ゼンレスゾーンゼロ 零落者のゆく先   作:柿本人麻呂

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プライベートで書き上げたゼンゼロ二次創作(未投稿)があって、それの続編です
知らない単語や組織が出てるので、その都度解説置いておきます!

ローズグループ:
零号ホロウ発生前から存在していた、新世界で暗躍しているギャング組織
構成員の着ている制服の袖口には、薔薇の刺繍がある
赤牙組とかそういうのを思い浮かべるとわかりやすいかも
結構大きいこともしでかしてる


零落者のゆく先 【出会い】
【老爺と若者、そして柊】


 街の裏路地に、女がいた。この先の道は、自分の人生よろしく見渡せない。しかし、彼女の顔から希望は失われていなかった。

 

 重い足取りで、奥に進んでいく。

 

「朝か」

 

 裏路地はあまりに暗く、夜通し行動していたため、気づけなかった。

 

 袴をはためかせながら、柊司(ひいらぎつかさ)は進む。H.A.N.D.の上着は着ていない。もう辞めた。

 

 雪原のように白い、切り揃えたロングヘアがふわりと舞う。紅の瞳が薄暗い中で浮き彫りになる。

 

 喫茶店が見えた。目覚ましにちょうどいい。コーヒーでも飲もう。

 

 左手に握った刀を路地裏の見えない場所に隠して、店に向かう。

 

 管楽器の心地よい音が柊の来店を伝える。

 店内を見渡した。木造りで、ジャズが流れている。良い雰囲気だ。

 

 右のテーブル席に二人、相席した若者と老爺がいる。若者は背中側で見えないが、老爺の顔は見えた。

 

 見た目は六十代だ。だがその顔には千年生きてきたのではないかと思わせる貫禄があった。

 ──口を半開きにして、ぼうっと空を眺めているのを除けばだが。

 

 眉間や目尻、口元の皺、綺麗に白く染まった髪の毛を掻き上げていて、まるで貴族だ。

 とはいえ、格好はラフな半袖のシャツに茶色いボトムズで、貴族のそれとは違っている。

 

 他に、テーブル席に女が一人いる。

 

 カウンターには数人、ブレイクファストのパンとコーヒーを嗜んでいたであろう者がいた。

 

 バリスタもまた年老いている。バリスタに相応しい上品な格好だ。

 

 雰囲気がいいと言ったが、それはカウンターの前に座った二人の男を除けば、のことだった。

 

 今にも迷惑を起こしそうな言葉遣いをしているが、上着はそれなりに品がある。

 

 柊が身を止めたのは、その上着の袖口にあるローズグループの刺繍だ。

 

「じいさんよお、俺はローズグループだぜ? 逆らっていいのかよ」

 

 ポケットに手を突っ込みながら、困り顔で丁寧に対応するバリスタを詰問する。

 

「ここは特別ホロウが近いんだぜ。じいさんが一番わかってることだろ?」

 

 ちょうどいい。思わぬ収穫だ。人助けの傍ら、少し話を聞いてやろう。

 

「主ら」

 

 そう言うと、二人は柊を振り返った。

 

「なんだ、ガキ」

 袴姿を見ると片方が少したじろいだが、すぐに表情を変えて柊をねめつける。

 

「相手が欲しいなら、我がやる」

「ふーん、いい度胸だね」

「いい女だなあ、お前。ちょうど『おやつ』を欲してた頃だし、どうです?」

 

 連れに敬語を使ったことから、もう片方が目上だとわかる。

 

『お、喧嘩か?』テーブルから声が小さく聞こえた。

 

「いいね。じゃあ、やっちゃってよ」

「えい、わかりました。

 ──お前、人前で見栄を張ったこと、意味、わかるな? 俺らはローズグループだぞ」

 

 何も言わずに、目先の男を観察する。何か武術などの経験があるとは思えなかった。素人か? だが、達人は強さを隠すものだ。油断はしない。

 

 ローズグループの黒と赤の混ざった制服を着ていて、雰囲気はある。

 

 相手がファイティングポーズをとった。映画の見様見真似でもしているのだろうか。

 

 彼女が攻撃するそぶりを見せていないにも関わらず、避けるような仕草をしながらのろのろと間合いを詰めてくる。

 

(何を……?)

 

 シャドーボクシングらしい動きであるから、その真似事か。

 

 右の大振り。ここで、相手が素人だと確信した。格闘でいきなり大振りをするのは、素人の特権である。

 

 戦闘中ながら、隙だらけすぎて拍子抜けする思いだ。

 

 相手の背中側に避けた。

 

 これにも理由がある。相手の胸側に避ければ、余った手で殴られるのが関の山なのだ。

 標的をとらえ損ねた腕は、空気をいじめただけだった。

 

「シャドーボクシングかよ」テーブル席の若い男がははっと笑う。

 

 体が前につんのめる相手。

 その顎に、張り手を突き上げる。

 

「ンッー!」

 

 彼は出せもしない声を喉から張った。

 彼女が力を入れずとも、彼の足元は浮いた。視界が反転し、後頭部が床に当たる。

 

 鈍い衝突音とともに、白目を剥いて気を失った。

 

 あっ──と、彼女が喉を鳴らす。やりすぎた。

 

 稽古で技をかける時、最後まで相手をはなさず安全にかけるのが絶対だ。執行官として命を奪い合っていたから、その心構えが抜けてしまった。

 

「あーあ」若者が、贔屓の選手が失態を犯した時のようにうっちゃった。「病院行きだよ」

 

 前を向き直る。もう一人のならず者が、落ち着いた様子でいた。

 

「へえ、すごいんだね、君」

 

 彼が手を前にして構えた。柊は構えすらせず棒立ちだ。

 

「その余裕がいつまで持つのかなあ?」

 

 言葉を返すこともなく、次の戦いが始まる。

 

 踏み込んできた。速い。

 

 胴に真っ直ぐの殴打。柊が受け流す。

 間髪入れず上段蹴りが襲う。最初の男より動きが鋭く、コンパクトだ。

 

 分析する。何か経験があるな。それも殺しの。

 なるほどと、柊は思う。畳み掛けるような攻撃は合理的ではある。

 

 後ろに下がると、蹴りは苦もなく避けられた。

 

 さて。蹴りのすぐ後で、股間ががら空きだ。ここをちょいと蹴れば、戦闘は一瞬にして終幕する。

 

 だが、明らかにやりすぎだ。話を聞きたいだけだ。ちょっと懲らしめるだけでいいのだ。増して気絶なんかされたら目も当てられない。

 

 すねをつま先でこつと当てる。

 

「うっ」と、ひるんだ。

 

 その太ももにローキック。

 

 相手は形容しがたい声を発する。

 

 敵は片膝をつくぎりぎりで姿勢を保っている。普通は倒れてのたうち回るものだが、これは彼のプライドと根性のおかげだろう。

 

 顔を前に突き出して苦しそうにしている。

 

 ──その時、柊は半ば反射的に、動き出してしまった。

 その顔面に、会心の膝蹴りを打ち込む。

 

 彼の頭がコンパスで円を描くように頭を後ろに振り仰ぎ、そのままゆかにごつんと命中。

 

「あ……」

 

 柊はまた、自らの失敗に声を発した。




戦闘を書くのが好きです
特に格闘戦が好きです
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