オルクセン陸軍上層部、そして兵器開発に携わる部署には、発足時からついて回る懸案事項がある。
用いる兵器の規格を、どの種族を基準に定めるか、だ。
オーク族? 言うまでもなく最多数の兵を占める種族だか、その巨躯に合わせては他の種族が運用に困難をきたす。
ではエルフ族? 彼女たちの痩身に、今度はオーク族が合わせられない。コボルト族との身長差も課題のままとなる。
そのコボルト族も小柄かつ多様で基準と為すには難しく、ドワーフ族は総じて短躯。大鷲族や巨狼族は身体の構造からして別格……と、あちらを立てればこちらが、を地でいってしまう。
故に、次世代における主力兵装の開発会議ともなれば、自由討議であっても熱が入り、ときに紛糾する。
「車体の種族共有化は必須だ」
「当然だ。だか無理がある」
「この際その点から見直してみてはいかがでしょう」
「今更か?」
「発想の転換が必要な時期だとは感じる」
「ええ。無闇に吶喊するよりも、一旦後退して戦力を再編。そんな局面です」
「理解できる。が、どこまで後退する?」
「中世と呼ばれる時代まで」
「中世ぃ? おいおい、まさか剣と鎧を持ち出そうってか」
「そのまさかです。全種族で共有可能な装甲車両を用意できないのであれば、各種族の肉体そのものを装甲化してしまえば」
「どういう意味だよ」
「詳しく」
「こちらをご覧下さい」
「なんだあ? ……国外の、ペーパーバック?」
「センチュリースターの作家が執筆した、空想科学小説です。それとこれ」
「アニメーション?」
「秋津洲の娯楽作品ですが、両者に共通する兵装が」
「装甲服か」
「なるほど。中世でいうなら鎧だな」
「ええ。最新式の、科学の粋を集めた鎧といえます」
「我等の偉大なる王がお好きそうな玩具だ」
「シュヴェーリン閣下もな」
「秋津洲の娯楽作品は、実に斬新な兵装を次々に繰り出してきます。脚部に車輪を装備することで、戦車並の機動力を確保する案も」
「ますますシュヴェーリンの親父が面白がるな!」
「で、これを種族毎にか?」
「はい。基本構造のみを規格化。種族毎、体格に合わせて必要となる部位の装甲だけを継ぎ足す設計ならば」
「ふむ……いけなくはないか?」
「あとはこれだ、火力をどうする? 大砲は背負わせるのか?」
「それこそオーク族の出番でしょう、我等なら反動にも耐えられます。軽火器はエルフ族などに装備してもらって、機動力を維持。高機動型とする。コボルト族なら索敵能力を付加して、斥候を務められるようにしても良いでしょう」
「ドワーフ族ならいっそ装甲を増し増しにして、さしずめ重装甲型といったところか」
「大鷲族や巨狼族は要検討……いや、基本構造に生命維持や筋力強化機構を組み込んで、それのみを装備。種族の特性を活かせる設計を前提にだな」
「待て待て。いっそこっちの、乗り込める型の兵装はどうだ? 操縦席だけ種族別に設計、換装してしまえばいい」
「合体変形……?」
「浪漫だろ?」
「浪漫ではある」
「浪漫ですね」
なお、技術とコストの前に、浪漫は敗北する模様。
了
例によって構想10分・執筆30分ぐらい。
秋津洲の娯楽作品を便利に使いすぎな私です。