野生のオルクセン短編まとめ   作:秋月ひろ

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時は近世、場は星欧。黒き猪の都にて、弱きを助け悪を裁く、痛快娯楽活劇。出オチともいう。
※時代劇パロディ
※一応は原作書籍版第2巻・コミカライズ版第10話までの読了後を推奨


をるくせん捕物帖

「主人の仇を……とって下さいっ!!」

 こぼると族の牝は凄まじい怨念と哀切を込めてそう口にすると、俯き、嗚咽を漏らし始めた。身に纏った桃色の着物が、酷く色褪せて見える。

 深夜、街外れにある、古びた社の前だ。他に人影はなく、こぼると族の牝はやがて、社の前に幾ばくかの貨幣を置くと、力無く立ち上がり、よろよろと歩き去った。

 その、肩を落とした小さな背中が見えなくなってから初めて、どこからか小さく低い声が漏れ聞こえてくる。

「痛ましいことよ……痛ましいことよ……」

 

 翌日。小料理屋『う゛ぁるだーべるく』は、まだ暖簾を出す前だというのに、複数の客人を迎えていた。そのひとりであるをーく族の牡に、店の主人・黒ゑるふ族のおディネが小言をぶつける。

「グスタフ、あなたねえ、そういうのはアドヴィンかミュフリングに任せなさいと、何度も言ってるでしょ」

「いやすまない。夜の散策ついでに寄ったら、ちょうどね」

 頭を掻くグスタフは、その巨躯をずいぶんと小さくしていた。いかにも遊び人風の歌舞いた着物には似合わぬ、恐縮振りだ。

 が、おディネの鋭い声は止まらない。

「そもそも腰が軽過ぎるのよ、あなたは――」

『調べはついた』

 いつまでも続きそうなお小言を遮ったのは、どこか達観した別の“声”だ。グスタフの傍らに座る巨狼族の口利き屋、アドヴィンのものだ。

『小間物屋が確かに一軒、潰れている。そして――』

 アドヴィンの理知的な眼差しが、怒りの光を伴う。

『そう仕向けたのは、大店の「ゑるふぃんど」』

「またあいつら?」

 おディネが、その尖った耳をピクリと動かした。店の奥、台所で仕込みをしながら聞き耳を立てていたらしい彼女の同族たちも、束の間手を止めた。

 グスタフも背を伸ばし、顔付きが厳しくなった。先刻までとは別人のように、上に立つ者の威風が漂う。

「もう、見逃してはおけないな」

 彼がぼそりと呟いた言葉に、その場にいる一同が頷く。黙って話を聞いていた大鷲族の浪人ラインダース、をーく族の飛脚ミュフリングらも、同様だ。

 グスタフは一同の顔を改めて見回してから、重々しく告げる。

 

「よろしい。ならば成敗だ。ひとつ始めようじゃないか」

 

 

【登場人物】

・口入れ屋アドヴィン

 恐ろしげな巨狼ながら、意外と世話焼き。事件の一報は彼がよく拾ってくる。

・疾風のラインダース

 浪人ながら気高い大鷲族。物見が得意。

・うっかりミュフリング

 飛脚。一見頼りないが、本業で受けた(ふみ)は必ず届ける。

・白銀のディネルース(おディネ)

 小料理屋の女将。ザル。

・遊び人グスタフ

 自称「貧乏魔族の三男坊」。

 

 それとたぶん、たびたび城を抜け出す誰かさんのせいで、三老中のひとりツィーテンは胃を痛めて、ゼーベックは遺漏なく事後処理をして、シュヴェーリンは任侠の親分に扮してノリノリで手伝いに来る。




 考えるな、感じろ。
 年始に『新・暴れん坊将軍』が話題になっていたのと、自分が子供の頃はまだ必殺シリーズや『水戸黄門』『遠山の金さん』『長七郎江戸日記』等時代劇のテレビ放映が多かったので、その辺りをインスパイア(なんて便利な言葉)。
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