メレンの外で知り合ったベルと女神アルテミスは、オラリオ迄戻って来た・・・
ベルは、顔に幾つもの古傷を模したメイクを施して、フードを深く被って変装している・・・
ベル
「それで、一体何処に向かっているんですか?」
アルテミス
「ヘルメスがオリオンの矢・・・神をも殺せる槍を保管している」
「その槍を引き取りに来たんだ」
ベル
「・・・ちゃんと許可とか貰ってます?」
アルテミス
「問題無い」
「必要になったら、いつでも取りに来ても良いと言われているからな」
ベル
「・・・怪しい」
アルテミス
「主神を疑うものじゃないぞ」
アルテミスは、ヘルメス・ファミリアの倉庫を物色して・・・奥の方からオリオンの矢を見つけて、引き取って来た・・・
アルテミス
「門番が誰も居ないとは物騒だな」
ベル
「夜明けの時間帯を狙ってきたのに、よくそんな事が言えますね」
アルテミス
「オラリオの住民たちの迷惑になってはいけないからな」
ベル
「まぁ、今更何も言いませんけど・・・協力している時点で共犯だし」
アルテミス
「では、大陸の果てに有るエルソスの遺跡まで行こう」
ベル
「・・・何処ですか」
アルテミス
「オラリオから、南の方に位置する太古の昔からある遺跡だ」
「そこに行かねばならないんだ」
ベル
「・・・まさか、歩いていくなんて言いませんよね?」
アルテミス
「南の大陸まで馬車が出ている」
「それに乗っていこう」
ベル
「時間は、どれくらい掛かりますか」
アルテミス
「今から出発すれば、明日の朝方には到着するだろう」
ベル
「遠い・・・」
アルテミス
「あまり文句を言うものじゃないぞ」
渋々、馬車に乗り込み・・・南の大陸に向かって出発した・・・
次の日の朝・・・
ベル
「やっと着きましたね」
アルテミス
「中々に長旅は辛いな」
ベル
「ココから、遺跡まで近いんですか?」
アルテミス
「そう遠くは無い」
「だが、途中から景色が一変する・・・覚悟はしておいてくれ」
ベル
「・・・良く分かりませんけど、分かりました」
女神アルテミスの案内で遺跡に向かって歩いていると・・・途中から、周囲の植物が全て枯れている風景が続くようになった・・・
ベル
「植物が全部枯れてる・・・何か、毒みたいなものが撒かれたのかな」
アルテミス
「周囲の魔素や生命力を全て吸い尽くされているんだ・・・アンタレスに」
ベル
「アンタレス・・・カブトムシの名前ですか?」
アルテミス
「カブトムシの名前なら、どれだけ嬉しい事か・・・」
「アンタレスは、この遺跡に太古の昔に封印された呪われたモンスター・・・」
「そして、神の力を行使する・・・恐ろしいモンスターだ」
ベル
「そんな恐ろしいモンスターが・・・この遺跡に」
アルテミス
「ベル、頼みが有る・・・」
「もし、アンタレスを倒すときは・・・このオリオンの矢を使ってくれ」
「何が有っても、躊躇わずに使うんだ」
ベル
「何か事情が有りそうですけど・・・今の所は預かっておきます」
ベルは、女神アルテミスからオリオンの矢を預かると、背中に背負って・・・遺跡の最深部に向かう・・・
ベル
「・・・人が倒れてる!!」
「・・・もう、亡くなってる・・・」
アルテミス
「・・・私の眷属達だ」
ベル
「アルテミス様・・・ココで、何が有ったのか教えて貰えますか」
アルテミス
「・・・数週間前から、この遺跡を中心に異形のモンスター達の出現・・・草木が急に枯れるなどの異変を見つけて、私の眷属達と調査に来た」
「その時に、封印が解かれたアンタレスが目覚め・・・次々と眷属達の命を奪っていった・・・」
ベル
「アルテミス様・・・貴方は、肉体が有りますか?」
アルテミス
「・・・何故、そう思うのか」
ベル
「ボクは、普通の人達が見る事が出来ない霊体を見る事が出来ます・・・」
「ココに居る方達は、アルテミス様・・・アンタレスから今すぐに逃げてくださいと言っています」
「アルテミス様・・・貴方からは、神の力を感じません」
アルテミス
「・・・ベルの言う通りさ」
「今の私は、アンタレスに囚われている・・・神の力も奪われてな」
「この姿は、魂の残滓でしかない」
ベル
「では、アンタレスを倒すと言う事は・・・」
アルテミス
「私を一緒に滅する事になるな・・・」
「だが、神の力を行使すると言う事は・・・世界の理すら歪める事も出来る」
「それだけは、絶対に阻止しなければならない」
「ベルは、私の事は気にせず・・・使命を全うして欲しい」
「神殺しの不名誉は負わせることは無い・・・私が1人で天界に送還されるだけだ」
ベル
「・・・ボクは、誰かの命を奪うために強くなった訳じゃありません」
「どんな状況でも諦めるつもりは毛頭ありません」
「なので、何とかしますよ・・・こんな物騒な物を使わなくても」
アルテミス
「ベル・・・」
ベル
「この先から、邪悪な気配がします」
「きっと、アンタレスが居るんでしょう・・・ボクは行きます」
「卍解・・・天鎖斬月」
ベルは、天鎖斬月を手にして遺跡の最深部に進む・・・
遺跡の最深部・・・
最深部に到着すると・・・アンタレスが神の力を使おうとしていた・・・
アルテミス
「駄目だ・・・神の力を使わせてはいけない!!」
「ベル、オリオンの矢を使うんだ!!」
ベル
「ボクは、使いません」
「自分の力を信じて戦います!」
ベルは、霊圧を完全開放して・・・虚化してアンタレスに月牙天衝を放つが・・・キズ一つ付いていなかった・・・
アンタレスは神の力のチャージを辞めて、ベルの方に向かってきた・・・
ベル
「虚化の月牙天衝を受けても、キズ一つ付かないのは困ったな・・・」
「一撃の破壊力を重視した斬魄刀を試してみるかな・・・打ち砕け・天狗丸!!」
鬼の金棒の様に変化した斬魄刀でアンタレスをぶっ叩いていく・・・
アンタレス
「グォオオオオ」
ピキピキ!!
ベル
「亀裂が入った!!」
アルテミス
「あの頑丈なアンタレスの体に傷をつけるのか・・・」
ベル
「アルテミス様の本体が見えた・・・」
「この亀裂から、内部を徐々に破壊する!!」
「咲き狂え・瑠璃色孔雀!!」
囚われているアルテミスの体を傷つけない様に、瑠璃色孔雀の蔦がアルテミスに巻き付いて保護する・・・
本来は、相手に巻き付いて霊圧を極限まで吸い尽くす斬魄刀なのだが・・・ベルの発想の転換で新しい使い方を見つけたので、主に人命救助をする時に使う様になった・・・
ベル
「瑠璃色孔雀・・・ボクの霊圧を全部、好きなだけ吸わせてあげるから、アンタレスを引き裂け~!!!」
膨大なベルの霊圧を吸った瑠璃色孔雀は・・・アンタレスの中で、成長し・・・最終的に内側から引き裂かれた・・・
アルテミス
「有り得ない・・・たった一人でアンタレスを倒すなんて・・・」
女神アルテミスを失ったアンタレスは・・・残った神の力を暴走させて解放しようと最後の足搔きを見せる・・・
アルテミス
「ベル!!もう私が居ないアンタレスは、最後に残った神の力を暴走させるつもりだ!!」
ベル
「なら、存在そのものを抹消すればいい」
「滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器沸き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる」
「爬行する鉄の王女、絶えず自壊する泥人形」
「結合せよ」
「反発せよ」
「地に満ち己の無力を知れ」
「破道の九十・・・黒棺」
真っ黒な棺が現れて・・・アンタレスを飲み込んで、重力の奔流に飲み込んで圧壊して消滅させていく・・・
ベル
「アルテミス様・・・終わりましたよ」
アルテミス
「ありがとう、ベル」
「だが、肉体と魂が分離してしまった今・・・私は、生きていくことは出来ないよ」
ベル
「そんな事は有りませんよ」
「ボクは、一応死神なので・・・離れてしまった魂と肉体は繋ぐことは出来ますから」
ベルは、女神アルテミスの残滓と肉体を繋ぎ合わせる・・・
アルテミス
「・・・これは」
ベル
「その、大変申し上げにくいんですが・・・服を着てくださると・・・」
アルテミス
「・・・すまない!!」
女神アルテミスは、顔を真っ赤にしてさっきまで残滓が着ていた服に着替える・・・
その間に、ベルは亡くなってしまった女神アルテミスの眷属の人達の魂が迷わない様に・・・丁寧に天に魂を送り届けていく・・・
アルテミス
「・・・私の眷属達」
ベル
「皆さん、アルテミス様の眷属になれて幸せだったと言っていましたよ・・・」
「私達の分まで生きて、新しいアルテミス・ファミリアを再興してくださいと・・・」
アルテミス
「あぁ・・・お前達に笑われない様に、素晴らしいファミリアを作ってみせるよ」
ベル
「流石にご遺体を全て持って帰るのは無理なので・・・遺跡の外にお墓と慰霊碑を建てましょう」
「遺品だけになりますが・・・ご家族の元の返して上げられれば・・・」
アルテミス
「私が責任を持って、ご家族の所に遺品を届けるよ」
「それとベル・・・今度から、オリオンと呼んでも構わないか?」
ベル
「はい?」
アルテミス
「その・・・恥かしいんだが、ベルの戦う姿に心奪われてしまって・・・」
「私の伴侶になって欲しいんだ・・・」
ベル
「え、いきなり言われても困るんですけど・・・」
「ボク、アストレア・ファミリアの団員ですし・・・」
アルテミス
「アストレアの眷属だったのか・・・」
「だが、私が直接アストレアに話そう」
「それに、主神の裸を見たのだから・・・責任を取って貰わないとな」
ベル
「それは不可抗力じゃないですか!!」
「ボクは、黒髪の年上女性が好きなんです!!」
アルテミス
「なん・・だと」
「なら、私が黒髪に染めれば問題ないのではないか・・・」
ベル
「いや、神様と人間は結婚できないと思いますよ」
「寿命が違いますし・・・」
アルテミス
「だが、不可能な事は無いぞ」
「過去に、主神と眷属で結婚をした記録が有った筈だ」
ベル
「大変申し訳ありませんが・・・アルテミス様との結婚は出来ません」
「ボクは、まだ12歳なので」
アルテミス
「歳の差など些細な問題だ」
ベル
「全然些細な問題じゃないですよ!!」
アルテミス
「さぁ、一緒にアストレアの元に話に行こう」
ベル
「落ち着いてくださいよ!」
アルテミス
「思い立ったが吉日だ!」
「眷属達の遺品を遺族に渡したら、オラリオに移動する準備をしよう」
ベル
「ボク、勝手に暴走する人は嫌いです」
アルテミス
「グフッ!!」
「分かった・・・とりあえず、今回の出来事をアストレアに説明しに行こう」
「ベルを巻き込んでしまった私には、説明責任が有るからな」
ベル
「はぁ、メレンでスローライフと送るはずだったのに・・・」
予想外の出来事に巻き込まれてしまったベルは、当初の予定より早くオラリオに戻ることになってしまいました・・・