TS転生魔法少女マギア★あいり   作:お前も魔法少女になれ

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第五話 結構キツイって……

 夕焼けに染まる街を歩きながら、俺はフェルクスと共にマギアエンブレムを探していた。

 フェルクスの耳がピクピクと動き、時折立ち止まっては辺りを見渡している。

 

「で、どうやってエンブレムを見つけるんだ?」

 

 俺の問いに、フェルクスは胸を張るようにして答えた。

 

「僕には近くにあるマギアをある程度は感知できてね。強い気配があればすぐに分かるよ」

 

「……お前、そんな便利能力持ってたのかよ、じゃあすぐ見つかるのか?」

 

「いや、残念ながら僕の探知能力は広範囲を探れるわけじゃないんだ。近くにあれば気付けるけど、遠くにあるのは無理だね」

 

「結局、地道な作業ってわけか……」

 

 ため息をつきながら、俺は周囲を見回した。マギアを感知できない俺にはいつもと変わらない町が見える。

 

「そういえば、昨日俺が倒したネザードとか言う怪物って、どのくらいの強さだったんだ? どいつもあんな感じなのか?」

 

「ネザードの中じゃ一番下の強さかな。いわゆる一般兵とかザコ敵だね。 僕たちはアレをシャドウって呼んでいたよ」

 

「あれで、ザコ敵かよ……」

 

 正直、初めての実戦で襲いかかってきたあいつは、全然“ザコ”なんて印象じゃなかった。

 スピードはあったし、戦い慣れてない俺が少しでも判断を間違えたら、怪我どころか……やられてた可能性すらある。

 

 俺の反応に、フェルクスは少し笑いながら続けた。

 

「まぁ、魔法少女になりたての君からすれば、十分厄介だったかもしれないね。でも、本当にヤバいのはその上からさ」

 

「……その上?」

 

「ナイトメア。シャドウよりも強くて、何かしらの力を与えられていたり、取り込んでいたりする奴もいるね。こいつらは特殊な力を持っている場合が多いから、注意が必要だよ」

 

「特殊な力、ねぇ……例えば?」

 

「そうだね……再生能力を持つ個体とか、分身する奴、幻を見せる奴、遠距離攻撃が得意な奴もいるね。とにかく、シャドウと違って“ただの怪物”じゃなくなるんだ」

 

「……めんどくせぇな」

 

 俺は頭をかきながら、面倒な相手が増えることにげんなりした。

 とはいえ、避けられるわけもない。俺が戦わなければ一般人が巻き込まれる可能性が高い。

 

「で、そのナイトメアってのは、もうこの町にいるのか?」

 

「君が力に目覚めたのが昨日だし、まだナイトメアクラスが集まってくることはないと思うよ」

 

「……どういうことだ?」

 

「ネザードは魔法少女の存在……いや、マギアを敏感に察知するんだ。でも、君の力が発現してからまだ時間が経っていないし、奴らが集まって来るにはもう少し時間がかかるはずさ」

 

「つまり、まだ強い敵が来る段階じゃないってことか」

 

「うん。今この町にいるのは、おそらくシャドウだけじゃないかな。でも、君が戦い続ければ、いずれナイトメアも現れるだろうね」

 

「……フラグみたいなこと言うなよ」

 

 

 その後、しばらく街を歩き回ったが、結局それらしいものは見つからなかった。

 そろそろ諦めるかと考え、俺はフェルクスを見て言った。

 

「おい、帰るぞ」

 

 すると、フェルクスは意外そうな顔をする。

 

「今日はここまでにするのかい?」

 

「ちがう、門限が近い」

 

 俺はスマホを見ながら答える。

 

「18時までに帰らないと心配されるからな。……続きは夜だ」

 

 フェルクスは一瞬驚いたが、すぐに納得したように頷いた。

 

「そういえば君はまだ中学生だったね」

 

 俺はため息をつきながら、来た道を引き返し始めた。

 

(まったく……エンブレム探しってのも簡単じゃないな)

 

 このまま手ぶらで帰るのは少し悔しいが、焦っても仕方ない。

 そう自分に言い聞かせながら、俺は家へと向かった。

 

 ***

 

 家に帰り、夕飯や宿題、入浴済ませ……時計を見る。

 

(……23時か)

 

「そろそろ行くか」

 

「行動再開かい?」

 

「ああ、この時間まで待てばバレないだろ」

 

 俺はそっと部屋の窓を開けた。夜風が静かに吹き込み、カーテンを揺らす。

 家を出るとなると、玄関は使えない。親に見つかるリスクが高いし、何より「ちょっと外出てくる」なんて言って出られる時間でもない。

 

(こういうとき、1階の部屋でよかったな……)

 

 音を立てないように慎重に窓枠をまたぎ、外へと降りる。

 

 足音を忍ばせながら家の敷地を抜ける。

 

「やれやれ、まるで忍者みたいだね」

 

「バレたら面倒だからな……」

 

 俺はそのまま人通りが少なくなった住宅街を抜け、公園へと足を踏み入れる。

 昼間とは違い、夜の公園は静まり返っていた。街灯の明かりがぼんやりと周囲を照らしているが、暗がりの中に何かが潜んでいてもおかしくない雰囲気だった。

 

 そのとき──

 

「……あいり、こっちだ」

 

 フェルクスが急に耳をピンと立てる。

 

「どうした?」

 

「マギアエンブレムの反応がある。すぐ近くだ」

 

「マジか!」

 

 俺はフェルクスが示した方向へと駆け出した。

 

 ——と、同時に。

 

「……ん?」

 

 フェルクスの耳がピクリと動いた。

 

「どうした?」

 

「ネザードの反応もある……でも、大したことはないかな。シャドウクラスだ」

 

「大したことはないって……昨日のヤツと同じくらいってことだろ? 結構キツイって……」

 

 俺は走りながらフォックスエンブレムを取り出し、変身の準備をする。

 

 しかし——

 

「!!」

 

 突然、フェルクスの表情が変わった。

 

「——!? 反応が……急に跳ね上がった!?」

 

「は……? なんだそれ」

 

「反応がシャドウからナイトメアに変わったんだ!」

 

「おいおい、ナイトメアはまだ居ないんじゃなかったのかよ!」

 

「違う……この感じ……あいつ、エンブレムを取り込んだんだ!」

 

「……はぁ!? エンブレムを取り込んだって……それって……」

 

 ——刹那、地面が揺れた。

 俺は慌てて足を止め、周囲を警戒する。

 

 すると、公園の奥、街灯の明かりが届かない暗がりの中で何かがうごめく気配がした。

 

 視線を向けた瞬間——何かが飛び掛かってきた。

 砂利が舞い、衝撃で地面が抉れる。

 

 俺は思わず一歩後ずさる。

 

 街灯の下、姿を現したのは──

 

「……馬?」

 

 だが、普通の馬じゃない。

 全身が漆黒の影のような質感を持ち、その体からは黒い霧のようなものが立ち上っている。

 瞳は真紅に染まり、頭には鋭く長い角が一本生えていた。

 

「……違う。黒い……ユニコーン……か?」

 

「間違いない。ユニコーンエンブレムを取り込んだシャドウ……いや、ナイトメアだよ」

 

 フェルクスが低く呟く。

 

 ユニコーンのナイトメアは、荒々しく鼻息を吐き、鋭い前脚を地面に打ち付けた。その動き一つ一つが、昨日のシャドウとは比べ物にならない威圧感を放っている。

 

(……くそ、こっちはまだ殆ど戦ったことすらねぇってのに)

 

 でも——

 

(やるしかねぇ……!)

 

 俺は深く息を吸い込み、フォックスエンブレムを強く握った。

 

 エンブレムが淡く光を帯び、腰に銀のベルトが現れ──俺は迷いなく、叫ぶ。

 

「——行くぞ、変身(マギアチェンジ)!!」

 

 ——光が、爆ぜた。




次回戦闘です

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