TS転生魔法少女マギア★あいり   作:お前も魔法少女になれ

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急ぎで書いたので少し荒いかもしれません


第八話 あ、俺ならいけるんだ

 翌朝。

 

 教室の窓から差し込む柔らかな光が、眠気を誘う。

 

「……ふぁぁ……」

 

 俺は机に突っ伏して欠伸を噛み殺していた。

 

(昨晩の戦い、キツかったな……)

 

 フォックスエンブレムを使いこなせるようになったとはいえ、ナイトメアは強敵だった。魔力の消耗も激しく、正直、今日は一日中寝ていたい気分だ。

 

 だが、現実は俺に休息を与えてはくれなかった。

 

「天宮さん、ごきげんよう」

 

 唐突に、上品な声音が耳に届く。

 

 「……ん?」

 

 眠気まなこで顔を上げると、目の前には金髪の縦ロール。

 

「……お前、鳴神……だっけ?」

 

「ええ、鳴神すみれですわ。覚えていてくださって光栄ですわね」

 

 微笑む彼女を見て、俺は若干面食らった。

 

(なんでこいつが俺に話しかけてくるんだ……?)

 

 鳴神すみれ。名門・鳴神財閥の令嬢で、成績優秀・容姿端麗・品行方正と絵に描いたような“お嬢様”。

 

 だが、俺とはこれまでほとんど関わりがない。お互いに存在を知っている程度の関係だった。

 

 そんな彼女が、なぜか自分に話しかけてきたのだ。

 

「突然ですけれど、放課後、お時間いただけるかしら?」

 

 すみれが優雅に尋ねる。

 

「悪いけど、放課後は用事があるんだ……」

 

 適当に流そうとすると――

 

「そうですの……では、こちらをご覧になっていただける?」

 

 すみれはスマホを取り出し、画面を俺の前に差し出した。

 

「ん……?」

 

 何気なく視線を向けた俺だったが、次の瞬間、血の気が引いた。

 

(っ!?)

 

 画面に映し出されていたのは——昨晩の戦闘の映像。

 

 フォックスエンブレムで変身した自分が、ナイトメアと戦う姿が克明に記録されている。

 

 戦闘開始から、狐火を纏った踵落としでナイトメアを粉砕するまで——すべて。

 

 ——完全に、バレてる。

 

 「ほ……放課後な! そういえば今日は何もなかったわ!」

 

 俺は冷や汗をかきながら、即座に訂正した。

 

 すみれは満足げに微笑む。

 

「ふふ、よかったですわ」

 

 彼女の黄色い瞳が、どこか楽しげに輝いていた。

 

 ***

 

 放課後——。

 

 校門を抜けた先には、俺を待ち構えていたすみれがいた。

 

 彼女は高級車のそばに立っており、運転手が恭しくドアを開けている。

 

「さあ、乗ってくださる?」

 

「……マジかよ……」

 

 俺は改めて、目の前の“桁違い”を実感した。

 

(高級車ってレベルじゃねぇ……黒塗りでピッカピカ……めちゃくちゃ長いし……)

 

 運転手付きの車なんて、普通の中学生が乗る機会はまずない。だが、すみれにとってはこれが日常なのだろう。

 

 周囲の生徒たちも、ちらちらとこちらを見ている。

 

(目立ちすぎだろ……)

 

 だが、俺には断る選択肢はない。

 昨晩の戦闘映像を握られているし、すみれの考えがわからない以上、ここで逃げるわけにはいかない。

 

 ため息をつきながら、車内へ乗り込んだ。

 

 すぐにドアが閉められ、車は静かに動き出す。

 

 車内は広く、座り心地のいいシートが並ぶ。高級な革張りで、ほんのり香るアロマまで上品だった。

 

「で、話ってのは?」

 

「焦らなくても大丈夫ですわ。まずは改めて自己紹介をしましょう」

 

 すみれが優雅に微笑む。

 

「私は鳴神すみれ。鳴神財閥の令嬢にして、この町の未来を担う者のひとり」

 

「はいはい、お嬢様すごいね」

 

「フフ、軽いですわね。でも、天宮さんもなかなかの有名人ですわよ?」

 

 すみれはスマホを取り出し、軽く操作すると。

 

「天宮あいり。13歳。身長150センチ、体重43キロ。幼馴染は剣崎れんげ、白守ひなた、風見いろは。交友関係は狭く、基本的に幼馴染以外の女子とはあまり関わらない、しかし同じクラスの桜井りぼんとは比較的よく話す。可愛らしい外見と気さくな態度から男子からは結構人気がある。運動神経もよく体育の授業では男子相手にリレーで圧勝」

 

「……」

 

「あとは、あなたの自室——可愛らしいぬいぐるみが並んでいますのに、壁にはプロレスラーのポスターが貼ってあるのが少々意外でしたわ。ちなみに好物はハンバーグですわね?」

 

「……なんでそんなことまで知ってんだよ……」

 

 思わず身を引く。確かに、自分はそんなに交友関係が広いわけじゃない。だが、それをここまで詳しく把握されているのは、正直、気味が悪い。

 あと部屋の中を把握されてるのも普通に怖い。

 

 「これくらいは当然ですわ。なにせ——この町に関する情報の大半は、鳴神財閥が管理していますもの」

 

「……は?」

 

「町の監視カメラ、公共サービス、医療機関、流通業……鳴神財閥はあらゆる分野に関わっていますのよ。その気になれば、町のほぼすべての情報が私の手元に届きますの」

 

「……いや、怖えよ」

 

 もはや情報収集のレベルを超えている。

 

 ほぼこの町のインフラそのものが鳴神財閥の手の中にあるということではないか。

 

「それで、あの映像も……」

 

「ええ、町の監視カメラのデータを集約したら、あのような興味深い映像が出てきましたの」

 

 すみれの瞳が、ワクワクしたように輝いている。

 

「ずっと退屈でしたのよ。何でもお金で解決できる人生……そんなもの、刺激がなくてつまらないですわ」

 

「はぁ……」

 

「でも、ようやく見つけましたの。“魔法少女”と“怪物”……! こんな非日常が、この町に存在していたなんて!」

 

 すみれの声が弾む。

 

「だから、私は知りたかったのですわ。あなたのこと、魔法少女のこと、戦いのこと……」

 

 そこまで聞いて、俺はカバンの中を探る。

 

「ったく……フェルクス、出番だぞ」

 

 ポン、と軽く叩くと、カバンの中から白銀の小さな狐が顔を出した。

 

「やれやれ、ついに紹介の時が来たみたいだね」

 

 フェルクスがひょいと飛び出し、すみれの前に座る。

 

「僕の名はフェルクス。天宮あいりのパートナーさ」

 

 すみれは興味深そうにフェルクスを見つめる。

 

「まあ、愛らしい……本物の妖精みたいですわね」

 

「はは、妖精ってのは初めて言われたなぁ」

 

 フェルクスは冗談めかして笑いながら、すみれに向き直る。

 

「さて、お嬢さん。君が知りたがっていることを話そうか。昨晩の怪物——あれは“ナイトメア”という魔獣。そして、その背後にいるのが“ネザード”」

 

「ネザード……」

 

「世界を支配しようとする存在さ。ナイトメアはネザードの眷属で、彼らの手足となって動いている。放っておけば、世界に災厄をもたらすだろうね」

 

「……だから、天宮さんは戦っていたのですわね」

 

「まあ、成り行きだけどな」

 

「それで、ひとつ聞きたいのですけれど……」

 

 すみれが、真剣な眼差しを向けてきた。

 

「私も、その戦いに参加できますの?」

 

「……は?」

 

「だって、こんなにも面白そうなことが、目の前にあるのですもの。私が関わらない理由がありませんわ!」

 

 すみれはまるで遊園地に来た子どものように、目を輝かせている。

 

「……正直、お前みたいなお嬢様が戦場に出るのはやめといた方がいいと思うんだけど……」

 

 俺は心底呆れたように言う。

 それも当然だ。すみれは間違いなく、戦うこととは無縁の生活を送ってきた人間だろう。

 いや、俺も人の事は言えないが……転生者だし多少はね?

 

「お金もあって、優雅な暮らしをしてて、危険な目に遭う必要なんてどこにもない。なのに、なんでわざわざ危ない橋を渡ろうとするんだよ」

 

「だからこそ、ですわ」

 

 すみれは静かに微笑んだ。

 

「私は……生まれた時から何不自由なく生きてきました。遊びでも、勉強でも、遊具も服も、必要なものはすべて揃えられ、望めば何でも手に入りましたの。でも——それが退屈なのですわ」

 

 「……贅沢な悩みだな」

 

「ええ、そうでしょうね。だけど、あなたには分からないでしょう? 何の努力もせずに、すべてが手に入ることの虚しさを」

 

 すみれの目には、どこか冷めた色が宿っていた。

 

「だから私は、ずっと求めていましたの。私が心から欲しいと思えるもの……お金では手に入らないもの……そして、ようやく見つけましたわ」

 

 彼女の視線が、俺を貫く。

 

「“魔法少女”と“怪物”という、非日常を」

 

 その言葉に、俺は小さく息を吐いた。

 俺も転生者として非日常を求めていた人間だ、理解できない訳じゃない、彼女と俺は同類だ。

 そして同類だからこそ理解した、彼女の言葉には、確かに本気が宿っていた。

 

「とはいえ、お前が魔法少女になれるとは限らないぞ?」

 

 俺が腕を組んで言うと、フェルクスが頷く。

 

「その通りさ。魔法少女になるには、マギアの素質とマギアエンブレムとの適性が必要だからね」

 

「マギアの素質? マギアエンブレム……?」

 

「俺が持ってるのがそうだ。例えば、これは“フォックスエンブレム”」

 

 すみれが首を傾げるので俺はポケットから狐の紋章が刻まれたエンブレムを取り出した。

 

「そして、こっちは昨日の戦いで手に入れた新しいやつ」

 

 もうひとつのエンブレム——ユニコーンエンブレムが光を帯びる。

 

「エンブレムは、かつて戦った英雄たちの魂。適性のある者にのみ、その力を授けるんだ」

 

「では、私に素質と適性があるかどうかは……」

 

 すみれがフォルクスを見つめる。

 

「お嬢さん……君には素質はあると思うよ? 適性の方は……エンブレムしだいだけど」

 

「まあ!」

 

 すみれが嬉しそうに顔を輝かせる。

 

「でもね」

 

 フェルクスの金色の瞳が、すみれを鋭く見つめた。

 

「魔法少女になるってことは、戦いに身を投じるってことだよ。昨日みたいなナイトメアと戦うことになるし、もちろん命の危険もある」

 

「……」

 

「君が求めているのは“非日常”だろう? けど、それは“遊び”じゃない。命が懸かっているんだ。……それでも、君は戦いたいかい?」

 

 静寂が訪れた。

 

 すみれはしばらく目を閉じて、ゆっくりと息を吐いた。

 

「……確かに、ただの興味本位で天宮さんに声を掛けましたわ」

 

 そう言って、再び目を開く。

 

「でも、それだけではありません。私はこの力を得て——“この退屈な人生を、もっと価値のあるものにしたい”」

 

「なるほどね……」

 

 フェルクスが、ニヤリと笑う。

 

「よし、それなら試してみようか。君にマギアエンブレムの適性があるかどうかを。あいり、彼女にエンブレムを!」

 

「へいへい」

 

 すみれの前に、ユニコーンエンブレムを持っていく。

 そしてすみれがユニコーンエンブレムに手を伸ばした、その瞬間。

 

「——お嬢様、到着いたしました」

 

 運転手の落ち着いた声が車内に響き、車が静かに停車する。

 

「あら、もう着きましたのね」

 

 すみれはすっと手を引き、優雅に車を降りた。

 俺達も続いて外に出ると——目の前に広がるのは、桁違いの豪邸だった。

 

「……は?」

 

 思わず呆然とする。

 目の前にそびえ立つのは、まるで城のような巨大な屋敷。広大な庭園には噴水があり、石畳の道が整然と敷かれている。門から玄関までの距離がやたらと長い。

 

「お前の家、デカすぎだろ……」

 

「当然ですわ。鳴神財閥の本邸ですもの」

 

 思わずため息をついていると、すみれは当然のように屋敷の中へと進んでいく。

 

(マジかよ……)

 

 内装も圧巻だった。

 シャンデリアが輝く広大なエントランス、壁には高そうな絵画が飾られ、大理石の床が光を反射している。

 

「お客様がお見えですか?」

 

「ええ、私の部屋に通しますわ」

 

「かしこまりました、お嬢様」

 

 使用人らしき女性が丁寧に一礼すると、すみれは俺を促して階段を上がる。

 そして、すみれの部屋は——

 

「……なんつーか、豪華すぎて落ち着かねぇな」

 

 俺はソファに腰を下ろしながら、あたりを見回す。

 天蓋付きのベッドに、壁一面の本棚、アンティーク調の家具やら高級そうなソファやらが並ぶ、まさにお嬢様の部屋だった。

 

「お嬢様ってすげぇな……」

 

「さて、続けましょうか」

 

 俺が呆れながらも部屋の中を見渡していると、すみれは静かにユニコーンエンブレムを手に取った。

 そしてエンブレムを両手で包み込むと——淡い光が彼女を包み込み、腰に銀色のベルトが現れた。

 

《マギアチェンジ・スタンディングバイ!》

 

 「おお……!」

 

 フェルクスは思わず声を上げる。

 

「べ……ベルトが出ましたわよ!この後どうするんですの?」

 

「そのエンブレムを、ベルトのスロットに差し込むんだ」

 

「ここですわね?」

 

 すみれは表情を引き締め、ユニコーンエンブレムをベルトのスロットに差し込んだ。

 

 《ユニコーンエンブレム・インストール……エラー!》

 

「……え?」

 

 瞬間、ベルトが赤く点滅し、空中にエンブレムがポンッと排出される。

 

「ど、どういうことですの?」

 

「ちょっと貸してみろ」

 

 俺が代わりにユニコーンエンブレムを取って自分のベルトに差し込むと――

 

 《ユニコーンエンブレム・インストール!》

 

「……あ、俺ならいけるんだな」

 

 その瞬間——

 

 光が弾けた。

 

 眩い白銀の輝きが爆発し、淡いピンクの光が舞い散る。

 

 体が浮かぶ。

 

 視界が純白に染まり、幻想的なピンクの輝きが流れ込む。

 霧のような光の粒が揺らめき、まるで夢の世界の中にいるような感覚。

 

 ——衣装が形作られていく。

 

 まず、純白のフリル付きトップスが体を包み、胸元にはピンクのリボンが結ばれる。

 ふんわりと広がる膝丈のフリル付きスカートが現れ、裾にはユニコーンの角を思わせる流線型の模様が刻まれていく。

 肩にはレースのついたショルダーカバー、両手にはレースの手袋。

 足元はピンクのリボンが装飾されたロングブーツ。

 最後に、髪飾りのような形をした白銀のユニコーンの角を模したヘッドアクセが現れ、さらさらと髪がなびく。

 

《マギア・チェンジコンプリート!!》

 

 白銀の光が収束し、ピンクの幻想的な輝きが空間に消えていった。

 新たな姿——ユニコーンフォームが完成する。

 

「おぉ……」

 

 自分の姿を見下ろした。

 フォックスフォームの時とは違い、どこか幻想的で上品な雰囲気を持った変身衣装だった。

 

「な、なぜあなたが変身できますの!?」

 

 すみれが驚愕の声を上げる。

 

「さあな……でも、俺には適性があったってことだろ」

 

 軽くスカートの裾を摘んでみると、ふわりと広がる柔らかな布の感触が伝わってきた。

 

「私にはユニコーンの適性がないようですわね……」

 

 すみれが悔しそうにフォックスエンブレムも試してみるが——

 

《フォックスエンブレム・インストール……エラー》

 

 やはり同じように弾き出される。

 

「つまり……魔法少女になれる素質はあるけど、適性のあるエンブレムが今はないってことか」

 

 俺が腕を組んで言うと、フェルクスが頷く。

 

「そういうことさ。エンブレムは適性のある者にしか力を貸さない。今あるフォックスとユニコーンは、君には合わなかったんだろうね」

 

 すみれは唇を噛み締めたが、すぐに顔を上げた。

 

「……では、私に適性のあるエンブレムを見つければいいのですわね?」

 

「まあ、そういうことになるな」

 

 俺が肩をすくめると、すみれは満足げに微笑んだ。

 

「ならば、決まりですわ。これから私も、あなたたちの戦いに協力いたします、そして私に合うエンブレムを見つけますわよ」

 

 こうして新たな仲間、鳴神すみれが加わり。

 俺の新たな力・ユニコーンフォームが誕生した瞬間だった。




明日からはちょっと投稿遅れます
ちょっと狩りに出てくるので……
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