転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
2日前、15日目の補給の際に彼らが大きな荷物と共に来ていたが、甲冑だったのか。
「その姿は?
いったい何をするつもりだ」
だが、彼らの思惑が分からない。
「ふっ、ここは人類の最前線で、これは戦装束だ。
何をするかなど言うまでもないだろう」
そう言って、男達は防壁へと向かっていく。
「待て!
何のつもりかは知らんが勝手な真似は許さん」
「今、議論をしている時間などないはずだ。
奴らは、すぐそこまで来ているぞ」
「くっ…」
彼の言うとおり、ここで人間同士で争っている余裕はない。
ただでさえ危うい状況なのだ。
彼らの排除にレンジャー達を割くことはできない。
彼らは、そのまま進み、防壁の前に陣取る。
すでに配置についているレンジャー達が彼らの姿に戸惑っているが、いつまでも気にしてはいられない。
感染者の群れの先頭がすでに視界に入っている。
弓を構えるレンジャーを見て、戦闘指揮に集中する。
彼らの思惑は分からないし、壁の前に立つなど自殺行為でしかない。
いくら鎧を着ていても、群れに飲み込まれれば僅かな延命にしかならない。
後ろに下がるよう、彼らを説得することは諦めた。
私が優先すべきは、部下のレンジャーであり、後ろの住民達だ。
「我らは今日、サムライとなる。
総員、抜刀!」
男の号令で、全員が腰に刺していた刀を抜く。
「まさか、本当に刀一本で群れと闘う気か!?」
無茶だ!
まさか、勇敢に闘って死ぬために来たのか。
貴族も犠牲を払っていると示すために。
いや、たとえそうでも、今は指揮に集中しろ。
「曲射、一時の方向50!
防壁に上がったレンジャーは、近くの感染者に攻撃開始!」
群れの密度が高い場所を狙って曲射の指示を出す。
防壁の上から視認して攻撃するレンジャーには近くの感染者を優先させる。
…が、やはりすぐに群れは防壁前に陣取る男達のところに到達し、襲いかかる。
「うおおおおおおおおおおお!!」
咆哮と共に先頭の感染者へ刀を振り下ろす。
刀の切れ味は凄まじく、感染者は一刀両断され、一撃で絶命したようだ。
なんて切れ味だ!
だが、感染者は仲間がやられても怯まない。
後ろから次々と飛びかかってくる。
事実、感染者が距離を詰め、掴み掛かろうと手を伸ばす。
男達は飲み込まれ…………なかった。
鉄の甲冑を上手く使った打撃で感染者を弾き返し、再び刀で切り捨てる。
男達は、群れを自らの肉体を盾に受け止めていた。
強い、殲滅力ならレンジャーを遥かに超えている。
しかし、そう長くは持たない。
群れの圧力を前に体力はどんどん削られているはず。
恐れていたとおり、周辺の感染者が引き寄せられ、群れに合流している。
この襲撃は、すぐには終わらない。
「曲射、12時の方向50!
防壁上のレンジャー、前方20に矢を集中させろ!
サムライ達にかかっている圧力を少しでも下げるんだ!」
認めよう、彼らはサムライだ。
感染者の前に立つ恐怖は想像を絶する。
鎧など気休めにもならない。
彼らは、その恐怖に耐えて感染者と肉弾戦をしている。
どんな思惑があろうと、その勇気は本物だった。
サムライの殲滅力なら無傷の感染者でもほぼ一撃で殺せる。
なら、矢を集中させて数を減らすことを優先した方がいい。
圧力が弱まれば、体力の消耗を抑えることができる。
あの殲滅力は、大きな助けになっている。
彼らの力があれば、この襲撃を凌げるかもしれない。
なにより、目の前で必死に戦っている戦友を見捨てるような選択肢はない。
レンジャー達も同じ気持ちのようで、鬼気迫る表情で矢を放ち続けている。
当初の群れは、もう殲滅している。
それでも戦闘はなかなか終息しない。
次々と新たな感染者が現れ、まるで終わりなどないかのような気がしてくる。
それでも弱気になどならない。
なれるはずがない。
すぐそこに感染者と戦い続けている男達の背中が見える。
積み重なった疲労で動きに当初のキレはない。
それでも、引くことなく前に立っている。
そんな姿を見せられて、どうして自分達が先に諦められようか!
サムライ達の姿が私達の心に火を焚べ続ける。
どれくらい戦い続けただろうか?
それほど長くはないはずなのに何時間も戦っているような気がする。
それほどに密度の濃い時間だった。
必死に戦っている中で、ふと気づいた。
先程まで感じていた圧力がなくなっている。
辺りを見ればランナー達は全滅していた。
残っているのは、遅れてやってきているウォーカーのみ。
もはや脅威と呼べるほどのものではない。
レンジャーに追撃の指示を出して、残っているウォーカーを殲滅したことで今回の襲撃は完全に終息した。
「なんとか、乗り切ったか…」
一息吐き、今回の戦いで最大の功労者と言えるサムライ達に目を向けた。
疲労でふらふらになりながらも兜を外したのは私の同級生だった。
「どうやら、無事だったようだな」
「ああ、だが二人やられた」
全員無事とはいかなかったようだ。
無理もない。
それほどの激戦だったのだ。
最前線に立ち、肉弾戦を行ったのだから、全滅でもおかしくなかった。
戦死した二人のサムライは、感染者が噛みつくため強引に兜を剥ぎ取ろうとしたことで首の骨を折られて絶命していた。
「司令官、頼みがある」
「なんだ?」
彼らが何を望んでも、可能な限り応えよう。
それだけの献身をしてくれた。
「死んだ二人の武具と我らの報告書を王国に送ってほしい」
「武具と報告書?」
「ああ、武具…特に刀は貴重だ。
王国で新たなサムライに与えられることになる」
「刀か…私は刀など役に立たないと思っていたよ。
二、三人も切れば血脂で切れ味が鈍り、鈍器になってしまうと」
「…さすが古代の文献を読み漁っていただけのことはあるな。
そんな俗説まで知っているとは」
「俗説?」
「それは美術品として打たれた日本刀の話だ」
「そうなのか?」
「ああ、戦国の世に数百の剣術流派が生まれ、刀はサムライの魂と言われるまでに隆盛を誇った。
戦場での命のやり取りを日常とする者が、すぐに使い物にならなくなる武器を重宝するわけがない。
実戦用の刀は、刀身に施された特殊な加工によって血脂を弾き、流れ落ちるようになっている。
だから、ほとんど切れ味が落ちないのだ」
「そうだったのか。
しかし、よくそんな物が残っていたな」
「戦国の世で打たれたものではない。
王国の鍛治師が包丁や鍋の修理をしながら、必死に技術を守り抜いていたのだ」
「そうだったのか」
「それより、私の頼みは聞いてくれるのかな?」
「もちろん否はない。
ただ、報告書はできるだけ正確に作りたい。
私の方でまとめて作成させてくれ。
心配せずとも王国は評価してくれるさ。
君達は英雄と呼ばれるに相応しい戦果を上げたのだから」
「いや、戦果報告などどうでもよい。
我らが王国に送りたいのは戦訓だ」
「えっ、戦訓?」
「ずっと感染者と戦うことを想定して訓練してきたが、やはり実戦は違う。
改善すべき点が多く見つかった。
王国でサムライとなるために訓練している者たちに伝えれば、より強いサムライになってくれるはずだ」
どうやら、私は彼を見縊っていたようだ。
戦功を誇る様子がない。
これが武士道というやつか。
「いったい何があった?」
「ん?どう言う意味だ?」
「正直に言うと、王国にいた頃は君のことを嫌な奴だと思っていた」
「ははっ、ずいぶんとはっきり言うじゃないか」
「今の君は、あの頃とはまるで別人だ。
どうして、こんなに変わったのかと疑問に思ったんだ」
「………子供ができたんだ」
その言葉で心にストンと納得がいった。
貴族の家に生まれた子供の中で次世代に貴族の地位を引き継げるのは、当主となった者だけ。
それ以外の者達は、一代貴族となる。
貴族の家に生まれた彼は貴族だ。
だが、彼の子供は平民として扱われる。
その子供は、王国に残るために激しい競争を強いられることになる。
「なぜ志願したのか聞いたことがあっただろう?」
「…ああ」
罪悪感に耐えられなくなり、遠征に志願した後、彼とそんな話をした覚えがある。
「お前は、若い世代が犠牲になるのを安全な場所で見ているのに耐えられなくなったと言った。
そして、子供達が希望を持てる世界にしたいとも…」
確かにそんな事を言った。
「最初は馬鹿なことを言っていると思った。
だが、お前はそれ以来、ずっと前を見据えて行動してきた。
そんな姿が私の心を変えていった。
私の戦う理由など、ごく個人的なものだ。
我が子の未来を少しでもマシなものにしたい。
そう思えるようになったのは、お前のおかげだ」
彼が私に向かって頭を下げた。
「私が勝手にお前に恩があると思っている。
お前ならこんな世界でも未来を切り拓けると、勝手な期待もしている。
だから、この命を使ってくれ。
どんな結末になろうと恨みはしない」
彼を疑った自分が情けない。
私などよりずっと立派な人間じゃないか。
「こちらこそ、よろしく頼む」
誰も死なせないとは言えない。
この世界で、それがどれほど無謀なことなのかくらいは理解している。
それでも、私は最後まで理想を追い求めよう。
皆を家族の元に帰せるように…
1stウェーブが終了しました。
舞台が日本なのでゲームのソルジャーに相当するユニットとしてサムライを出しました。