TS転生魔法少女マギア★あいり   作:お前も魔法少女になれ

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戦闘回の予定でしたがそこまで行きませんでした
今回も短いです、すまん


第十話 しっかりおつかまりください

 夕焼けに染まる豪華な一室。テーブルの上にはティーカップが並び、芳醇な紅茶の香りが漂っている。

俺はすみれと向かい合い、エンブレムの探索について話をしていると、不意にフェルクスがテーブルの上にぴょんと飛び乗った。

 

「そうだ、すみれ。念話について説明しておくよ」

 

「念話?」

 

「君もマギアに覚醒したから、使えるようになっているはずだよ。言葉を発さなくても、こうやって」

『会話ができるはずさ』

 

 フェルクスの口は動いていない。それなのに、はっきりとした声が頭の中に響く。

 

「まあ! これは……便利ですわね!」

 

 すみれは目を見開き、何度か瞬きをする。そして試しに、とでも言うように、少しだけ目を閉じて――

 

『……こう、かしら?』

 

 すみれの声が脳内に響く。

 

「おお、バッチリだな」

 

『まあ当然ですわ! わたくし、選ばれし魔法少女ですもの!』

 

 どこか得意げなすみれに、俺は苦笑する。

そんなやり取りをしていた矢先。

 

「失礼します、お嬢様!緊急事態です!」

 

 突然、扉が開き、鳴神家の使用人が駆け込んできた。

 

「商店街で異変が発生しました。モニターをご覧ください!」

 

 すみれが素早くリモコンを操作し、壁に備え付けられた大型モニターに映像を映し出す。

目の前のモニターには、黒い霧のようなものが渦巻く商店街の映像が映し出されていた。

 

「……ネザードか!」

 

「あいり!僕の方でも感知ができたよ!ナイトメアとシャドウが複数だ!!」

 

 モニター越しに見えるのは、幾つもの影がうごめく光景。街灯の下で人々が悲鳴を上げながら逃げ惑っている。だが、その中で明らかに奇妙な動きをしているものがいた。

黒い靄に覆われた異形の存在——シャドウ。

奴らは人間に直接危害を加えるのではなく、道を塞ぐように動き、一定方向へ人々を追い込んでいる。まるで“狩り”でもするかのように。

 

 「……なんか、おかしくありませんこと?」

 

 シャドウが、ある程度の規則性をもって人を集めている。しかも、集められているのは若い女性ばかりだった。

 

「まさか、奴ら……何かの目的があって人を集めている?」

 

「どうやら、その可能性は高そうだね……」

 

 フェルクスの瞳がモニターの奥を睨む。俺もその視線を追って、画面の一角に映る巨大な影に目を凝らす。

その瞬間、心臓が軽く跳ねた。

巨大な猛禽と獅子が融合したような異形のナイトメアが、商店街の中心に降り立つ。

背中の翼を大きく広げ、力強い爪をカツカツと地面に叩きつける。その様子は、まるで獲物を前にした猛獣だった。

 

「フェルクス、アレはマギアエンブレムを取り込んでいるナイトメアか?」 

 

「うん、グリフォンのエンブレムを感じるよ……あいり、頼めるかい?」

 

「……ああ、もちろんだ。行くぞ」

 

 エンブレムがネザードの手に落ちているのなら、俺たちが回収するべきだし、何よりあの場にいる人たちを放っておけるはずがない。

 

「では——!!」

 

「すみれ、お前はここに残れ」

 

「……っ! ですが!」

 

 すみれが悔しそうに唇を噛む。俺は彼女の目をまっすぐ見て、言葉を続けた。

 

「お前はまだ変身もできないし、戦闘経験もない。ナイトメアは……いや、シャドウだって生身で戦えるような甘い相手じゃないんだよ」

 

 俺の言葉に、すみれは拳を握りしめながら、唇を噛んだまま俯いた。

 

「だからこそ、サポートを頼む。ここから戦況を分析して、念話で俺に指示を出してくれ」

 

 すみれの肩がピクリと動く。そして、深く息を吐いた後、俺をじっと見つめる。

 

「……ええ、わかりましたわ」

 

 納得したようで、しかし悔しさは消えないまま。それでも彼女なりに受け入れたらしい。

 

「頼んだ」

 

 俺は短くそう言って、フェルクスとともに屋敷を飛び出した。

お屋敷のドアを勢い良く開けると、すでに一台のバイクが待機していた。

黒塗りの高級バイク。その横に立つのは、すみれの屋敷の使用人らしいメイド姿の女性。年齢は二十代くらいだろうか。規律正しそうな佇まいながらも、その表情には微かな緊張が走っている。

 

「天宮様、お乗りください」

 

 俺の姿を確認するなり、メイドはすぐにヘルメットを差し出してきた。

 

「……俺のために?」

 

「ええ。お嬢様より"速やかに目的地へお送りするように" と指示を受けております」

 

 すみれのやつ、この一瞬の間にこんな手配をしてくれたのか。

 

「助かるぜ」

 

 俺はヘルメットを受け取り、スクールバックにフェルクスを詰め込むとバイクの後部座席に跨った。

 

「しっかりおつかまりください」

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

 ギュッとメイドの腰に手を回すと、バイクが静かにエンジンを唸らせた。

次の瞬間——風を切るような加速。

 

「おおっ……!」

 

 屋敷の敷地を抜け、舗装された道へ出ると、メイドは迷いなくアクセルを開けた。ブレのない滑らかな運転。まるでプロのライダーのような腕前だ。

 

「メイドさん、運転上手いですね……?」

 

「鍛えられておりますので」

 

 余計な説明は一切なし。ただ事実を伝えるのみ。やっぱりすみれの屋敷の使用人って、只者じゃないんだな……。

バイクは迷うことなく最短ルートを突っ走る。

 

「目的地まで、あと三分ほどで到着します」

 

「了解!」

 

 俺は視線を前に向けながら、念話をすみれに飛ばした。

 

『すみれ、バイクの手配ありがとな』

 

『お安い御用でしてよ、今の私にできるのはこのぐらいですもの』

 

『早速だけど追加で仕事を頼む、人目につかない変身場所を探してくれないか』

 

『それならば商店街の手前の裏路地がイイと思いますわ!商店街の騒ぎで完全に無人ですわよ!』

 

 すみれに言われた地点をメイドさんに伝えると、人気のない裏路地に入り完全に無人の場所にバイクが止まった。

商店街のすぐ近くなので人々の悲鳴がかすかに聞こえてくる。

 

「では、天宮様。私ができるのはここまでです。ご武運を」

 

「いえ、バイク助かりました」

 

 バックからでたフェルクスがバイクの上に飛び乗り、静かに言った。

 

「いけるかい?」

 

「……ああ」

 

 俺はポケットからユニコーンエンブレムを取り出し、強く握りしめた。

 

「せっかくだから試してみるか、ユニコーンを」

 

《マギアチェンジ・スタンディングバイ!》

 

 俺はエンブレムを指で軽く弾き、クルリと回転させながらキャッチする。

そしてその勢いのままベルトのスロットにエンブレムを差し込んだ。

 

「——変身(マギアチェンジ)!!」

 

《ユニコーンエンブレム・インストール!》

 

 純白のゴスロリ調のドレスが形作られ。

頭には白銀のユニコーンの角を模したヘッドアクセが装着され変身が完了する。

 

《マギア・チェンジコンプリート!!》

 

 光が収束し、俺の視界が開ける。

体が軽い。フォックスフォームとはまた違う、研ぎ澄まされた感覚。

 

「……行くぜ」

 

 ドレスの裾を軽く翻し、俺は華麗に宙を舞った。




次こそ戦闘回
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