TS転生魔法少女マギア★あいり   作:お前も魔法少女になれ

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ちょっとした日常&説明回っぽいやつです


第四話 うわ、思ったより重い……

 カーテンの隙間から朝日が差し込み、ぼんやりとした光がまぶたをくすぐる。

 春の陽射しは優しく、二度寝を誘ってくるが——。

 

「……んぅ」

 

 ゆっくりと体を起こし、まぶたをこすりながら大きく伸びをする。

 ベッドの上で丸くなっていたフェルクスが、ピクリと耳を動かす。

 

「おはよう、あいり。まだ眠そうだね?」

 

「おはよ、フェルクス。結局あの後、家に帰ってきたのが日付が変わった後だったからな……俺、本当に魔法少女になったんだよな? 夢じゃないよな?」

 

「そうだよ、現実味がないかい? まあ、普通の少女が一晩で魔法少女だ、無理もないよ。だけど僕の存在が何よりの証拠さ」

 

 フェルクスは伸びをしながらそう答える、そして続けて。

 

「そして、僕たちの今後の方針なんだけど……」

 

「ちょっと、待ってくれ」

 

 フェルクスの言葉を遮り、俺は待ったをかける。

 

「……どうしたんだい?」

 

「そろそろ、朝食の時間だ。顔を洗ってリビングに行かないと妹が俺の部屋に突撃してくる。家はペット禁止なんだ、お前を見られるのはまずい」

 

「……はぁ、ペット扱いは不本意だけどそういう事なら仕方ない。行っておいで、あと僕にも何か食べる物をお願いするよ」

 

「ああ、わかった」

 

 部屋を出た俺はあくびを噛み殺し、洗面所へ向かう。

 蛇口をひねり、冷たい水で顔を洗うとひやりとした感触に、一気に眠気が吹き飛んだ。

 少し冴えた頭で俺は、狐って何食べるんだ? などと考えていたのであった。

 

 朝食を済ませリビングから戻ると、フェルクスは俺のベッドの上でゴロリと寝転がっていた。

 俺はリビングからとってきたリンゴを投げ渡すとフェルクスに聞いた。

 

「……で、お前どうするんだ? 今日は家で待機か?」

 

 パジャマを脱ぎ捨て、制服を取り出しながらフェルクスに問いかける。

 

「ん〜、それなんだけどさ。僕も学校について行こうと思ってるんだよね」

 

「……は?」

 

 思わず手を止めて、フェルクスを見つめる。

 

「だって、キミはまだ魔法少女になったばかりだし、ネザードの連中がどう動くかわからない。ある程度奴らを感知できる僕がいた方が安心じゃない?」

 

「そりゃそうかもしれねぇけど、お前、どう考えても学校に連れて行ける見た目じゃねぇだろ」

 

 体長30センチほどの小さな銀狐。どう見ても「珍しいペット」にしか見えない。

 このまま連れて行けば、間違いなくクラスメイトや教師にバレる。

 

「そこでだよ、キミのスクールバッグに入れてもらおうかと!」

 

「はあ!? いやいやいや、待て待て!」

 

 俺は慌てて制服を投げ出し、ベッドに飛び乗る。

 

「そんなことしたら、すぐにバレるだろ!?」

 

「大丈夫さ! ほら、僕のこの小さな体、スクールバッグの中にピッタリ収まるし!」

 

 フェルクスは器用にくるんと一回転しながら、自慢げに胸を張る。

 

「いや、問題はサイズじゃなくて、生き物が入っていたらすぐにバレるだろって話だ! それに、教室で誰かがバッグを開けようとしたらどうすんだ?」

 

「その時は……うまく誤魔化してよ!」

 

「無茶言うなよなぁ!」

 

 頭を抱える俺をよそに、フェルクスは満足げに頷く。

 

「まあまあ、頼むよ」

 

「くっそ……!」

 

 納得いかないが、確かにフェルクスが近くにいてくれた方が、万が一ネザードが現れた時に対応しやすいのも事実。

 

「……わかった。ただし、絶対に騒ぐなよ?」

 

「了解! 任せてよ!」

 

 俺はため息をつきながらスクールバッグを取り、ファスナーを開ける。

 中には体操服と予備のハンカチ……それだけ。

 

「おいおい、キミ、荷物少なすぎない?」

 

「ほぼ全部、学校に置いてるからな」

 

「……え? じゃあ、このスカスカのバッグの中に僕を入れたら、もはや僕がメインの荷物ってことになるんじゃ……?」

 

「そうだな」

 

「いや、それ逆に目立たない!? なんか、バッグが妙に膨らんでたら怪しまれるよ!」

 

「うるせぇ、お前がここに入るって言ったんだろ!」

 

 俺はフェルクスをひょいと掴んで、強引にバッグの中に押し込む。

 

「わっ、ちょ、待っ——うわあぁ!? スペースがありすぎて落ち着かない!」

 

「文句言うな、贅沢な環境だろ」

 

「逆に落ち着かないんだってば!」

 

 フェルクスはもぞもぞと動きながら文句を言うが、無視してファスナーを閉める。

 

 俺は急いで制服に着替え、スクールバッグを背負う。

 

「……うわ、思ったより重い……」

 

「仕方ないじゃないか、もう少し優しく扱ってよ……」

 

「気にすんな、俺もお前のことは荷物の一部だと思うことにする」

 

「ひどくないかい!?」

 

 そんなやり取りをしながら、俺は玄関へと向かう、そして扉を開けた瞬間、勢いよく声が飛んできた。

 

「おっそいよ、あいり!」

 

 玄関を出て待っていたのは、幼馴染の剣崎れんげ。

 赤髪のポニーテールを朝日に揺らしながら、軽く足を鳴らして立っていた。

 

「悪ぃ、ちょっと寝坊した」

 

「……なんか何時にもまして、眠そうだね?」

 

「ま、まぁちょっとな……」

 

(そりゃ夜中に怪物と戦ってたからな……)

 

 俺は誤魔化すように頬を掻く。

 

「んー……?」

 

 れんげはじっと俺の顔を覗き込む。

 

「なんかいつにも増して眠そうだけど? もしかして夜更かしでもした?」

 

「いや、そんなことは……」

 

「怪しい……。ちゃんと寝てる? あっ! もしかして昨日、徹夜でゲームしてたんじゃない? いろはが言ってたよ、最近あいりが新しい格ゲーにハマってるって!」

 

「ちげぇよ! くそっ……いろはも余計な事吹き込むなよな……」

 

「じゃあなんでそんなに眠そうなの?」

 

「……まぁ、色々あってな」

 

 もちろん、正直に夜中、怪物と戦ってましたなんて言えるわけがない。

 

「ふぅん……まぁ、いいや! あいり、眠いならアタシがおんぶしてあげようか?」

 

 れんげがニッと笑いながら背中を向ける。

 

「はぁー!? やめろよ恥ずかしい!」

 

「えー? いいじゃんいいじゃん! ほら、あいりちっこいんだから、アタシの背中でぐっすり眠りなよ!」

 

「誰がちっこいだ! 」

 

「あはは、冗談だって冗談! ほら、行こ行こ!!」

 

「へいへい……」

 

(……まったく、朝からテンション高ぇな)

 

 そう思いながら歩き出した瞬間。

 

(……キミの友達、元気いっぱいだね)

 

「うおっ!?!?」

 

 思わず声を上げそうになり、慌てて口を押さえる。

 

(……ん? どうしたんだい?)

 

(お、お前……どこで喋ってんだ!?)

 

(どこって……キミの頭の中さ)

 

(……は?)

 

 俺は思わずバッグをチラッと確認する、見た目はピクリとも動いていない。

 

(声が聞こえる……? え、何これ!?)

 

(ああ、説明が遅れたね。これは念話さ)

 

(ね、念話……? なんだそりゃ)

 

(魔法の力を使った、声に出さずに会話できる手段のことさ。キミと僕はマギアで繋がっているから、意識を向ければこうやって会話ができるんだよ)

 

(ちょっ、もっと早く言えよ! 心の準備が——)

 

「あいり?」

 

「ひゃいっ!?」

 

 れんげに突然呼ばれ、変な声が出た。

 

「なんか、急にビクッとしたけど……大丈夫?」

 

「い、いや、なんでもねぇ! うん、マジでなんでもねぇ!」

 

 ***

 

 教室の窓から差し込む春の陽光が、机の上に柔らかな影を落としている。

 午前の授業は数学。先生の穏やかな声が響くなか、クラスメイトたちはそれぞれノートを取り、黒板の数式とにらめっこしていた。

 

(——さて、話の続きだけど)

 

 ふと、脳内にフェルクスの声が響く。

 

(話の続き? なんだっけ?)

 

(……もう忘れたのかい? 僕たちの今後の方針なんだけど)

 

(ああ、朝の話か……)

 

 俺は数学のノートを取りながら、意識の半分をフェルクスとの会話に向ける。

 最初こそ違和感があった念話も、慣れてくると案外自然にできるもんだ。

 

(そう。昨日も言ったけど、この町には確実にネザードが集まってくる。やつらはマギアの力を感じ取って、活発に動き出しているはず)

 

(つまり、これからも戦いは避けられねぇってことか)

 

(その通り。だからこそ、この町にあるマギアエンブレムを集める必要がある。魔法少女として戦うなら、力は多いに越したことはないからね)

 

(マギアエンブレム……昨日の戦いで俺が使った、あの狐の紋章みたいなやつか)

 

(そうさ。世界中に散らばっているけど、特にこの町にはいくつか有るのが確実だよ)

 

(ふーん……マギアエンブレムを集めると俺はパワーアップできるのか?)

 

(いや、分かりやすく言うとフォームチェンジ……かな。マギアエンブレムにはそれぞれ対応した力が宿っている)

 

(ああ、なるほど。フォックスなら狐火、別のエンブレムなら別の技ってことか)

 

(そうだね。そして、一人で戦うには限界がある。もしも仲間になれそうな適性者がいれば、一緒に戦ってもらう)

 

(……俺以外にも、魔法少女になれる奴がいるのか?)

 

(うん、いるよ。この世界には、マギアの力を引き出せる素質を持つ者が一定数いる。その中でも特に適性がある者なら、マギアエンブレムと共鳴して力を得ることができるんだ)

 

(なるほどな……)

 

 俺はペンをカチカチと弄びながら、少し考え込む。

 

(つまり、やることはシンプルに三つか)

 

(ふむ、聞こうか)

 

(まず一つ目。ネザードはこれから増える、一般人も巻き込まれるかもしれねぇ。 だから見つけ次第倒す)

 

(ふむ、正解)

 

(で二つ目は、この町にあるマギアエンブレムを探し出して回収すること。俺たちの戦力を強化するためにな)

 

(その通りだね)

 

(そして三つ目、マギアの素質を持つ奴を探して仲間を増やす)

 

(大正解!)

 

 フェルクスが満足げに言う。

 俺はボールペンを指で回しながら、ぼんやりと考える。

 

(しかし、仲間かぁ……)

 

 まぁ、一人で戦うよりは、確かに仲間がいたほうが心強いのは間違いない。

 

(でも……そんな都合よく、適性者が見つかるもんかね?)

 

(それがね、マギアの素質を持つ者は、大抵既に何かしらの力を無意識に発揮しているものなんだ)

 

(無意識に……?)

 

(例えば、異常な身体能力を持っていたり、直感が鋭すぎたり、普通じゃない力を見せていたりね。そういう者は、マギアの影響を受けている可能性が高い)

 

(……ふーん、つまり、そういうヤツを見つければいいのか)

 

(そういうことさ)

 

 話がまとまり、俺は小さく息を吐いた。

 

(まぁ、とりあえず今日の放課後は怪物とマギアエンブレムの捜索ってことでいいな?)

 

(うん、それで問題ないよ)

 

 ちょうどそのとき——

 

「では、この問題を……天宮あいりさん」

 

「……へ?」

 

「前に出て、解いてみてください」

 

 数学教師が俺の名前を呼んだ。

 

(あ、やっべ……)

 

 まったく話を聞いてなかった……が

 黒板の数式を一瞥すると、すぐに解法が浮かんできた。

 

(まぁ、こんくらいなら……)

 

「はいはい、行きますよっと」

 

 席を立ち、前に出てチョークを手に取る。

 問題は連立方程式。中学数学は俺にとっては簡単な部類だ。

 

(つーか、数学は得意なんだよな)

 

 手慣れた手つきで式を整理し、さらさらと解答を書いていく。

 数秒後、最後の答えを書き終えた。

 

「はい、終わりっと」

 

「……お見事。正解です」

 

 教師が頷くと、クラスメイトたちの間で「すげぇ」「やっぱあいりって頭いいよな」と小さなざわめきが広がった。

 

(へぇ、キミって頭もいいんだね)

 

(数学は変わらないしな。これくらいは普通だ)

 

(変わらない?)

 

(ああ、いや何でもない)

 

 うっかり前世絡みの事を言ってしまったが、どうやら念話ではこういった思考は向こうに伝わらないらしい。

 俺は何事もなかったように席へ戻る。

 

(まぁ、やることがハッキリしたし、放課後はしっかり動くか)

 

(うん、よろしく頼むよ)

 

 ***

 

 放課後。

 俺は一人、昇降口へ向かっていた。

 れんげやひなたは部活があるため、放課後は基本的に俺一人で帰宅することが多い。

 下駄箱から靴を取り出し、履き替えようとする。

 すると、不意に制服の裾をくいっと引っ張られる。

 

「……あ、あの……」

 

 小さな声とともに、俺の視界に現れたのは風見いろは——クラスメイトの一人だ。

 彼女は人と目を合わせるのが苦手なのか、俺の顔を見ずに少し俯きながらモジモジとしている。

 緑のショートカットの前髪は長めで、片目が隠れるほど。

 体型も小柄で華奢。全体的に「ちょっと頼りなさそう」な雰囲気を持った少女だった。

 

「お、いろはじゃん。どうした?」

 

「あ、あのね……えっと……」

 

 彼女は視線を右へ左へ泳がせながら、小さな声で言った。

 

「……この後……ゲーセン、行かない?」

 

「ゲーセン?」

 

 俺が聞き返すと、いろははコクリと頷く。

 

「い、いつもウチらがやってる『ブレギア』……アプデ、来たらしくて……」

 

「マジで?」

 

 一気に興味が湧く。『ブレギア』、正式名称『ブレイブハートギア』は俺といろはがよく遊んでいる格ゲーだ。

 キャラごとのコンボが豊富で、対戦の駆け引きが楽しい。

 

「……新キャラも追加されたって……ウチ、動画で見たけど……結構強そうだったよ……?」

 

「マジか……新キャラか……クソ、気になる……!」

 

 俺は拳を握りしめる。新キャラの情報なんて知らなかった。

 今すぐ触ってみたいくらいだ。

 

 しかし——

 

「……あー、でもわりぃ」

 

 俺は頬をかきながら、残念そうに首を振った。

 

「今日は先約があるんだわ……」

 

「……あっ……そ、そうなんだ……」

 

 いろはの声が少し小さくなる。どこか寂しそうだ。

 

「悪ぃな、また今度な」

 

「う、ううん……いいの……。また、別の日に……」

 

 いろはは少し肩を落としながらも、無理に笑顔を作ってくれた。

 

 そんな彼女がふと、思い出したように口を開く。

 

「……そういえば、昨日……ウチの近所で、原因不明の爆発事故があったみたいで……」

 

「爆発?」

 

「うん……。夜遅くに、住宅街の路地裏で……」

 

「住宅街の路地裏……?」

 

 思わず聞き返してしまった。

 

「うん……。電柱とか地面、壁とかが、一部壊れてたみたい……。でも、火災とかは起きてないみたいで……。警察も調べてるけど、原因は分からないみたい……」

 

「物騒だな……」

 

「それに、最近……ちょっと不穏なニュース……増えてる気がする……」

 

 いろはは前髪の奥から、じっと俺を見つめる。

 

「だから……気をつけてね、あいりちゃん」

 

「……お、おう」

 

 一瞬、冷や汗が出そうになった。

 

(それ……昨日、俺が戦ったせいだよな……)

 

 昨晩、ネザードの怪物と戦った際、確かにあの住宅街の路地裏で派手にやり合った。

 敵の攻撃で電柱や地面が破損し、戦闘の衝撃で壁にもヒビが入っていた。

 

(……まさか、こんなに早く話題になるとはな……)

 

「まぁ……俺も気をつけるよ」

 

 そう言って軽く笑ってみせると、いろははホッとしたように小さく頷いた。

 

「うん……。じゃあ、またね……」

 

「ああ、またな」

 

 いろはが去った後、俺は小さく息を吐く。

 

(……やべぇな)

 

 戦闘の痕跡が残るのはマズイと思ってはいたが、実際に話題になると焦る。

 これからも戦う以上、今後はもっと後始末に気をつけるべきだろう。

 

(……放課後の捜索、気を引き締めねぇと)

 

 俺は空を見上げながら、小さく拳を握った。

 

 

 




長くなった割には話が進んでないね!
次回はエンブレム探しだ!
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