ある日、あるとき、ある場所で。
「閣下……何も閣下自ら検閲されることは」
「何を言う! 秋津洲の最新技術がふんだんに使われとるんじゃろ? その上、我が王を範とした登場人物もいるとなれば」
「あー……それなのですが、どうも大胆な脚色が」
「脚色」
「王ではなく、長官という立場で」
「長官。ふむ、実働部隊の司令官か」
「はい。で、敵対組織の女幹部というのが、この――」
「ほう? こりゃ、黒殿と呼んでおった時代を思い出す姿じゃな。しかもまた、妖艶な格好で」
「はあ。向こうではどうも、これが敵対組織における幹部の様式美だそうで」
「様式美」
「ええ……それで、長官率いるオルク戦隊と、この悪の女幹部率いる怪人軍団が攻防を繰り広げるというのも、毎回物語の骨子になっております」
「おふたりの知恵比べとなれば、不敬ながら興味深いが。戦隊と軍団と言ったか? 戦力的な差が随分とあるのう」
「は。そこは厳密な考証を行っていないようで。中盤では有象無象の兵共との乱戦も描かれますが、山場にはきまって戦隊5人と怪人ひとりの対決に持ち込まれます」
「なんじゃ。悪とはいえ、そこまで追い込まれる怪人が哀れじゃのう……いや、あるいは一騎当千の強者なのか?」
「強者ですね。あくまで子供向け番組ですので、毎回5人の協力で倒される宿命ですが」
「さもありなん。で、長官と女幹部とやらが、常にその指揮を執っておるのか」
「はあ……戦略や戦術は練るのですが、その……」
「うん?」
「恋に落ちます」
「恋」
「互いに身分を隠し、偵察に赴いた先で偶然出会い、ころっと」
「ころっと」
「そこが喜劇的と申しますか、不敬にあたるのではと、意見が割れまして」
「それで我が国内での放映を渋っておったのか?」
元帥号をもつ文化人ことシュヴェーリンはそこまで説明を聞くと、呆れた表情を浮かべ、次いで呵々と笑ってみせた。
「何を今さら。良い良い、ならばますます儂が観て保証してやろう」
あまりに茶化しているようならさすがに止めるがの、と担当官に片目を瞑ってみせ、友好国で創られた特撮番組が収められた磁気テープを、再生デッキに入れる老将。
グスタフとディネルースの馴れ初めを知らぬ世代の担当官がはらはらと見守るなか、時折唸り、あるいは驚嘆の息を吐きながら、数話分一気に目を通したシュヴェーリンはといえば……。
「今からでも、儂も出してくれんかのう。ほれ、山賊元帥シュバババーンとかいう感じで」
と、別の意味で関係者を困らせるのだった。
了
ノリと勢い以外の何ものでもないです。それとシュヴェーリン元帥が使いやすいキャラクター過ぎるのがいけない←