TS転生魔法少女マギア★あいり 作:お前も魔法少女になれ
俺は地面に落ちたユニコーンエンブレムを拾い上げる。
(……こいつも、昔は魔法少女たちと戦ってた英雄の一人だったんだよな……)
「……借りるぜ、お前の力」
その言葉に応えるように、ユニコーンエンブレムは淡く光っていた。
冷たい金属の感触と共に、微かに温もりを感じるような気がする。
「フェルクス、こいつもお前と同じ英雄だったんだよな?」
「そうだよ。ユニコーンも、かつてネザードと戦った英雄達の一人さ」
「……なら、なんでお前みたいに生き物になって喋らないんだ?」
俺の問いに、フェルクスは少しだけ寂しそうな顔をする。
「……本来なら、エンブレム達は僕みたいに生き物の姿を持つことができる。でも、戦いの果てに封印の一部となった彼らは、その力を使い果たしてしまったんだ」
「封印の一部?」
「うん、僕の仲間……エンブレム達は最後の力を使ってネザードを封じ込めた。だから、今はただのマギアエンブレムとして残っているだけなんだよ」
「じゃあ、お前は……」
「僕がこうして今も生き物の姿で喋れていられるのは、皆に封印の監視を任されたんだ……一番若い僕が一番長く見れるだろうってさ……結局封印は解けちゃったんだけどね……」
フェルクスは淡々と語るが、その言葉には重いものを感じた。
最後の力……つまり、英雄たちは戦いの中で力を失い、それでも封印を完成させるために自らを犠牲にしたってことか。
俺は手の中のユニコーンエンブレムをじっと見つめた。
「……じゃあ、こいつの力は使えないってことか?」
「いや。微かな力は残っているよ。さっきのナイトメアもユニコーンの力を引き出していただろう?」
「そっか……じゃあ俺もこれで変身することはできるんだな?」
「もちろんさ。微かな力ではあるけどね」
俺はゆっくりと頷いた。
なら、俺がこの力を使いこなすだけだ。
――その時
「ッ……!」
ズキン、と鈍い痛みが走る。
膝が震え、視界が僅かに揺れた。
さっきの戦いで、気づかないうちに蓄積していたダメージが、一気に押し寄せてくる。
「大丈夫かい!?」
「……ああ、平気だ。ただ、ちょっと……疲れただけだ」
俺はフラつく足を無理やり動かし、公園のベンチに腰を下ろした。
魔法少女の力は確かにすごい。だが、ダメージは蓄積するし、疲労が抜けるわけじゃない。
時計を確認するまでもなく、夜は深い。
周囲は静まり返り、虫の鳴き声すら聞こえない。
(……とりあえず、今日は帰るか)
そう思った矢先——
「……待った、あいり……今何か感じなかった?」
「……え?」
言われて初めて、俺は背筋をゾクリと震わせた。
まるで、遠くからじっと観察されているような感覚。
それは、戦闘時に感じたナイトメアの殺気とは違う。
もっと冷静で、理性的で、でも確かに“敵意”を持った何かの視線。
(……なんだ、この感覚……!?)
俺は本能的に、夜空を仰いだ。
遠く——遥か彼方の闇の中へ。
***
「……やっぱり、この町に魔法少女がいるんだね」
夜のビルの屋上。
冷たい夜風に長い黒髪をなびかせ、少女は眼下の街を見つめていた。
彼女の足元には、黒い獣のような影が佇んでいる。
三つの頭を持つ漆黒の魔獣。
三つの頭のうち、一つがグルル……と低く唸る。
「……うん、間違いない。今の反応……魔法少女、だね」
この町には、ナイトメアを討ち倒せる力を持つ者がいる。
確かに感じた——魔法少女の“光”を。
「ボクたちの秩序を乱す存在……なら、放っておくわけにはいかない」
二つ目の頭が、グルル……と低く唸る。
少女は目を細める。
「それは、まだわからない」
少女は小さく首を振った。
「……でも、ネザードにとって、ううん、世界にとって魔法少女は害。だから、ボクはそれを排除するためにいる」
この世界に必要なのは、ネザードの“完全な秩序”だ。
混沌と争いに満ちた世界では、人々は不幸になるだけ。
だからこそ、ネザードは世界を正しく導かなきゃいけない。
三つ目の頭が、短く唸る。
「……うん。すぐに確かめに行くよ」
風が吹く。
この夜のどこかにいる“光”を持つ者——魔法少女。
その存在が、ネザードの理に背くものなら……。
月明かりに照らされた彼女の瞳は、冷たく、鋭く光っていた——。
今回も短いです、ごめんよ