転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る   作:ソロモンは燃えている

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転生した私、考察する

 

 

 

 最大の襲撃を乗り切ることに成功したが私の心は晴れない。

 今回の作戦で犠牲となった者達の顔が頭に浮かんでくる。

 もっと上手く出来たのではないか?

 彼らを失わなくて済む方法はなかったのか?

 そんな事ばかり考えてしまう。

 

「ずいぶんと塞ぎ込んでいるようだな」

 

 サムライ隊の隊長が話しかけてきた。

 

「ああ、君か……そうだな、自分の不甲斐なさに落ち込んでいる」

 

 女レンジャーの顔を思い出す。

 

「私は、司令官失格だ。

 時に非情な決断も必要だと分かっていた。

 なのに決断を下せなかった。

 彼女は、なぜ微笑むことが出来たんだろう?」

 

 こんな情けない司令官を見て、なのに彼女は自らを犠牲にした。

 

「あの女レンジャーのことか……

 正直、私達は思い上がっていた。

 この身を盾にして、感染者と戦っているサムライほど強い覚悟を持った者はいないと…」

 

 今回のレンジャー達の献身を見せつけられて頭をぶん殴られたような衝撃を受けた。

 兵士に志願し、この戦いに臨んでいる者達の覚悟を甘く見ていたのだ。

 彼らは、音を立てないために強力な武器も身を守る鎧も使わない。

 そうやって得た静粛性と機動力を武器に拠点を構築し、戦力が整うまで前線を支え続けていた。

 

 彼らの覚悟はサムライに劣るものではない。

 いや、この戦争に参加している兵士に覚悟を持たない者などいない。

 それを理解したからこそ、彼女の微笑みの理由がなんとなく理解できる。

 

「彼女は、お前のその甘さを嬉しく思ったのさ」

 

「非情な決断を下せないのは、司令官としての弱みだろう。

 なのに何故?」

 

「そんなお前だから、我らは信じて着いていくことができるんだ。

 効率だけを求める司令官なら、こんなに戦えていなかった」

 

「そう言ってくれるのは嬉しい。

 だが、この戦争に負けは許されない。

 なのに、私は勝つために必要な決断を下せなかった。

 結局、彼女の強さに救われただけの情けない男さ」

 

「お前は、そのままでいい。

 私には彼女の気持ちが少し理解できる。

 言っただろう。

 お前だけに背負わせるつもりはないと…

 命を切り捨てなければならない時が来たなら、その時は自分で切り捨てるさ」

 

 あの女レンジャーのように。

 そう言う男の目に迷いはなかった。

 

 ああ、きっとそういうことなのだ。

 私が決断するまでもなく、彼らは自分で自分の命を切り捨てる。

 それが人類の未来に繋がると信じて…

 

「だから、笑って死んでいくのか…

 私を恨めば良いのに。

 自分を犠牲にしなければ勝てない無能な司令官だと!」

 

 王国では私を英雄だ!救世主だ!と持ち上げているらしい。

 私は、そんな大した男じゃない。

 実際は部下に勝たせてもらっているだけだ。

 

 

「恨みませんよ。

 いや、恨ませないでください」

 

 その声に振り向くとレンジャー部隊の隊長がいた。

 

「すみません、お二人の会話を邪魔する気はなかったのですが…アイツの事を思うとつい口を挟んでしまいました」

 

「いや、それは構わないが…彼女のことを?」

 

「ええ、彼女は特に印象的でしたから」

 

 皆が安心して、笑顔でいられる世界にしたい。

 

 それが彼女の夢であり、兵士に志願した理由だった。

 

「少し前なら夢見ることすら出来なかったことです。

 ですが、若い世代を見捨てることが出来ないと言って志願した馬鹿がいた。

 その馬鹿は、愚直に努力を重ね、成果を積み上げてきた。

 今も、その優しさが失われていなかった。

 それが分かったから安心して後を託したのでしょう」

 

「……そうか」

 

 あの微笑みは、私の甘さを好ましく思っていたからだったのか。

 

「だから、彼女があなたを恨むとしたら…それは、あなたが諦めた時です」

 

 だから恨ませないでくれか。

 もとより諦めるつもりはなかったが、ここ最近、戦死者が続いたことで弱気になってしまっていた。

 けど、もう大丈夫だ。

 どんな困難な道も歩いていける。

 こんなにも背中を押してくれる仲間達がいるのだから。

 

「そうだな、立ち止まっている暇はない。

 報告を聞こう」

 

 レンジャー部隊には、市内に感染者が残っていないか確認するために捜索を命じていた。

 隊長は、その報告のために来たのだ。

 

「はっ、市内の捜索はほぼ完了しました。

 発見の報告はなし。

 この辺りの感染者は全て殺したようです」

 

「…やはりか」

 

「どう思う?

 私も薄々感じているが、お前の口から聞かせてほしい」

 

「おそらくだが、感染者の中に司令官のような役割を持つ個体がいる」

 

「なっ、本当ですか!」

 

 レンジャーが驚きの声を上げる。

 サムライは予想していたようで静かに先を促している。

 

「最初の作戦で襲撃を受けた時から違和感を感じていた。

 続く、廃墟攻略と草原の開拓では襲撃を受けなかったから保留としていたが、今回の作戦に先立って派遣した偵察部隊が、周辺に点在する群れを確認したことで疑念は強くなっていた」

 

 そして、予想通り襲撃が起きた。

 市外から来たのに、こちらの存在を確信しているかのように真っ直ぐ向かってきた。

 市内の感染者は反応していないのに、これはおかしい。

 

「司令官は、どう考えているのですか?」

 

「まず、その個体が何らかの方法で我々がテリトリー内に侵入したことを感知した。

 最初の襲撃は、こちらの戦力を測るためのものだと思う。

 これで滅ぼせれば良し、失敗してもそれだけの戦力が存在していることが確定する。

 次いで、廃墟からだけでなく、様々な方向から小規模襲撃が起きるようになった。

 これは、こちらの防衛網に穴がないか探っていた可能性がある。

 実際にクリアリングを終わらせた方向からも来ていたから、油断していれば危なかった。

 そして、最後の総攻撃では廃墟だけでなく、市内にいた全ての感染者が一斉に動き出した」

 

 だから、押し寄せた感染者を全滅させた後は、市内に感染者が一体もいなかったのだ。

 

「なるほど、確かに知性がないと言われる感染者とは思えないほど組織立って動いているように感じます」

 

「実際には、知性と言うより蟻や蜂のような本能的な統制なのかもしれない。

 最初から総攻撃をされていたら一溜まりもなかった」

 

「極力、無駄な行動をしないためかもしれないな」

 

 ここでサムライが口を開く。

 

「いや、感染者が人間に噛み付くのは感染させるためで喰うためではない。

 だから、ふと思ったのだ。

 無駄なエネルギーを使わないようにしているのではないかと。

 そもそも、奴らは100年以上も何も食べずに生きながらえている。

 だが、この世に永遠はない。

 ウォーカーには肉体的に損傷した個体の他にも痩せ細って衰弱した感染者だっている。

 人間の気配を感知するまでその場からほとんど動かず、ジッとしているのは、そういうことではないか?」

 

「あり得るな。

 総攻撃を仕掛けたのに得られるのが僅かな感染先だけではエネルギーの収支が合わなくなる」

 

「つまり、総攻撃を仕掛けるのはそれだけの価値があると判断した時のみ。

 その判断のトリガーが何かは分からんが」

 

「…時間ではないか?

 前回は周辺の感染者を全滅させた後に襲撃があった。

 だが、今回は廃墟を攻める前に総攻撃をされた。

 自分達の被害の大きさで判断していると考えるよりは、度重なる襲撃を耐えて、その場に留まり続けている期間によってこちらの規模を判断していると考える方が理に適っている」

 

「今後、作戦地域の周辺に群れが確認されれば、その地域内の感染者を全滅させるだけでなく、外部からの攻撃にも耐える準備をしなければなりませんね」

 

「ああ、そのためにやらなければならないことがある」

 

「郊外の工場区の探索か?」

 

「そうだ。

 古代の技術を復活させるために必要な遺物《アーティファクト》を手に入れる」

 

「建物内は複雑に入り組んでいて、大部隊での探索は返って危険です。

 少数の精鋭で行うべきかと…」

 

「では、私が行こう。

 これでもサムライの中では最も強いからな」

 

「そうですね、我々の弓は室内での取り回しに向いていません。

 ここは、サムライ達に任せる方が良いでしょう」

 

「ああ、任せてくれ」

 

 次の行動は決まった。

 工場区の探索。

 これが成功すれば、王国はさらに先に進むための力を手にする。

 人類の未来を照らす希望の光となることを祈ろう。






次は探索ミッションになります。
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