野生のオルクセン短編まとめ   作:秋月ひろ

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投稿ルールの文字数上、短編3本をまとめました。ネタとしてはお盆/戦国自衛隊/オルクセンの住宅事情。
※原作書籍版第1巻・コミカライズ版第3巻までの読了後を推奨


逝きて戻りて/霧に包まれた後/孝行息子

『逝きて戻りて』

 

 オルクセン王国の先王が、化けて出る――まことしやかにそう囁く声が、人間族の巷間で聞かれることがある。彼らからすればロザリンド渓谷での先王()()からグスタフが後継者となった経緯が不可解、あるいは不透明に映るからだろう。

 無念であろう、未練もあったろう、果ては()()()()()()()()()()()への怨念だって……と、あれこれ想像を掻き立てられるというわけだ。

 

 が、当のオルクセン国民はといえば……。

「そりゃあ、こんだけ旨い物が溢れるようになったんだ。どいつもこいつも皆、羨ましくて還ってきたがるだろうさ!」

 だから連中の分まで食ってやるのさと、オーク族は今日も今日とて朝から腹を満たし、或いはまた新たな食の道を探求する。

 すべては英霊のため。弔いのため。決して食欲に突き動かされてというばかりではないのだ。……おそらく。きっと。

 

「やれやれ。おはぎ数個で満足できた頃が懐かしいものだ」

「何か言った、グスタフ?」

 

 了

 

 

『霧に包まれた後』

 

「なんと、なんと……リクジの戦車じゃないか」

 王は目を見張った。彼の()()が正しければ、61式か。驚きのあまりつい、「陸自」などという生まれてこの方()()()()()()()()言葉まで発してしまった。当然、目にするのもこの世界では初めてだ。

「何事かと来てみれば、なんとまあ……」

 急を報せてきたアドヴィンも、同行してきた側近達も、巨大な鉄の乗り物を前に唖然、或いは警戒の色を浮かべている。それを擁した謎の軍団が、エルフィンドとの暫定国境線たるシルヴァン川の河川敷という、微妙過ぎる場所に居るのだから尚更だ。

 

 戦車の周囲には歩兵――彼等の流儀に倣えば普通科と呼称される種別の隊員が散り、警戒にあたっている。ただ、その表情も、銃を持つ姿勢も、どこか戸惑いを感じさせる。

 あちらも状況が掴めず、困惑を隠せていないのだ――そう感じ取った王は、傍らの側近に囁く。

「白旗は用意できるかな?」

「ハッ、白旗……ですか?」

「うん。なんでも良い、白くて大きな布をな」

 それを掲げれば彼等には伝わる筈と、確信もできる。交戦の意思無し、会談を求むと示せば、如何なオークとて無闇矢鱈に発砲される事もないだろうとも。

 

 何しろ相手は、自衛隊なのだから。

 

 了

 

 

『孝行息子』

 

 そちらの物件ですか? ええ、まだ買い手はついておりませんが。前オーナーがオーク族ですから、お客様にはいささか。扉ひとつとっても、現状では大きく重い物が付けられておりまして……はあ、ご家族のために。

 確かに、我等コボルト族にとって、オークの設計は広々としておりますからなあ。そういうことであれば、正式な契約後、内装に手を入れることも可能です。

 

 はい、店舗のほうも問題なく。住居スペース共々、まだまだ充分使えますとも。

 しかしまだお若いのによく……ああ、近頃噂の! 前線で大活躍されたとか、誠にご苦労様でございましたな。

 ほう、それで色々と手当てが。ならば予算は充分、というわけですな。我々も安心というものです。

 それにしても今度はそれを、親孝行のために遣おうとなさるとは。いやいや、ますますご立派です。ならばすぐにでも、諸々の手続きを進めさせて頂きます。

 

 何、我々の苦労なんぞ、大したもんじゃございませんとも。若き空の英雄に比べたら、ね。

 

~戦役終結後・とある地方の不動産店で if

 

 了




 いずれもTwitter(X)で、ふとしたネタから即興で発展させたものです。タイトルは今回改めてそれぞれに添えました。
 『逝きて戻りて』はオルクセンにお盆があるのか否かというような話から、『霧に包まれた後』は原作者さん御自身のネタ投稿に便乗して。『孝行息子』は、オルクセンの住宅事情についての考察に、原作本編で未来を迎えることがないと予言されてしまっている彼を絡めたものとなります。
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