野生のオルクセン短編まとめ   作:秋月ひろ

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何と、とは明言していませんが、クロスオーバーですん。さすがにタグは付けましたが。


異なる海から

「『リョースタ』大炎上! 行き足止まりました!!」

 見張り員から報告されるまでもない。自分達オルクセン海軍が総力を挙げても勝てないとされていた巨艦が、見る影もなく痛めつけられている。

「くそっ!!」

 エルンスト・グリンデマン中佐は、せっかく()()()()のになんてこった、という気分に否応なく襲われた。戦況は、悪くなる一方だ。

 

 荒海は今や()()の庭だ。開戦間近といわれていたオルクセンとエルフィンドが手を組み、連合艦隊を編成したところで、太刀打ちできない。両国合わせても最大戦力たる一等装甲艦が、こうも呆気なくやられてしまうのだから。

「いったいなんなんだ、奴等は!!」

 それはまるで、深く澱む怨念を形にしたかのような、闇色の敵対的生物。海の底から現れたそれらの皮膚は、砲弾を跳ね返し、魚雷を弾く。強靱な牙と顎をもつ種に至っては、こちらのフネを噛み砕きさえする。

 魔族でもない。人間族が生み出した兵器でもない。正真正銘の――。

「怪物共が……!」

 グリンデマンが自身の乗艦『メーヴェ』にも迫る“敵”を睨み据えた……次の瞬間。

 

「ファイア!!」

 戦場の喧噪にも負けぬ凜として通る声が響き、間をおかずに、聞き覚えのない轟音が木霊す。これが砲声なら、少なくともオルクセン海軍のどの艦が搭載する物よりも……巨砲に違いない。

 しかも、一門や二門ではない。最低でも十門以上が一斉に撃ち込まれてきたように思えた。

 そして、おそらくはその一門――一発の砲弾が、砲艦『メーヴェ』に突撃してきていた怪物に横合いから直撃……一瞬で爆散せしめる。

「なっ……」

 グリンデマンも、すぐ傍らに控えていた信号長のヴェーヌス曹長も、声を失った。いかに小型なほうとはいえ、あの怪物の一種を、一撃で。それも――。

(初弾、命中……なのか?)

 艦砲射撃は、目標との距離を測り、慎重に砲撃を重ね、命中率を上げていくものだ。海上を高速で移動する艦艇や現在の“敵”相手ならばなおのこと、最初の一発目から直撃させるのは相当な困難であるはず……なのに。

(どこのどいつだ……いったい、どんな装備と練度をしてやがるっ!?)

 グリンデマン達が複数の衝撃から立ち直るよりも早く、『メーヴェ』の傍らを何かが追い抜いていく。

 海面を滑るように――いや、船が舳先で波を裂くように、目測でも二〇ノット以上は出ていそうな速度で、紅白の衣をなびかせていくのは……どう見ても人間族の娘だ。

 それも、ひとりやふたりではない。同様の装いをした四人が、まるで単縦陣でも組んでいるかのように一糸乱れぬ運動で戦場を駆け、背負った四基の連装砲から大音響と共に砲撃を放つ。『リョースタ』の三〇センチ砲塔ですらちゃちな玩具に思えてしまう、重厚な造りの巨砲から、だ。

 凄まじい砲煙を置き去りにして、あっという間に味方艦隊の先頭に立ち、“敵”を次々に仕留めていく娘達……。

 

「なんだありゃあ……」

 呆気にとられながらも舷側に身を乗り出し、彼女等を必死に目で追っていたグリンデマンの呟きが聞こえたわけではないだろうが、先陣を切る娘が高らかに声をあげる。

「遅れてごめんネー! 特務艦隊旗艦『金剛』以下八隻、要請により参戦するネ!!」

 

 了




 オルクセンの時代にあの娘たちがいたらオーパーツ扱い(オーバースペック)なんでは、という話から。史実の特務艦隊(第一次世界大戦時)は元々、イギリスが当時最精鋭の金剛型戦艦を派遣するよう依頼したことに端を発している――というエピソードも絡めて。
 実際に金剛型戦艦がヨーロッパへ派遣されることはなかったものの、架空戦記では「もしユトランド沖海戦に参加していたら」「地中海等で船団護衛に就いていたら」といったifも描かれていますしね。
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