TS転生魔法少女マギア★あいり 作:お前も魔法少女になれ
カーテンの隙間から朝日が差し込み、ぼんやりとした光がまぶたをくすぐる。
春の陽射しは優しく、二度寝を誘ってくるが——
「……んぅ」
ゆっくりと体を起こし、まぶたをこすりながら大きく伸びをする。
毎朝の習慣にも、もうすっかり慣れた。
俺——
前世では普通の社会人の男だった。気づけばこの体になっていて、十数年が経つ。
転生直後は、ファンタジー世界かと思って警戒していたけど……結局、ただの現代日本だった。
地名がちょっと違うくらいで、歴史も技術も前と変わらない。
「……くぁ」
あくびを噛み殺し、頭を軽く振って洗面所へ向かう。
蛇口をひねり、冷たい水で顔を洗った。
ひやりとした感触に、一気に眠気が吹き飛ぶ。
目を開くと、鏡の中には白銀の髪の少女がいた。
透き通るような肌に、紅色の瞳。
どこか儚げな雰囲気を持つ美少女——それが俺の"今の姿"だ。
「……いや、やっぱ慣れねぇ」
つい、前世の自分と比べてしまう。
この顔が自分のものだと言われても、どうしてもピンとこない。
「お姉ちゃーん、ごはんできてるよ!」
そんな思考を遮るように、廊下から元気な声が響く。
「……はいはい、今行く」
***
リビングに入ると、テーブルにはトーストやスクランブルエッグが並んでいた。
母さんがエプロン姿でキッチンに立ち、父さんは新聞を広げていて。
妹のあいかはテレビを見ながら、バターを塗ったパンをかじっていた。
『——続いてのニュースです。全国各地で発生している若い女性の行方不明事件ですが——』
画面には、行方不明者たちの写真が並んでいる。
全員、10代ぐらいの少女。
『被害者はいずれも、10代の少女ですが、共通点はそれ以外になく——』
『——警察は、なにかしら組織的な犯行とみて——』
「……いやねぇ、怖いわ」
母さんが眉をひそめる。
「この街では起きてないんだろ?」
「今のところはね。でも、いつどこで何が起きるかわからないわよ」
(……なんか、最近物騒だな)
そんなことを考えながら、俺はトーストをかじった。
***
食事を終え、制服に着替えて家を出る。
すると、幼馴染の
「おーい、あいり!」
朝日を浴びて、赤髪のポニーテールが元気よく揺れる。
「おはよ、れんげ」
「おはよう! ほら、早く行こ!」
れんげはクラスでも一番元気なやつで、剣道部のエース、皆の姉貴分みたいな子だ。
二人で並んで歩きながら、他愛もない話をする。
「そういえば、ニュース見た? 最近、女の子が行方不明になってるってやつ」
「あぁ……見たよ」
「やっぱ気になるよねぇ、こういうの。妙に嫌な感じするし、丁度アタシたちぐらいの子ばっからしいじゃん?」
「……まぁ、そうだな」
れんげは表情を曇らせ、少し考え込むように俺を見つめた。
「とくに、あいりは心配だなぁ……何かあったらアタシが守ってあげるからね?」
「はぁ? 俺は守られる側じゃなくて守る側だろ?」
「あいりが~? あのねぇ、あんた言動こそ男の子っぽいけど、そんな小っちゃい体で誰が守れるのよ」
「うるさいな……余計なお世話だ」
れんげがニヤニヤと笑いながら肩をすくめる。
「おはよう、あいりちゃん、れんげちゃん」
れんげとの他愛ない会話がひと段落したころ、穏やかな声が背後からかかった。
振り向くと、青髪のロングヘアを揺らす
彼女はいいとこのお嬢様で、ザ・大和撫子と言った感じだ。
「おはよう、ひなた!」
「おはよ、ひなた」
「もう、あいりちゃん。また眠そうな顔して……ちゃんと寝てる?」
ひなたは俺の顔を覗き込むようにしながら、心配そうに眉を寄せる。
「うーん、まぁ……それなりに?」
「それなりって……最近、ずっと眠そうよ? 夜更かししてるんじゃないの?」
「そ、そんなことないぞ!」
俺は慌てて手を振る。実際には、夜な夜な部屋を抜け出して、街をさまよっているのだから図星だった。
(だって……何かあるかもしれないだろ)
転生して十年以上、普通の生活を送ってきたけど、俺はずっと思っていた。
なぜ転生したのか、ただの偶然なのか、それとも何か理由があるのか。
もし特別な運命が待っているなら、それを自分の手で掴みたい。
どうせなら、物語の主人公みたいに、非日常を楽しんでみたい。
そんな思いから、毎晩こっそり家を抜け出しては、何か異変がないか探していた。
……まぁ、今のところ特に何も起きていないんだけど。
「本当に? ……何か隠し事してない?」
「本当だって! ひなたは心配性だなぁ」
「ならいいけど……」
ひなたは小さくため息をついて、それ以上俺を責めるようなことは言わなかった。
その後は他愛もない会話を交わしながら、俺たちは学校へと向かった。
***
授業中——
「……ふぁぁ」
俺は隠れるようにあくびを噛み殺し、机に突っ伏しそうになるのを必死に耐えていた。
夜更かしのせいで眠気がひどい。その上、人生二週目の授業だ。
前世と変わらない数学の内容は頭に入らず、先生の声が遠くで響く。
(うーん……もうちょっと、なにか起きてもいいんだけどなぁ……)
なんて考えながら、ぼんやり窓の外を見つめる。
どこかで日常が壊れる瞬間があるんじゃないかと、そんな期待を抱きながら——
しかし、授業は何の波乱もなく終わり、昼休みになった。
「ほらあいり、しっかり食べないと午後の体育で倒れちゃうよ?」
「……わかってるって」
れんげがカバンからお弁当を取り出す。俺も自分の弁当を開きながら、れんげとひなたの二人と一緒に昼食をとった。
のどかな日常。穏やかで、特に何も起こらない日々。
けれど——
(本当に、何も起こらないのか?)
そんなモヤモヤした気持ちを抱えたまま、一日は過ぎていく。
***
「ふぅ……」
日が沈み、夜になった。俺はベッドに寝転がりながら、天井を見上げる。
(今日も、何もなしかぁ……)
学校の授業、昼休みの雑談、放課後の時間。すべてが当たり前に過ぎていく。
だけど、本当にそれでいいのか?
(……ちょっと、散歩でもするか)
そう決めると、俺は静かにベッドから抜け出す。家族に気づかれないよう、そっと部屋の窓を開ける。夜風が肌を撫で、静かな街の気配が伝わってくる。
(今日こそ、何か起こるかもしれない……)
そんな淡い期待を抱きながら、俺は夜の街へと足を踏み出した——
家を出て、住宅街から離れるように移動する。
人気のない路地裏を通り過ぎようとした時、妙な気配を感じた。
背筋がぞわりとする。冷たい空気が肌を撫で、足元の影が妙に濃く見えた。
(なんだ……?)
暗がりに目を凝らす、黒い霧のようなものがうねる。
何かが——来る。
直感が告げる。そして次の瞬間。
黒い霧は、一際大きくうねるとその姿を変えた。
人間とは思えない、異形の存在。獣のような体に、禍々しい赤い目。
「——なっ!?」
思わず後ずさる。
こいつは、ただの不審者とかじゃない——"化け物"だ。
そして、俺は理解した。
これこそ、ずっと求めていた"非日常"の入り口だと。
恐怖や驚きよりも——高揚感が、先に来た。
(やっと、見つけた!)
俺は、拳を握りしめた。
まるで、その時を待ちわびていたかのように。
次の瞬間——
「ギャアアアアアアア!!!」
耳をつんざくような咆哮が響いた。
闇の中で異形の怪物がうごめき、禍々しい赤い瞳がぎらりと光る。
そして——跳んだ。
(——ッ!)
視界が揺れる。猛然と迫る黒い影。
咄嗟に身を翻す。
——刹那。
黒い爪が空を裂き、俺の頬のすぐ横をかすめる。
「ッ……!」
俺は転がるように地面に倒れ込んだ。
バキィンッ!!
後ろの電柱が、音を立てて引き裂かれた。
背筋に冷たい汗が流れる。
(やべぇ……ッ!!)
次の攻撃を受ければ、確実に死ぬ——!
強烈な殺気に圧され、逃げることすらできない。
足が竦む。喉が渇く。
(……クソッ、そうだ)
そして、冷静な思考が戻ってきた。
俺はただの少女。戦う力なんて、何も持たない。
前世の経験なんて関係ない。ただの中学生の身体。
剣も銃もない。ましてや超人的な力もない。
さっきまで非日常を求めて浮かれていたが、これは現実——本物の怪物との遭遇。
(このままじゃ……ッ!!)
怪物が、動いた。
影の塊のような身体がしなり、鋭利な爪が夜闇を裂く。
——避けられない。
死ぬ。そう思った瞬間——
銀色の閃光が走った。
怪物の爪が何かに弾かれ、金属の澄んだ音が響く。
同時に、銀色の狐がしなやかに着地した。
「君! 大丈夫かい!?」
「え……?」
——銀色の毛並みを持つ、美しい狐。
それは明らかに普通の動物ではなかった。
獣とは思えないほど知性を感じさせる眼差し。
そして、何より——
喋った。
混乱する俺に構わず、銀の狐は俺に続けて言葉を重ねる。
「すまないが、僕だけでは奴を倒すことはできないんだ。君に協力してほしい!」
「きょ、協力って……どうやって……」
「君にはどうやらマギアの素質がある、だから君に僕の力を貸してあげる。僕の魔法の力を」
「ま、魔法?」
「ああ」
銀の狐が俺に向かって何かを放った。
小さなメダルのようなそれは、月明りに煌めきながら、俺の手のひらに収まる。
「これは……?」
指先でなぞると、中央には炎をまとう狐の紋章が刻まれていた。
「それはマギアエンブレム。強く祈りを込めるんだ。そうすれば、君に宿るマギアが覚醒し、魔法少女として戦う力を得られる!」
「つ、強く祈る……? そうすれば魔法少女に……魔法少女!?」
この時、俺は完全に理解した。
——ああ、これ"魔法少女モノ"の世界だったんだ。
変身シーンまで行かなかった上に長くなっちゃったね
TS俺っ娘の魔法少女モノが読みてぇ~~と思っているよ俺は
君も書こうよ、俺も書いたんだからさ
勢いで書いて、プロットとかないので続くかどうかは未定です