬には矢に当たらないようにはしているがそれでもかすり傷などは戦闘が長引く度に増えていく。逃げようにもアーチャーがそれをさせない。無理に抜けようとしてもアーチャーの弓で一撃死するだろう。更には。
「おいオメエアーチャーの癖して何一丁前に陣地作成してんだ!?絶対その矢普通はその威力してねえだろ!」
「テメエもどんだけ盾を隠し持ってんだ!?後厳密には陣地作成じゃないんだけどな」
アーチャーの矢は余りにも強く、一撃一撃が並の宝具に匹敵する威力を誇っており、防ぐためにライダーの盾を何枚も消費せざるを得なかった。また戦闘が始まってから気付いたが、明らかに此処の地脈がアーチャーに味方していた。
通常の手段ではどう足掻いてもジリ貧である。そしてライダーは何度目か分からない突撃をする。慌てずアーチャーはライダーに矢を放とうとするが。
「歩け、走れ、壊せ、開拓せよ我らが国を」
「ア、テメエ宝具を!?させるか!」
突撃する筈がライダーは斧ではなく盾を構えて宝具の詠唱を唱えているのを見たアーチャーは焦り、矢を放つと同時に馬を走らせ腰に刺した剣をライダーに向ける。
「『渡り踏破す新天地』(ヴァンダル・キングダム)!!あばよアーチャー次は殺す!」
剣を振り下ろすよりも速く宝具を発動させたライダーは左の肩と盾で矢を受け止め、アーチャーの剣を斧で防ぐとそのまま消えてなくなった。
「クソが!だからあの野郎此処まで来れたり中を調べられたりできたのか!」
みすみすライダーを逃したアーチャーは悔しさに震えるがそれもそのはず、『渡り踏破す新天地』。アーチャーの知識が間違っていなければ何としてでも討ち取らなければならないトップサーヴァントであった。
「しゃあねえ、とっとと全員に伝えてさっさとこっちのライダーを呼び出して青を叩きのめすしかねえ」
一旦落ち着いたアーチャーはそのまま戦闘の余波で血のような汗をかいている愛馬を走らせると元来た道に戻って行った。
「つー訳で青のライダー遅くなったが参戦させてもらう!!」
「貴様よく今になってそういう事がほざけたな」
「ランサー、少しでも怪しいところがあったらすぐ斬れ」
悪魔の人体実験地味た特訓から2日後、普通の特訓の休憩中にカミラと花音と一緒にキャスターに頼まれてシャンティの子守りがてら茶色ネズミと青いネコのアニメを見ていたところアルフからライダーと名乗るサーヴァントがやってきたと報告しに来た。急いで談話室に駆け込んだところ、シャンティ以外のマスターとサーヴァントが揃っており、向こうには褐色肌の男性がいた。首筋にはランサーの槍がいつでも斬れるように添えてあった。しかしライダーは肝が冷えないどころか更に自身の舌が回っていく。
「まあ待て、それには深い訳があってな、白の陣営の情報を集めていたからなんだよ」
「おうじゃあその情報と真名全部吐け、嘘ついてたら許さんぞ」
ジェイコブに急かされて白の本拠地で得た情報を全て話す。一句一句聞くたびに他の全員がキャスターの所を見る。キャスターは霧を出しながら何かを見ている。
「一応霊視で見たが、全部合ってるな」
「おおそれじゃあ」
「待ってくださいまし、理由があったとはいえこっちに来なかったのも事実ですわ。真名を私達に明かしてください」
キャスターの裏取りも済んだが、一応青の陣営の盟主を務めているカミラが信用の証としてライダーに真名を掲示することを要求する。
「お嬢様の言う通りだ。本当にこっちに着くならお前の真名を吐け」
「それでは自己紹介するか」
そう言ってライダーは飢えた餓狼のような褐色の顔と翡翠色の目を輝かせながら明かす。
「俺の名はガイセリック。此度の戦争、よろしく頼む」
今此処にライダー、ガイセリックは青の陣営のサーヴァントの一員となった。
「この気配は、やっぱり昨日から感じてたけどあの子もいるんだねえ。そう思えば久しぶりに会うなあ」
その日の夜、成層圏にまでに届く上空で、金色に輝く存在は馬の嗎とともにそう感慨深く呟いた。
「カミラちゃん!何か今回私とリョーガのセリフが本編になかったよ!」
「俺一応主人公なんだけどさあ!一回ぐらいはセリフあっても良くない!?」
「落ち着いてくださいお二人とも、ここのオマケコーナーではしゃべくり倒してもいいことになっていますから安心してくださいまし」
「ええー、でも、本編じゃないし」
「もっぱら解説するのはカミラで俺達は聞き手だし…」
「まあまあ、今回も世界観解説についてやりますわ」
「今回は何なの?」
「ズバリ私の家系、ソシア家と神崎家についてですわ」
「おい待てい!!」
「何ですの?一応今回の聖杯大戦で主軸となりますわ」
「いやさ、分かるよ大切だって!でも私たちがさっきまでセリフ云々言っていたのに自分の事話すなんてちょっとさあ!」
「そんな事言ったら私だって今回一言しか喋ってないですわ!」
「一言と零言はちげぇんだよ!」
ギャーギャーワーワーキノキノウロブチ!!
「………ハアッ、ハアッ。ごめん言い過ぎた」
「こ、こちらこそですわ。そ、それじゃあ、先ずはソシア家について解説しますから今書いた黒板を見てくださいまし」
ソシア家 魔術属性は「土」、魔術特性「統合」
西暦20年頃に魔導元帥、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが指揮した赤い月の討伐と同時に並行したソラの神秘の喧嘩に参加した後、スオミ、現在のフィンランドでエンハウンス・ソシアが創設する。
二百年後、当時親交のあったエルメロイ家に誘われて時計塔の一員となるが、程なくしてとある事件により後のロードになるある一族と戦争。叩きのめした後に時計塔から離脱してフィンランドに帰郷したがエルメロイ家とは親交は続いている。
カミラよりも5代前の当主がもう一度時計塔に合流する。当時のエルメロイ家の君主の見届け人になるなど関係を強めており、先代君主、ケイネスの魔術刻印の破損の際も修復の為に動く、次期当主のカミラをエルメロイ教室に入学させるなど密接になっている。
神崎家 不明
西暦1564年に外国船から乗ってきた魔術師の一族が現地のある魔術師の里に入ってから創設。名前は不明。現地の権力者や魔術師の一族と懇意になる、もしくは吸収するなどして巨大化。現在では政治には関わっていないが名士としての立場にある。時計塔はおろか螺旋館にも詳細を知られていない。龍脈を奪おうとした魔術師は数多くいるが、手段は不明だがどれも例外なく魔術回路を全て抜き取られているため、「抜糸の一族」として恐れられている。当主は神崎加奈でその他は不明。
「おい何だよ赤い月とソラの神秘って」
「赤い月とはまあ簡単にいえば月からやってきた侵略者ですわ」
「「………ちょっとジャンルが違くない???」」
「これが仕様ですわ。ソラの神秘は大分骨幹の設定になってくるので今は何も言えませんわ」
「えーと、じゃあ神崎さん家の事だけど何で当主の子の名前だけ分かってるの?カミラちゃん達がもらった手紙には名前が何もなかった筈だけど」
「それはですわね、まずデジテリウスさんっていう方覚えてます?」
「ああ、確か一ヶ月ほど前にどっか行ってしまった聖職者の人だっけ」
「その方がどっか行く前に一度挨拶に行った時ポロッと言ってましたわ」
「ん?神崎家ってのはあまり知られていないんだよな?何で知っているんだ?楽屋裏みたいなここの空間だから言えるけど人間?じゃなくて死徒?だからか?」
「聖堂教会と死徒はお互い相容れぬ間柄だから無理ですわ……………ここだけの話、そのデジテリウスさんは人間ではないのは確かなんですが、もう一つ異名というのがありまして」
「え、なになにどういう事?」
「『神を造った男』、『全知の男』というのですわ」
「ハア?神様を造った?後者はともかく前者はアホくさ、てかそもそも一神教でそれやったら殺されるだろ」
「大半の方達は勿論そう思っているのですが、どうやらケイネスさん達が言うには本当らしくて」
「ケイネスって、元君主の偉い人?」
「そうですわ元君主のかつて教授を教えていた謂わば大師匠ですわ。その人が言うには時計塔と聖堂教会にはデジテリウスさんがかつて神を作り出したという文献があるという話ですわ」
「文献?ちょっとだけ怪しいけど、教会にもあるならそうなのかな」
「そうだな、まあそれはそれとしてだなカミラ」
「何です」
「何で何もない空間でクレーンゲームにあるクレーンが俺の上空にあるんだ?」
「あ、紙が。えーと“次からサーヴァント解説だから”」
「だから?」
「“ボッシュートでございます!!!”」
「うわぁぁぁあああ!!!いやだああああ!!!セイバー!!花音!!誰か!!助けてくれえええええ!!!!!」
「リョーガバイバーーイ。…………行っちゃったね」
「ではそろそろお開きにしましょうか」
「それじゃ待ったねー!」