TS転生魔法少女マギア★あいり 作:お前も魔法少女になれ
夜の公園に、不気味な気配が漂っていた。
目の前に立ちはだかるのは、黒い獣——ナイトメア。
その姿は漆黒のユニコーン。四肢はしなやかで、筋肉の引き締まった身体は無駄のない美しさを持っている。だが、その瞳には理性も誇りも感じられず、ただ闇の意思に従う獣のようにギラついていた。
俺は腰のベルトにマギアエンブレムを差し込む。
《マギア・チェンジコンプリート!!》
銀の光が弾け、俺の身体が魔法少女の姿へと変わり、闘志が燃え上がるのを感じる。
変身が完了した瞬間、黒い影が視界から消える。
次の瞬間――
反射的に横へ跳ぶ。直後、俺のいた場所を黒い閃光が駆け抜けた。
後方の街灯が一瞬で吹き飛び、鉄の柱がへし折れる。
ユニコーンは地面をえぐりながら止まり、ゆっくりと首を持ち上げた。
「……マジかよ、速すぎる……!」
「気をつけて、あいり! ナイトメアは特殊な能力を持ってる! 警戒して戦うんだ!」
フェルクスの声が聞こえた瞬間、俺は地面を蹴った。
ユニコーンが二回目の突進を放つ。
突風が肌を撫で、黒い閃光が体をかすめる。
「じゃあ、こいつの能力は何か分かるか!?」
ナイトメアをかわしながら叫ぶ。
「ナイトメアは個体ごとに能力が違うんだけど……こいつは、ユニコーンエンブレムを取り込んだナイトメアだ!」
「……ってことは?」
「ユニコーンの力を使う! つまり——素早さを活かした突進だ!」
「んなもん今、身をもって体感してるよ!!」
俺は再び飛び退く。
目の前を通過したユニコーンの突進は、空気を切り裂くほどの勢いで、再び地面をえぐりながら止まった。
距離を取る。だが、奴の脚が地を踏みしめた瞬間——漆黒の角が、赤黒く輝く。
「——ッ! アイツの角! なんか怪しく光り始めたぞ!!」
「そうだ……思い出した!あとユニコーンは……角からビームを撃つ!」
「なにぃ!?」
刹那——眩い閃光が一直線に飛び、俺の体をかすめた。地面が抉れ、土煙が舞い上がる。
(……マジかよ、突進に加えてビームまで撃てるのか!?)
完全に格上だ。迂闊に突っ込めば、一瞬で串刺し、距離を取ればビーム。
(考えろ、俺。 どうすればあいつに勝てるか……)
俺は拳を握り、狐火を生み出す。
適当に放った狐火はゆっくりと飛んで行き、当然のように回避された。
「……くそ、狐火の使い勝手がもう少し良ければ……」
せめてもう少しスピードか、せめて複数出せればな……と考え。
「……そうか、これ、複数出せるんじゃねえのか?」
ユニコーンが地面を蹴る。
(考えてる暇はねぇ!)
俺は両手を前に突き出し——
「——行けッ!」
二つの狐火が、ユニコーンの進路上に浮かぶ。
突進してきたユニコーンは狐火に直撃し、爆発の衝撃でヤツの動きが止まった。
その瞬間、右手に狐火を纏わせ、ヤツ目掛けて大きく踏み込む。
「喰らえッ!!」
狐火を纏った拳がユニコーンの首元に直撃、炎が爆ぜ、黒い身体が焼かれていく。
「——ギャアアア!!」
ユニコーンは叫び声をあげ、火の粉が舞い上がる。
だが——
「……まだ、か!」
ユニコーンが地を蹴り、一瞬で間合いを取った。
ダメージは入った。だが、決定打ではない。
(こいつ、まだ動ける……!)
ユニコーンの赤い瞳がギラリと光る。 角が赤黒く発光し——
「ッ!! ビームが来る!!」
咄嗟に地面を蹴って回避する。
鋭い光線が俺の頬をかすめ、地面に深い焦げ跡を刻んだ。
——速い。突進も速いが、ビームの発射もほぼ溜め無しだ。
——なら、どうする?
俺は僅かに視線を横に流し、公園の地形を確認する。
目の前には無事な街灯が一本、そのすぐ後ろにはジャングルジム。
さらに奥にベンチ。
(……いけるか?)
狐火をヤツの突進の進路上に置いておくのは多分もう通じない。
おそらく一度見せた技が通じるほど甘い相手じゃないだろう。
——なら、
「……誘導する!」
俺は一歩踏み込むと、あえてユニコーンの目の前に立った。
「ほら、こっちだ!」
ユニコーンの瞳が細められる。
一瞬の静寂。
瞬間、黒い影が地面を蹴り、猛スピードでこちらへと突進してきた。
(狙い通り……!)
俺はギリギリのタイミングで横に跳び、同時に狐火を放つ。
突進中のこいつは回避できない!
「当たれ!!」
爆発する狐火。
ユニコーンの身体が爆風に包まれ、バランスを崩した。
(今だ!!)
狐火を放つと同時に、俺はすでに最も威力の高い一撃を準備していた。
炎を足に纏い、地面を蹴る。
跳躍。燃え上がる炎。
「喰らい……やがれェェ!!」
空中で回転しながら、火焔を纏った踵落としをユニコーンの頭上に叩き込む!
直撃。
ユニコーンの角が折れ、漆黒の身体が崩れていく。
「ギ……ギィィ……!!」
ユニコーンは咆哮を上げ、その姿は黒い霧となって消滅した。
「やっ……やった……!」
荒い息を吐きながら、俺は膝をつく。
息を整えているとフェルクスが声を掛けてきた。
「いやぁ、驚いたよ。 ナイトメアを倒してしまうなんて」
「へへっ……まぁな……だけど、もう少しスマートに決めたかったぜ……」
「いや、これで十分さ。初めての強敵相手に、ここまでやれたんだからね。 さあエンブレムを回収しよう」
俺は地面に落ちたユニコーンエンブレムを拾い上げる。
(……こいつも、昔は魔法少女たちと一緒に戦ってた一人だったんだよな……)
「……借りるぜ、お前の力」
その言葉に応えるように、ユニコーンエンブレムは淡く光っていた。
戦闘シーンで体力を使い果たしので文字数少なめです